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【編集部より】

発売日から日が経ってもまだまだ売れ続けるソフト、売れ続けてほしいソフト……そんなライターの思いを込めたレビューを「発掘レビュー」としてお届けします。掛け値なしでオススメするこのレビュー、買い忘れていた人はぜひチェックしてみてください。

「ドラクエ」、「FF」両シリーズの世界観を巧みに融合
「ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリートSpecial」



 '91年にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された初代「いただきストリート」(以下、「いたスト」)以来、根強い人気を誇るボードゲームのシリーズ最新作。すごろくのようにダイス(サイコロ)を振って出た目の数だけキャラクタを進め、途中のマスにある店を購入して他のプレーヤーにお金を振り込ませたり、株に投資するなどして資産を増やし、総資産額が目標値を超えた後にスタート地点の「ぎんこう城」にたどり着けば勝ちとなるゲームだ。

 ゲームデザインは「ドラゴンクエスト」(以下、「ドラクエ」)でおなじみの堀井雄二氏。さらに本作品は「ドラクエ」および「ファイナルファンタジー」(以下、「FF」)というスクウェア・エニックスの2大RPGシリーズのキャラクタがそろって登場する初のソフトでもある。

 本レビュー記事においては攻略云々の話ではなく、異なるタイトルのキャラクタ同士を競演させたことにより、これまでのシリーズ作品とどこが変わったのか、その結果どこが面白くなったのか、といった点に着目して検証していくことにする。

 なお、筆者はスーパーファミコン版の「いただきストリート2」以来、「いたスト」シリーズは久々のプレイになる。以下の記事に目を通される人は、このことを理解したうえで読んでいただければ幸いだ。


■ 基本システムに大きな変更点はなし。「ドラクエ」、「FF」のキャラクタを使った楽しいアイデアが満載!

 店を建てて他のプレーヤーの振り込みを誘い、さらに株に投資して儲けていくといったゲームの基本ルールは従来どおりの内容。同じエリアにある店を買い占めて増資を繰り返し、株の配当を得て大きな利益をあげるという定番のテクニックももちろんそのまま使える。過去の「いたスト」シリーズ経験者であれば、たとえマニュアルの説明を読まなくても問題なくプレイできるだろう。

 本作品の見どころは、「ドラクエ」、「FF」両シリーズの世界観を利用した多彩な仕掛けにある。例えばカジノのマスに止まると、「チョコボレース」や「いただきスロット」(「ドラクエ」シリーズのカジノがモチーフ)などのイベントが発生する。変わったところでは、モンスターの「ホークマン」や「ようがんまじん」が遠くの場所に運んでくれたり、火山が爆発すると各エリアが分散して離れ小島になってしまうステージ(「ドラクエV」に登場した洞窟がモチーフ)もある。

 極めつけは、「FF X」の最終ボスである「シン」が登場する「ビサイド・キーリカ」のステージ。「シン」が通過したエリアは一時的に通行止めとなり、さらに近くにいたプレーヤーを離れ小島のエリアへと容赦なく吹き飛ばしてしまうのだ! なお、「FF X」本編のように、ゲームの中の世界がメチャクチャに壊されてしまうことは一切ないのでご安心を(笑)。

「ドラクエ」、「FF」のキャラクタおよび世界観を利用した仕掛けがいっぱい! 特にキーリカのステージに登場する「シン」は、バカバカしいほどに派手な演出でプレーヤーを楽しませて(苦しめて?)くれるのだ


 プレーヤーがレベルアップするためのマークが置いてある「マークマス」や、「?」マークのマスに止まると「チャンスカード」が引けるというシステムもこれまでと同じだ。プレーヤーに対してプラスの効果になるのか、逆にマイナスの効果を及ぼすカードなのかは、その場で引くまでまったくわからない。

 この「チャンスカード」の存在により、投資計画を考える戦略性だけではなく、偶然性によっても勝敗がしばしば逆転することがあるので、ボードゲームならではの楽しさを堪能することができる。

 特定の「チャンスカード」を引くと、イベント限定のキャラクタとして「トルネコ」(「ドラクエIV」に登場)、「ベビーサタン」(「ドラクエIII」などに登場)、「エーコ」(「FFIX」に登場)が出現するアイデアも面白い。特に「トルネコ」が立ち止まったマスの店に片っ端からお金を振り込んでいくというアイデアは抜群で、高額の店があちこちに乱立し、プレーヤーが目標金額に届こうかという終盤に現れたりすると大いに盛り上がる。いずれも単なる「賑やかし」的な存在ではなく、それぞれが自らの手でダイスを振って進み、なおかつ、盤上からいつ消えるのかがまったく予想できないため、これまた運の要素が加味されてさらに勝負が白熱するのだ。

散財していく「トルネコ」は、まるで七福神の恵比寿さまのような存在。レベルアップのためのマークをくれる「エーコ」、通過した店を無理矢理休日にしてしまう悪役「ベビーサタン」も、違和感なく本作品の世界に溶け込んでいるから不思議だ


 さらに今回からは、「スフィアバトル」という新しい形式のゲームモードが追加された。このモードでは、「チャンスカード」の代わりに「スフィア」(「FF X」に登場した、味方パーティの能力を上げるためのシステムがモチーフ)と呼ばれる物を使用する。それ以外のルールは従来のものと同じだ。

 「スフィア」は従来のダイスとは別に、スフィアダイスというもうひとつのサイコロを振ることで発動するようになっていて、自分の資産価値を増やしたり、相手にダメージを与えるなどさまざまな特殊効果(全部でなんと105種類!!)が得られる。

 どの「スフィア」が手に入るのかは、「チャンスカード」と同様にその都度ランダムで決定される。ダイスにセットする「スフィア」の種類はプレーヤー自身で決めることができるが、最終的にはダイスの目に委ねられるので、ここでも運の要素が少なからず影響する。

 スフィアダイスには最高6個まで「スフィア」をセットすることが可能で、7個目以降はストックされる。もしセットされた「スフィア」が6個未満になった場合は、運が悪いとセットしていない目が出て“空振り”になってしまうこともある。便利だからといって濫用することはできないように、ゲームバランスをきちんと調整しているのが嬉しい。

 この「スフィアバトル」の存在自体に筆者はまったく不満がないのだが、唯一残念だったのはこのモードを発動させるまでの所要時間が長すぎること。初心者が間違って選ばないようにするための配慮だと思われるが、従来の「トーナメント」モードですべてのステージ(合計18ステージ)をクリアしなければいけない、という出現条件はちょっと厳しい。もう少しハードルを下げて、例えば「伝説の勇者ロトコース」まで(合計12ステージ)をクリアした時点で発動させてもよかったのではないだろうか? 以後、難易度が高くなる残りの6ステージは、CPUの難易度が低い新モードの序盤のステージと並行しながら楽しんでください、という形にしてもよかったように思えた。

新登場の「スフィアバトル」モード。さまざまな効果を及ぼすスフィアを集め、ダイスを振って発動させる。「ドラクエ」、「FF」双方の魔法や特殊攻撃がモチーフになっているのだ



■ BGMを筆頭に“「ドラクエ」&「FF」効果”でさらに演出を強化!!

 ゲームシステム以外の演出面においても、「ドラクエ」、「FF」両シリーズの世界観を利用することで随所にプラスの効果が発揮されている。

 まず個々のキャラクタごとに豊富なセリフが用意されていることが挙げられる。かつて彼らが活躍したときのエピソードなどを語ることもあるので、双方のシリーズを遊んだことがある人であれば当然ながらキャラクタへの感情移入度がより高まるだろう。プレーヤーが選択したキャラクタに対して、いろいろとリアクションを返してくれるのもまた楽しい。

 各ステージの名称には、「ドラクエ」シリーズをモチーフにした「アレフガルド」や「ロンダルキア」、「FF」シリーズであれば「ミッドガル」、「ラバナスタ」など、実際に登場した地名をそのまま使用している。もちろん背景などのグラフィックスも、これらのイメージに沿ってすべて描かれている。さらによく見ると両シリーズでおなじみのモンスターたちがあちこちで動いているので、いろいろと探してみるのも面白いだろう。

 歴代の両シリーズに登場したシーンおよびキャラクタをそのまま利用した、「チャンスカード」の効果をイメージしたグラフィックスもユニークだ。特に筆者は、株に関するカードを引くと現われる「きりかぶおばけ」(「ドラクエ」シリーズのモンスター)のグラフィックスを最初に見たときには大笑いしてしまった。中にはカードのイメージとはややかけ離れたものもあるように思えたが、それぞれの“元ネタ”を知っている人であれば、なぜその場面の絵が使われたのかを想像して楽しむのもまた一興だ。

 演出面において筆者が最も評価したいのは、各種BGMの使用効果。ゲーム中には「ラダトーム城」(「ドラクエ」)や「ゴールドソーサー」(「FFVII」)など各ステージごとのテーマ曲が流れるが、不思議なことに「いたスト」のBGMとして使用しても、まったくと言っていいほど違和感がない。さらには店の値段が下がってしまう「チャンスカード」を引いたときには、「ドラクエ」シリーズでおなじみの呪われたときの効果音が流れたり、誰かが目標資産額を超えるとテンポの速い戦闘シーンなどのBGMに変わるなど、より臨場感をアップさせているのだ。

 しかも驚いたことに、「ドラクエ」シリーズのBGMは、エンドロール表記によればなんと東京都交響楽団の演奏によるものであり、また「FF」シリーズも同様にオリジナル版とは異なるオーケストラ調の音色になっている。双方のシリーズを最後までプレイしたから原曲をさんざん聴いたよという人でも、これらのハイクオリティなBGMを間違いなく堪能できることだろう。

 それにしても、プロの楽団による演奏をそのままBGMとして利用してしまうとは、なんとサービス精神の旺盛なことか! 音楽鑑賞が大好きな筆者は、これらの曲を聴いているだけでも本当に楽しくてしかたがないのだ(あまりにもカッコイイ音楽なので、実はこの原稿、本作品のBGMを聴きながら書いていたりするのだ……)。

 それだけに、BGMが自由に聴ける機能が後から追加されるのは大いに不満だった。この機能もまた「トーナメント」モードをすべてクリアしなければ使えないというのは、あまりにも出し惜しみしすぎているように思えてならない。せめて1ステージクリアするごとに、そのステージで使用されたBGMが聴けるようにしてほしかった。

各キャラクタのセリフおよび、口調もきちんと再現。プレーヤーが選択したキャラによって異なるリアクションを見せることも
「チャンスカード」のイメージに沿った場面をうまく転用している。「きりかぶおばけ」のダジャレは傑作! 「トーナメント」モードをすべてクリアすれば、好きなBGMがいつでも聴ける。クオリティはすこぶる高い!



■ 「いたスト」本来の楽しさをしっかり継承。ボードゲームの醍醐味を堪能できる良作

 筆者は当初、「ドラクエ」、「FF」双方のキャラクタが登場することにより、彼らが剣や魔法などを駆使して暴れ回り、今までのシリーズとは別のゲームになってはいないかと危惧していたが、まったくの杞憂に終わった。「いたスト」シリーズ本来の面白さである、より効率のよい投資の方法を考える戦略性と、ダイスの目などによる偶然性との絶妙なゲームバランスを今回もきちんと継承していることは大いに評価したい。

 自分の店があるエリアの株を買い込んで増資をしたり、相手と同じ銘柄の株を売り浴びせて無理矢理資産を目減りさせるなど、実社会においては100%違法な取引となるこれらの駆け引きができるからこそ、「いたスト」は面白い。

 CPU戦を繰り返しプレイしていくうちに、自然とゲームのコツをマスターすることができる学習効果の高さも特筆すべき点だ。CPUのランクが上がるにつれて、所持金が一旦マイナスになるまで店に増資して株価を吊り上げ、直後にその株を売って差額を手にしたり、他のプレーヤーが所有する店との「交換トレード」を持ちかけるなど、さまざまなテクニックを頻繁に使うようになる。これらの手法をそっくりそのまま真似していけば、それだけでどんどん上達することができる。

 ゲーム中に株や資産あるいは配当など、子供には一見難しそうな経済用語がいろいろと出てくるが、上記の理由などにより小学生程度の掛け算・割り算の計算知識があれば誰でも問題なく遊べることだろう。本作品のCERO表示は「全年齢対象」となっているが、この内容であれば十分に頷ける。

 1人でプレイしても十分に面白いが、本作品をより楽しむのであれば友人たちを集めての対戦プレイ(最大4人まで参加可能)をオススメしたい。2対2でのコンビを組んで勝負するなど工夫して遊べば、さらに面白くなることウケアイだ。たとえ「ドラクエ」や「FF」のキャラクタを知らなくても、あるいは「いたスト」シリーズの未経験者であっても、ちょっと練習すればすぐに楽しめるので安心してプレイしてほしい。

 2大RPGの世界観を見事に融合させ、新たな面白さを生み出した「いたスト」シリーズ。同シリーズの今後の展開はもちろん、本作品で得たノウハウをニンテンドーDSやPSP、あるいは携帯電話用コンテンツへと転用・アレンジするなど、会社合併によるスケールメリットを生かしたキャラクタ資産の活用にもあわせて注目していきたい。

おなじみのキャラクタが多数加わり、ますます賑やかさを増した新生「いたスト」。ぜひ一度お試しを!!


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□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□「ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special」のページ
http://www.square-enix.co.jp/games/ps2/itastsp/
□関連情報
【2004年10月20日】スクウェア・エニックス、ミニゲーム付きの公式サイトを開設
PS2「ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041020/itast.htm
【2004年10月5日】スクウェア・エニックス、発売日と価格を発表
PS2「ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041005/itast.htm
【2004年9月24日】スクウェア・エニックス、「BUSINESS CONFERENCE」開催
ニンテンドーDS「エッグモンスターHERO」など多数の新作を怒濤の発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040924/se.htm

(2005年4月22日)

[Reported by 鴫原盛之]


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