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★PS2ゲームレビュー★
選手の顔や体型はもちろん、球場の看板やユニフォームのデザインにいたるまで、すべてがリアル指向の野球ゲームシリーズ最新作。セ・パ12球団の528選手および球場が実名で登場し、通常の対戦やペナントレースの他にも、オリジナル選手を育成する「ルーキー」モードや、試合の結果に応じてもらえるVP(ビクトリーポイント)を貯めてアイテムを購入するというユニークな機能も搭載されている。 開発は「パワプロ」こと「実況パワフルプロ野球」シリーズと同じパワプロプロダクションが担当。「実況パワフルプロ野球11」で育成したオリジナル選手をそのまま本作品にデータを移してプレイできる画期的なシステムも採用している。 本作は今シーズンのペナントレース前半戦終了時点でのチームデータをいち早く導入し、ルーキーや途中移籍の選手データなども完璧に反映させているが、それだけではない。前作「プロ野球スピリッツ2004」が発売されてまだ半年しか経っていないにも関わらず、ゲームシステムを一部変更したり、アイテムを追加するなどの新しい試みもいくつか行なっており、単なる「データの追加バージョン」にとどまらない内容となっている。
それでは、前作との比較などから、本作の魅力に迫ってみよう。 ■ システムはほぼ従来どおり。コアユーザーも初心者もすぐに楽しめる親切設計! 選手の操作方法は前作とまったく同じなので、前作および「パワプロ」シリーズに慣れたプレーヤーであればすぐに実戦を楽しむことができる。「パワプロ」とは選手の細かい操作感覚に違いはあるが、「トレーニング」モードをしばらく遊んでみれば問題なく対応できるだろう。
また、初心者には基本操作から丁寧に教えてくれる「遊び方」モードが用意されているのでとても親切だ。マニュアルに書いてある内容を、わざわざ実際のゲーム画面を使って詳しく説明してくれるので非常にわかりやすい。前作同様、このような初心者に配慮した点は大いに評価したい。
ゲームシステムを見ると、「ペナント」モードにおいてパ・リーグのプレーオフルールが新たに採用され、特定条件を満たすと特殊な「監督コマンド」が使用できるオプションなどが追加された。他にもレーダー上でランナーの向きが表示されるようになったり、守備シフトの変更が素早く行なえるショートカット機能を追加するといった微調整も施され、より気持ちよく遊べるように工夫されている。 唯一大きく変化したのはピッチング画面。テレビ中継の映像と同様に、センター方向からホームベースを見たアングルでプレーするようになった。球場ごとに微妙に異なる視点を見事に再現し、一見しただけでは本物の番組と間違えそうになるほどのリアルな画面になっている。これはバッティングの画面も同様で、まるでネット裏から観戦しているような気分でゲームを楽しむことができる。 ただ、これには短所もある。球場ごとに視点が異なるため、球場が変わるたびに目を慣れさせないといけない。特にバッティングの際には、前作に慣れているプレーヤーであっても、視点が変わるごとにストライクとボールの見極めには苦労するだろう。元々本シリーズは、右打者と左打者とでは視点が大きく異なるシステムになっていることもあり、筆者はこの作業にかなりの時間を費やしてしまった。
また、バッティングの際にストライクゾーンの表示が見にくい球場が一部存在する。あくまで筆者だけの主観であるが、例えば福岡ドームだと高めのストライクゾーンの境界線と背景(フェンスと人口芝の間)のラインが溶け込んでいて非常に見にくい。他の球場においても、ストライクゾーンの色を球場ごとに変えるなどして、もう少し見やすくする工夫がほしかった。
筆者が最も不満だったのは、CPUの難易度設定。初期状態の「ノーマル」でプレイすると、CPUは攻撃の際にほとんど打てず、三振の山を築いてしまう。極端なケースでは、ド真ん中に3球続けてストレートを投げただけで三振することもある。そもそもスイング自体あまりしないため、守っている野手はかなりの“ヒマ状態”になってしまうのだ。これではせっかく導入した高度な守備シフトを試す機会すらなく、あまりにももったいない! いくらリアルな画面を実現しても、ただ投げているだけではさすがに退屈だ。 前作では同じ「ノーマル」設定でもより歯ごたえのある攻撃を仕掛けてきたと筆者は記憶しているが、なぜこのような極端な設定にわざわざ変えてしまったのだろうか? なので、初心者の方であっても対CPU戦はワンランク上の「強い」に設定を変えて試してみることをおすすめしたい。 選手の動きや実況の音声など、場面ごとの演出については文句のつけようがない。選手ごとの特徴をよく捉えた投球およびバッティングフォームは必見。中でもホームランを放った時の演出は爽快感および迫力ともに格別で、打った瞬間に選手がガッツポーズをしたり、即座に視点を変えてボールが描く放物線を見やすくするなど、心憎いまでの配慮がなされている。もちろん実況アナが同時に叫び、また観客も大歓声をあげるので臨場感もバツグンだ。
各場面での演出を全て見ていると1試合に30~40分ほどかかるため、どうしても時間がかかってしまうが、見たくない場面はボタンを押せば省略できる点は嬉しい。
■ 前作ユーザーへの親切設計で、より快適な遊びやすさをアピール! 本シリーズではゲームの結果に応じてVP(ビクトリーポイント)と呼ばれる所持金が貯まり、これを使ってショップでアイテム類を購入するという独得のシステムが存在する。ショップではユニフォームやタイトル画面の背景といったビジュアル的なものをはじめ、飛距離が延びて長打が出やすくなるボールや、オリジナル選手を育成する「ルーキー」モードで使用するお助けアイテムなどが売られている。また、VPを使って選手の潜在能力を引き出し、実力をフルに発揮させる「覚醒」を行なうことも可能。 このVPはCPU戦やホームラン競争などを繰り返し遊んで集めるしかないのだが、全てのアイテムを揃え、かつ全選手の能力を覚醒させるにはかなりの時間を要する。そのため、ひいきのチームおよび選手に関するもの以外は必然的に後回しになるか、手付かずのまま敬遠してしまうユーザーも少なくないハズ。
だがここで、開発スタッフは心憎いサービスを提供してくれた。前作のセーブデータを引き継ぐと、すでに購入したアイテムをそのまま持ち越せる便利機能を採用したのである。しかも、データを引き継いだ時点で10万VPが無条件で入手できるという破格の大サービス付き。前作を買ってくれたユーザーに対して、再び膨大な時間をかけて“仕込み”を行なう諸々の手間を省いた、このような配慮はたいへんありがたい。
■ 「ルーキー」モードでお手軽育成も楽しめる 本作には「パワプロ」シリーズと同様に、オリジナル選手を育成する「ルーキー」モードが存在する。好きな球団に入団した後、自主トレ、キャンプを経てオープン戦に出場し、これらの評価によって選手の能力が決定する。 「パワプロ」シリーズと決定的に違うのは、とにかく簡単かつ迅速に選手を作れること。アドベンチャー形式でおなじみの「サクセス」モードとは異なり、自主トレとキャンプは練習メニューのコマンドを選択するだけなので、難しく考える必要はほとんどない。また、選手の成長はゲーム開始時に選んだ練習パートナーの能力に大きく依存するので、例えばスラッガーを育てたい場合はカブレラや小久保といった大砲と組んでしまえばよい。後はパワーやミート系のメニューを中心に消化していくだけで、ほぼ希望に沿った選手が作れてしまう。 キャンプ終了後はコーチの評価ポイントによってオープン戦の出場機会が与えられる。オープン戦は最大でも3試合しかなく、しかも途中出場の場合はそれ以前のイニングは操作が不要なので、短時間で選手が出来上がる。途中で選手が病気になるといったアクシデントも起こらないので、進行は実にスムーズ。 ただし特殊能力を取得するためには、試合で相応の結果を出すことが必要となる。例えばチャンスに強くなるためには、当然ながら打点を多く稼がなくてはならない。この点は「パワプロ」シリーズ同様にシビアになっているが、一部の能力については試合終了後にもらえるポイントを利用して購入することができるので、難易度はかなり控えめだといえる。 「ルーキー」モードにおいては、複雑な要素を一切外し、あえて難易度を下げたことを筆者は評価したい。「パワプロ」シリーズのように膨大なシナリオを覚える必要がなく、かつ短時間でゲームが終わるので、日ごろ忙しい社会人でも気軽に楽しめるハズだ。
また冒頭でも触れたように、「実況パワフルプロ野球11」のサクセスモードで作成したオリジナル選手を登録させることも可能なので、すでにデータを持っている人はこちらもぜひ利用したい。
■ 新しい定番シリーズとなるか!? 固定ファンをガッチリとつかむ商品戦略に脱帽 本作は、対CPU戦ならば1試合約30分で、「ルーキー」モードであれば1時間ほどで1プレイ終了。基本操作に一切の変更を加えず、かつ「遊び方」と「トレーニング」モードで初心者にも十分な配慮がなされており、とにかくとっつきがいい。購買力はあるが仕事が忙しくてプレー時間があまりとれない、なおかつ野球好きの多い30代以降の社会人に強く訴求を図ったものと推察される。既存のユーザーに対してはデータを引き継ぐサービスで固定化を図り、さらには別タイトルである「パワプロ11」のユーザーをも取り込んでしまおうという、マーケティングを強く意識した開発を実現させたのは「お見事!」の一語に尽きる。 また、前作の発売直後からインターネット上でアンケートを積極的に募り、その結果を早速反映させている点も見逃せない。本作品においては、ユーザーから新しい実況の音声を募集し、それらの中から特に要望の高かったものをきちんと採用している。「パワプロ」シリーズと同様に、今後も末永く定番化するための布石を着々と打っているのだ。
野球ゲーム本来の魅力である打つ、投げる、走る楽しさを追求していることはもちろん、新規ユーザーにはわかりやすいシステム設計を施し、なおかつ既存のユーザーもしっかりと確保するための工夫をしていることを大いに評価したい作品である。
□コナミのホームページ (2004年10月12日) [Reported by 鴫原盛之]
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