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【特別インタビュー】

ナムコ「リッジレーサーズ」
開発スタッフに聞く(後編)


 



    左:小林賢也氏
     株式会社ナムコ「リッジレーサーズ」ディレクター

    右:寺本秀雄氏
     株式会社ナムコ「リッジレーサーズ」アソシエイトプロデューサー

    【「リッジレーサーズ」】

    12月12日 発売
    価格:5,040円



 株式会社ナムコがPSP (プレイステーション・ポータブル) に向けて本体と同時発売される3Dレースゲーム「リッジレーサーズ」。改めて復活する「リッジ」の開発エピソードをお伺いする特別インタビュー。ラストとなる3回目をお届けしよう。まだ前編、そして中編を読んでいない方は、通して読み進めていただくことをオススメする。(文中敬称略)


■ 3タイプの「ドリフトタイプ」

「スタンダード」、「マイルド」、「ダイナミック」の3タイプが設定されている「ドリフトタイプ」

――「スタンダード」、「マイルド」、「ダイナミック」という3つのドリフトタイプが選択できるようになったのはどういった理由からでしょうか?

小林 各タイトルいろんな“リッジ挙動”があるなかで、それぞれのニーズを満たすものを用意したい、ということがまずありました。僕がオススメなのは“スタンダード”なんですが、それに対して、もっとジャジャ馬的な、“あらゆるコーナーをドリフトで抜けたい”というニーズもあるでしょうし、“ドリフトを最小限に抑えてグリップでコーナーを抜けたい”という方もいらっしゃると思うので、“スタンダード”を中心に、両極端の挙動を用意したと。

――そうすると、ドリフトのセレクトによって、ニトロゲージの溜まりやすさが変わったりするんでしょうか? 例えば、「マイルド」のほうが早く溜まっちゃったりするんですか?

小林 「ダイナミック」のほうがドリフト中の減速量が少ないので、どちらが溜まるかといえば「ダイナミック」のほうが早く溜まると思います。ドリフト中の速度が大事なんです。

――なるほど。それと、レースゲームにはつきものの「チューニング」の要素に関してはどうお考えですか?

小林 「リッジ」はパッと遊べてパッとやめられるというイメージがあるので、チューニング要素はニーズとして低いかなと考えました。そういった意味でこちらでセットを用意したという感じです。

寺本 携帯機というのはやっぱりちょっとした空き時間に遊ぶとか、“次の飛行機まで何分あるから今遊ぼう”という時のテンションが大切だと思うんですよ。そこにあわせて考えていくと、チューニングメニューというよりは、3タイプぐらいにまとめて好きなものを選べるといったほうが一番いいんじゃないかと。「ワールドツアー」の「おまかせツアー」はそういったニーズに向けた仕様ですね。

――「リッジ」シリーズとは違いますが、「R:Racing Evolution」にあった、プレイしながらのチューニングなんてのも楽しかったので、次回があれば、入れてほしいなあ、なんて……。あのシステムでちょこちょこいじるとまた楽しかったりしましたし、タイムアタックで「あともうちょっと……」と思うときにすぐエディットできるとか。携帯機だから逆に何度も遊ぶので、セッティングにはまれそうな気もします。思いつきですが。

小林 ちょっとしたセットアップ、なんだかいいですね。次は検討してみたいと思います(笑)。

――どっぷり浸って遊ぶ人もいれば、気軽にさくっと遊ぶ人もいる、という意味では、PSPでのタイトル展開はなかなか幅が広いニーズを捉える必要がありそうですね。

小林 そうですね。

寺本 “どっぷり”遊ぶ方には「ワールドツアー」をオススメします。長く遊んでもらえるようにいろいろ仕込みましたので。パッと遊べてパッとやめられるから、薄っぺらい内容というわけではないです。


■ ACでの通信対戦のノウハウが詰め込まれた「ワイヤレスバトル」

最大8人までが対戦できる「ワイヤレスバトル」

――「ワイヤレスバトル」、いわゆる対戦に関してですが、具体的にどうなっているんでしょうか?

小林 無線通信可能範囲に、電源を投入したPSPと、「リッジレーサーズ」のソフトを持ち寄っていただければOKです。最大8人がプレイ可能です。その中の1人が、「ワイヤレスバトル」を選択して、「レースの開催」を選択してもらってコースとマシンのクラスを選択します。すると「今レースを開催します」という情報を発信します。残りの7人が「ワイヤレスバトル」を選択すると、開催レースが見えるようになっているので、そこに参加すると。あとは開催者の判断でスタートボタンを押してもらえれば、マシンセレクトに入っていきます。

――「ワイヤレスバトル」に参加して、初めて通信対戦しているレースが見えるわけですね。

小林 いろいろアイデアはあったんですが、「シングルレース」や「ワールドツアーズ」を遊んでいる無線範囲内のプレーヤーに告知をするといったものとか……いろんな事情がありまして。今回はPSPの無線通信を最大8人できちんとやろう、というところをターゲットに開発しています。

――無線通信ということで、パケットのロスだとか、電波状況によってのアクシデントなどが考えられると思いますが……。

寺本 具体的な手法はちょっとわからないですが、ナムコという会社はある意味、通信対戦という分野では業務用でも10年以上前からノウハウを積んでいる会社ですので。その辺を活かしながらやっています。

小林 プログラムディレクターはレースゲームの仙人みたいな人ですよ(笑)。最初は「ファイナルラップ」から「ACE DRIVER」あたりまでレースゲーム畑を歩いてきた人なんで、そういったノウハウをフルにつぎ込んで作っています。

――初めてといってもいろいろ対策はされていると。

小林 お客さんとしては当然求めている機能だと思いますし。PSPを買って一度は遊びたいスペックを活かした何かを欲していると思いますし。美しいグラフィックと、もう一方で無線機能は使いたいでしょう。入れないわけにはいかないですから。

寺本テストで遊んでみましたが、やっぱり対戦は面白かったですよ。

小林 60フレームで動いているものをリアルタイムで通信するわけですから、相当苦しいですよ(笑)。

――対戦での仕様に関してもう少し教えていただきたいのですが、クラスの違いだとか、コースの選択可能範囲に関してはどうなっているんでしょうか?

小林 「ワイヤレスバトル」時は、全コースで遊べます。マシンに関しては、ほとんどのものが選択できるようにしました。ワイヤレスで遊べるという状況は、かなり恵まれていると思いますので、そのときにやっと集まったのに制限を書けるのはどうだろう、ということで、大きな気分で(笑)。

――ありがたい仕様ですね。対戦を遊ぼう、という気になる人も多いと思います。

小林 そこは結構悩ましいところだったんですけれど、“「ワールドツアーズ」をクリアしていくことで「リッジ」の世界が広がっていくというゲームなのにいいの?”という意見もあったんですが。せっかく買っていただいたお客さんにそういう制限をつけるのは良くないだろう、という判断です。

寺本 「できない」というのは最悪だよね、という。やっと対戦できるのに「お前クラス5のデータ持ってる?」とか「どこどこいける?」と聞きながら遊ぶこと自体がすでにせっかくの無線機能を活かしたことにはなりませんよね。

小林 知らない人とでも対戦できる、というのが今回のいいところですから。

――そこでも「サービス過剰」な感じですね(笑)。


■ 「リッジ」ファンの“祭り”?=「リッジレーサーズ」

歴代「リッジ」シリーズのBGMを手がけたスタッフが再集結

――ムービーの由水さんをはじめ、サウンドにも昔関わられていた社内外のスタッフが今回参加されていますが、どういった経緯で決定されたんでしょう?

寺本 “ツボ”を押さえるにはこれしかない、ということが大きな理由ですよね。上司に説明もしやすかったですね。「リッジ」というタイトルはナムコで皆が知っている、記憶に残っているわけですから。説明すると「ああそうか」とご理解いただいて。オファーに伺うときも「今回はこうしたいんで」と説明すると、「そういうことなら、じゃあ」ということで、基本的に断られたことが1度もないんですよ。サウンドの方々が集まったときも、相当盛り上がっていたようですよ。

――そういった意味では「リッジレーサーズ」というのは祭りというか、そんなタイトルですね。ナムコで「リッジ」といえばやはり看板タイトルということになるわけですが、そういうタイトルに関わるということに対してどんな心情なんでしょうか?

小林 僕がナムコに入社してから2年半ぐらいなんですが、ナムコで一番好きなゲームが「リッジ」だったので、担当できて本当に光栄というか、ラッキーというか、うれしくてしょうがないという感じです。ぶっちゃけて言えば、本当に僕がやりたいゲームを作っている、というところはありますね。

――逆にプレッシャーになることはありますか? ユーザーや先代までを作り上げていた人たち、自分の知らない領域を知っている人が社内外にいるわけじゃないですか?

小林 「リッジ」のファンの方の“ツボ”がそれぞれ違うし、マニアックなので、その方たちを最低限満足させなければならない、というところはありましたけれど、自分もその1人なんで(笑)。

寺本 サウンドの話とか、社外の人に頼むのもかなりムリなスケジュールだったりするんですよね。ゲーム本編もそうなんですが、それ以外にも何かを作る人にとってもムリなスケジュールなんですよ。でも「これが“ツボ”だもんね」となるとがんばれるというか。お祭りですよ。本当に……。

――社外のスタッフと一緒にということになれば、例えばムービーやサウンドなどを容量の都合で調整するといった際などは、内製に比べて難しくなかったんでしょうか?

寺本 さすがにあれだけのUMDの容量があれば、そこまでキツイことはなかったです。思ったところまではできたな、と思います。本体のメモリのやりくりのほうが大変だったので(笑)。

小林 今でもいっぱいいっぱいですよ。メモリに関してはパンパンですね。プログラマやビジュアルスタッフは僕らのわがままを吸収してくれて、苦労していたようです。企画側としてはPS2と同じノリで作れています。次にタイトルを作るときはバッテリーのことをもっと気にしないといけないかな、ということはあると思いますが。

寺本 ポテンシャルを持っているスタッフが本体の機能を使いこなすということであれば、そこにたどり着くという苦労はローンチタイトルということで難しいところはありましたが、たどり着いてしまえば、すごいポテンシャルを持っているハードだと思います。「いけるじゃん!」という感じですね。

小林 うちのスタッフは基本的にPS2に慣れているので、PS2で楽だったことが、PSPで難しかったり、その逆だったりすることはあったみたいですね。

寺本 プログラマスタッフも「リッジ」ファンだったりするわけですよ。そういった意味で要求を聞いてくれるんですよね。それは大きかったです。全体的にプロジェクトのモチベーションを維持しやすかったですね。


――最後に、「リッジレーサーズ」を購入したいと思っている方にメッセージなどあれば。

小林 「PSPを買ってよかったな」と思ってもらえるタイトルになっていると思いますので、よろしくお願いします。

寺本 「携帯だから、初期タイトルだから、この程度」という発想は一切なくて、今回はやれるだけぶち込んだ、という感じになっているので、満足してもらえると思います。それと、PSPを買ってその性能の限界を見たい、という人にとっても、多分液晶が一番キラキラ輝くタイトルになっていると思います。触れられる機会にはぜひ触れてもらってみてください。

――長時間にわたるインタビュー、ありがとうございました。



 というわけで、3回にわたるインタビュー、お楽しみいただけただろうか? いよいよ12日にはPSP、そして「リッジレーサーズ」が発進する。筆者も発売日を楽しみに待っていようと思う。

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※画面は開発中のものです。

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□ナムコチャンネルのページ
http://www.namco-ch.net/
□製品情報
http://namco-ch.net/ridgeracers_psp/index.php
□関連情報
【12月6日】まさに全部入り! ナムコ、PSP用「リッジレーサーズ」
ワイヤレスバトルやサウンド、そして新マシンやコースも紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041119/rrs.htm
【11月22日】【特別インタビュー】
ナムコ「リッジレーサーズ」 開発スタッフに聞く(中編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041206/rrs.htm
【11月19日】ナムコ、PSP用「リッジレーサーズ」
ニトロシステムやワールドツアーズモードなどを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041119/rrs.htm
【11月15日】【特別インタビュー】
ナムコ「リッジレーサーズ」
開発スタッフに聞く(前編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041115/rrs.htm
【11月10日】ナムコ、PSP用「リッジレーサーズ」3タイプの動画を公開!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041110/rrs.htm
【11月8日】ナムコ、PSP用「リッジレーサーズ」
PSP本体と同じく12月12日発売決定!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041108/rrs.htm
【9月25日】TGS2004ブースレポート~ナムコ~
プレイアブルタイトルてんこ盛り!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040925/namco1.htm
【9月21日】SCEJ、「PSビジネスブリーフィング」開催
PSPの実機を公開!! ただし発売日は公開せず
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040921/scej1.htm

(2004年12月8日)

[Reported by 佐伯憲司]


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