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World Cyber Games 2004現地レポートUnreal Tournament 2004トーナメント |
会場:Bill Graham Civic Auditorium
日本代表として決勝トーナメントに進んだhanbei選手も1回戦目で姿を消した「Unreal Tournament 2004(UT2k4)」だが、ベスト8が出そろった時点でアメリカとドイツの対決構図がくっきりと浮かび上がってきた。ドイツからは4冠の王者であるGitzZz選手と今年7月のWSEC(ELECTRONIC SPORTS WORLD CUP:ヨーロッパのe-Sports大会)でGitzZz選手を破ったmouzAOpen_Burnie選手の2名が登場。そして、選手全体のレベルでは世界最高と噂されるアメリカからはアメリカ予選1位のstryfe_us選手と2位のx6CombatCarl選手、という具合にドイツとアメリカから2名ずつがベスト8へと上ってきた。
そのほかのメンツも豪華で、昨年のWCG2003の優勝者であるイタリアのForresT選手、準優勝者であるオランダのfnatic_Lauke選手など、UT2k4では名だたるプレーヤーが勝ち上がり、「世界一決定戦」にふさわしいトーナメントになった。もともと、ヨーロッパ勢vsアメリカという対決構図は古くは「Quake III」の時代から「Counter-Strike」や「Unreal Tournament」にその場所を変えて対決が続いている。今回のWCGはこの構図が象徴的に現れた大会となった。
ドイツ代表のGitzZz選手。日本国内でのUTコミュニティでも、そのアグレッシブなプレイスタイルにファンが多い |
筆者が見た限りではあるが、GitzZz選手特に中近距離における攻防が優れている印象を強く持った。通常、敵を発見するとまず狙撃系武器であるLightning GunやShock Rifleで遠距離から敵を狙撃するものだが、GitzZz選手はドッヂングと呼ばれるUTシリーズ独特の横っ飛びを使い、トリッキーな動きで距離を詰めるのだ。普通のプレーヤーがこれをやってしまうと距離を詰め切るまでに攻撃され、近づく前にやられてしまうのだが、GitzZz選手のすごい点はこの敵の攻撃をすべて避けて得意な距離へ持ち込むという点にあるだろう。それも素人相手の試合ではなく、WCGのような世界大会に出てくるプレーヤー相手にやってのける。その動きがいかにとんでもないか、想像していただけるだろうか。
一方、オランダ代表のfnatic_Lauke選手が怖いのは遠距離だ。中近距離の戦いではGitzZz選手ほどではないものの、同様に前へ前へと必中距離へ詰める一方で遠距離ではLightning GunやShock Rifleを確実に当ててくる巧さを見せる。特にDM-1on1-Roughineryのような上下に広がった多層構造を持ち、かつ入り組んでいるようなマップでは、その遠距離狙撃能力が発揮されるようで、下層階へと移動しようとする豆ツブのような敵をLightning Gunを使ってヘッドショットで撃ち抜くという芸当を見せていた。
加えて両選手ともに高いレベルで完成されているのが、シールドを初めとしたアイテムコントロールの巧みさだ。「UT2k4」を初めとした1on1が主な対戦モードとなっているゲームの場合、「アイテムを相手に取らせず独占すること」が重要となってくる。武器とシールドをフル装備で持ってるプレーヤーとRespawn(復活)直後の裸同然のプレーヤー。どちらが有利かはいまさら言うまでもないだろう。このアイテムコントロールは基本的にマップ内にルートを大まかに設定してプレーヤーはそこを巡回し、一定周期で再出現するアイテムをとり続けるといった具合で行なわれる。例えばシールドを+100する「スーパーシールド」などは、取ってから55秒後に再出現する。この55秒を肌感覚で覚え、55秒ごとにその地点へと戻ってくるわけだ。俗に「シールドコントロール」とも呼ばれるこの戦略が、対戦では重要になってくる。
GitzZz選手やfnatic_Lauke選手のレベルになってくると、これを取り逃さないのは当たり前の話で、逆にこの55秒という再出現時間を逆手にとり「シールドを餌にして、これに寄ってくる敵を倒す」という戦法すら使ってくる。GitzZz選手はアメリカのinfinite選手と戦ったときに、なかなか互いに出会えない状況に業を煮やしてシールド周辺をしばしホールド、様子を見に来たinfinite選手を倒すという芸当を見せていた。
mouzAOpen_Burnie選手(左)とGitzZz選手(右)。同じドイツ代表ということもあり、試合が決着した直後でも、両選手はフレンドリーな雰囲気だった。やはり世界大会で同国人が近くにいるのが心強いのだろう |
この試合、終始mouzAOpen_Burnie選手ペースで進んだ1戦目はさしたる盛り上がりもなかったが、激戦となったのは2戦目からだった。シールドコントロール確立へのアドバンテージともなるFirstBlood(先制ポイント)を取ったGitzZz選手は、その勢いでシールドコントロールを確立。ポイント差をじりじりと付け、3フラグの差を維持して8分過ぎまで順当に試合を進めた。このまま2戦目はGitzZz選手が取るかと思われたその時だ。GitzZz選手が珍しくシールドコントロールをミスしてしまい、一瞬の隙をついてmouzAOpen_Burnie選手がシールドをゲット。その勢いを活かしてGitzZz選手をそのまま倒して怒濤のラッシュ、GitzZz選手に装備を整えるスキを与えない近接戦を展開し、その後3分の間に立て続けに6フラグを奪った。mouzAOpen_Burnie選手はそのまま逃げ切り体勢に移行。試合はそのまま決着した。
結局、決勝はfnatic_Lauke選手とmouzAOpen_Burnie選手の戦いとなった。こちらも1戦目はfnatic_Lauke選手の一方的な試合となったが、2戦目が世界一決定戦にふさわしい一戦となった。互いにシールドコントロールを完璧に握れなかったものの、mouzAOpen_Burnieがじりじりとフラグを稼ぎ始め、気づけば3フラグ差がついていた7分過ぎに試合が動いた。特に転回点らしきものがあったわけではないのだが、fnatic_Lauke選手がじりじりと差を縮め始めた。気づけばラスト1分でついに同点に追いつき、ラスト30秒を切ったあたりでfnatic_Lauke選手はついに逆転! そのまま勝負を決めた。
やはり今回の対戦では、fnatic_Lauke選手の遠距離戦におけるLightningGunの冴えに加えて、接近戦の巧さが際だった。シールドを+100するスーパーシールドを取った直後のmouzAOpen_Burnie選手を、逆にfnatic_Lauke選手はLink Gunで倒してしまったのだ。決してmouzAOpen_Burnie選手の近接用の武器が整っていなかったわけではない。それでも倒せてしまったということは、fnatic_Lauke選手の近接戦闘が相当に極まったレベルにあるということだろう。
(2004年10月11日)
[Reported by Tyokuta@ukeru.jp]
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