|
ガンホー「ヨーグルティング」ファウンダーインタビュー |
会場:ガンホー本社ビル
9月の東京ゲームショウのガンホーブースにおいて、複数の新作タイトルが電撃的に発表された。その中に含まれていたタイトルのひとつが「ヨーグルティング」。韓国Ntixsoftが開発を手がけ、NeoWizがサービス展開する学園モノのMMORPGである。
現在同作は、韓国内でクローズドβテストが実施されており、いまだ全体像は見えていない。発売時期も未確定だ。であるにも関わらず、ガンホーは9月の時点で日本での取り扱いを正式発表し、11月にはNeoWizとの正式契約を行なった。NeoWiz側の発表によれば、今回の契約に伴い、ガンホーが支払う金額は340万ドル(約3億5,000万円)にも上り、これは対日向けとしては史上最高額となるという。
金額云々についてはともかく、ここで重要なのは正式契約前に、日本で発表を行なえるほど、両社の間で水面下交渉が進んでいたということだ。このスピーディーな展開ぶりは、ガンホーの代表作であるMMORPG「ラグナロクオンライン」以来であり、同社がいかに「ヨーグルティング」を重視しているかを伺わせる。
そこで今回は「ヨーグルティング」のファウンダー(プロジェクトの発起人)である技術担当取締役兼コンテンツ開発部ゼネラルマネージャーの堀誠一氏にこの大がかりなプロジェクトの全貌について話を伺ってみた。
イメージイラスト。一見日本の作家の作品ようだが、細部に韓国センスが伺える |
本作のロゴ。これは韓国版であって、urlは日本版では変更されるという |
最初に声がかけにくい。だったら舞台が学校ならば、と考えたわけです。学校でみんな新入生だったら、友達になりやすいかなと。「ヨーグルティング」では、普通の学園生活が展開されるわけではないんですが、学校ならば全ユーザーが体験していることですから、コミュニティーのハードルは低くなると考えました。
編集部: 先日NeoWizから、ガンホーと「ヨーグルティング」の日本展開に関して、総額340万ドルで契約合意に至ったというプレスリリースが発表されましたが?
堀氏: あれは340万ドルすべてが契約金というわけではありません。金額だけが大々的に取り上げられてしまうのは、他の企業の方にも迷惑を掛けかねないということも懸念しています。NeoWizのリリースでも決して契約金というだけではなく、「開発協力金」というポイントを説明しているはずです。「ヨーグルティング」はまだ開発中のタイトルで、「開発協力金」と言う意味合いが強いんです。あの金額すべてが、契約金というわけではありません。
編集部: 「開発協力金」というのは余り聞かない言葉ですが、具体的にはどういった用途に使用されるお金なのでしょうか?
堀氏: 一番最初の契約の時に、NeoWiz側は非常に多くのスタッフを用意するという話をしていまして、ガンホーとしてそこに疑問を持ちました。それは何をするスタッフなのかという質問をしたところ、「日本向けに特別チームを編成するため」という答えが返ってきました。ガンホー側でのローカライズ以上の、たとえば専用のイベントやNPC、アイテムなどの開発レベルでの独自展開を可能にしていただけるということで、こちらとしても積極的に協力していきたいということになったんです。ギミックが凝ったマップなど、専用のエンジニアが必要になる部分での独自展開も視野に入れています。
特別チームでローカライズなどを行なうため、根幹のシステムを開発した時点で、日本向けの開発がスタートできるわけです。通常の日本展開と異なり、韓国の開発が終わってから日本向けに改めて作り直すというわけではないのです。ガンホーが直接開発チームに加わるのではなく、日本のローカライズチームがNeoWiz内で編成されるという感じです。
この計画は、NeoWizの海外展開の思想を受けたものです。日本は、お正月イベントや、雛祭りイベントなど季節に応じたイベントを喜ぶユーザーが多い。そういった「国際色」をフォローするためには、それぞれの国専用のチームがいて独自の対応をするスタッフが必要になる。
季節イベントでも日本と中国ではまったく違うものになる。世界中で同じものを動かすのではなく、独自の展開も織り込んでいこうという思想があるんです。もちろん、他の国で好評だったものは相互で情報をやりとりしたりして取り入れていく動きにもなります。
ライセンスだけではなく、開発支援チームを維持するために、資金を投入したわけで、NeoWizの提案との間で決まったものです。こういった関係を結ぶのはガンホーとしても初めてのことですね。パブリッシャーとしてNeoWizとガンホーの意見があったという部分も大きいです。パートナーとしてユーザーの意見をくんだ私たちの意見をとりあげさせていただく専門のチームを用意してもらったという形ですね。
協力してもらっている部分としては基幹システムではなく、グラフィックやエピソードなどをNeoWizの専門チームによってアレンジしてもらうという構想です。日本独自のアイテムやクエストを実装できればと思っています。このアイデアをより具体的にするための、開発支援なのです。
編集部: 日本で韓国産MMORPGを展開する上で、日本オリジナル要素について遠大な「夢」を語られるパブリッシャーも多いのですが、それが実行できているところは少ないです。今回の「開発支援金」という形での強力なパートナーシップの締結は、そうした日本オリジナル要素実現のための、布石のひとつと見て良さそうですね。つまり、確実に期待できる。
堀氏: そうですね。期待していいと思います。現在他のタイトルで日本のユーザーに満足していただけていない部分に対して、今回の対応がひとつの回答になればいいな、と考えています。
編集部: 本作は「ラグナロクオンライン」以上のムーブメントを起こす、と言う期待はありますか?
堀氏: ええ。「ヨーグルティング」にはそれだけの魅力のある可能性を秘めていると思っています。
■新感覚のMMORPG「ヨーグルティング」とは?
ガンホー技術担当取締役兼コンテンツ開発部ゼネラルマネージャー堀誠一氏。同社のコンテンツの一切を取り仕切る“ドン”である |
ガンホー社内入り口。扱うタイトルの数々が迎えてくれる |
非常に派手なエフェクト、躍動感のあるかわいいキャラクタ。今までの韓国産ゲームの印象を変える美しいグラフィックだ |
学校から突然ほとんどの先生がいなくなってしまった。わずかに残っている先生はNPCとして登場するようだ。日本のデザイナーを思わせるアニメ的なキャラクタデザインにも注目 |
キャラクタの装備なども日本のアニメ文化の影響が強く見える。日本のユーザーにも受けいられやすい世界観だ |
「学校から様々な世界に旅立つわけです」ホワイトボードで説明を行なう堀氏 |
堀氏: 12年生とか、かなり高くなるようです。現実の学校では韓国も日本と同じ6:3:3制ですが、そうした実際の年次とは関係なく高学年のプレーヤーも存在します。パラメーターなどは現在まだお話ができませんが、高学年のプレーヤーになるほど行く場所も増えていき、挑戦できるエピソードも増えます。
わかりやすくいうと年次がレベルに相当するという感覚ですが、本作の特徴的なコンセプトとして、「レベルアップをひたすらめざそう」というベクトルからの脱却を計っています。とにかくレベルをあげて強くなること、という韓国のMMORPGの定番から少し違うものを提供していきたいという理想があるんです。
編集部: 高い年次に進級が可能とのことですが、時間の流れはどうなっているのでしょうか?
堀氏: グラフィック的には日が昇り夜にもなりますが、学校はEVPにより時間軸的には止まっています。授業もなく、始業式や卒業式もない、「永遠の夏休み」のような状態です。この状態の原因となるような学校側とも、生徒とも異なる「第3勢力」の存在が徐々にに明らかになっていきます。これらの謎を解き明かすのがプレーヤーの目的なわけです。
編集部: プレーヤーキャラクタのバリエーションはどういったものがあるでしょうか?
堀氏: 現在テストの段階では、男女5種類、髪型と顔のバリエーションがあり、肌の色は3種類用意されています。今後モデルも増えていくかもしれません。装備によっても非常にバリエーションが広がり、天使の羽のようなものもあります。攻撃も、ミューラーを使うと音符で攻撃したりと、全体的に非常にかわいらしい雰囲気になっています。
それから「学校が増える」という構想もあります。その学校では別な制服があり、別なクエストが待っている。日本での展開の場合は、日本風の学校を作るという構想もありますね。
編集部: 韓国の学園ものということで、日本の学校観とのずれを感じる部分はありましたか?
堀氏: 「火山高」という映画がかつてありましたが、韓国と日本の学校文化に対する感覚は、それほど大きくズレてはいないと思います。「ヨーグルティング」に関してはもともと日本への提供を視野に入れた作品で、オープニングムービーから日本のアニメーションの文法に沿ったものでした。開発者も非常にその部分では研究をしています。ガンホースタッフへも、日本の学校に関する情報をほしい、という要望が来ています。
■ 日本では2005年サービス開始
編集部: 現在、韓国では「ヨーグルティング」はどういったスケジュールで展開しているのでしょうか? 正式サービスはどのくらいになりそうですか?
堀氏: 韓国では現在、第3次のクローズドβのテストをしています。本作はゲーム構成は新しいものになっています。斬新なアイデアが盛り込まれており、従来のサーバー構成とはちょっと違った部分がある。
現在のところ、クローズドテストの申し込みの応募が25万人、プレイをしているのは1万5千人だそうです。ただ、本作が1サーバー何人あたりか、どのくらいの規模になるかは今はお話ができません。第3次クローズドβはまさにこのポイントをテストしていますので、これが終わることでもうちょっと具体的な姿が見えてくると思います。ただ、クローズドβはさまざまなポイントをテストするため、第3次のテストが終わっても、まだ全体像は見えてはこないでしょうね。
スケジュールも同様で、3次のクローズドβテストが終わってから最終的に決まる、ということになっています。2005年頭にはオープンβをしたいということですが、正式なものではありません。
編集部: ということは日本でのスケジュールはすべて未定ですか?
堀氏: 2005年中にはみなさんにお見せしたいと思っています。できるだけ早くしていきたいですね。これは韓国の正式サービスとはまた別なスケジュールです。何故かというと、先ほどの開発費の話に戻るのですが、当社の協力金で日本側の特別開発チームが組まれるからです。これにより日本オリジナル展開も含めた上でのサービスとなる予定です。
■ 日本版オリジナル要素について
編集部: 今後の基本的な展開はガンホーが日本で行なっている「ラグナロクオンライン」に近いものになりますか? つまり、まず韓国版が基本になって、日本版オリジナル展開が盛り込まれるという形で。
堀氏: そうですね。ベースと、ストーリーラインは変わりません。日本向けの学校が作られるというプランはあります。しかし、これが日本「だけ」のものになるかというとそうではなく、海外から要望があれば、他の国にも移植されますし、日本でも、他の国の展開を取り上げていこうとは思っています。
現在はまだ構想の段階で、確証的な話ができないんですが、NeoWizも海外のデベロッパーと組むのが我々が最初とのことですので、これからいろいろ話をして模索していこうというのが現状ですね。日本展開の詳細は、今後もっと具体的につめていきたいと思います。まずは第3次クローズドβテストが韓国で終わり、韓国のスケジュールが決まってからですね。日本版は、遅くても2005年中にはお見せしたいと思っていますが。
現状ではまだお話が始まったばかりで、ガンホーとしても今後の計画を具体的にお話しできるレベルではまだありません。現在は私が中心に話をまとめていますが、今後「ヨーグルティング」に関しては、日本版プロデューサーにバトンタッチし、情報はプロデューサーからのものになっていくと思います。私の方は、「GO」や「ROND」など、ガンホーのオリジナルタイトルの開発に戻ります。
編集部: 日本オリジナル展開を視野に入れているということですが、具体的なものはどんなものになるでしょうか?
堀氏: まだホントにはなせるレベルではないんですよ(笑)。グラフィック面やエピソードで充実させることができるようになると思います。詰め襟の学生服や、セーラー服やブレザーなどが取り入れられた日本的な学校を作る場合、システム面より膨大なグラフィックデータが必要となりますよね。こういった部分を開発支援スタッフと協力できればと思っています。
編集部: 最後に本作を扱うことになった抱負をお聞かせください。
堀氏: ガンホーは「ラグナロクオンライン」を提供して、その後「A3」、そして次に「タントラ」が控えていますが、「ヨーグルティング」の提供で、ガンホーにはまた別なテイストのゲームを手がけることになります。
ガンホーは「ヨーグルティング」のようなかわいらしいキャラクタと、学園ものというテイストをユーザーに提供するのは割と“得意分野”だととらえています。今までの経験を活かしつつ、新しい挑戦をしていきたいと思っています。ご期待ください。
(C)1997-2004 NeoWiz Corporation, All rights reserved, Copyright (C)2004 Ntixsoft Inc., All rights reserved.
※画面は開発中の韓国版のものです。
□ガンホーのホームページ
http://www.gungho.jp/
□NeoWizのホームページ(韓国)
http://www.NeoWiz.com/kor/
□「ヨーグルティング」公式ページ(韓国)
http://www.yogurting.com/CommonServlet/MainPage
□関連情報
【9月24日】ガンホー、ゲームアーツと共同開発の「Codename:“GO”」他、
「ラグナロクオンライン」路線のかわいいイメージのオリジナルタイトルを続々発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040924/ghsin.htm
(2004年11月17日)
[Reported by 勝田哲也 Interviewed/Produced by 中村聖司]
GAME Watchホームページ |