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Taipei Game Show 2005現地レポート

韓国セッションレポート
様々なアプローチから見えてくる韓国MMORPGとユーザーの現状

会期:2月28日~3月1日 開催

会場:工学院新宿キャンパス


■韓国、中国のRMTへの傾向。RMTはユーザー自身の進化によって対応しよう

韓国ソウル中央大学経営学科 魏 晶玄教授
年少者の方がRMTの経験が多いと説明する教授
 韓国ソウル中央大学経営学科の教授であり、社団法人コンテンツ経営研究所の所長を務める魏 晶玄氏は「韓国オンラインゲームにおけるRMTの実態調査分析」というタイトルで講義を行なった。

 氏はまず、「アイテム交換はゲームにおいてありふれている行為であり、ユーザー間のコミュニケーションで大事なこと」と語り、RMT(リアルマネートレード)はその延長であるとする。韓国ではこのRMT問題が大きく取り上げられており、市民団体や、青少年保護団体からも、「やってはいけない悪いこと」として、激しい批判を受けている。

 教授の調査によると韓国のMMORPGプレーヤーのうち、18歳以下の子供達の約半分がすでに経験をしているという。子供達のRMTで多いものは、ゲーム内の通貨を買うもの。RMTに対して是非を問うアンケートの中で、回答者は「やや反対」という意見が最も多かったが、子供達の中では「よくわからない」という意見もまた多かった。

 韓国では、RMTをやっている人たちは市民団体から、「不良少年だ」というレッテルをはられているようだ。教授はユーザーの意見から、RMTをやっている人の多くは「ふつうの人たち」だということをアンケートの結果で得た。RMT経験者の学校の成績はやっていないユーザーとそれほど変わらず、家庭水準も変わらなかった。貧乏だからRMTをやっているという意見は的はずれだと指摘する。取り引きも月に1.2回、動くお金も2,000円以下と、けっして大きなものではない。

 教授は、韓国だけではなく、日本や中国との比較も行なっている。RMTに関してユーザー間や業者まで介在して積極的に行なっているのは中国であり、日本やアメリカのユーザーは否定的な人が多い。ただし中国でもゲームによってはRMTを嫌うユーザーが多い作品もある。RMTに関する意見は、国ごとだけでなく、作品ごとにも異なる。

 教授はRMTが盛んな理由の一つは、「プレーヤーの未成熟」が原因であるとしている。ゲームの内容を楽しみ、プレーヤー間のコミュニティーを楽しむ人は、ゲーム内での過ごした時間、得た資産に価値を見いだす。だから住人としてマナーを重視するようになる。ところが、中国のユーザーの中にはコミュニティーはキャラクタを強くするための手段の一つしか思っていない人もいる。だからルールも礼儀も軽視して、簡単に強さや資産が手に入るRMTを行なう。これは韓国の年少者のプレーヤーにも見られる傾向で、ゲームの世界の中で、住人として暮らす楽しさをまだ知らないからRMTを行ないやすいのではないか。RMTが問題になってしまうのは、ユーザー間のルール形成がまだうまくできてないためだという。

 RMTが運営会社のきまりによって徹底的に規制されてしまうのも、ユーザーの進化を阻害かねない点だと教授は指摘する。また、アイテムや時間の重要性に対して、ユーザーが認識し始めた場合、運営会社の管理体制も問われてくる。実際、ゲームが長時間接続できなくなったことでの訴訟や、アイテム所有権での訴訟も行なわれ始めている。それを回避するために会社は規約で「アイテムのデータの所有権は会社に所属している」という一文に同意をさせているが、今後ユーザーの価値観に法律や社会がアイテムの所有権をユーザーに帰属させていくかもしれない。運営会社も今後は考えて行なかねばならないだろう。氏はユーザーと運営会社のコミットによって、きちんとゲームの価値観を認識していこうということを提案する。詐欺問題など法に抵触する問題には厳粛に対処しながらも、RMTの流れはある程度取り込み、その上でユーザーの進化を助長していこうと意見した。

 教授の意見は非常にユーザーよりで、RMTもまたゲームの中に取り込もうという流れも、ユーザー自身の価値観に従っていこうという。しかし、現在、日本のユーザー間で議論されているのは、「リアルマネーというものが介在することでゲームの世界そのものが崩壊しかねない」という問題である。現在のMMORPGはゲーム内での商取引のみを想定して作られている。「現金を稼ぐ目的のプレーヤーたちが狩り場を占有する」といった、現実の商取引をゲーム内に持ち込まれ、さらにメーカーが全く認知しない業者が組織的にそういったことを行い、ユーザー達を困惑させている。ゲーム性がゆがめられてしまっているのだ。氏はこういった問題にも、ユーザーが団結して対応していくべきだと説く。日本のメーカーは体制側として対応策を試行錯誤しながら実施しはじめているが、ある程度RMTをメーカー側も黙認している韓国、中国のユーザーと、メーカーの対応を見ている日本のユーザーがどういった差をもたらすかも興味深いところだ。


■オンラインゲームは社会学習に効果あり? 韓国で行なわれたMMORPG体験学習

社団法人コンテンツ経営研究所 先任研究員 呉 ナラ氏
今回使用されたMMORPG「君主」。学生達は実際に稼働しているサーバーに入り、ユーザー達が形成している世界の中で体験学習を行った
 社団法人コンテンツ経営研究所 先任研究員 呉 ナラ氏が講義を行なったのは「オンラインゲーム活用教育 プロジェクト実験結果の報告」。これはソウルにある「善隣インターネット高校」の75人の生徒を対象にMMORPGをプレイさせて、学習に効果があったかを試したものだ。韓国では日本以上に子供に対して教育熱心だ。まして、「勉強に役立つ」という言葉には弱いのはどこの国の親も一緒だろう。

 今回の実験は「経済学習」の教材としてMMORPGを使った。冬の試験が終わった学生達を対象に、2週間「君主」というMMORPGを学校の行事としてプレイしてもらい、学生達の経済学習への関心度を測定するというものだ。

 「君主」は特に経済活動に特徴のあるMMORPGでプレーヤー達はバザーでの商取引が体験できるだけでなく、村の株なども取り引きできる。選挙で村の代表や、ひいては国の代表を決め、予算をやりくりし、政治を行なっていく。不動産売買や賃貸システムも導入されているという。地形には韓国の国定教科書に使われている地図を使用。古代朝鮮をモデルにした作品である。

 実験では75人を2グループに分け、片方はそのままプレイしてもらい、もう片方は商取引の基本である市場調査や「安く買って高く売る」といった商取引の概念など、経済教育を行なってからゲームをプレイしてもらった。ゲームをプレイすることに関しては男の子はだいたい喜んでやっていたが、「ゲームってやっぱり面白くない」と言い続けた女の子もいたとのこと。

 アンケートは、経済学習への効果と、経済学習への関心という項目で、それぞれ実験前と後で行なわれた。ゲームで経済学習に効果があるか? という質問群にゲームと経済教育を行なうチームは最初否定的だったのだが、実験後ははっきりと肯定的意見が上回った。反対に、ゲームだけプレイした学生達は否定的意見が増えた。経済学習への興味では、どちらも関心度がない方が上回っているものの、学習したチームの方が肯定的意見が増加した。

 非常に限られた実験であり、あくまで「試験的なもの」とのことだが、こういった実験がきちんと行なわれたことは意義がある。日本でも特に子供に勉強をさせたい親にとって、ゲームは否定的な評価を下されることがあるが、韓国でもその傾向が強いとのこと。経済学を学び、プレーヤー達が実際に形成している社会で実践するというこの実験は、多少なりとも、教育への可能性を示してくれた実験であるだろう。


■ゲームに対する世代の差。子供のゲーム好きは親のPC能力に反比例

社団法人サイバー文化研究所所長の金 良恩氏
 社団法人サイバー文化研究所所長の金 良恩氏は「韓国オンラインゲーマー特性の世代間の差」について講義を行なった。講義はアンケートの内容と、それに対する分析が中心で、大人と子供でプレイしているゲームのジャンルに差があるか? ゲームに夢中になる子供と、それほどプレイしない子供の親との関係は違うのか? という2つのポイントで語られた。

 大人と子供のゲームをプレイする世代の差、というアンケートには小学4年生から40代の大人までが対象になり、18歳を境に、子供と大人に分けられた。どんなゲームをプレイするか? という質問にはどちらの世代もトップがオンラインゲーム、続いてもどちらもPCゲームという回答で、その下のモバイルゲームは大人の人気が高く、子供はアーケードゲームと回答した。

 好むゲームのジャンルに関しては、大人は「オンラインのカードゲーム」というものが非常に高い。これは韓国で人気の高い対戦型花札ゲームで、ネット上で一対一で対戦を行なう。サイバーマネーをかけての賭博も行なわれており、それを現実の金に返還するシステムもある。

 ゲームをする場所というアンケートでユニークなものは、子供は「リビング」というものがある。オンラインゲームは子供が夢中になってしまって危険という噂なので、PCを親の目が届く居間に持ってきて、ゲームをさせるということがあるとのことだ。大人の答えの中には「職場」という答えもある。また前述の花札ゲームのサーバーは、会社の出勤前や、深夜に大変混雑するという。「ゲームをプレイしている姿を子供に見られたくない」という考えが韓国の大人の中にはあるとのことだ。

 子供のみに行なったアンケートとして、子供をヘビーユーザーの子と、あまりプレイしない子、中間集団の3つに分け親に関するアンケートをした。差は僅かではあるが、ヘビーユーザーの親は、インターネットにもゲームにもあまり関心を持たず、ゲームを禁止しようとする傾向が強いという。 

 金 良恩氏は「ある女の子が『メイプルストーリー』というゲームの本を読んでいて、そのゲーム面白いよね、と話しかけたら最初はびっくりしていたけど、1時間も私にゲームに関する話をしてくれた」と語った。氏はこの経験や、調査を通して子供が興味があるものをまず大人が理解してあげれば会話が生まれるはずだ、という確信を得たという。親の理解を等して、ネットでのリテラシーを学び、よりゲーム文化を発展させていく。オンラインゲームは親とこのコミュニケーションツールにもなりうると結んだ。 

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
□「AOGC 2005」のページ
http://www.bbassociation.org/AOGC2005/
□関連情報
【2004年6月21日】SIG-OG、オンラインゲーム専門部会特別講演会を開催
コーエー松原氏「開発費回収のために海外展開は必然」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040621/sigog.htm

(2005年2月28日)

[Reported by 勝田哲也]


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