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会場:ハンビットユビキタスエンターテイメント本社
今回の発表会では「グラナド・エスパダ」に2人の日本人クリエイターが参加することがアナウンスされた。ひとりは「ロマンシング サ・ガ」シリーズのイメージイラストで著名なイラストレーターの小林 智美氏。もう1人は「ビートマニアIIDX」や「キーボードマニア」シリーズを手がけるピアニストであり、作曲家、編曲家である久保田 修氏である。2人のクリエーターの起用は、作品の世界観にぴったりということで、キム・ハッキュ氏の強い要望で実現したという。 発表会では久保田氏が出席、久保田氏は「今まで韓国の人たちと仕事をしたこともあったが、韓国主導で日韓の2つの国で楽しめるゲームに携わるのは初めてで、新鮮だ」と語った。楽曲については現在製作中であり、サウンドコンポーザーとしてゲーム制作に参加、氏の作った何曲かの楽曲がゲーム内で使用される。現在のゲームの曲はあまり意識せずに、「やりたいことを思い切ってやっていきたい。キム・ハッキュ氏とケンカするかもしれないけど、思い切っていろいろやるつもりだ」とのこと。 楽曲はすべてオーケストラを使う事が決定しており、中国で収録する予定で現在作業を進めている。氏は「期待してください」という言葉でコメントをしめくくった。発表が終わった後に久保田氏が持参したMDをキム・ハッキュ氏に聞かせている場面も見られ、その後の打ち合わせの風景も親密な雰囲気だった。 今回小林氏はフランスに取材旅行に行っていて発表会には参加しなかったが、フランスで「グラナド・エスパダ」のためのさまざまなヒントを得てくるつもりだという。小林氏はゲームではプレーヤーキャラクタの衣装や、今後追加されるキャラクタデザイン全般を担当することになる。 「グラナド・エスパダ」サービス計画は、まず韓国でクローズドβテストを行ない、その終了から1~2週間後に日本でクローズドβテストを開始する予定だという。βテストの募集は公式サイトにて行なわれ、サポートをしっかり行なえるようにと人数は数百人規模に絞る。選考基準はゲームが快適に動く性能のPCを所有していること、ゲームを紹介するウェブページを運営した経験や、MMORPGのプレイ歴などとしている。応募の細かい情報は、今後改めて発表される。 現在決まっている予定としては、日本では今夏に何回かに分けてテーマに沿った要素をチェックするという形でクローズドβテストを行ない、秋口からオープンβテストに移行、早ければ年末、遅くても年明けには正式サービスに移行する予定であることが発表された。
■ 3人のキャラクタを同時に操作するユニークなキャラクタシステム ソロプレイでも自分のキャラクタだけで最大3人のパーティーを組むことができる「グラナド・エスパダ」。3人のキャラクタを同時に動かせるこのシステムは「マルチキャラクタコントロール(以下、MCC)」と呼ばれるもので、プレーヤーは基本的にパーティーの内のリーダーを操作することになる。他の2人のキャラクタはあらかじめ設定した行動をするようになっている。状況に合わせてF1~F3のキーを押すことでリーダーを変え、敵と戦っていくのである。 リーダーでないキャラクタにはAIによってプレーヤーが指示しない場合でも自動的に行動する。3人パーティーでプレイする場合には当然経験値は3分割される。1人のキャラクタを集中して育てたい場合にはそのキャラクタだけで冒険に出ればOKである。AIで勝手に戦うために、ある場所にキャラクタを置き、勝手に戦わせて、3人がそれぞれ別な狩り場で戦うことも可能だという。3人が別々の場所で勝手に戦うというのは、いわゆる「マクロ行為」をシステム側で許容しているということであり、ここが同作のユニークな部分のひとつになっている。 キャラクタの育成に深く関わってくるのが「スタンス」というシステム。各キャラクタは「攻撃中心」、「防御中心」といったスタンスの特性を持たせて育てることができる。スタンスには熟練度が存在し、育つほどキャラクタの性格がはっきりと現れてくる。このスタンスは能力値やさらにはスキルの上限にも影響するという。キャラクタは職業とスタンスによってより個性を発揮させていくのである。3人のキャラクタを使ったプレイにも、他のプレーヤーとのパーティープレイにも大きく影響してくるシステムである。 プレーヤーが作成できる自分のキャラクタは、3人だけではない。ログインしたときに現れるキャラクタ選択画面「バラック」には、最大9人のキャラクタを保持することができるのだ。保持するキャラクタはすべて1から作成するのではなく、特定のNPCや敵キャラクタまでバラックに入れることが可能だ。敵キャラクタやNPCを自分のキャラクタとして使用し、育成できるのである。プレーヤーはこのバラックからチームを作成し、冒険に旅立つのだ。1人のキャラクタだけ育てるのも良し、9人まんべんなく育てるという究極のやりこみプレイも可能だろう。 ●クローズドβテストで選択できる5つの職業 ・ファイター 武器を使いこなし、強力な物理攻撃を行なう戦士。本作では剣の他に、2丁拳銃などを使用できる。 ・スカウト スカウトは本来は偵察兵といった意味を持つが、本作ではヒーラーとしての役割がある。罠の設置なども可能。 ・ウィザード 相手の防御力をものともしない念力系攻撃魔法と、相手を撹乱させる幻術系の補助魔法を使用する魔法使い。多くの敵を一度に攻撃することもできる。 ・ウォーロック 「火・氷・雷」の魔法を使いこなす、強力な攻撃呪文を使いこなす。さらに他のウォーロックやウィザードと協力をしての攻撃魔法も持っている。 ・マスケッティア マスケット銃を使い戦う職業。魔法よりもさらに遠距離からの攻撃が可能になっている。
■ デモプレイでは、ソロプレイでの楽しさを強調 今回の発表会では「インスタンスダンジョン」というユニークな概念が発表された。このダンジョンシステムは、プレーヤーにさまざまな角度からダンジョンを挑戦させるシステムで、入る前に例えば「あるモンスターを数匹倒せ」や、「宝探し」、「誰が一番ダンジョンの奧にいけるか」といった目標が設定されダンジョンを進んでいくシステムである。まだ詳細はきめられていないが、プレーヤーを数人集めて「スタート」のかけ声ではじめる、といったアイデアが検討されている。 これらのダンジョンはプレーヤーが参加するたびに割り当てられるプライベートダンジョンかというと、どうもそうではないようで、別にプライベートダンジョンも用意されるとのこと。考え方としては、パーティーで戦っていくのではなく、それぞれがMCCにより、プレーヤー単位で競争していく醍醐味を体験させるコンセプトだという。プライベートダンジョンによりMO的なアプローチを行なえば競争は可能だと思うが、あくまでMMORPGのダンジョンで競争させるというのはどういった手法をとるのだろうか、興味がひかれる部分である。タイムを記録し、記録を競うといったアプローチも考えられている。 発表会の後に行なわれたデモプレイでは、数人のGMによるダンジョン攻略が行なわれた。プレーヤー達はそれぞれ3人のキャラクタを操り、街を走り、ダンジョンへと向かう。キャラクタの移動に関しては、3人のキャラクタを同時に動かすにはRTSのようにいったんドラッグを行ない範囲の中に3人を入れてから動かす、という手法をとっていた。GMがまだ操作に不慣れなためか、置いてきぼりになるキャラクタもいて、とっさの場合の操作などちょっと難しいようにも見えた。 移動に関して感心させられたのは、遠くの地点を指定した場合、自動的にひっかかりそうな地形を回避して進むシステム。従来の韓国産RPGでは目的地をクリックして移動するシステムの場合、この機能がなくて地形にひっかかることが多かったため、非常にストレスがたまっていたのだが、本作ではこの点はきちんと改良されるようだ。 ダンジョンは異形のモンスターがひしめく危険な場所に見えたが、1人のプレーヤーが 3人のキャラクタを操作しているためか、多数のキャラクタでモンスターを制圧していく感じで快適なダンジョン攻略が楽しめる印象を持った。 面白く感じたのが、ゲームがきちんと動いており、近日クローズドβテストがはじまろうというこの時期に、まだパーティーシステムが実装されていない点だ。デモプレイでは5人のGMによる、総勢15人のキャラクタがダンジョンに突入していったのだが、パーティを組んでいないのだ。 この点に関して質問したところ、他のプレーヤーとパーティーを組むとキャラクタの体力バーで画面がいっぱいになってしまうおそれがあるため、システム的には可能だが、今はまだ実装していないとのこと。まだ上限はきめていないが、システム的にはパーティーは最大8人、つまり24人のキャラクタが参加するプレイが可能になる予定だという。 パーティーシステムに関してキム・ハッキュ氏は非常に印象的なコメントをした。「当面のダンジョンでのプレイはプレーヤーごとに目的が提示される『インスタンスダンジョン』システムでゲームを進めるため、パーティーVSパーティーの場合以外では、パーティーは組まなくてもいいのではないのか」というのだ。難関なダンジョンに挑戦するためにパーティーを組むという従来のMMORPGとはまったく違う考え方である。他のプレーヤーは基本的にはライバルなのだろうか? 今後、もっとゲームの姿が明らかになった時に注意して検討してみたいポイントだ。 今後実装するシステムとして、選挙システムについても少しだけアナウンスされた。これはプレーヤーの選挙によってあるプレーヤーが市長になったとき、限定的ではあるがGM的な権限を市長が付与されるものだというのである。領主がさまざまな街の制度をきめられるというのだ。まだ実装には時間がかかりそうではあるが、話題を集めそうなシステムである。
■ キム・ハッキュ氏ショートインタビュー 編: 「グラナド・エスパダ」は低解像度のクライアントと高解像度のクライアントを用意するとのことでしたが、βテストではこの2つが用意されるのでしょうか。 キム氏: 現在すでに開発していますが、この場では発表しませんでした。クローズドβテスト時にはサービスをします。プレイするサーバーは変わらないので、所有しているハードに合わせてどちらかのクライアントを使っていただけるような形となります。2つのクライアントは、オプションで切り替えることが可能です。
キム氏: ピクセルシェーダーといったグラフィックス技術は入れていません。攻撃のエフェクトといった要素よりも、テクスチャとポリゴンのディテールにこだわって制作を進めています。今後そういった要素も強化していく予定です。今後はオプションでエフェクトを派手にできるような選択をしていくというアイデアもあります。テクスチャにこだわった開発は時間がかかる傾向がありますが、がんばっています。 テクスチャにこだわるというのは制作の方向性でもあります。私達は広大な世界を提供するのではなく、あえて限定された世界を用意して、クオリティーを重視し、そこを細かく作り込んでいきます。雰囲気が違うさまざまな要素を用意して、たくさん投入していきたいと思っています。 「World of Warcraft」や、「エバークエストII」、「リネージュII」などは広大な世界を提供していますが、私達はそれとは違うアプローチで作っていくつもりです。あえて差別化を行なうと言った方針ですね。ただ広い平原をユーザーがずっと走っていくようゲーム性は求めていません。広さよりもディテールにこだわっていきたいです。 編: 制作する過程において「World of Warcraft」は意識していますか? 本質的な部分で近い印象を受けたのですが。 キム氏: そういう意図はありません。ちょっとデモの見せ方を間違えたかな?(笑) 「World of Warcraft」はキャラクタの描写などがコミックス的な雰囲気を持っています。「グラナド・エスパダ」は古風なヨーロッパ的な雰囲気を目指して制作しています。映画的な絵作りをできるようにしていきたいですね。 編: 「World of Warcraft」はすでに巨大な市場を形成していますが、これとは違う市場へ向けてアピールしていくということでしょうか? キム氏: そうですね、「グラナド・エスパダ」はまったく違うゲームであり、まったく違う市場を作るゲームだと思っています。 編: 次に小林氏と久保田氏を起用した経緯を教えてください。クリエーターの選別はキム氏が行なったのですか? キム氏: 2人とも私が昔から尊敬していたクリエーターで、特に「グラナド・エスパダ」の世界観に合っている人たちだと思っていました。久保田さんは初めてあった日から、ゲームに関するいろいろなアイデアをいただきました。ただ音楽を依頼したという関係ではなく、楽しくいろいろなことを話しています。今月は韓国でも久保田さんと楽しくお話したいなと思っています。 小林さんは「グラナド・エスパダ」の公式ページを見せただけで、「いいですね」と気に入っていただけたんですよ。そのままお会いさせていただいてすぐにOKをいただきました。 オンラインゲームはパッケージソフトと違ってどんどんアップデートができるゲームです。こういったコラボレーションによって新しい要素を取り入れることができ、色々な意見をインタラクティブに反映できます。今回のお2人だけではなく、新しいアーティストにも参加していただきたいですね。 編: 次はどの分野のアーティストが参加する予定でしょう? キム氏: まだ決まっていませんね。外国のクリエーターと仕事をするというののは私にとって初めての体験なんですよ。とにかく今はお2人との仕事に集中したいですね。外国のクリエイターと仕事をするというのは、私は最初考えてもいませんでした。 久保田さんや小林さんとは仕事ができたらいいな、とも思っていたのですが、「グラナド・エスパダ」を手がけるようになり、会社を設立した時に「コラボレーションは可能だ」という話になって、そこから1カ月で実現してしまいました。 編: イラストに関しては小林さんが関わる前から韓国のクリエイターの手によるものが作られています。この整合性はどうやってとられるのでしょうか? キム氏: 「ラグナロクオンライン」でも複数のイラストレーターが作品に関わっていました。実際の絵は違うかもしれませんが、目指すところの世界観は同じなので、問題はないと思っています。
□HUEのホームページ (2005年6月10日) [Reported by 勝田哲也]
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