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会場:Los Angeles Convention Center
出展されたタイトルは「Guild Wars」をはじめとしてほとんどが昨年と同じものであるが、グラフィック、システムともに完成度が格段に上がっているのに驚かされた。筆者は昨年もNC SOFTのブースを取材したのだが、比べてみればはっきりと違いがわかる。いよいよゲームとして具体的な姿を見せてきた、という実感を得ることができた。 その中で特に衝撃的だったのは、「Tabula Rasa」である。「ウルティマ オンライン」を生み出したリチャード ギャリオット氏が手がける新しいMMORPGとして注目を集める本作だが、昨年のバージョンでは氏がもつ独特のセンスを活かした奇妙な味わいのあるファンタジー的な世界観を持つ作品だったのだが、今年出展されたものは屈強な男達が火炎放射器やマシンガンを手に異星人の侵略に立ち向かう、というちょっと「冗談でしょ?」とツッコミを入れたくなるほどの変貌を遂げていたのである。 もちろんゲーム性はしっかりしており、冗談ではなく大まじめであることは分かるのだが、ゲームの完成度とは別にギャリオット氏の迷走ぶりも少し感じられた。以下、タイトルを紹介していこう。
●カジュアルなPvPシステムがアメリカで高い評価を受けた「Guild Wars」
昨年までのバージョンではフィールド、キャラクタともに色使いがきつく、殺伐とした雰囲気は良く出ていたがあまりにも“濃く”、少しプレーヤーを選びそうなセンスで作られていたのだが、正式稼働した今回のバージョンではフィールドが緻密に、かつ自然の表現を豊かにしており、好感を持った。はるかかなたの山からとうとうと水が流れている景色など演出も凝っていた。キャラクタを比較的小さくしていることで、縮尺として画面に表示されるフィールドが広くなる。フィールドを歩き風景を見て回る楽しさも体験できる作品である。 本作がアメリカで評価されたのはカジュアルなギルド対戦を実現させた点だという。プレーヤーは通常のプレイ用のキャラクタの他に、PvP専用のキャラクタを作ることができる。このPvP用キャラクタはいきなりキャラクタが最強の状態まで成長したものを作成できるのだ。このためプレーヤー達はキャラクタのスキルや役割、そして効率を考え組み合わせを行ない、戦うことができる。 「ラグナロク オンライン」の世界大会では、その場でキャラクタのカスタマイズを行ない戦っていたが、それをもっと大規模で行なおう、というベクトルもありそうだ。韓国産のMMORPGでは“キャラクタ育成”にかけた時間がそのままPvPの勝敗の結果につながる場合もあり、キャラクタの潜在能力を使いこなす事ができるというスキルと、そこまで育てる時間という2つの要素が必須だったのだが、そのハードルを大きく下げるユニークなアプローチである。 もっとも、その成長要素を取り外したからこそ純粋にプレーヤースキルと作戦の比べ合いになる。勝てるようになるためには仲間との連携などに時間をかける必要があるだろう。本作の方向性は「トーナメント」を積極的に行なっている事からもわかる。毎日のように最強のギルドを目指して対戦が行なわれている。その流れを積極的に運営側も支援をしているのである。 最強キャラクタを簡単に作ることができるが、プレーヤーはそのキャラクタでは「冒険」を楽しむことができない。さまざまなフィールドやモンスターと出会うためには1レベルから始まるキャラクタをこつこつ育てていくというMMORPGならではの楽しみも充分味わうことができるのである。この通常キャラクタももちろんPvPサーバーで使用することが可能だ。自分が育てたキャラクタはPvP専用キャラクタとはまったく違った思い入れを生むだろう。さまざまな要素を積極的に取り入れ、ユニークなアプローチをしている作品だ。
●MMORPGの手法でFPS的な戦いを描く「Tabula Rasa」
だったはずであるが、今年我々の前に姿を現した「Tabula Rasa」は巨大な昆虫を思わせる甲殻に身を包んだ巨大な多脚戦車に雄叫びを上げながら突進し、ロケットランチャーをぶち込むアクションシューティングゲームになっていたのである。筆者ならずともリチャード ギャリオット氏に何があったのか? と思わずにはいられないほどの変わりぶりである。 しかしギャリオット氏は「見た目は変わったように見えるが、ゲームの本質は全く変わっていないんだ」と、語る。武器が銃器になったものの、「侵略してくる異星人」と戦うというシチュエーションは同じだし、何よりも戦いの感触を変えていないのだという。 氏のゲームの説明を聞いてから試遊台でゲームをプレイするとなるほどと思う部分もある。街から戦いのフィールドへ移動する感覚や、ボイスチャットを通じて仲間達と声を掛け合いながら敵に立ち向かうところ、スピーディーな操作性……たしかに昨年のバージョンを受け継ぎ進化した作品であることを感じる部分はあった。 試遊台でのキャラクタは最初からマシンガンやロケットランチャー火炎放射器などの武器を持っており、その時々に合わせて使いこなす。武器にはリロード時間があるものの基本的に弾数は無限でばりばり戦っていける。バトルフィールドは縦が4kmで横幅が2kmほどの広大なものになり、最大で50人のプレーヤーが同時に戦うことができるようになる。このほかに400以上のNPCがプレーヤーが参加していなくても戦っているという。大人数が争う戦場に飛び込み、目的に向かって戦うというゲーム展開になる。 本作は3人称視点のアクションシューティングで感覚的にはFPSにちかいものがあるが、キャラクタの表示が小さめで広い範囲を見回すことができ、パーティープレイが容易になっている印象を受けた。試遊台ではスタッフのナビゲーターと共に戦ったのだが、片方が敵の注意を引きつけている間に攻撃を集中させたり、段差のある戦場をうまく移動し最適の攻撃のポジションを探したりと、仲間の動きを見ながら戦うという感覚は多人数プレイのアクションゲームといった感覚がある。MOタイプのゲームとも微妙に違う、なかなか爽快な戦いを実現させていた。 ロケットランチャーや火炎放射器など武器が具体的になった分、初めてのプレイでも状況に合わせて戦うことができたのはよかったが、個人的には前回のバージョンが持っていた優美な雰囲気が亡くなってしまったのは少し残念だった。プレイしてみると確かにゲームの根幹的な部分は変わってはいないのだが、見た目と雰囲気から受け取るイメージは全く別物であった。 正直なところここまでの変化を見せられると、この作品が正式サービス時にはどんなものになるかがまったく予想できない。MMORPGの手法による仲間との連携が楽しめ、FPS的な戦いの興奮が体験できた“現在”の「Tabula Rasa」。その真の姿とはどんなものになるのだろうか?
□NC Softのホームページ (2005年5月20日) [Reported by 勝田哲也]
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