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★PS2/WINゲームレビュー★
主人公であるハーフバンパイアの“レイン”を3人称視点で捉えたアクションは、PCゲームではおなじみの移動と視線を独立させた操作系になっている。今回リリースされたのは、同作の日本語ローカライズバージョンで、PCはノーカット、PS2はCERO18歳推奨ながら残酷表現がオミットされたものになっている。本稿ではPS2版を取り上げていきたい。
■ “レイン”ありきのゲームシステムやアクション
基本的な操作は左スティックでキャラクタの移動、右スティックでキャラクタの視界コントロールを担当。L1で近接攻撃、R1で武器による射撃、L2、R2で武器の切り替え、そして×ボタンでジャンプ、○ボタンで180°回頭、という形になっている。PCでのキーボード+マウスの操作系をDUAL SHOCK2に落とし込んだ操作形態は、PCゲームプレーヤーのほうが馴染みやすいかもしれない。
両腕に装備したトンファーを発展させたようなブレードと、様々な飛び道具を使いこなすことができる彼女は、ジャンプ能力も人間をはるかに超え、さらに数々の特殊能力を持っている。ただし、水だけは弱点で、水に接触していると彼女のライフは徐々に失われていってしまう。敵の攻撃を受けても同様。というわけで、このゲームはライフ制が採用されている。 ・「吸血」
これ以外にライフを回復する方法はなく、ミスして再スタートする以外はゲーム中、吸血するほかはない。また、ジャンプ中や走り中からの吸血モーションのスムーズさは、あまりにも見事というほかはなく、ライフ回復手段としてこのゲームの中で重要な地位を占める行動だけに、丁寧に作られている印象だ。 この吸血をどこで行なうかが、まずこのゲーム攻略上重要なポイント。吸血には多少時間を必要とし、最中は射撃武器を持たない場合は無防備になり、敵の攻撃があった場合はもれなく食らってしまう(吸血中に左スティックで敵の向きを変えることができ、盾にしたり、吸血中×ボタンで吸血を中止することは可能)。また、素直に吸血できる敵とそうでない敵がいる。基本的な方針としては、強力な敵を攻撃しながら、合間にザコ的存在のキャラから吸血してライフを回復、もしくは集団でいる場合は強力な敵を優先して攻撃し、ラストにザコキャラから吸血というパターンを考えていけばいいだろう。
最初は吸血できない敵でも、ダメージを与えると逃げ出したり行動を変えるときがある。その状態になれば吸血できるので覚えておきたい。むやみやたらに敵を切り刻むのは、あとで回復できない状況に陥りがちなので、わざと敵を無視して先に進むことも必要になるだろう。1人で出現してくるザコ敵はまさにライフ回復チャンス、というのがこのゲームの面白いところだ。エネルギー回復アイテムが歩いてわざわざこちらのほうまでやってくるというのだから……。これは奇妙な感覚だ。
・「ドリルキック」 彼女は×ボタンでジャンプできるが、ジャンプ中にもう1度×ボタンを押すと、回転しながらキックを放つことができる。巨大な敵に攻撃する際にも使えるこのドリルキックは、壁を壊すという使い道もある。 鍵がかかって空かないドアの横などに亀裂の入った壁があるなら、このドリルキックの出番というわけだ。たまに、ドアそのものをドリルキックで破壊する必要も出てくるので覚えておこう。ちなみに、左スティックの左右+ジャンプボタンでサイドターンもできるが、横方向にジャンプしたいときは×ボタンを押してからスティックを倒さないとこれに化けてしまうので注意が必要だ。サイドターン中でもドリルキックは可能。ジャンプ中、サイドターン中も射撃は可能。
・「オーラセンス」 ハーフヴァンパイアには「オーラセンス」と呼ばれる独特な生体センサーが備わっている。障害物を無視して周囲の生物を発見したり、ゲーム上重要なポイントを指し示す。生物の周りに立ち上るオーラを見れば相手の状態がわかるようになっており、吸血可能かどうかは最初、このオーラを見て確認するといいだろう。ゲーム中重要なポイントは水色の球状のオーラで表示されている。道中迷ったらこの水色のオーラがある方向に進んでいくのがセオリーだが、鍵がかかったドアなど、素直にそこにたどり着けるとは限らない。 広いフィールドを駆け巡るACT1、入り組んだ基地内を探索するACT2など、とにかくこのオーラセンスに頼るべき場面は多い。方向キーの左でオーラセンス視点になるが、その際は近くのもの以外は生物と次の目標以外は薄暗く見えなくなってしまう。また、画面右下のコンパスの上に、水色のオーラがある方向が常に表示されているので、それを見ながら先へと進んでいけるのは親切だ。
・「ディレイトモード」
ただし、「オーラセンス」、「ディレイトモード」、「ブラッドレイジ(後述)」中の画面は画面中心から一定の範囲以外では視界が多少狭まってしまう(ブラーがかかる)ので注意が必要。十字キーの下を押せばこのモードに入り、もう一度下を押せば解除となる。どこでも使えてしまう点がこのゲームの難易度を下げているといってもいいだろう。
■ 射撃をメインとしたシステム構築 武器を装備した状態では、射撃対象が近くにいると、レインは画面外に敵がいても勝手に武器をそちらの方向に向けている。その状態でR1を押せばオートで射撃してくれるのは便利だ。しかも敵が高速に動くことはまれなので、ほぼ百発百中の射撃精度を誇る。複数の敵を相手にしているときは、左右の腕をそれぞれに持つ武器で別個に攻撃してくれる。逆に困るのは、敵と自キャラの間に段差がある場合や、間に壁など中途半端な高さの障害物がある場合でもこの行動をとってしまうこと。当然弾は届かないので、位置を変える必要がある。 武器にはハンドガンからショットガン、ライフル、はてはドイツ軍の兵器であるパンツァーファーストなども用意されており、それぞれ携行弾数が表示されているので、使い切ったらそれまで。パンツァーシュレックやダイナマイトなど爆風を生み出す兵器は、それを使って橋を撃破したり、まとめて敵を倒したりとド派手なことも可能だ(爆風はこちらもダメージを受けるので、周囲の状況を考えながら使用する必要あり)。短機関銃は4丁まで、サブマシンガンとライフル類で2丁まで、手榴弾系の爆弾を2つまで、特殊兵器を1丁同時に所有することが可能だ。
かたや近接攻撃では、両腕のブレードを利用した攻撃と、体術がメインとなる。序盤ではブレード攻撃ヒット中にL1ボタンをさらに押すことでブレード→キックのコンビネーションが使える。ゲームを進めていくとこのコンビネーションが増えていき、最大5段までのコンボを覚える。ただし、この近接攻撃は射撃と違い、基本的にプレーヤーがきちんと相手方向にレインを向けて攻撃しないと当たらない(キックは判定が大きいようだが)。射撃のオートぶりに比べて、近接は使いにくいという印象だ。
だが、この近接攻撃は“使う必要のある”システム設計になっている。それはどういうことかというと、近接攻撃を使って敵を攻撃するごとに蓄積される「ブラッドラストゲージ」。このゲージが満タンの状態なら、レインの最大の攻撃モードである「ブラッドレイジ」が使用できるのだ。これを利用しないことには、大型キャラやボスキャラには太刀打ちできない。そういった意味で、お手軽に射撃武器ばかりで敵を攻撃するわけにはいかないし、吸血ばかりしているわけにもいかない、という仕組みになっている。 ・「ブラッドレイジ」 彼女のもう1つの能力、それがブラッドラストゲージが満タンの状態で△ボタンを押すことで発動するレインの必殺技(ブラッドレイジ中に△を押せば中止)である「ブラッドレイジ」だ。このゲージ中は画面の周囲が赤くなり、「ディレイトモード」と同じく敵の動きがスローになる。さらに通常とは異なるモーションの近接攻撃を繰り出すことができ、コンビネーションも5段まで用意されている(通常とは別に覚える)。 この近接攻撃は通常とは比較にならない攻撃力の高さを誇り、また攻撃判定もかなり大きい。舞うような動きで敵を切り刻む彼女はまさに戦闘マシンという言葉がピッタリの攻撃力を発揮してくれる。大型キャラやボスキャラ戦では必須。ブラッドラストゲージがなくなるまで攻撃が可能で、途中で切れてしまうようなときは、さらにザコキャラを斬り刻んでゲージをため、再びブラッドレイジを発動ということもあろう。 また、先に進めばゲージが満タンでなくても使用できる「レイジアタック」という能力も手に入る。L1+△ボタンという操作で、ゲージの1/3を消費する変わりに特別な攻撃が出せるというものだ。
このゲームが射撃を主体としているのは、この近接攻撃中にもR1による射撃を受け付けているところ。当然照準はオートになっている。敵を斬り刻みながらマシンガンをぶっ放すという破天荒な行動はなかなか刺激的で、思わず笑ってしまうほど強力であることは間違いない。ほかにも、乗り物に乗り込んで戦ってみたり、その破天荒ぶりは一見の価値があるといってもいいだろう。
■ 説明不足でやや唐突感のあるデモ オープニングムービーはレンダリングCGによるもので、レインが組織「ブリムストーン・ソサエティ」に見出され「ブラッドレイン」として行動するきっかけまでが語られる。ACT1は彼女と同じハーフヴァンパイアのミンスに導かれ、チュートリアル的指導を受けながら彼女と行動する。合間にはリアルタイムレンダリングのムービーシーンが随所に登場するが、何の予備知識もないとかなり唐突なストーリー展開に見えるだろう。キャラクタの演技もキャラクタモデルほどは細かくなく、通常ゲーム中ではのそのそと歩くゾンビがマッハのスピードで移動したり、いきなりハープーンを渡されたり、あれだけ高速移動できて強そうだったミンスがあっさりいなくなってしまったり、ちょっと合理的すぎないか? という感想を持った。 ACT2以降ではナチスと戦うことになるのだが、こちらはまだ説明がそこそこセリフなどで行なわれることもあってか、あまり唐突感を感じなかった。元が2002年~2003年という作品だけに、細かな演出や凝ったカメラアングルを求めるのは酷な話かもしれないが、こういったところでさらにキャラクタに対して感情移入ができるということもあるので、もう少しがんばって欲しかったところだろう。
ナチスがらみの組織と主人公の対決というと、筆者の場合は「ロケッティア」などを思い出してしまうが、科学と超常現象的なミステリアスな組織という雰囲気は非常に好みなテーマだけに、もっと盛り上げて欲しいところだ。
■ 難易度も抑え目で遊びやすいが格闘部分はまだまだの感あり 一般的「洋ゲー」の範疇で考えれば、このゲームの難易度は控えめといってもいいだろう。ザコを残してライフを補給という戦略と、進行に詰まったら壁やドアを壊せというゲーム進行のコツさえ掴めば、あとは大型キャラ対策を考えれば、行き詰まりはなかなかないだろう。そういった意味で、万人向けとまではいかないまでも、アクションゲーム好きには一度触れてみて欲しいバランスになっていることが評価できるポイントといえる。また、「鋼の錬金術師」などに出演している朴ろ美さん(“ろ”は“王”偏に“路”)をはじめ、若本規夫氏や西凛太郎氏、塩田朋子さんなどの声優陣が吹き替え音声を担当しており、洋ゲーの味を残しつつも見事にローカライズを果たしている点もうれしいポイントだ。 ただ、格闘部分の紹介でも触れたように、射撃をメインとしたシステム構築がなされているので、3D格闘アクションなどを体験してきたプレーヤーにはウリのひとつである格闘アクションに少々物足りない感がある。具体的には斬ったときの敵のリアクションのなさ、攻撃判定のわかりにくさ、対象に対して踏み込まないモーションと動きの荒さが感じられる。近接攻撃でのホーミングを取り入れたり、近接レンジで歩きなどの移動形態に対してもなにかしらの自動化、フォローを行なうだけでグッと印象が変わってくるはずだ。 また、攻撃がヒットするという手ごたえに関してももう少し煮詰めて欲しかったというところ。射撃で敵がプチプチつぶれていき、さらに格闘ではサクサクと敵が消えてしまうので、視覚的な手ごたえといえば強力なキャラのみ出現するライフゲージでわかるのみ。これがもう少し、手ごたえを感じられるものであったらより楽しくなると思うのだが……。 確かにDUAL SHOCKでの振動で射撃の反動や敵の巨大感を演出したりなど工夫してはあるのだが、プレイアビリティにも影響する演出面の弱さ、そして格闘に対応するシステムのフォローの弱さがこのゲームの評価を分けるだろう。わかりにくさは残酷表現のカットによるものなのかもしれない。ただ、こういった演出面のさびしさはこのゲームだけの話ではなく、PCゲームにも多い傾向であり、そういった部分からややプレイ感が抑揚のないものになりがちで、むしろこのゲームだけに求める話ではないのだろうが……。
総じて言えば、吸血、ブラッドレイジ、そしてアクションという要素が絡み合うことでこの作品ならではのオリジナリティはしっかり生み出されており、非常にいいものを持っていると言い切れる。ダークなイメージのヒロインと、それを表現するグラフィック(ACT1はちょっと暗すぎるかもしれないが)も水準以上のものを持っている作品だ。興味が沸いた方にはぜひプレイしてみることをオススメしたい。また、個人的な感想としては、ACT2からグンとゲーム的に面白くなってくる。ちょっと遊んで挫折、という人は、チートコードを使ってもかまわないから、ぜひ、ACT2を体験してもらいたい。
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□エレクトロニック・アーツのホームページ (2004年9月1日) [Reported by 佐伯憲司]
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