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Electronic Entertainment Expo 2005現地レポート

「Rise of Nations: Rise of Legends 」プレビュー&インタビュー
ブライアン・レイノルズ氏の新たな一面を見せる
架空世界を舞台にしたRTS

5月18日~20日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

Big Huge Games 社 社長兼ゲーム デザイナーのブライアン・レイノルズ氏
 「Rise of Nations: Rise of Legends 」は米国 Big Huge Games社長兼ゲーム デザイナーのブライアン レイノルズ氏が手がける最新RTSである。前作に当たる 「ライズ オブ ネイション ~民族の興亡~」(以下RON)は史実に登場するさまざまな文明の発展と戦いを描いていたが、今作では「魔法とテクノロジーの戦い」というテーマをベースに、架空の文明のぶつかり合いを描いたファンタジー色を前面に押し出した作品となった。

 今回見せていただいたのは「Rise of Nations: Rise of Legends 」(以下、ROL)のデモプレイ。レオナルド・ダ・ビンチの夢想した未来の乗り物である、渦巻き型のローターを持つヘリコプターなどが登場する、歯車が象徴の機械文明と、ガラスに関連した熱と光を使いこなす魔法文明の衝突を描いたものである。その映像のプレビューと、ブライアン・レイノルズ氏のコメントをお伝えしたい。

 とにかく、まず最初に現れた機械文明の街の姿に筆者は圧倒されてしまった。巨大な歯車とピストンがごちゃごちゃと動く都市。未来世界のようでありながら、重そうな金属で構成され、煙を吹き出すその世界は19世紀末のテクノロジーで止まっているかのような印象も受ける。「未来都市」という言葉から想像させられるスマートなイメージはなく、無骨で油臭い印象なのだ。

 対する魔法都市は西洋ファンタジーから想像させられる緑と石造りの城というイメージではなく、タマネギ型のドームを持つ優美なシルエットの建物と、ジンが住むアラビアンナイトの世界を基本ラインとしながらも、動力炉を思わせる建物があったりと、「魔法機関」というものが存在しそうな世界。どちらもかなりの情熱を感じさせるデザインである。

 Big Huge Gamesは「Civilization」シリーズやRONで歴史的なものを題材に、強いこだわりを持ってゲームを作っていたメーカーである。その彼らがなぜ現実とは違う、独自のファンタジーを題材にゲームを作ったのだろうか?


●現代とは全く違った進化を遂げた機械文明と魔法文明の衝突を描くRTS

 ゲームは広大なマップ画面からスタートする。マップは細かく国境線が描かれており、争っているのがわかる。レイノルズ氏はそこから一つの地域をクリックした。

 画面が変わり、まず映し出されたのは機械文明側の街。渦巻き型のローターを持つ奇妙なヘリコプターが空を飛び、街全体は巨大なピストンと歯車で構成されている。驚かされるのは、その街にあるあらゆる歯車、ピストンが動いているところ。街自体の生命力を現わすように活発に動くそれらの部品達は細かく見れば見るほどにその作り込みに圧倒される。

機械文明の街。歯車やピストンがそれぞれ独立して動いている
タマネギ型のドーム、中東風の魔法都市は優美なイメージがある
カニ型戦車。前足についたドリルが非常にカッコイイ
 この文明は「ビンチ」、レオナルド・ダ・ビンチが描いた図面がモチーフになった世界だという。街はプレーヤーが実際にゲーム内で作れる「レゴ・シティー」とも言うべきものだ。

 レイノルズ氏は「今回の作品では、グラフィックスに特に焦点を置き、その映像をもって架空世界を表現したかった。このグラフィックで多くの人を感動させたかった」と語る。その言葉通り、じっくりとモデリングを確かめたくなる街である。細かく描き込まれた街は、プレーヤーが構築する楽しさをたっぷりと楽しめるように作られているのだ。

 いったん街から離れて、戦闘画面に。隣国が大砲を造り、こちらを脅かそうとしているのだ。機械文明同士の戦いになる。レイノルズ氏は軍隊ユニットを操作。歩兵の他、丸いデザインの戦車や、細長い手足を持つロボットの姿が確認できる。

 敵兵は蜘蛛のような足を持つ戦車でこちらに対抗、激しくぶつかり合う。「ヒーローの力を使います」というレイノルズ氏の声と共に巨大な歯車型のアイコンが登場、特殊攻撃の硬派範囲を示すアイコンでその範囲内にいる敵ユニットは一気に殲滅された。

 後に残されたのは街の中心となる建物。歩兵を使ってこれを占拠し、自軍のものにした後、建物を配置していく。本来は多くの資源が必要だが、一つの建物を中心に巨大な建造物へと「成長」していく姿はワクワクするものがある。建物の中には採掘施設などもあり、文明によって生成するものも変化していくという。

 レイノルズ氏はさらにこの場所に飛行舞台の生産工場を建造、ヘリコプター部隊を製造し、一気に敵陣に攻め込んだ。ヘリコプターには小さなものから、地上に向かってミサイルを雨のように撃ち込む爆撃機まで数種類があった。特にこの爆撃機の威力がものすごく、敵の建物はあっという間に破壊されていく。

 このときに注目したいのが敵基地の「壊れ方」である。炎と共に部品がバラバラにはじけ飛ぶ。この演出は独自の物理エンジンを使って描写しているという。光や影の描写にも専用のグラフィックエンジンを開発しており、ここでも視覚的なこだわりを強く感じさせられた。

 場面が切り替わり、今度は魔法文明の街へ。タマネギ型の屋根を持つ「アラビアンナイト」をイメージした文明だ。風力計のようなデザインの透明な丸い板が回転しているがこれはこの世界の風車なのか、優美で不思議なイメージを持ったデザインである。

 この街に侵攻してくる機械化部隊。魔法文明は精霊(中東のランプの精を思わせるジン)を呼びだしてこれに対抗する。魔法文明はガラスを使いこなす種族。ジンの能力により、機械文明の兵士達は生きたままがラスの柱に閉じこめられてしまった。

 魔法文明が有利に戦いを進めていたが、機械兵の切り札で戦況が一変する。ドリルを振り立て進んでくる、街と同じくらいに大きいカニ型ロボットの登場である。カニ型ロボットは宮崎駿のアニメ作品に登場するような、どこかユーモラスでありながらも、その圧倒的な力を感じさせる「恐ろしさ」を身にまとってゆっくりと前に進んでくる。

 体中からミサイルを打ち出すカニ型ロボット。その猛攻に、炎を上げがらがらと崩れていく魔法都市。絶体絶命の状況に天空より救い手が現れる。透き通る羽を持つ「グラスドラゴン」である。ドラゴンはカニロボットの前でホバリング、ドラゴンの前に体の色と同じ青白い光球が生まれる。

 その光の球は徐々に大きくなっていき、カニロボットにたたきつけられると一瞬にしてロボットは粉々に吹っ飛んだ。デモプレイは勝利を祝い砂漠の中を行進していく魔法軍の映像で幕を閉じた。

 そのグラフィックには本当に驚かされた。緻密なのはもちろんだが、「ビンチ」の街の歯車やシリンダーの一つ一つにまで込められたデザインのこだわり、大型砲に巨大砲弾をつめるといった、大げさすぎる仕掛け、歯車と金属というローテクノロジー風の部品を使って、SF映画に出てきそうな未来的デザインを汲み上げるセンスは独特の雰囲気を生み出している。

 魔法世界もまたグラフィック的な驚きが強い。特に驚かされたのはグラスドラゴンの翼の表現だ。透き通る皮膜が風を受け優美になびくその美しさは静止画ではなかなか伝わらないかもしれないが、そのなめらかな動きは驚きを感じずにはいられないだろう。

 今回出展されたバージョンは、まだまだゲーム本来の流れを忠実に説明できるものではなく、デモンストレーション要素が強い映像作品的なもので、RoLの本当の姿が見えてくるのはまだこれからという印象を持った。まだ明らかにされていないこの二つの国家以外の勢力も楽しみである。どんなアイデアが詰め込まれ、どんなユニットが登場するのだろうか?

境界線で仕切られた世界マップ。この地図は一場面で、スクロールさせるとさらに広い世界が広がっている 敵国の巨大砲台。こういう大げさな兵器が登場するのも本作の魅力だろう 中央の卵形コクピットを持つのがヒーローユニット。強力な範囲攻撃が可能だ
都市を建設。街をブロックのように組み上げていく楽しさがある 飛行ユニット。ダビンチのスケッチの中にあった渦巻き型のローターで飛んでいる 重爆撃機による攻撃。圧倒的な破壊力だ
敵をガラスの柱に閉じこめる魔法軍のヒーロー達 カニ型戦車が街を破壊する。壊れる破片は物理エンジンにより落下する グラスドラゴンの攻撃。羽根の描写が特に美しい


●リードデザイナー ブライアン レイノルズ氏インタビュー
独自の世界観の創造は、宮崎アニメに鼓舞された部分も

編: 前作「ライズ オブ ネイション ~民族の興亡~」は歴史的なものをテーマとしていましたが、今回は全く違う架空の文明をテーマにしたのですね。

レイノルズ氏: 今回はファンタジー世界をテーマにしています。ファンタジーといってもゴブリンが登場するような古い古い形の「ハイ ファンタジー」はすでにカバーされ尽くしていると感じていました。今回はそういったものとは異なる形で表現したいと思っています。

 僕は魔法というのも1つのテクノロジーだと思うんですね。そこから機械文明と魔法文明という異なる進化を遂げた魔法文明が出会うという場面を設定して作りました。魔法文明と、現代とは異なる進化を遂げた機械文明、グラフィックによる驚きと共に、この設定をゲームに活かして、プレイの驚きも与えていきたいと思っています。

編: 文明は何種類登場するのでしょうか?

レイノルズ氏: 4つの勢力が登場します。機械文明が2つと、魔法文明が2つ、今回紹介したのは機械と魔法それぞれ1つずつで他に2つの文明が存在します。見た目はもちろんプレイ感もまったく違うものになりますよ。まだ細かいことはお話しできませんが。この作品は2006年の早い段階に完成させる予定です。

編: 見せていただいた部分で、特に機械文明が「宮崎駿」のアニメ作品の影響を受けているように感じたのですが?

レイノルズ氏: その通りです。「天空の城 ラピュタ」をはじめとして、確かに彼の作品に鼓舞されて制作している部分があります。宮崎氏自身もジョナサン・スウィフト(ガリバー旅行記の作者)の影響を受けて作っていると思いますが。

編: 今回、魔法とテクノロジーの対比というテーマを選ばれたのはどうしてなのでしょうか?

レイノルズ氏: まず私達の中に「ファンタジーなゲームを作ってみたい」欲求があって、さらに新しい、全く違うトピックを使っていきたいと考えました。「歴史」にこだわるとイメージや文明、ルールがある程度縛られてしまう。そこから解き放たれて自由に自分たちの想像力を活かせるものを作りたかったのです。

 それと同時に目で見てはっきりと違いが分かるような特徴を持った国家を作っていきたい、と考えました。プレーヤー達が非常に楽しみ、かつ興奮してくれるような特徴のあるユニットを作っていき、ゲームプレイを楽しんでもらいたかった。今回の作品は、まず焦点にしたのはグラフィックスです。これは非常に重要な要素になっています。

編: デモプレイではプレーヤーは大きな勢力を持っているように見えましたが、通常のゲームプレイでは小さな勢力からどんどん成長していく、という流れになるのでしょうか? また、文明はゲームが進むことで進化をしていくのですか?

レイノルズ氏: 最初戦略マップはいくつもの勢力をあらわす多数の色で塗り分けられています。ゲームが進むごとに勢力の強い色は大きくその版図を広げていく展開になります。将来的にはマルチプレイにも必ず対応していきます。オンラインでの対戦プレイが楽しめるようになります。

 文明は進化はしません。ゲームを進めていくと共にプレーヤーはいくつもの街を持ち、大規模な部隊や多くのヒーローユニットを自軍に加えることができるようになりますが、文明が進化するという描写は行なっていません。

編: 「ROL」ではゲームシステムの部分で革新的な試みをなさる予定はありますか? どのようなアイデアがあるでしょうか?

レイノルズ氏: まず新しい物理エンジンとグラフィックエンジンを組み込み、ゲームの演出面を強化しています。光と影の描写やものが壊れる様など、視覚的な衝撃を与える映像を実現しました。

 ゲームのルールやシステム自体はコアプレーヤーから初心者まで楽しめるRTSとしてオーソドックスなゲームルールを目指していきます。オンライン対戦も多くの人に親しんでもらえるように我々としても十分に検討し作っていきたいと思っています。  この他にもプレーヤーを驚かせるようなシステムや仕掛けなども考えていますが、どのアイデアを使うかはまだお話しできないですね。

編: 最後に日本のプレーヤーへのメッセージをお願いします。

レイノルズ氏: 僕らの作った「Rise of Nations: Rise of Legends 」を楽しんでもらいたいと思います。このゲームは魔法とテクノロジーの融合した世界で非常にエキサイティングなゲームとなっています。また、僕らが作り出そうとしている世界を表現するのにすばらしいグラフィックでそれを見事に表現することができました。この作品は「Rise of Nations」シリーズにひと味違う流れをもたらす作品です。是非プレイしてみてください。

編: ありがとうございました。

【スクリーンショット】

□Microsoft Games Studiosのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
□関連情報
【5月19日】Microsoftブースレポート PCプラットフォーム編
エピックスケールで展開される2つの次世代RTSに要注目
「Age of Empires III」、「Rise of Nations: Rise of Legend」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050519/e3_mspc.htm

(2005年5月22日)

[Reported by 勝田哲也]


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