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「エバークエスト II」プロデューサーSage Sundi氏インタビュー
「これからはユーザーと一緒に作っていく段階です」

4月1日収録

会場:スクウェア・エニックス本社ビル

 欧米産のMMORPGとしては久々のフルローカライズされてのリリースとなる「エバークエスト II」。2004年のE3での電撃発表から約11カ月後となる4月6日より、いよいよクローズドβテストがスタートする。

 当初の予定では、年末開始予定だったが、4カ月近くも遅れてしまった理由から、βテストの内容、そして正式サービスへの抱負など、都合4度目となる今回のインタビューでは、日本運営にまつわるひととおりの質問を重ねてみた。

 また今回は、スクウェア・エニックスの厚意により、日本語版の画像を多数いただいた。それは明日からスタートするβテストと同じバージョンの素材だが、このβテストはクローズドであり、参加したくてもできないユーザーがたくさんいる。この素材については、別記事で扱うので、ぜひそちらも参照頂きたい。


■ クローズドβテストへの抱負

「エバークエスト II」プロデューサーSage Sundi氏。コミュニティ出身らしい、柔らかい語り口が特徴的である
編集部: ようやく4月6日からβテストがスタートするわけですが、まず現在の開発状況を教えてください。

Sage Sundi氏: ようやくβテストとして一応外に出せるものはできたのかなという段階です。これからはユーザーと一緒に作っていくことになります。一緒にといっても何でもかんでもというわけではないですが、ローカライズ周りのことに関しては、率直な意見を聞きたいわけです。

 βテスト初日には、T4エンジン(「エバークエスト II」向けに開発されたローカライズエンジン)は入っていませんが、βテスト中に実装後は、種族ごとの言い回しも含めたウチのローカライズの力量を見て頂いて、「エバークエスト」の文化を壊していないか、あるいは初心者の方が違和感を覚えるかどうか、率直な意見を聞かせて頂ければと考えています。

 それから「エバークエスト II」のローカライズはとにかく膨大な量なので、まだすべての箇所において100%ではありません。我々でも確認できていないところがあると思うので、そこはその都度教えて頂きたいですね。

編: ゲームとしてある程度のものがローカライズ込みでできたと、逆に今回実装を見送った要素もあるのですか?

Sundi氏: 特にないです。ただ、今から始まるゲームですから、先送りした要素はもちろんあります。それは今後のメジャーアップデートに合わせてということになるかもしれませんが、いずれにしても私の独断で決めることではないですよね。ユーザーの意見を聞きながらじっくり決めていきたいと考えています。

 たとえば、ゲームパッドの対応があります。でもこれって本当に必要なのかどうか。ゲームデザイナーでは、パッドへの対応を意識せずに開発していますから、そもそもの設計としてキーボードとマウスでちょうどいいように作っているわけです。でもやっぱり、「ゲームパッドがいい」というユーザーが多いかもしれない。実際にキーボードとマウスを使ってプレイしていただいてから検討したいと思います。

編: ただ、北米版では、インターフェイスも含めて基本仕様がまだ揺れている印象があります。こうした設計の揺れに対してはどう対応していくのですか?

Sundi氏: 北米の最新バージョンを導入します。私は揺れているとは見ていなくて、MMORPGとはそういうものだと思っています。ゲームデザイナーの我を通してもらったほうがいい場所と、ユーザーに委ねるべき場所があると思うんですよ。いま揺れているのは、主に前者であって、それはある程度仕方のないところだと思いますね。

編: 日本ではこれからβテストが始まるわけですが、バージョンとしては今現在の最新バージョンでプレイできると?

Sundi氏: そうです。

編: それは豪儀ですね。差別化は特に意識しないわけですか?

Sundi氏: 遅らせるものがあるとすれば、それはメジャーパッチ(大規模アップデート)でしょうね。メジャーパッチは、北米で導入されて、すぐ調整が入る可能性がありますから慎重になる必要があると思います。もちろん、この間にローカライズを進めておいて、落ち着いた段階で導入するというのがいいのかなと。

 どうしてもローカライズという部分があるので、多少のタイムラグは生じますが、基本方針は最新データを取り入れていきます。


■ 「World of Warcraft」や「ファイナルファンタジー XI」らライバルとの戦い

編: 北米ではすでに正式サービスがスタートしているわけですが、どのような状況でしょうか?

宣伝部 井上氏: SOEが発表しているのは、北米と欧州で35万人のユーザーを獲得しているということです。

Sundi氏: この数字の中には複数のゲームで遊んでいるユーザーさんが多いと見ています。「スター・ウォーズ ギャラクシー」、「エバークエスト」、「ファイナルファンタジー XI」とかと平行してという形で。

 中でも「エバークエスト II」のユーザーは、そればっかりやっているようなユーザーが多いような気がします。ハマり度が高く、抜けにくいゲームなのかなと。それはやはり怒濤のようなアップデート量と高次元の3Dグラフィックス、それからギルド機能の優秀さといった要素があるからだろうと。

編: この35万という数字は、Sundiさんとしては予想通りの数字ですか?

Sundi氏: そうですね。メジャータイトルの名に恥じない推移をたどっていると思います。

編: ただ、欧米では、パッケージのセールスだけで比較しても、「World of Warcraft(WoW」はすでにミリオンセラーを達成していますよね。

Sundi氏: うん、凄いよね(笑) あれは凄い。

編: 以前、SOEにインタビューした際、EQ2とWoWは「大統領選挙並みの接戦になるだろう」ということでしたが、実際は大きく水を空けられてますね?

Sundi氏: それは35万と100万の濃さの違いというかな。たとえば、ネットカフェにいってWoWをプレイしているのを見ると、色遣いの美しさに驚かされるし、30分プレイして結果が出せるような作りにもなっているし、WoWは本当にいいゲームだと思います。

 ネットカフェというか、自宅ではないところで楽しめる設計になっているのは優れていると思います。ネットカフェのデザインというのは、たとえばタバコ片手にプレイするようなデザインなどということですが、WoWはそうしたことを考えた上で設計されている。WoWが人気を集めたのは、自宅ユーザーとネットカフェユーザーの両方を取り込めたからではないかと見ています。

 でもネットカフェに対応するってことは、結局コンテンツの消費スピードが早いということでもあるんですよ。EQ2は、コミュニティをつくって濃く付き合っていきましょうというゲームですが、一方、WoWは短時間でコンテンツを消費する心地よさを追求した設計になっているということです。

 だから後は、ユーザーのコンテンツ消費のスピードに対応して、いかに早くBlizzardが拡張要素を導入できるかというのがひとつの見物だと思います。導入時期が遅くなってしまうと、一気に引いていってしまう可能性があるのではないでしょうか。

編: おもしろい比較だと思いますが、要するに勝負はこれからだと?

Sundi氏: そうです。というよりWoWは、EQ2とどうこうというよりは、ワールドワイドのデファクトスタンダードを作ろうとしている姿勢が評価できると思っています。今後、オンラインゲームメーカーが、「ウチはグローバルにやってます」と言うためには、そういう姿勢を持って臨む必要があるでしょうね。そういうグローバルな姿勢を持ち続けたところが、最終的に勝つのではないでしょうか。

編: SOE内部の評価はどうなのでしょうか? 何が何でも北米1位の座奪還を目指して頑張ろうというのか、それとも独自のスタンスでやっていこうというのか。

Sundi氏: どちらかといえば後者かもしれませんね。Vivendi、Blizzard、SOE、どこもやれることをやっただけであって、それはウチも同じです。「ファイナルファンタジー XI」があるのに「何でEQ2までやるの?」ですよね? メジャーと呼ばれる会社はどこもそれぞれのグローバルな観点があって、答えはひとつではないと思います。

 ただ、客観的に見て、WoWがワールドワイドのスタンダート的ポジションに一番近く見えるのではないでしょうか。そういう意味では我々としても意識せざるを得ない存在ですが、だからといって何かを真似するということはありません。

編: WoWがワールドワイドのスタンダート的ポジションということですが、「エバークエスト」はどういうポジションだと見ていますか?

Sundi氏: 「エバークエスト」という世界観の文化だと思います。数年間積み重ねてきたEQの文化、Stationというベース、そこに固執していくのは間違いないでしょうし、彼らとしてはいいゲームを作り続けるのみということでしょうね。

編: ターゲットとしてはマスではなく、やはりコア向けという感じですか?

Sundi氏: EQ2に限って言えば、コア向けではないと思います。チュートリアルにもかなり気を配ってますし、いきなりクラスを選択させないとか、ソニー・ピクチャーズと協力して映画館でプロモーションするなど、裾野を広げる努力、マスに訴える努力はしていますよね。

編: となると、EQ2、WoWともどちらもマス向けであり、スタンダード路線ではないのですか?

Sundi氏: どちらかというとWoWのほうがコア向けだと見ていますけどね。先ほどもいいましたようにWoWは、コンテンツを消費し続ける設計になっていて、数カ月もあればすべて消費しきってしまう。それでもまだ続けられるユーザーというのは、コアしかいませんよ。

編: 日本はWoWが何故かサービスされないという特異なエリアですが、強烈な競合相手がいない中で、どのように展開していくつもりでしょうか?

Sundi氏: WoWの有り無しは関係ないです。SOEの意向は当然汲みますが、それとは別に、ウチはウチで「PlayOnline」という戦略の中でやっていることですから、FF XIと肩を並べてやっていくだけですよ。

編: プロモーションやマーケティングで意識するのは、やはりFF XIだと?

Sundi氏: それを俺に言わせるか?(笑)。MMOってそれは取り合いですよ。でも、この時期はこっち、この時期はこっち、FF XIをやって、その後EQ2をやってというプレイスタイルはありですよね。仮にFF XIのユーザーが新しいMMOを探していて、他社のゲームに行かれるよりかは、EQ2に来て頂いたほうがありがたいわけです。

編: PlayOnlineというくくりの中でEQ2を展開していくということですが、実際のシステムは、SOEのStationを使うわけで、ユーザーからするとまた新たにStationに登録が必要になるわけで、どこがくくられているのか今ひとつピンと来ませんよね?

Sundi氏: それはそう見えちゃいますよね。うーん。

編: 将来的には、StationとPlayOnlineのチャンポン方式もありえますか?

Sundi氏: うーん。何を持って“PlayOnline”とするかですよね。たとえば課金システムは完全にStationだし、PlayOnlineに移すことはありません。PlayOnlineとはスクウェア・エニックスのオンラインゲームに対する戦略ブランドであって、別にStationを使っていてもいいわけです。私は実はPlayOnlineのプロデューサーでもあるんですが、一番大事なのは、ゲームプロデューサーにとって使いやすいシステムであることであって、一番近い使い方がFF XIであって、一番遠い使い方がEQ2みたいな。私は全部絡んでいるから、言ってることがちょっと苦しくなっているけどね(笑)


■ 日本向け“カルチャライズ”の最終答申

編: EQ2の発表当初からの懸案でもあった“カルチャライズ”について、最終仕様は固まったのでしょうか?

Sundi氏: 柱になるのはT4エンジンです。既存のEQファンと新規のMMOファンというのはやはり違うので、その両者をいかに取り込んでいくかということの答えのひとつがT4エンジンですね。

 カルチャライズというのは要するにその国の市場性に合わせるということですから、極端な例でいうとグラフィックスを変えるということですが、この点については市場性を見て、変えない方がいいという結論に達したわけです。

 T4エンジンを使うことで、コアなEQファンは、より英語環境に近い形でプレイでき、そうでないユーザーは、完全な日本語環境でプレイできる。これがウチのカルチャライズのメインですね。

 だからこそ、そこはβテストが必要なのです。グラフィックスやインターフェイスもゲームデザインのひとつですから、トータルとして考えて可能な限りいじりたくないんです。つまり、それらが全部揃って初めてEQ2だと思っているから。βをした結果、どうしても今のインターフェイスが日本市場には向かないとなってくれば当然考えますよ。

編: とすると、カルチャライズはまだ終わってないと?

Sundi氏: ええ、まだ始まってすらいないですよ。私は、ユーザーと一緒に何かを作るということしかできない人間ですし、クリエイターじゃないですから、いずれにしても「こうなんです!」という作り方はできない。すべてできるわけではないですが、できるだけ多くの声をSOEに届ける、それが私の役目ですよね。

編: βテストにおいて、テスターに提供されるサービスはどこまでになるのでしょうか?

Sundi氏: まず、サーバーは2台。これは日本に設置してます。βテストでは1台で始めて、状況を見て2台目もオープンさせます。エリアは、30レベル相当までのゾーンを開放します。そのほかに関してはレベル、クエストなども一切制限は無く、全開放になります。

 Players.comに関しては、βテスト期間中になるか、正式サービスと同時になるか、検討中です。可能な限り、βテスト中に触ってもらえるようにして、「なるほどStationでやるというのはこういうことか」ということを理解してもらいたい。繰り返しになりますが、EQ2はギルド機能が非常に優れているので、そのためにもPlayers.comの開放は必要だと考えています。

編: βテストでのテスト内容というのはどういったものなのでしょうか?

Sundi氏: まずはローカライズ度合いのチェックがメインになります。絶対英語が混じっているんですよ。/bugコマンドを使って、どんどん報告頂きたい。後は好き嫌いのチェック。たとえば「『ゲロゲーロ』はないだろう」とかね(笑)。βサイトの中にBBSも設置しますので、様々なご意見を頂ければと思っています。

編: ストレステスト的な、いわゆるサーバーテストも行なうのですか?

Sundi氏: もちろんやりますよ。欧米のβテストがやっていることはもれなくやっていくつもりですよ。

編: 注目してほしい要素などはありますか?

Sundi氏: βテスト中に新しい要素がどんどん追加されていきます。T4エンジンなどもそうですし、未発表のものもあります。そういう要素はぜひ注目して頂きたい。可能ならイベントなどもやりたいのですが、たぶんやっている場合じゃないと思うんですよね。

 クエストからして膨大な量なので、「イベントやりまーす」といっても、「いいよ」って言われちゃいそうでね(笑)。あまり特別なことをやるつもりはないですね。ただ、例によってふらふら出て行って話を聞いてみようと思ってはいますけどね。

編: おお、Sage Sundi登場ですか。

Sundi氏: たいしたことではないですよ。GMキャラかもしれませんし、普通のキャラかもしれません。私はいつもそうですが、やっぱり直接聞くのが一番早いんですよね。「ちょっと話を聞かせて」というプロセスは大事にしたいですね。

編: ストレステストにもなりますしね(笑)。

Sundi氏: そうなるかもしれませんね(笑)。


■ βテスト遅れの理由とEQ2の楽しみ方について

編: 「エバークエスト II」は、久々の欧米産の新作MMORPGとして、多くのユーザーの期待を集めているわけですが、βテストに関しては、年末開始予定が4月までずれ込んでしまい、結果的にユーザーの期待を裏切ることになりました。この間、何があったのでしょうか?

Sundi氏: それに関しては本当にお詫び申し上げるしかないのですが、公式に言えるのはクオリティアップ、それだけですね。年末の時点でスタートしていたら、取り返しの付かないことになっていたのではないかと見ています。内容的にとてもではないが外に出せるものではなかった。オンレコでは言えないことばかりですが、少なくとも100%スクエニのプロジェクトであれば、ここまで遅れることはなかったかもしれません。

編: 要するにSOEとのコラボレーションの部分で大幅な遅延が発生してしまったと?

Sundi氏: ノーコメント(笑)。

編: 逆に言えば、スクエニ側として誤算があったのは間違いないわけですよね?

Sundi氏: 読み違えていた部分もありますね。私も海外との仕事は慣れているつもりですが、今回の件に関して、仕事の進め方に関して読み違いがあったのは間違いないです。

編: この場合の“クオリティ”というのは具体的に何を指しているのでしょう。

Sundi氏: まずローカライズがチャレンジングだったということですね。テキストがあって、それを翻訳すればできるというレベルではなくて、たとえば、1冊の小説が数百に細切れにされたものを訳していくような、要するに普通にローカライズできるような代物ではなかったんです。私にとっては人生最大のクエストでしたね(笑)。

編: ちょっと厳しい質問ですが、そういう設計なのであれば、今後のアップデートも遅れざるを得ないのではないですか?

Sundi氏: それもチャレンジですし、乗り越えていかなければならないことです。我々はローカライズに取りかかるにあたって、スタッフの“EQ濃度”を最大限に高める必要がありました。これが一番時間が掛かるところで、今はもう十分に濃いというか濃すぎるぐらいなので、今後についてはそれほど心配はしていません。技術的なハードルも乗り越えてきましたし。

編: ちなみにSundiさんのEQ濃度はどのぐらいになったのでしょう?

Sundi氏: それいうとさぁ、またユーザーに怒られるから、もう言わない(笑)。かなりやりましたとだけお答えしておきます。

編: ゲームというのは、やはり実際にプレイしてみなければおもしろさはわからないわけで、「かなりやった」というのはユーザーにとって安心材料のひとつだと思います。Sundiさんは、ゲームプレイの中でどのあたりが気に入ってますか?

Sundi氏: プレーヤーとしてか。うーん、なんだろうな(笑)。

井上氏: 僕が見ていた限りでは生産ばっかりしてましたよ。

Sundi氏: そうだね(笑)。ほかだと、私はもともと前衛派なんですよ。FF XIでは後衛に回ってみたんです。黒魔をずっとやってました。EQ2はどうしようかなと思って、結局イリュージョニストにしてみました。変身するからね(笑)。クラスを演じることは楽しいですね。

 イリュージョニストは役割が他とかぶらないから、その分責任重大なんですね。そのあたりがおもしろいよね。生産に関しては「ウルティマオンライン」の時から好きだったけど、EQ2もおもしろいですね。本当に良くできている。

編: 生産に関して言えば、Sundiさんが担当されている「ファイナルファンタジー XI」も大変良くできていると思います。その良さとはまた違うわけですか?

Sundi氏: FF XI、EQ2、それぞれの良さがありますよね。ただ、EQ2の生産は、システム的にまったく新しい。よく言われるバフ、マクロ阻止もしっかりしているし、バフがあるから生産中ずっと動かしてなければいいものが作れない。

 それからユーザーが作ったもののほうがイイものが出来るというのが経済において、いい影響を及ぼしていて、素材についても他の生産スキルのものが必要になるというところでソーシャルが出来上がっている、このおもしろさ。私が言うのも何ですが、いいゲームですよ。

 FF XIってやはりグループで楽しむMMORPGで、UOも「Asheron's Call」もそれほどグループ観を伴うデザインではなかったんですよね。ソロでやろうと思えばどこまでもできる。EQ2は、どちらかというとグループでナンボのデザインになっていますが、それでもソロでできることというのは結構多い。生産でもいいですし、多種多様なクエストにチャレンジしてもいい。バランス感覚のいいMMORPGということがひとつ言えるのではないでしょうか。

 ギルドも作ってみましたが、EQ2ではギルド内での貢献度が一目でわかる仕様になっていますから、ギルド内でクエストの達成度を競ってみたり、EQ2はジョブチェンジがないですから2キャラ、3キャラ目もカバーして入れ替えつつ楽しむみたいな。ごめんね、ベタベタにユーザーの意見ばっかり喋っちゃって(笑)。


■ 正式サービス後の展開について

編: 6月から正式サービスがスタートするわけですが、抱負について聞かせてください。

Sundi氏: これは正式サービスについてではないかもしれませんが、すべてのヘイトというのはSundiに乗っけて頂いて、EQ2そのものに向けないで欲しい。純粋にいいゲームだからこそ日本に持ってきたわけです。

 今回、ローカライズのアプローチやさまざまな誤算でサービスが遅れたのは事実ですが、時間を戻すことは残念ながらできない。だからゲームの中身で勝負していくしかないわけです。きっと喜んでもらえる内容に仕上がっていると思います。

編: EQ2では国別にサーバーが用意され、日本では日本向けのサーバーが用意されるわけですが、イベントはどうなるのでしょう?

Sundi氏: 正直、SOE次第ですね。EQ2はシステム的に、追加される大量のコンテンツが主体になっています。許可が下りれば独自のイベントをやっていきたいと思っています。

編: イベントまわりの拡張性は高いのでしょうか?

Sundi氏: それはもちろん、MMOを長年やってきたメーカーの最新作なので、イベント用というか、GM向けの機能がいろいろ用意されています。ただまあ、ユーザーの皆さんには、まずはゲームにどっぷり浸って頂いて、EQ2スキスキになってもらいたいわけですよ(笑)。イベントはそこからじゃないでしょうか。

編: じゃ仮にその段階になったとしましょう。Sundiさんのやりたいイベント、逆にやりたくないイベントとはどういうものですか?

Sundi氏: UOの時は悪のりし過ぎたので、基本的には自重していきます(笑)。UOの時は世界観にあわないモノもいろいろやってました。「バーバーサカイ」とか、なんだよそれって(笑)。それはサカイさんという床屋がいて、髪型を変えてくれるわけだけれども、何でバーバーサカイなんだっていう(笑)。それはたぶんノーラス(EQの世界)にはあってはいけないものなんですよ。それを好きだって人もいたんでしょうが、UOらしさが損なわれていたのかなとも思うわけです。グローバルと言い始めたからにはそれではいけないと思いますね。

編: まずは世界観との整合性を、というところですか? その先には何が待ちかまえているのでしょう?

Sundi氏: それは私には決められませんよ。ユーザー次第です。私は生粋のクリエイターではありませんから、ユーザーの意見を聞いて、それを開発に反映させる橋渡し役です。

編: たとえば、FFXIでは、お正月におひな祭りにハロウィンと日欧米織り交ぜて何でもありですが、これはEQ2でもアリなわけですか?

Sundi氏: これもUOの話になりますが、日本的なイベントをやると、海外の開発元が喜んだんですね。んで、一方ユーザーのウケも悪くなかった。最初はやるべきではないと思います。ただ、ユーザーの声が高くなれば検討してもいいかと思いますが、まずは遊んで貰うことが先決ですよ。

編: なるほど。そうなると、今度はシナリオの拡充がキーになってくると思います。EQ2では「アドベンチャーパック」という有料ダウンロードシナリオの存在が明らかになっていますが、これはちょっと新しい試みですよね。

Sundi氏: 拡張ディスクを待つと大抵1年は掛かってしまうので、それでもEQ2は2チーム持っているので、開発スピードはかなり速いのですが、それでもパッケージとして売っていく必要があるので、売る側、買う側、双方にとって重いわけです。それをメジャーパッチよりもう少し大きくしたもの、拡張版を少しボリュームを落としたものぐらいを有料でダウンロードさせるのが「アドベンチャーパック」です。

編: これは日本でも、同じようにダウンロード販売するのでしょうか?

Sundi氏: もちろんやります。やらない手はない。

編: コンテンツの中身は具体的に何が含まれているのでしょう?

Sundi氏: 基本はクエストとゾーンの追加です。今後どうなるのかはわかりませんが。ストーリーのようなものが増えるかもしれませんね。

編: 拡張版は別に存在するわけですよね?

Sundi氏: そうです。コンテンツの消費速度は、我々が思った以上に速いので、出し続けることを選んだゲームなんですね。

編: 確認ですが、スクウェア・エニックスは、SOEが発売するすべての拡張ディスクとアドベンチャーパックをローカライズして販売していく?

Sundi氏: 発表が出来る次期が来たときにお伝えしていきます。

編: しかし、このパッケージとダウンロードを別々にやるというのは、MMOのビジネスモデルとしては、ちょっと変則的ですよね。

Sundi氏: そうだね。でもこれはSOEにとっても同じことで、新しいチャレンジと言えると思います。


■ 英語版ユーザーに対するサポート、EQ Eastについて

やはり4カ月の延期は、社内的にも想定外だったようで、延期に関しては「何とかしなければ」という焦燥感を感じさせた
編: 私は2月に台湾に行きまして、そこでSOGAのEQ Eastを見る機会がありました。スクウェア・エニックスとしては、EQ Eastをどのように見ていますか? 特に意識することはない?

Sundi氏: ないです。だって日本市場とはまったく関係がないですから。

編: これは我々メディアの影響もあるのですが、EQ Eastがどういうゲームなのかというのは、日本のユーザーはある程度知っています。仮に、βテストが始まってみて、ユーザーからEQ Eastの“とあるコンテンツ”がほしいというニーズが高まった場合、SOEを通してそれが日本に実装されるという見込みはあるのでしょうか?

Sundi氏: それがEQ2本体が実装してしまえば、それは日本にも導入されます。だから日本のニーズというより、ワールドワイドでのニーズですね。SOEが決めたのならそれは仕方がないかなと。基本的にウチとEQ Eastの関係というのは、「『EQ East』って付けて良い?」、「いいよ」ただそれだけですから。

編: なるほど。結果的にですが、アジアに2種類のカルチャライズされたEQ2が混在するということになったわけですが、SOGAのカルチャライズをどう評価していますか?

Sundi氏: 欧米からすればアジアはひとつの文化だと思っているかもしれないけれども、我々からすれば答えはNoってのは当たり前の話で、各テリトリーごとの文化があるわけで、SOGAのカルチャライズはその地域に合わせられたものだと思いますよ。

編: 日本の英語版ユーザーを、日本語版に引き込む策のようなものは考えていないのですか?

Sundi氏: 最低限、キャラの移動はやります。有料になるとは思いますが、リリース半年後にはやりたいと思います。

編: 英語版ユーザーに対して、優遇措置みたいなのはないわけですか?

Sundi氏: 言えない(笑)。言いたいが言えない。しかも、これが救済かどうか。正式サービスまでにはアナウンスできるのではないかと思いますが。

編: Players.comはどうなるのですか?

Sundi氏: やります。今は公式サイトをPlayOnlineに間借りさせて貰っていますが、これをStationに移します。すべて日本語です。そしてPlayers.comの有料サービスも提供していきたいと思います。

編: Players.comは、どのようなサービスが提供されるのですか?

Sundi氏: Players.comは、元コミュニティサイト運営者が作ったシステムで、ブラウザから、サーバー上のデータにアクセスできる。コミュニティのあるべき姿ですよね。ギルド機能にも直結していますし、サーバーに繋がなくても、ゲーム情報がやりとりできるという。


■ GM出身プロデューサーの理想のユーザーサポート像

編: ユーザーサポートについて聞かせてください。まずGMサポートはどうなるのでしょう?

Sundi氏: 日本にいる日本人チームが24時間3交代制で対応します。まあ、FF XIチームの隣にいるんですけどね(笑)。ただ、完全に独立していて、EQ2専門の指導を受けたスタッフを揃えて対応していきます。電話サポートについては他のPlayOnlineタイトルと同じようにインフォメーションセンターを利用して頂きます。

 サポートのトレーニングに関してはSOEのトレーニングを受けています。FF XIでは、SOEのGMチームは、我々のトレーニングを受けましたが、向こうは向こうで「なるほどね」ということがいろいろあって、今度は我々も勉強させてもらうことが多かった。EQ2のユーザーサポートは、ウチとSOEのノウハウを結集させていますので、この点においては自信を持っていますよ。

編: SOEのトレーニングを受けているということは、欧米のEQ2での蓄積がすでに存在すると?

Sundi氏: そうです。トレーニングといってもドキュメントでどうこうというレベルではなくて、フェイストゥーフェイスで指導しあう関係にありますから、かなり細かくやりとりしてますね。

編: Sundiさんは、元々コミュニティの出身で、GM上がりでもある。コミュニティそしてGM出身のプロデューサーというのはきわめて珍しいケースだと思うのですが、EQ2ではこうしたバックグラウンドをどのように活かしていこうと考えていますか?

Sundi氏: GM出身であるということは、自分の中ではあまり意識していません。ひとつ言えるのは、大人数でサポートをやると、どうしても質にばらつきが出てしまう。何故かというと、GM個人個人の力に頼っているからです。だから質を高い部分で均一にするために、システムを引く必要があるわけですけど、そうすると結果として冷たい対応になってしまうんですね。その代わり、誰が対応しても一定のクオリティが保たれる。GMによって対応が異なるというのは良くないので、この部分はEQ2でも維持したいところではありますよね。

 サポートが必要な人というのは、怒ってる人、泣いている人なんです。ニコニコしながらコールする人はいませんからね(笑)。そしてそういうユーザーに対して、最終的にニコニコした状態で返すというのが基本です。でもユーザーにもいろいろな人がいらっしゃるので、全員ニコニコ状態にするというのは難しいです。全体としてニコニコしている人を増やしていければいいなと。

 GMコール何十本かに1件、こじれることがあります。そうなるとどうするかというと、GMはその場で手を挙げて、みんなを呼んで協議します。つまり、瞬間的に何十人ものGMがその人に付くわけです。どうやればこの人がニコッとしてくれるのかということだけを考えて、対策を練るわけです。GMサポートの基本はこれだと思っています。

編: ちなみにEQ2ではこういうことをやってるよ、ってことはありますか?

Sundi氏: EQ2のGMチームには1年生GMもおりますが、FF XI、EQ1で豊富なサポート経験を積んだGMも参加しており、彼らそれぞれの経験と知識が融合してEQ2 GMチームを形成しています。それらノウハウを最大限に活用して貰うために、GMチームとのコミュニケーションは日々欠かしません。それでもまだ100点ではなくて、まだまだ上を目指していきたい。目指すは世界トップクオリティのサポート体制の確立ですね。

編: 有料化後のユーザー数はどのぐらいを想定していますか?

Sundi氏: 遅れてしまったことによる影響もあるし、予約状況を見てからでないと何とも言えませんが、希望で言えば数万人はほしいです。これはボトムからトップまで三角形の形で形成されるコミュニティに必要な最低ラインで、でも現実はそれほど簡単ではないとは思っています。実際、厳しいご意見もすでに頂いていますしね。

 ただ、正式サービスが開始されて、10万人行かなかったらダメかというとそんな単純な話ではないですよね。運営がスタートしてからが本番であって、私としては、日本のMMORPGの有力な選択肢のひとつになればいいなと思っています。

編: 年末に比べると、今はライバルもまた一段と増えていますね。すごく個人的な意見を言えば、これだけ韓国産が流通している中、「スター・ウォーズ ギャラクシー」に続く、久々の欧米タイトルとして、ぜひ頑張ってほしいなあというところがあります。

Sundi氏: それは我々も同じで、これってある意味「洋ゲーの逆襲」なんですよ。「エバークエスト」というのはアメリカの国民的なMMORPGであり、システム的にもちょっと真似ができないぐらい濃いものになっていますから、需要はあると確信しています。

 中には洋ゲーだからダメっていう人がいるかもしれないけど、そもそもPCゲームって元々洋ゲーですよね。原点回帰ってわけではないですけど、受け入れられる余地は十分にあるし、その点ではあまり心配していません。もちろん、洋ゲーをより多くのユーザーに理解していただく努力というのは必要です。今回は、そこでちょっと躓いているので、これから誠心誠意、どうにかしてプレイして貰うという努力を続けていきたいと思っています。

編: それではユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Sundi氏: 繰り返しになりますが、「私はユーザー上がりです、すいません」ってところから始まっていて、他のプロデューサーみたいにユーザーを引っ張っていくということはできなくて、ユーザーと一緒に良いゲームを作っていくということしかできない人間です。だからぜひプレイして、たくさんご意見をいただきたい。それから翻訳やその他バグのヘイトはローカライズやGMなどのスタッフではなくて、私に乗っけてくださいね(笑)。

編: ありがとうございました。

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.co.jp/
□「エバークエスト II」のホームページ
http://www.playonline.com/eq2/
□関連情報
【11月5日】「EverQuest II」日本語版開発者インタビュー
英語版の発売日が急遽決定、日本語版の開発状況やいかに?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041105/eq2int2.htm
【6月21日】「EverQuest II」日本語版プロデューサーSage Sundi氏特別インタビュー
「単なるローカライズではなく、日本のユーザーに合わせたカルチャライズを目指す」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040621/eq2int.htm

(2005年4月6日)

[Reported by 中村聖司]


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