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Game Developers Conference 2005現地レポート

任天堂岩田聡氏基調講演「Heart of a Gamer」
E3に先駆けて次世代機“Revolution”の基本仕様を公開
RevolutionはGameCubeとの互換性を維持、無線LAN機能搭載など

3月7日~11日開催(現地時間)

会場:Moscone West Convention Center

 GDC4日目の3月10日は、先日のMicrosoft副社長兼XNAチーフアーキテクトJ Allard氏に続いて、2人目の基調講演が行なわれた。講演者は、既報のように任天堂代表取締役社長岩田聡氏。今回の基調講演では、岩田氏のキャリアの大部分を占めるクリエイターとしての立場、そしてゲーマーとしての立場から、ゲーム産業がこれから取るべき道筋について語った。

 講演後半には、ニンテンドーDSの次期戦略として日本未発売のタイトルをデモンストレーションしただけでなく、E3での公開が予定されている次世代機Revolutionの基本仕様と戦略についても言及するなど、E3前哨戦とも言うべき内容だった。それではまずは注目のRevolution情報から紹介していこう。


■ Revolutionはゲームキューブとの互換性を維持し、無線LAN機能をサポート

任天堂の次世代機“Revolution”。プロセッサとグラフィックスチップを提供するIBMとATIのロゴが掲げられている
 Revolutionについてまず簡単に触れておくと、任天堂が2004年6月に開催した経営戦略発表会において、初めてその存在を明かした次世代機のコードネーム。ニンテンドーDSと同様に新しいインタラクティブエンターテインメントの提供を基本コンセプトに、IBMとATIをパートナーにして、E3での正式発表に向けて現在開発が進められている。

 岩田氏は、今回Revolutionの基本的な方向性として3つのキーワード「Backward Compatible」、「WiFi Enable」、「Ease of Development」を示した。「Backward Compatible」とは、現行機ニンテンドーゲームキューブのソフトウェア資産がそのままRevolutionで活用できるという互換性を維持し、WiFi EnableとはWiFiを利用した無線LAN機能を搭載することを指している。最後の「Ease of Development」は、開発が容易な設計になっていることを示す。

 いずれも具体的なプランや仕様については言及を避けたが、互換の確保については、携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」シリーズを通じて維持してきた任天堂が、ついに据え置き型ゲーム機でもその機能を盛り込むということになる。

 一方、無線LAN機能については、無限のポテンシャルを感じさせる要素だが、問題は落としどころ。現時点で確実なのは、Revolutionがその基本コンセプトをニンテンドーDSの同一線上においていることから、RevolutionとニンテンドーDSが相互に繋がることと考えていいだろう。これはニンテンドーゲームキューブとゲームボーイアドバンスの相互接続関係を受け継ぐもので、RevolutionとニンテンドーDSではこれが無線接続になり、大前提としてニンテンドーDSに実装されたタッチパネルやボイス機能といった要素は、そのままRevolutionにも使えるということになるだろう。

 あとは無線ルータを介した外部との接続の可能性。これは言い換えればオンラインゲームに対するメーカーとしてのサポート体制をどこまで整えるかということになるが、今回の講演ではそれに関連した発表はまったくなかった。ディテールに関してはE3での公開を待つ必要がありそうだ。

【Revolution】
提示された3つのキーワード。「Backward Compatible」と「WiFi Enable」は、完全に初公開の情報。E3ではさらに何が発表されるのか楽しみだ


■ 基調講演「Heart of a Gamer(ゲーマーの心)」

昨日に続いて超満席となった基調講演会場
若かりし頃の岩田氏の写真。なかなか見られない1枚である
 さて、盛大な拍手に迎えられて壇上に上がった岩田氏は、名刺を掲げつつ「私はコーポレートプレジデントです。頭脳はゲームデベロッパー、しかし心はゲーマーです」と挨拶し、開発者がひしめく観客席から大きな歓迎の拍手を受けた。続いて、'78年の東京工業大学工学科入学を皮切りに、自身の経歴をジョークを交えながら紹介した。

 当時からゲームプログラムが好きだったが誰も教える人がいなかったことや、秋葉原に毎晩入り浸ったエピソードなどを披露。'84年に入社したHAL研究所では、「ピンボール」や「カービー」、「MOTHER2」といったタイトルの開発に携わったことなどを紹介した。

 改めて岩田氏の経歴を眺めると、今更ながらそのタイミングの絶妙さと華麗さに驚かされる。ファミコンの登場とほぼ同時期にゲーム業界に入り、2002年の「ポケモンミニ」で現場を退くまで一貫して開発畑を歩んできている。任天堂の場合、横井軍平氏と宮本茂氏という2人の偉大なクリエイターの存在が大きすぎて、岩田氏の実績は影に隠れてしまっているところがあるが、ゲームプログラマ、ディレクター、プロデューサーとして、すでに十分すぎるほどの実績と経験を積んできているゲームクリエイターである。

 続いて岩田氏は、過去20年間の経験として、Emotion、Challenge&Reward、Ideas、Franchisesの4つをキーワードに、任天堂の取り組みを紹介。要旨は「任天堂はすべてのユーザー、あらゆるスキルレベルのゲーマーを対象にした創造性のあるゲームを提供していく」ということで、発言内容そのものは過去の基調講演などでも再三出てきている話である。

 最近の任天堂のゲームは、どちらかというとライトユーザーを強く意識した作品が多い印象があるが、岩田氏はコアゲーマーのためのゲームの代表格として、「メトロイドプライム」、「Resident Evil 4 (バイオハザード4) 」を紹介。続いて現在ニンテンドーゲームキューブ向けに開発が進められている「ゼルダの伝説」のリアルタイム映像を公開。場内は大いに盛り上がった。

【岩田氏の代表作】
岩田氏が開発に携わったタイトルの一部。「ピンボール」、「カービィ」、「MOTHER 2」

【ゼルダの伝説】
公開された「ゼルダの伝説」の映像。昨年のE3とはまた異なる映像で、ゲームとしての完成度も格段に向上している印象を受けた。岩田氏の断言どおり、ハードコアゲーマーも満足できる内容になりそうだ

誕生日の近い人を壇上に集め、「マリオカート」による即席の無線LAN対戦が行なわれた
自機ばかり狙われて苦笑する岩田氏。実に楽しそうにプレイしていた
 その後、岩田氏は、「Innovation」、「Intuitive」、「Inviting」、「Interface」という4つのキーワードを使って、今後のゲームソフト開発への指針を示した。これはいうまでもなくニンテンドーDSで任天堂が示した新たなインタラクティブエンターテインメントそのものを指している。

 ニンテンドーDSについて岩田氏は、今日までに日米で400万台を出荷し、ヨーロッパでは明日(3月11日)発売予定と報告。ニンテンドーDSが実現した新たなゲーム性の提案として、タッチスクリーン、デュアルスクリーン、ボイス、ワイヤレスの4つの項目を取り上げ、それぞれ自社タイトルを用いて実例が紹介された。

 中でも収穫だったのはDS版「どうぶつの森」が初公開されたことだ。実機を使ってデモンストレーションが行なわれたが、DS版ではワイヤレス機能を使ってシリーズ初の共同生活やチャットによるコミュニケーションが楽しめるようだ。これは日本でも大きな起爆剤になるかもしれない。

 そのほか日本でも発売間近の「nintendogs」と「エレクトロプランクトン」も紹介された。中でも「nintendogs」の反応は上々で、ボイス機能を使ってお座りさせたり、タッチペンを動かして、ペットを撫でたり、洗ったり、シャワーを掛けたりといったインタラクティブアクションの実演シーンでは、大きな歓声が聞かれた。

 ニンテンドーDSに関しては、意外なほど紹介に力が入れられ、約20分かけてハード、ソフトの両面からたっぷり紹介された。取り上げられたタイトルは、デモンストレーションが行なわれただけでも4タイトルもあり、本格的な展開はむしろこれからだと言わんばかりの熱の入れようだった。

 岩田氏が強調していたのは、DSのシンプルかつシームレスなインターフェイス。これは任天堂が最初に言い出したことではなく、ウィル・ライトやピーター・モリニューといったクリエイターが自社タイトルで数年前から実践してきていることだが、任天堂の凄さはこれをプラットフォームレベルで提案してしまうチャレンジ精神だろう。

 講演ではこのあとRevolutionの紹介に移り、場内はいよいよ盛り上がった。任天堂は据え置き型ゲーム機では3番手に甘んじている状態だが、今回の講演は、次世代機とニンテンドーDSのコラボレーションによる反攻を予感させる内容だったといえる。

【ニンテンドーDS版「どうぶつの森」】
初公開されたニンテンドーDS版「どうぶつの森」。任天堂タイトルの中では無線LANにもっとも適した作品といえる

【nintendogs】
タッチパネルやボイスによる犬とのコミュニケーションが楽しめる「nintendogs」。宮本茂氏が今回GDCに来られなかった理由のひとつだという

【エレクトロプランクトン】
メディアアートという新ジャンルのゲーム「エレクトロプランクトン」。タイミングよく音を拾ってその反応を楽しんだり、ボイスを使って4音の曲を作ってみたりと、これもまたDSならではの作品だ

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/

(2005年3月11日)

[Reported by 中村聖司]


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