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★PS2ゲームレビュー★
昨年「ザ・キング・オブ・ファイターズ'94(KOF'94:PS2版はKOF'94Rと略記)」のリメイクが発表されたとき、正直筆者は前述のような感想を抱いてしまった。というのも、最新ハードで気軽にプレイできるようになるのは嬉しい反面「商売としては厳しいんじゃないかなぁ」と穿った見解を抱いてしまったためだ。 現役でプレイしていた人には十分アピールするだろうが、当時のコアユーザーは、高価なネオジオROM版を購入するか、あるいはロード時間の長さに耐えながらネオジオCD版をプレイしていた人が少なくない。そうしたかつてのユーザーが、どれだけ再購入に踏み切るのか。さらには、10年前の作品にも関わらず通常版が7,140円という価格設定に、新規ユーザーがどのような反応を示すのか。ぶっちゃけ「それなら同じ値段の新しいヤツを買うよ」となってしまうかもしれない。未体験の対戦格闘ゲーマーがいるとすれば、シリーズ初代作品というだけでも「KOF'94R」は十分プレイする価値があると思うのだが、いかんせん完全新作と同じ価格設定では、気安く「まぁちょっとやってみなよ」とは言い難い。
だから、というわけではないが。もし「興味があるけど、ふんぎりがつかない」人がいたら“本記事を判断材料にしてみる”というのはいかがだろうか。「龍虎の拳」が好きでメキシコチームばかり使っていた筆者ですら当時座視できなかった「U.S.A.チーム」の圧倒的なまでの不人気っぷりなど、“初代”ならではのエピソードや魅力といったものが「KOF'94R」に内包されていると思うからこそ、ちょっぴり(あるいは目一杯)偏ったレビューをお届けしたい。
■ 2D対戦格闘の新しい流れを生み出した、意欲的なフィーチャーの数々
「攻撃避け」は、キャラクタが画面奥に身を引くような動作をしている間、打撃や飛び道具に対して無敵になるというもの。投げ技に対しては無力だが終了間際に隙がないことから、発表当初は対戦バランスの崩壊を危惧する声もファンの一部にあったが、実際にはそのようなことはなく、攻防を多様化させた点で後進の作品群に絶大な影響を与えている。 「スルー・アタック」と「ふっとばし攻撃」は、それぞれ「餓狼伝説」シリーズの「攻撃避け」と「ライン飛ばし攻撃」がベースになったシステム。スルー・アタックは、ガードモーション中に方向キーを相手側・真横+弱攻撃で、上半身無敵の攻撃が繰り出せる。ダメージが小さくヒットしてもダウンが奪えないことから、狙いすぎると墓穴を掘りかねない玄人向けのテク。ふっとばし攻撃は、ヒットと同時にダウンが奪えるのが特徴。ジャンプ中でも使えるが、モーションは強キックと同じ。ちなみに、続編の「KOF'95」では独自の攻撃グラフィックが追加されている。 「パワー溜め」は、ボタンを押している間だけキャラクタパネル横(ネオジオモードなら画面左下)にあるパワーゲージが増加。MAXになるとキャラクタの全攻撃力がアップするほか、体力ゲージが赤く点灯していなくても超必殺技が一度だけ使える。MAX状態は、一定時間が経過するか、超必殺技を使うと終了。セレクトボタンの挑発で蓄積中の相手パワーゲージを減らすことも可能だが、パワー溜め、挑発ともにモーション中は無防備になるため、相手をダウンさせた直後などに素早く行なったほうがいい。
このほか、掴み系の投げ技や気絶などピンチに陥った際にパワー溜め入力で未参加のチームメンバーが助けにきてくれる「ヘルプアタック」があるが、正直あまりにも使い勝手が悪かったため、当時ほとんど日の目を見なかったように記憶している。
■ ハイレゾ化でより繊細かつ明瞭になったグラフィック ~オリジナルも完全収録~
慣れるほどに違いを実感するハイレゾ画面だが、背景の3D化にともない、一部ステージで攻撃避けを行なうと背景がグルッと回り込むような演出が追加された点だけは、個人的にNG。筆者は3D酔いが酷いため、背景が動くたびに三半規管が少しずつヘタレていく。攻撃避けは頻繁に使うテクだけに、筆者同様に3D酔いする人は、ネオジオ版を完全再現した「ネオジオモード」メインでプレイすることをオススメしたい。
グラフィックだけでなく、BGMもネオジオCD版とネオジオROM版が両方収録されている。オプションメニューで変更すれば、アレンジをROM版のBGMで、ネオジオ版をCDサウンドで楽しむことも可能という、一粒で二度美味しい作り。中国ステージのCD音源は、もちろんヴォーカル入り。サウンドにこだわりを持つファンも多いだけに、このあたりは嬉しい配慮といえる。
ゲームモードは、チーム単位でメンバーが固定された「チームプレイ(対CPU戦)」と「チームバーサス(対人戦)」、メンバーをひとりずつ選定して好きなチームを編成する「エディットプレイ(対CPU戦)」と「エディットバーサス(対人戦)」、CPUとひとりずつ戦う「シングルプレイ」、1対1で対戦する「シングルバーサス」、技や動きの練習ができる「プラクティス」、体力が尽きるまで戦う「エンドレス」、オリジナルROM版を再現した「ネオジオモード」、KDDIのマルチマッチングBBを介してオンライン対戦を行なう「ネットワークマッチ」が用意されている。 アレンジ版とネオジオ版は、見た目をのぞきプレイ内容にほとんど違いはない。リアルタイムでプレイしていた人たちにはおなじみの、飛燕疾風脚がガード方向斜め下溜め→相手方向斜め下で発動するなどの必殺技コマンド簡略化、空中およびダッシュ中の(超)必殺技、連続ガードの5発目以降ならガードキャンセルで必殺技が出せるなどの裏技的な要素は、きちんと実装されている。
ただし、アレンジ版のみパワーマックス状態から1発でガードキャンセルが可能になっていたり、アテナ、ハイデルン、大門の投げ技に関する特殊現象などの変更点がいくつか見受けられる。アテナとハイデルンの投げは、アテナなら投げた直後に、ハイデルンならストームブリンガーで投げる直前に出した必殺技の威力が、直後の投げに反映するという特殊な現象。大門の場合は相手がコマンド投げでダウンした瞬間を再びコマンド投げで吸い込むといった具合だが、アレンジ版ではそれぞれ不可能になっている。アテナのみ、投げた直後に弱攻撃を出すとダメージが小さくなるというマイナス要素がそのまま残されているのは謎だが……。
■ 「KOF'94」に思い入れがある人、シリーズのファンならぜひ!
もっとも鮮明に覚えているのは、当時のネオジオファンたちの“熱さ”だ。「餓狼伝説スペシャル」にリョウ・サカザキを乱入させた下地があったとはいえ、それでも「餓狼伝説」、「龍虎の拳」、「サイコソルジャー」のキャラクタが一堂に会するということで、今の格闘ゲームシーンでは考えられないほど高い注目を集めていた。 また、当時のゲームセンターでは“ひとりいちキャラ”というか、複数のキャラクタを同等レベルで使いこなす人が少なかったためか「これ3人分も立ち回り覚えるの? 超厳しいんですけど」みたいな会話がかわされていたのも印象的。実際、稼動直後は筐体前にプレーヤーが3人いて、担当キャラごとに交代する光景も見られたほど。今でこそ普遍化したチームバトルだが、当時は色々な意味で刺激的なシステムだったわけだ。 キャラクタ人気に関しては、当時「誰が使うんだよコイツラ」など、ありとあらゆるネガティヴな言葉が投げかけられた「U.S.A.チーム」以外は、おおむね使われているといったふう。昔から“強キャラ一択”という人はたくさんいたが、メインキャラだけで安定して勝つことは難しかったためか、なんだかんだで対戦バランスは成り立っていたように記憶している。画面端で弱パンチ残影ハメや大門の永久投げが横行して対戦台の雰囲気がどんよりしていた時期もあったが、それでもちょっと遠くへ足を運べば一味違うプレーヤーと遭遇できた。定型化した立ち回りが目に付くことはあっても、今みたいに「あー、またアレね。ハイハイ」など、それがすべてではなかった。まだまだ、そんな時代だったような気がする。 ハイレゾ化されたグラフィックは確かに綺麗だが、オールドファンとしてはドット絵の巧緻ともいうべきオリジナルグラフィックでプレイしたほうが、やはりグッとくる。今見るとややジャギが目立つが、当時「なにこれ! マジ!?」と多くのファンを驚かせた代物だけに、現行ハードの2D対戦格闘と比較してもそれほど遜色ないように思われる。正直、キャラクタと背景のバランスだけで見れば、ネオジオ版のほうが上といっても言い過ぎではないだろう。 PS2「KOF'94R」は、オリジナル版と異なり好きなキャラクタでチームを編成してプレイすることが可能。「余計な縛りとか要らないし」といったプレーヤーでも、十分楽しむことができるだろう。操作性やプレイ感覚は、後のシリーズ作品と比較しても何ら劣るところはない。基本がしっかりしているだけに、2D対戦格闘ゲームが好きなら誰でも「KOF」特有の立ち回りを堪能できるはずだ。
シリーズでこの1本! との問いかけに「KOF'94R」をオススメするかといわれれば迷うところだが、過去の作品で「KOF」シリーズのファンになった人なら、チェックして損はないだろう。複雑化した近年のシリーズ作品に慣れた人にはシンプルに感じるかもしれないが、そのぶんキャラクタの特徴や攻防といった根っこの部分がダイレクトに堪能できるからだ。
(C)SNK PLAYMORE ※「ザ・キング・オブ・ファイターズ」は株式会社SNKプレイモアの登録商標です。
□SNKプレイモアのホームページ (2005年1月14日) [Reported by 豊臣和孝]
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