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無線LANスポット開設、ユーザーのAPも使用可能!!
任天堂、岩田社長よりWiFiを利用した
無線通信サービスに関するコメントを独占掲載!!

GDC 2005で講演する岩田任天堂代表取締役社長
5月9日 発表



 ゲーム開発者向けカンファレンス「Game Developers Conference 2005」が現地時間の3月7日~11日の日程で開催されたことは記憶に新しい。このGDC 2005において、任天堂株式会社の岩田 聡代表取締役社長が3月10日に行なった基調講演「Heart of a Gamer」では、次世代機「Revolution」、そしてニンテンドーDS(DS)の無線LANに関する初公開の情報が明らかにされた。WiFiを利用した無線LAN機能を搭載する「Revolution」とDSが相互に接続できること。さらにDSの新規タイトルとして、「どうぶつの森DS(仮称)」が発表され、ワイヤレス機能を使って、シリーズ初の共同生活やチャットによるコミュニケーションが楽しめるというトピックが公開されたわけだ。

【どうぶつの森DS(仮称)】
DSのWiFi対応タイトルとして期待される「どうぶつの森DS(仮称)」


 そこで、GAME Watch編集部から任天堂に対していくつか質問を投げかけたところ、なんと岩田氏から直々に文書による回答が届けられた。そこで、その全文を公開するとともに、任天堂がWiFi(ここでは広義の無線LANの意味合いも含む)戦略をどのように考えているのかに迫っていきたいと思う。

 今回明らかになったこととしては、

  • インターネットを利用したDS同士の接続が可能になる
  • DSがシームレスで利用できる無線アクセスポイントの設置
  • ユーザーが用意したAP(アクセスポイント)を利用することもできる
  • WiFiサービス対応自社ソフトの月額課金はなし
という4点。では、その詳細をお伝えしよう。

■ シームレスに「つながる」ことが「nintendogs」の成功の秘訣

 GDCにおける私の基調講演の中で、DSでWiFi接続を積極的に推進していき、「どうぶつの森DS」をWiFi対応にすることや、「Revolution」にWiFi通信機能を標準搭載することなどをお話ししました。

 この講演を受けて、「任天堂もオンラインゲームに参入」というような見出しでの報道もなされたようです。しかし、任天堂は、いわゆる従来型のオンラインゲームを展開するつもりはありません。この機会に、任天堂のビジョンを少し詳しくお伝えしたいと思います。

 任天堂は、人とのコミュニケーションをゲームに取り入れることに、20年以上前から積極的に取り組んできました。ファミコンのコントローラは最初から2つ装備されており、最初のゲーム機から人と一緒に遊ぶことを意識していました。ニンテンドウ64からは、4つのコントローラポートを装備しました。携帯型の分野でも、初代のゲームボーイから2人のプレーヤーを通信ケーブルでつなぐことができ、GBAでは4人まで接続できるようになりました。「ポケットモンスターファイヤレッド」、「リーフグリーン」では、ワイヤレスアダプタにより、ケーブル不要の対戦や交換が可能になりました。さらに、DSではワイヤレス通信機能の標準搭載により、16人までのプレーヤーが同時プレイを楽しむことができ、ゲームシェアリング機能によりソフト1本で、充実した多人数プレイが楽しめるようになりました。このような機能を用いた目の前にいる人とのコミュニケーションへの試みは、これまでにさまざまな形で結実し、「ポケモン」の対戦や交換、「マリオカート」や「スマブラ」の4人対戦など、世界中に受け入れられる遊びを生み出してきたと自負しています。

 4月21日に発売した「nintendogs」では、人とのコミュニケーションとの新たな提案として、「すれちがい通信」を実現しました。電源を入れたまま画面を閉じたDSを持ち歩くと、自分の飼っている「nintendogs」の犬と、そばを通りかかった別の人の「nintendogs」の中の犬がいつの間にか行き来し、同時にメッセージやプレゼントも交換して、「見知らぬ「nintendogs」ユーザーとの新しい出会いが生まれる」という遊びです。開発チームの中にも「本当にこういう偶然の出会いが起こるほど、みんなに持って歩いて貰えるんだろうか?」と開発中に心配していた人がいたくらいでしたが、発売以来、このゴールデンウィークにかけて、現実に、たくさんの人達が、「nintendogs」で「すれちがい通信」を体験していただき、インターネットの掲示板やBlogでその体験が熱く語られているようです。「これまで、人混みは嫌だったけど、人混みの中に出かけるのが楽しみになった」と感じておられる人もいるようですし、「全く新しい体験として、人に話さずにはいられない」という気持ちになっておられる方もたくさんおられるようです。提案した側として、こうやって新しい体験に驚き、楽しんでいただけていることは、作り手冥利に尽きますし、大変ありがたいことだと感じています。

 これまで、我々が新しい提案をする上で意識してきたことは、「実際にできるだけ多くの人に手軽に楽しんでもらえるようにしよう」ということでした。面倒な設定をしなくてもすぐつながるし、経済的な負担も、心理的な負担もない、日頃経験している遊びと如何に地続きで、つなぎめなく(言い換えれば『シームレスに』)新しい通信を使った提案をするか、ということが、多くの人に参加していただく鍵だと考えて実践してきました。「すれちがい通信」というチャレンジが、既に多くの方々に支持され、楽しんでいただけている大きな理由は、「すれちがい通信設定をして持って歩くだけでよい」という、日頃の遊びから大きな障壁を越えることなくシームレスに参加できる仕組みにあります。もし、登録や申し込みが必要だったり、経済的な負担があったりしたら、決して今のような状態にはなっていないでしょう。

 任天堂の考える「人と人とのつながり」を実現するために必要なことは、「なるべく手間がかからない、できれば0ステップで」、「料金も無料」という2つの要素。「nintendogs」はそれを具体的に実現したからこそ評価されており、開発スタッフもほっとしていることが伺えるが、発売前には不安もあったようだ。

 そして、任天堂はWiFi(無線通信)を使った次のステップをDS、「Revolution」で用意しているという。


■ 販売店に無料アクセスポイント設置、さらにユーザーが自宅からサービスに参加可能な無線LANを使ったサービスを展開!

 さて、このように、目の前にいる人達とのコミュニケーションを幅広いユーザーの皆様が楽しめるように段階的に広げてきた我々が、次の段階で目指すべきことは、離れた場所にいる人達とのコミュニケーションを可能にし、世界中の幅広いユーザーの皆様に楽しんでいただくことです。

 任天堂は、自分たちのゲームをWiFi接続対応にするならば、究極としては、我々のWiFi対応ゲームを遊んで下さる全ての方々に、最低一度はWiFi接続による遊びを体験していただきたい、そんな野望を持っています。

 これは、決して低いハードルではありませんが、「すれちがい通信」がそうであったように、真面目に可能性を追求して、シームレスなサービスを提供する上での障害を1つ1つ取り除いていけば、必ずチャンスはあるはずだと信じています。

 実は、我々は、かつて、何度かのチャレンジでの失敗からいろいろなことを学んでいます。任天堂は、'88年には、ファミコンを電話とつなぎ、通信ネットワークに業界で最初にチャレンジしていますし、衛星放送を使ったデータ放送事業や、携帯電話を使ったモバイルサービスにも、チャレンジしています。それらの経験で我々が学んだのは、日頃経験している遊びとシームレスにつながっていないと、参加していただけるお客様が大きく減ってしまう、言い換えれば「接続体験比率=接続サービスの体験者/ゲームの販売数」が低くなってしまう、という事実でした。上記と比較すれば、相対的には決して大きな障壁ではありませんが、「2人用ゲームを遊ぶには通信ケーブルが必要です」ということだけでも、2人でゲームを楽しんでいただく大きな障壁になるのが、我々の娯楽商品の特徴です。このため、DSでは、極力必要なものを最初から内蔵して、ケーブルなしで無線の通信ができるようにしたり、マイクやタッチパネルなどのデバイスを最初から搭載したりして、新しい遊びの提案をするための障壁を取り除いてきました。

 任天堂は、目の前にいる友人とゲームを楽しむのと全く同じように、シームレスに距離の壁を越えて世界中の友達とゲームを楽しめる、「世界で一番たくさんの人達が参加できる仕組み」を作り出したいと真剣に考え続けてきました。それが、任天堂のWiFiサービス(正式名称はE3で発表します)のコンセプトです。

 実際に目の前にいる人達との遊びがシームレスに広がったように感じられる仕組みを提供するために、任天堂は、以下のような誰でも簡単に、そして安心して使えるサービスを提供します。

  • 全国の販売店にDSユーザーが無料で利用できるアクセスポイント(WiFi接続による無線通信基地)を展開します。(現時点では、1,000カ所規模を予定しています。) これにより、自宅に常時接続のインターネットを接続していない人達にも新しいサービスを無料で体験していただくことができるようにします。

  • ニンテンドーDSは、WiFi互換の通信機能を標準で搭載していますので、物理的な接続の手間は必要ありません。無線LAN接続は、設定が煩わしくなりがちですが、そのための入力や設定をほとんど行わずにすむようにして、目の前にいる人とワイヤレス対戦を楽しむのと同じ感覚で、特別な意識をすることなく、ネットワークに接続できるような仕組みを提供していきます。特に任天堂が提供するアクセスポイント経由で接続する際は、設定の手間は皆無です。

  • もちろん、自分の家に常時接続のインターネットがあれば、それも利用できます。その場合には接続のためにWiFi対応のルーターが必要であり、かつ、多少の設定が必要となりますが、当社が推奨するルーターが導入されている場合には、特に設定も簡単になります。

  • 任天堂は、この仕組みを普及させるために、ニンテンドーDSのすべての任天堂のWiFiサービス対応自社ソフトの月額課金をしないことにしました。上記の店頭のアクセスポイント提供と併せて、ユーザーの皆様にネットワークにつないで遊ぶための経済負担の一切ないサービスを提供して、この仕組みの普及を図っていきます。

  • ただし、ソフトメーカーさんの多彩なビジネスの可能性を閉じることのないように、月額課金を禁止するという考えはありません。もちろん、「自分の知らないところで、課金されるのではないか」というような不安がないような仕組みを構築していきます。
 そして何より大切なことは、実際に目の前にいる人達との遊びがシームレスに広がったように感じられる仕組みの実現です。誰でも、自分が知らない人の集団に参加することには、多少なりとも心理的な抵抗があるものです。「どんな人なのかも判らないのに、一緒に遊んで楽しめるのだろうか」、「初心者の自分が入っていくとバカにされるのではないか」という心配をする方も少なくないでしょう。誰もが安心して参加できる仕組みの実現なくして、シームレスなサービスが実現できたとは言えません。

 そこで、実際に出会ったことのある、実世界の友人同士だけがつながる仕組みを提供することにしました。気心の知れた人と緊張せずに楽しめる、ちょうど、お互いの家に遊びに行って一緒にゲームを楽しむのと同じように、離れた場所にいてもゲームが楽しめる仕組みを提供していきます。我々の目指すサービスの姿は、「ホームパーティに友人を招くようにゲームを楽しむ」、「離れていても友達と一緒にゲームを楽しめる」、「将来的には、友人がその友人を紹介して仲間が増えていく」、「ゲームに時間とエネルギーをたくさんかけられる人達だけでなく、誰にでも楽しめる新しい世界を作る」というものです。

 世界で最もたくさんの人が参加できる仕組みを作る。それが、任天堂のWiFiサービスの目指すものなのです。

 任天堂は、このWiFi接続サービスを、積極的に展開していきますので、ご期待下さい。

 ファミコンの2つのコントローラから、ゲームボーイの赤外線通信、そしてゲームボーイアドバンスの通信ケーブル、無線アダプタと任天堂のコミュニケーションに対するチャレンジから得られたノウハウを元に、「さらに気軽に楽しめる」=接続体験比率の向上を目指した新たな試み、それが販売店でのアクセスポイント設置、ユーザーの無線LANアクセスポイントの利用、そして、自社ソフトの月額課金無料というプランだ。

 追加投資を行なう必要もなく、さらに対応ソフトを購入するだけでアクセスできるこの新しいWiFi接続プラン、これなら、とりあえず説明書を読む程度で誰もが無線通信を体験できる。しかも、インターネットを経由しての通信プレイに対し、ついに任天堂が磐石の態勢を持って乗り込んできたわけだ。

 また、この「インターネットを介したDS同士の通信」に関しては、IEEE802.11規格にのっとった形で、DSにすでにハードウェア、ソフトウェアともに実装されている。今までの「ピクトチャット」などでは、通信に関しては独自プロトコルで行なっていたが、今回の新規サービスに関しては、IEEE 802.11による通信関連機能をゲームソフトから呼び出して使用する形で対応するという。プレーヤー側から見ると、DSに対応ソフトを追加するだけで、WEP設定などの複雑な手順をすべてソフト側で処理してくれることになる。このサービスは、「シームレスなつながり」を実現するための任天堂の考えが実現されているわけだ。

 これが「Revolution」を巻き込んで、どんな発展を遂げていくのか、今後の任天堂の動きには目が放せないといえるだろう。

(C) 2005 NINTENDO

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【3月11日】Game Developers Conference 2005現地レポート
任天堂岩田聡氏基調講演「Heart of a Gamer」
E3に先駆けて次世代機“Revolution”の基本仕様を公開!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050311/gdc_iwa.htm

(2005年5月9日)

[Reported by 佐伯憲司]


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