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会場:Los Angeles Convention Center
今回の発表に関しては、翌日のQ&Aセッションの会場で「FF XI」の欧米展開をプロデュースしているSage Sundi氏と雑談を交わした際、「びっくりしたでしょ?」とニンマリされてしまったぐらい、完全に寝耳に水の事態で、MMORPGで唯一マルチプラットフォーム展開を果たしているスクウェア・エニックスらしい次の1手といえる。 インタビューに応じて頂いたのは、「ファイナルファンタジー XI」プロデューサー田中弘道氏と、欧米担当のSage Sundi氏の両名。インタビュー当日、指定のミーティングルームに入ると、奥のプラズマモニタには、すでにXbox 360の実機(ベータキット)によるリアルタイム映像が映し出されており、手元で操作しながらデモを見せられ、2度驚かされた。残念ながら撮影禁止ということなので、その映像は紹介できないが、インタビューはそうした状況下で行なわれているということを踏まえた上で読み進めてみていただきたい。 今回は、当初の予定を大幅に変更して、Xbox 360版の内容をメインに話を伺ったが、もちろん、Xbox 360版の話だけでなく、ヴァナ・ディールの今後についても確認してきたので、FF XIユーザーはぜひ一読いただきたい。
■ Xbox 360への移植による今後の進化の方向性とは!?
はい。Xbox 360で実際に日本のテストワールドにログインしています。公開ワールドに繋ぐことも可能なはずです。すでにあらかた動いていますが、今後最適化やサウンド関係などを調整していきます。やはり規模が大きいので、実際に全体を順々に検証していき、Xbox 360版の発売までにはβテストを開始できるようにしたいと思います。 ――開発は思ったより難しくない印象ですか? もともと「ファイナルファンタジー XI」に関してはWindows版がありますから、そこからXbox 360への移植は比較的容易でした。また、従来からプレイステーション 2版とWindows版の両方で並行して開発していますので、それが3プラットフォームに広がったという感じです。 ――Xbox 360版の解像度はどれぐらいまでに対応していますか? 最高解像度は1,280×720ドットです。 ――たとえばジュノの混雑による処理負荷の重さなどが劇的に改善されたりということはありますか? Xbox 360は表示できるポリゴン数が飛躍的に多いので、ひょっとすると改善される可能性がありますが、今はまだ細かく調整している最中です。たとえば混雑したエリアなどにいる数百人のキャラクタを物理的には全員同時に表示できるとしても、実際にはHDDからのデータの読み込み速度や通信、キャラ同士の当たり判定といったいろいろな処理速度などの問題があるので、まだわかりません。 ――テクスチャーの解像度はPC版と同じですか? そうですね。Xbox 360専用のテクスチャーを新たに用意することはない予定です。 現状のWindows版などと同じような見え方になると思います。ノーマルマップなど次世代の技術で作りなおすと、今ある要素をすべて別途作り起こさねばならなくなり、かなりの開発時間がかかってしまい、他機種の今後のバージョンアップにも影響がでてきてしまうので、現状のバージョンアップペースを崩さないようにしていくつもりです。 ――その他のベースはWindows版と同じでしょうか? Windows版と違う所はIntelのチップかPower PCかというところです。そこでのデータの型の持ち方の違いがあり、それを全部直していかなければならないので全体の検証に少し時間がかかります。 ――開発期間はどれぐらい? 今年に入ってからXbox 360の話がありました。Xbox 360版の開発をスタートしたのは結構最近で、数カ月でここまでできました。 ――そんなにPCとの親和性は高いのですか? 元々DirectXを開発しているMicrosoftが提供しているハードなので、Windows版のゲームからはかなり移植しやすいと思います。ただXbox 360などの次世代機というのは、現行機からの移植をメインとするハードではなく、ハイテクの映像がメインの、新しい物をつくっていくというハードという気がしますので、そういう意味では今回の「ファイナルファンタジー XI」は、クロスプラットフォームのMMORPGならではの異質な存在かもしれませんね。 ――北米はPS2とWindows版が存在しますが、Xbox 360版への何か乗り換えのメリットというのはありますか? Windows版と比べると大きな違いはないですが、強いて言うのであれば、Xbox LIVE側の機能も使えるという点でしょうか?またWindows版をプレイする場所として、リビングなどにPCを置くことに抵抗がある人も多いと思いますが、次世代家庭用機であればWindows版と同じ様な高解像度で、居間のハイビジョンテレビを使ってのプレイが可能になります。特に大画面のハイビジョンディスプレイでプレイすると、なかなか元の環境には戻りたくなくなるかもしれません。また、まだ値段がわかりませんが、同じ性能のPCより価格的に有利なのではないでしょうか? ――Xbox 360版では、ゲームコントローラが変わるわけですが、操作方法などのプレイ感触はPS2版と同じと考えていいのでしょうか? 実は、「ファイナルファンタジーXI」の最初のリリース前にも現行のXbox版を開発はしていたのです。そこでコントローラのことについてはマイクロソフトさんとはかなり細かく話していました。その時にプレイステーション 2とXboxコントローラとの互換性について、最低でもボタン数などが同じになるようにマイクロソフトさんにもお願いしていましたし、こちらもユーザーインターフェイスの設計にXboxコントローラでの操作も含んで設計していました。しかし、最終的にXbox LIVEはクローズドなサービスという事になりまして、PlayOnlineのクロスプラットフォームという環境を前提としたサービスは、実現しませんでした。 ――なるほど、以前のXbox版を作っていた事もあって、今回のXbox 360への移植は簡単に行なえているという事でしょうか? 当時開発中だったものはXbox版の開発自体が中止した際に廃棄したので、流用はありません。今回は純粋に現行のWindows版からの移植ということになります。 ――日本での展開はどのように考えていますか? 欧米と同じように、プレイステーション 2、PCそしてXbox 360という新しい選択肢のひとつとして提供していくのでしょうか? 今回の発表で、北米向けという印象があると思いますが、今回はE3で発表したというだけであって、もちろん日本でも他の場所でも、Xbox 360が出るところには、全て提供していくという考えです。「ファイナルファンタジー XI」は、全世界で共通の日本にあるワールドサーバーにアクセスしてもらっているのですが、バージョンアップのタイミングも全プラットフォーム全世界同時となっています。 ――プロデューサーとして、新たな選択肢が増えたことをどのように捉えていますか? これまで「ファイナルファンタジーXI」を運営してきてわかった事ですが、サービス対象地域の増加や、新しい対象ハードを追加するという変化によって、段階的に大きくユーザー数が増えてきました。それ以外のタイミングでは、ユーザー数が大きく変化することがなく、ほぼ安定しています。今回のXbox 360版の発売で、新たに始めるユーザーが増えることを期待しています。 ――最近ですと、ゲーム内で大人数とかでやるコンテンツが増えてますが、そのようなコンテンツがよりやりやすくなる感じですか? CPUやメモリの使い方についてはいかがでしょう? Xbox 360ではCPUの性能も上がるので、現在プレイステーション 2や比較的低速なPCでの処理負荷の重さなどは多少改善される可能性があります。従来の重くなる原因というのがエフェクトや、大人数が一箇所に一緒にいる事でキャラ同士の当たり判定が鼠算式に増えるための処理などが一番影響があるので、CPUの処理速度が処理負荷にはかなり影響があります。現在のハードではVRAMなどのメモリの少なさも一因ではありますが、グラフィックチップの性能部分での負荷よりも、圧倒的にCPUが追いついていない状況だと思います。ただ、CPUの性能があがったとしても他機種のユーザー同様、最終的にはサーバーとの通信速度には制限がかかっていますので、別のボトルネックが発生し、Xbox 360版のユーザーだけが有利になるということは無いと思います。 また、メモリ容量512MBというのは、プレイステーション 2と比べるとかなり余裕はありますが、ハイスペックのPCを使っているユーザーさんのマシンに比べたらまだ少ないのかも知れませんね。映像が高精細になっていけば、必要なメモリー容量も膨大になっていきますので、いくらあっても十分ということはありません。 ――グラフィックスの仕様はPCと同じですか? そうですね。Windows版は元々バンプマッピングには対応してますので、これと同じような見え方になると思います。今後リリースまでの間に多少色をつけてみたりすることはあるかも? ――ほうほう、“色”といいますと? 要するに、Windows版にはなかったプラスアルファの機能ということですね。まだどういったものかは見えていませんが。ただし現行版とあまりに違うものを実装するということにはならないと思います。 たとえば、いままではバンプマップでしたが、次世代の技術の花形はノーマルマップなどの技術かもしれません。その機能を「ファイナルファンタジー XI」でやるには、全てのキャラクタを作り直さなければいけません。それを今やってしまうと膨大な時間もかかり他の機種のバージョンアップに影響がでてしまいます。開発力に余力があればそのようなリメイクも本当はやっていきたいのですが、現時点では、その余力があったら次のタイトルの開発に費やしたいと思っています。ノーマルマップなどの次世代の技術は、マイクロソフトXbox 360のカンファレスで「ファイナルファンタジーXI」の発表と同時にお見せした、将来のMMORPGの技術デモとしてのコンセプト映像がありますが、そちらの方で使っています。 ――あのデモの映像は、未来の「ファイナルファンタジーXI」ですか? そのプロジェクトに関しては田中さんのチームが担当でしょうか。とすると、「ファイナルファンタジー XI-2」という捉え方でいいのですか? 「ファイナルファンタジー XI」ではないです。あのデモ映像を制作したのはXIの開発チームですが、この研究開発プロジェクトは、去年の9月からスタートしています。当時はまだXbox 360とかではなく、ただ次世代機や将来の高性能なPCをターゲットに、表現方法などの技術研究開発をしていたのです。それが将来「ファイナルファンタジー XI」とどういった関係になるかなどはまだまったく決まっていません。また、あの映像をそのまま次のタイトルに使おうといった事もまだ決まっていません。今回のものはXIとは全く違うコンセプトで出すことになるかもしれません。 ――あのデモは実はPCで動かしていたということはないのですか? いいえ、あれはXbox 360のベータキットで出力したものです。現時点でXbox 360の並の性能を持っているPCはあまりないので。もちろん、物理的にはPCで出すことも可能だとは思いますが、今回はXbox 360のほうが簡単にできたという事です。 ――それをサービスするとして形がみえるのは、2006年、2007年ぐらいでしょうか。 いやいや、まだまだ先です(笑)。今後、XIの運営やバージョンアップ、拡張版の開発などと並行して研究開発を進めながら、どのような方向性にしていくのかを決めていくことになると思います。 ――和田社長が「ファイナルファンタジー XI」のβテストを開始するのはXbox 360のローンチと同時と言っていましたが、内容的にはどんな感じですか? PlayOnlineや「ファイナルファンタジー XI」側については、すでに現行運営しているサービスなので、通信、ゲーム性の中身などのテストは必要ありません。Xbox 360版のβテストでは、Xbox Live経由でPlayOnlineに繋げるというところを検証していかなければなりません。βテスト専用のワールドサーバーをいくつか用意して、そこにXbox 360ユーザーに入ってもらってテストする、という感じです。 ――Xbox LiveとPlayOnlineとの関係についてですが、以前はプレイステーション 2版でも、PSBBを通らなければPlayOnlineにたどり着けませんでした。現在はDISC起動によって、ブロードバンドナビゲーターを通らずに直接PlayOnlineに行けるように変わりましたが、今回のXbox LIVEとPlayOnlienはどの様になりますか。 結局各プラットフォーム側でも色々なサービスがありますので、うまく調整していかなければなりません。ただXbox LiveとPlayOnlineは機能的に似てる部分もあります。これらの起動手順や各サービスの住み分けなどこれから決めていくことです。 ――方向性として、現在のプレイステーション 2版のように、Xbox LIVEは抜きにしたいですか? マイクロソフトさんの方針次第ですので私からはなんともいえません。ユーザーさんとしてはいかにすみやかに「ファイナルファンタジー XI」の世界に最短距離で繋げることができるかが重要だとは思いますが、もしそうなったとしても、Xbox 360のXbox Liveとしてのコミュニケーション機能などは、常にアクセスできる状態である必要があると思います。今後のXbox LIVEの新たな機能というのを、私たちは十分に聞いてないのでわかりません。Xbox LIVEからでも接続までにストレスなくボタンひとつで瞬時にすすめていければ、問題はないと思います。 ――Xbox LIVEはコミュニケーションありきというのが基本コンセプトです。Xbox LIVEを通した場合、本体を起動し、フレンドリストから、友達が何のゲームをプレイしているのかを見てから、ゲームを起動するというスタイルですが、これについてはどう思われますか? ご存知のようにPlayOnlineも全く同じコンセプトなのです。Xbox LIVEとPlayOnlineは現在離れていますが、マイクロソフトさんとも話をしながら、どう繋げていくのか決めていきたいです。 「ファイナルファンタジーXI」のユーザーさんの動向を見ると、まず先に何で遊ぶかが決まっている感じではありますね。長い間、XI以外のコンテンツがPlayOnlineには不足していたせいもあって、まず最初にヴァナ・ディールにログインした後で、フレンドリストを開いて友達が何をしているか見るといったプレイスタイルが定着しているように思います。ですからそこに至るまでの経路が長いと煩わしく感じてしまうのかも知れません。 ――Xbox 360はパッケージベースのビジネス展開になりますか? 当面はそうでしょうね。Xbox Liveには、発表にもあったようにダウンロード販売もあると思います。いずれはそれにも対応していきたいです。XIを開始したころにはコスト的に考えられませんでしたが、最近ではこのサイズでダウンロード販売といってもおかしくない時代になってきたので、そろそろやってもいいかなと思っています。 ただ、オールインワンパックのDVD-ROM1枚分をダウンロードというのはまだちょっと大きすぎると思います。その点では、まだディスクメディアのほうがメリットがあると思います。ただ、拡張版など少ない容量ならダウンロード販売も可能になりつつあるのではないかと思います。 ――Xbox 360の発売では「プロマシアの呪縛」までという事ですが。それは「プロマシア」までのセット版を販売するのでしょうか? それとも本編と拡張ディスクをひとつひとつを出していくのでしょうか? リリース形態など詳細はまだ決まっていません。
■ 「プロマシア呪縛」以後のヴァナ・ディール世界について
それは常にあります。完全だともうそれ以上バージョンアップする必要ないわけですから。MMORPGなどの継続性のあるオンラインゲームは、ずっと更新していく宿命をもっていると思ってます。 ――最近だと「ファイナルファンタジーXI」の開発についてプライオリティの高いものは何ですか? 先ずはプロマシアのストーリーの完結にむけてのストーリまわりがメインです。そして、プロマシア開発の前からずっと取り組んでいる事なのですが、こうしたストーリをクリアした後に、高レベルのプレーヤーが活動する場所を提供していくことですね。 ――それはENMクエストやバリスタといった横の広がりを意味してるわけでしょうか? 高レベル対策というのは、単純に75のレベルキャップを外すということではなく、それ以外での遊び方のバリエーションを増やしていくという方針です。 ――プロマシアの完結がいつになるのかは気になりますね。 既にプレイされている方はお気付きだと思いますが、かなりクライマックスに近づいていますのでそう遠くないでしょうね。最初にエンディングまでのシナリオを考えて作っているので、それをバージョンアップ時に完成した部分まで随時出していくという感じです。 ――プロマシアの次の拡張版はどのようになりますか? 次の拡張版は、プロマシアの発売と同時に開発を開始していますが、中身に付いてはまだ言えないです。発表時期はそう遠くない、いや、遠いかもしれないです(笑)。ユーザーとデベロッパーのタイムスパンの概念は違うものかもしれませんから。 ――その拡張版の開発はある程度進んでいますか? それについてはまだ何も言えません。Xbox 360の技術実験映像がありましたが、それに結構手が取られまして、一度今回のE3が終わってから整理して再度開発に取り組んでいこうと思っています。 ――話は変わりますが、Station Exchangeについてどのように捉えているのか意見を聞かせてください。 田中氏: これについてはEverQuest II日本版プロデューサーのSage Sundiから。 Sage Sundi氏: まず私は、ユーザー間での危険な状態での取引が発生し、被害者がでるのを防ぎたいと考えています。おそらくですが、不正な取引によって詐欺にあうユーザーが出てこないように、オフィシャルにそれを防ごうとしているのではないでしょうか。 ――他のメーカーからは「MMO史上最悪の決断だ」という意見も出ていますが。 Sage Sundi氏: それも考え方次第です。それでは、今の危険な状態を続けていくつもりなのか? と疑問に思いますね。韓国という市場があって、RMTがあるので。一番ベーシックなRMTというのはネットカフェでの直接売買なのです。しかし、やはりそれでは危ないから、ネットカフェのオーナーを通して、危険を回避していくという。そこは変わらないわけです。 ――スクウェア・エニックスは北京に子会社を作りましたが、これに関して「ファイナルファンタジー」やPlayOnlineのアジア展開はどのようになるか教えてください。 「ファイナルファンタジー」やPlayOnlineの中国進出については、常に話し合いを続けています。中国は特殊な環境なので、なかなか簡単にはいかない。中国では国の決まりでサーバーを中国国内に置かなければなりません。現在のところ、アジア展開はまだ何も決まっていません。 ――最後に「ファイナルファンタジーXI」のユーザーに向けてメッセージをお願いします。 次世代ハードへの対応により、「ファイナルファンタジーXI」にも新たなユーザーさんの参加の可能性が生まれてきました。これからもずっとプレーヤーの皆さんと一緒に新たな事を作っていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。 ――ありがとうございました。
□スクウェア・エニックスのホームページ (2005年5月22日) [Reported by 中村聖司]
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