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KAMEX2004現地レポート

Blizzard Entertaiment Koreaブースレポート
韓国市場に欧米製MMORPGが本格展開

会期:11月25日~28日 開催

開催場:韓国総合展示場(COEX)

■フルローカライズによる間口の広さが、韓国MMORPG界に新風を吹き込む

 今回初出展となるBlizzard Entertaiment Koreaは、ブースで扱うただひとつのタイトル「World of Warcraft」を配信するために設立された会社とのこと。ブースの規模的には中堅ながらも、KAMEXには珍しい欧米のイラストを全面にあしらい非常に目立っていた。今年のKAMEXではヨーロッパのタイトルはほとんど見られない。ほとんどが韓国メーカーによる国内タイトルの出展であり、出展されるブースには、かわいらしいものや、日本的な雰囲気に近いキャラクタが描かれている。しかし、会場でBlizzard Entertaiment Koreaがその存在感を主張していたのは、見た目だけではなく、訪れたファンの熱気によるものだった。

空くことのない試遊台。KAMEXでは相当な人気タイトルの試遊台でもこれほどの混雑は珍しい
 詳しくは後述するが、この出展も、その存在感も、韓国市場での「World of Warcraft」の成功の結果である。他のブースに比べ、ちょっとした違和感を生むブース全体にみなぎる熱気は、Blizzard Entertaiment Koreaの「自信」のあらわれに他ならないのだ。

 ブースの構造はゲームのイメージに沿った建造物の中に、多数の試遊台を設置するという非常にオーソドックスな構えだが、ファンの熱心さが違う。試遊台の周りにはひっきりなしに人がいて、次のプレイを待っている。しかし、韓国ではプレイ時間を制限するという習慣はないため、座ったユーザーはえんえんとプレイをしてしまう。そのうち並んでいるプレーヤーは飽きて、他に移ってしまうが、そのころには次の人が待っている、試遊台に人がいない時間がない。これほどにプレイを待ち望む人が多いという状況は、KAMEXでは珍しい。

 「World of Warcraft」は「Diablo」などで知られるBlizzard Entertainmentの作品で、北米などでは有料サービスも既に開始されている。同社のファンタジーRTS「Warcraft」の世界を舞台としたMMORPGで、プレーヤーはエルフやドワーフのみならず、オークやアンデッドといった混沌側のキャラクタとしてもプレイできる。

クエストを進めるプレーヤー。メッセージやインターフェイスなど、すべてがローカライズされている
 非常に多彩なクエストを実装し、シングルプレイや、最大5人のパーティープレイをフォロー。最近の欧米型MMORPGの流行でもあるプライベートダンジョンルールも導入され、快適なプレイが楽しめる。もちろん「Warcraft」の世界観を踏襲した本作はPvP要素も充実。アクション性と戦略性を併せ持つ戦いが楽しめる。

 2001年9月に制作が発表されて以来、全世界のプレーヤー達が首を長くして完成を待ち望んでいたのだが、2004年の春からβテストが開始され、11月23日から北米などの地域で正式サービスが開始された。

 韓国では、11月12日からβサービスを開始。いきなりのアクセス集中でサーバーがダウンし、あわてて追加のサーバーを用意するほどの大人気となったという。現在10万人以上がオープンβサービスに参加している。この熱心さは、北米を初めとした全世界で例を見ない一番の人気とのことだ。

プレイをしながらチャットを楽しむ。会場内での協力プレイも行われていた
 「World of Warcraft」は現在、韓国国内の市場人気でもベスト3にはいっているという。韓国ではこれまで、「ウルティマオンライン」や「エバークエスト」という欧米型MMORPGが市場に参入しているが、韓国産のゲームの人気を脅かすような成績を記録できなかった。本作の人気は、異例であり快挙といえるだろう。

 スタッフに聞いたところ、人気の秘密は「ローカライズ」にあるようだ。「World of Warcraft」はゲーム内のテキスト、キャラクタ達の会話、ムービー、すべてを韓国語に翻訳を行なっている。韓国ではPCゲームを英語版のまま遊ぶプレーヤーも多いが、やはりすべてがローカライズされているのは大きな魅力だという。従来の欧米型MMORPGは翻訳という部分で国内のプレーヤー達に敬遠されていた。ゲームのほとんどで英語をそのまま使っていたのである。しかし、きちんとしたローカライズにより、プレーヤーの関心が大きく拡がったとのことだ。

 韓国ではまずSF的な世界観でのRTS「StarCraft」が爆発的な人気を誇り、その流れをくむ「Warcraft」はどのシリーズも非常に大きな人気を博し、国内でもプレーヤー達が腕を競っている。世界観を同じくする「World of Warcraft」はそれだけでも大きな魅力がある。それに加えて、丁寧なローカライズにより、英語の知識が少なくても、すんなりと入り込むことができるとのことだ。

 本作の大きな魅力のひとつは、非常に凝ったシナリオシステムにある。物語を体験しているかのような冒険を行ない、プレーヤーは強くなることができる。このシナリオだけではなく、韓国産ゲームが未だ実現できないレベルでの世界観の深さ、歴史の重厚さ、世界の広大さが韓国のプレーヤーを魅了しているという。PvPシステムを初めとした凝った戦闘システムもまた、プレーヤー達に衝撃を与えているとのこと。

 本作にはPvPが可能なサーバーとそうでない冒険を楽しめるサーバーがあるが、どちらも人気が高いと。PvPサーバーでは、例え敵に倒されても、敵に所持品をルートされることもなければ、アイテムを落とすこともないというルールが評価されているという。

 「World of Warcraft」はちょっとごついキャラクタが多く、キャラクタ的に「濃い」部分もある。韓国のプレーヤーのはこういった絵柄を受け入れるのか聞いてみたところ、日本的な可愛いキャラクタも好きだが、骨太の筋骨隆々としたアメリカの絵柄にも人気は強いとのこと。グラフィックのリアルさを大きく評価するプレーヤーも多いとのことだ。

 欧米型MMORPGの最新作をフルローカライズによって受け入られやすい形で提供するというBlizzard Entertaiment Korea。同社には韓国市場での新しい成功をもたらすような期待がある。韓国での正式サービスの実施予定はまだ未定とのこと。また、韓国向けの独自展開のプランなども、現在はまだ予定されていないとのことだ。


■硬派なイメージを持ちながら、ほのぼのとしたイベントも開催

 試遊台で遊べるのは、レベル1のキャラクタで遊べる現在稼働しているゲームと同じバージョンのもの。少しユニークに感じたのが、本作ならではのシナリオを進めてプレイをする人がいる反面、従来の韓国MMORPGの試遊台のプレイ感覚そのままに、いきなり街の外に出て、怪物を殴り始めるプレーヤーも多かったこと。

会場で配っていた非常に豪華なオープンβキット。ディスク4枚組でマニュアル装丁ともに凝っている。メーカーの本気を伺わせるサービスだ

 そこで気がつかされたのが本作のバランスのうまさだ。本作はどちらのプレイスタイルでも快適にプレイができるうえ、欧米では正式サービスしている完成度があるために、プレイ感覚もまた、怪物との駆け引きや、強力なスキルの使い心地など、非常に充実した楽しさがある。特にソロプレイで敵をどんどん倒し、フィールドを駆けめぐる姿は韓国産MMORPGようなバランスを感じさせ、韓国プレーヤーが受け入れやすい理由がここにもあると思わせた。

 「World of Warcraft」ではオークたち混沌側と、エルフや人間達の種族ではスタートポイントが違うが、同じ勢力に属していれば、試遊台同士のプレーヤーによる連携も可能だった。会場のプレーヤーの何人かはチャットを行ないながら、協力プレイも楽しんでいた。

 ブースにはバスを使ったコーナーもあり、そこでは初心者のためのプレイ案内をする予定だったが、空調がないため、ただでさえ暑かった会場以上の蒸し風呂状態になってしまい、プレイを楽しめた人が少なかったようだ。ワゴンの奥には豪華な「World of Warcraft」コーナーがあったのがユニークだった。

 欧米のタイトルを扱うBlizzard Entertaiment Koreaブースだが、開催イベントは非常にKAMEXらしい素朴な楽しさをもったものが開催されていた。コスプレ女性との撮影会から、ゲームタイトルをかたどった「電撃イライラ棒」の様なミニゲーム、さらには看板のオークを弓で射るゲームなど、筆者から見るとチープさを感じる部分もあるが、来場者は非常にわくわくした顔で列を作り、真剣にプレイしていた。けっしてグッスが目的ではなく、ゲームそのものを子供から大人までが楽しむという、そのノリは「お国柄」を思わせるものだった。

 欧米のタイトルを強く出展しながらも、韓国らしいほのぼのとした雰囲気も併せ持っているBlizzard Entertaiment Korea。「World of Warcraft」の人気も韓国のユーザーが快適なように、ローカライズを積極的に行なった結果だった。同社の制作姿勢による市場の結果によっては、今後韓国市場だけではなく、外国の作品がいかに成功するかの貴重なデータになってくれるだろう。

【スクリーンショット】
初心者コーナーとしてバスの中に作られたブース。昨年のKAMEXでは流行った出展だが今回は少な目 バスの中は冷房がないため蒸し風呂状態に。初心者を指導するコンパニオンもちょっとつらそうだった バスの奥にあるVIPルーム豪華な環境でプレイが楽しめる……かもしれない
バスの側面はイベントコーナーになっており、様々なゲーム大会が開催されていた

【World of Warcraft】
エルフやドワーフとオークたち混沌の軍勢が争うという、一見オーソドックスなファンタジーにみえるが、機械文明など、独特の世界を構築している。RTSのシリーズでは戦う軍勢が中心に描かれていたが、本作では世界の住人のひとりとして冒険することとなる

(C) 2004 Blizzard Entertainment. All rights reserved.

□KAMEX2004のページ
http://www.kamex.or.kr/2004/eng/
□Blizzard Entertaiment Koreaのホームページ
http://www.worldofwarcraft.co.kr/
□関連情報
【2004年09月04日】Game Stars Live VUGブースレポート
壮絶なベトナム戦争が体験できる「Men of Valor」ほか
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040904/uk_vi.htm

(2003年11月20日)

[Reported by 勝田哲也]


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