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★PS2ゲームレビュー★
■サンドロットがおくる「鉄人28号」
今川氏が手がける「鉄人28号」は、昭和30年代という時代を舞台に、ロボットが登場するという架空の世界を描いた原作を独自の解釈で再構築。今川氏が数々の作品でこだわり続けている「父と子」のテーマや、鉄人の秘密、戦争の記憶、さまざまなアレンジをくわえられて登場する原作のキャラクタ、豪華な声優陣の競演など、今川氏のファンのみならず、横山氏のファンにも見所たっぷりの作品である。 戦後十年、日本の人々は「もはや戦後ではない」を合い言葉のように、目覚ましい復興を遂げ、新しい生活への道を歩み進んでいた。ただし、そんな時代の波に乗りあぐねている者達を残して……。今川版「鉄人28号」は、千住明氏が手がける重厚な音楽に彩られて、新たなファンも獲得中だ。 本作、ゲーム版「鉄人28号」を手がけたのはサンドロット。OVA「ジャイアントロボ」等のロボットアニメ作品、および特撮作品に強く影響を受けたと思われる「リモートコントロールダンディ」を制作したことにより、一躍注目を集めた会社である。3Dグラフィックで街を丸ごと再現、そのリアルな空間に、ゲーム機のコントローラを模した“リモコン”で操る巨大ロボットを戦わせるその作品は、独自の実在感、独自の感触、独特の「もどかしさ」をもたらし、今まで他の作品では体験できなかったゲーム空間での「ロボット操縦の実感」を実現したのである。その独特のこだわりは、熱狂的なファンを生んだ。筆者もそのひとりだ。 「リモートコントロールダンディ」、「ギガンティックドライブ」そして本作。「鉄人28号」はキャラクタゲームという側面と共に、そのサンドロットがこだわり続ける「ロボット操縦ゲーム」の3作目にあたる。前2作が現代を舞台にしていたのに対し、今作は昭和30年代の街を、横山氏のデザインそのままのロボットが闊歩する。「マンガ」的なまさに「怪ロボット」と表現するにふさわしい敵と、迫力の戦いを繰り広げる。 ストーリーは今川版とも、原作ともちがう、シンプルなものにまとめられているが、サンドロットが繰り返し描き、問い続けている、「ロボットと人間の関わり合い」という部分でのアプローチをしているところは、ファンにはニヤリとさせられる要素だろう。 原作付きの作品は、納期などの問題もあり、ボリュームに関しては不安がある場合があるが、本作に関してはそれは杞憂である。思う存分ロボットの戦いを、とことんまで楽しむことができる。このサービス精神は、サンドロットならではのものだろう。 さらに、出演している声優は、今川版と同じキャストを起用しているため、非常に豪華。ロボットが戦う場面では、さまざまな凝った台詞を連発してくれる。原作に対して、強くこだわったロボットの動きと共に、今までの作品以上の「世界観」の厚みを実現しており、サンドロットファンには「夢の実現」と表しても過言ではないゲームとなった。 もちろん、この作品の魅力は、ファンだけがわかるような狭いものではない。「巨大ロボットの戦い」……このフレーズにピンと来る人にはもちろん、ロボット達が立つ画面の“実在感”は特撮好きの人も唸らせる迫力がある。「ロボットを外部から操縦する」、他の作品の追随を許さない、この感触を多くの人に体験して欲しい。 ■横山ロボットが画面せましと暴れ回る 今川版のストーリーをベースにオリジナルのストーリーが展開する本作「鉄人28号」。ストーリーモードでは、プレーヤーは少年探偵・金田正太郎となって、鉄人を操り、世界征服を策謀する悪の秘密結社X団に立ち向かう。 27号、バッカス、ギルバート、ファイアII世、モンスター……。横山氏の原作に登場するロボットを、今川版とも少し違ったゲームならではのモデルにアレンジ。それでいて「マンガ感」を失わない秀逸なモデリングでロボット達は生き生きと動く。 27号は今川版で見せたダブルチョップを駆使。モンスターはお腹の中から小型モンスターを発進させる。モンスターの技は、マンガならではの一見ハチャメチャなものだが、「直接操縦者を狙う小型爆弾」として、ゲーム的な解釈を与えられている。他のロボットの技も、怪光線や、飛び上がりアッパーなど、マンガ的テイストと、ゲーム的テイストをうまく融合させている。 筆者は鳥型ロボットを両腕にとまらせた「ファイアII世」がお気に入りだ。原作通り、“デベソのガキ大将”を思わせるユーモラスな姿ながら、両腕からリング状の光線を発射し、怪力をふるう。空を飛ぶことができず、敵との距離をつめにくいという弱点は、付属の鳥型ロボットが敵にまとわりついて攻撃することでカバーする。原作通り、鳥ロボットはかわいい外見ながらも憎たらしく、原作のアイデアをうまくゲームに取り入れていると感心させられた。 また、「多数の敵と対峙する」という要素は、原作を越えたシチュエーションといえるだろう。27号や、モンスターなどが「量産型」として登場し、鉄人を取り囲むというシチュエーションはヒーローものならではの悲壮感と、興奮がある。サンドロットの「地球防衛軍」で培われた、多数の敵を画面内に表現する技術が、さらに進化したと実感させられる場面でもある。これらの敵をうまくさばき、ガンガン倒していくことができれば、爽快感はたまらないものになる。 多くの敵をまとめて攻撃するのに便利な必殺技、「突進」が比較的楽に出せるのも本作の難易度を下げている。詳しくは後述するが、ゲームの難易度はイージーから5段階あり、ガードを駆使してワンパンチと突進に頼るという直線的な戦い方も、軽快なフットワークと手数で圧倒するという戦い方も可能で、初心者も、上級者も楽しめるバランスになっており、サンドロットの作品に触れるのが今作が初めて、というユーザーにも安心してオススメできる。 建物を土台ごと軽々と引っこ抜くことができるのは、ゲームならではのユニークな表現だろう。一般的な家屋から、巨大なビル、さらに国会議事堂まで、鉄人は軽々と持ち上げ、敵にぶつけることができる。自分の何倍もの体積、重さを持つ建物が、モデリングを崩さないままひょいっと持ち上がるその姿はシュールなものがあるが、敵ロボットにブチ当てたときの爽快感は非常に高い。正義の味方としては問題があるかもしれないが、つぎつぎと建物を持ち上げてぶつけまくるという戦い方も可能だ。 物理エンジンにも注目したい。重いはずのロボットが、空高く舞い上がったりと、本作は演出重視で、決してリアル一辺倒のものではないが、そこにはきちんと「重力」があり、それに裏打ちされた「実在感」がある。 現実の世界では、AIBOの登場など、「ロボット」の存在は、かってないほどに身近になった。有志達は「ROBO-ONE」といった大会まで開催し、自作ロボット達での戦いを実現させている。しかし、わがままを言ってしまえば、まだまだである。人間ができないほど高く飛び上がり、激しい打撃を浴びせ、技をくらった敵は地面を豪快に滑って吹っ飛ばされる。漫画やアニメを起爆剤に、人々が思い描く「ロボットの戦い」は、現実においては未だ夢の彼方だ。 本作は、そういった夢に、ひとつのベクトルで解答を試みている。ゲームの空間ならば、オートバランサーや、強度のある素材、大出力のモーター、人間を模したプログラムなど、ロボット開発の上で障害となる問題はある程解消できる。ゲーム空間に「実在」するロボット達によって、操縦者の意のままに格闘を行なうことができるのだ。 3D格闘ゲームにもこういった要素は見ることができるが、本作はゲーム的な技の応酬よりも、より「実在感」にこだわった作品である。原作ファン以外にも強くオススメしたいのは、このリアルな感触があるからなのだ。
■充実したやり込み要素 ストーリーモードは全25話、難易度が5段階あり、さまざまなシチュエーションでの戦いが楽しめる。各ロボットにはエネルギーゲージがあり、これを使用して必殺技を使うのだが、CPUが操るロボットにはその制限がなく、ちょっとズルイ印象を受ける。しかし、その逆境をはねのけて勝利したときの爽快感はなかなかのもの。さらに、1話をクリアするごとにボーナスポイントが与えられ、それを消費することで鉄人を強化できるので、初心者は、イージーモードで何度も同じ面をクリアしてポイントをゲット、強くした鉄人で高みを目指す、という方法も可能だ。 さらに、「チャレンジモード」では、より多彩な状況で戦える。各ロボットと戦うだけではなく、味方にもロボットがいて敵が一体というハンディキャップマッチや、国会議事堂を敵から守る戦い、X団員となって鉄人と対峙するシナリオなど、ストーリーモード以上にユニークなものが用意されている。 しかも、これらのシナリオを、ゲームの中で登場するどのロボットで挑戦しても良いのだ。ブラックオックスや、バッカス……さらにザコ・ロボットとも言うべきロビーのロボットすら、鉄人同様パラメーターをアップさせ、最強を目指せる。27号で居並ぶ最新型ロボットを足下にひれ伏させることすら可能なのだ。 ロボットの操縦者はストーリーモードに準拠。自然、メインの敵であったX団首領がプレーヤーキャラクタになることも多くなる。「こうなったら必殺技を見せてやる!」、「私のロボットの操縦技術は世界一だ!」、「ロボットの操縦は難しい」などなど、ユニークな台詞を聞きながら戦っていく展開、そして鉄人とは違うロボットはストーリーモードと違う感触をもたらす。 27号、ブラックオックスは敷島博士が操縦者に、モンスターは十字結社首領が操ることとなる。OVA「ジャイアントロボ」で策士・孔明を演じた中村正氏が声を当てるファイアII世を操るビッグファイア博士は、筆者的に注目したいキャラクタ。今川作品のイメージもかぶって、悪役然とした台詞の数々がすばらしい。「悪のロボット」を使う爽快感も体験できるのである。 チャレンジモードはふたりの協力プレイでの挑戦も可能。画面分割のため、ちょっと見にくくなってしまうが、凝ったシチュエーションをふたりで協力して戦う高揚感はグッと来るものがある。対戦だとロボット操縦での腕の違いが出てしまうため、殺伐とした雰囲気になりかねないが、操縦の基礎を覚えた友人のフォローを行なえば、ふたりで楽しめる。協力プレイは接待にも最適だ。本作は小学生も手を伸ばしたくなるような直感的な魅力がある。お父さんが戦いのサポートをしてあげる、というプレイもできるだろう。 もちろん、腕が上がってくれば、ガチンコの対戦もエキサイトできる。操縦者を狙うというテクニカルな攻撃も可能だ。本作では、マルチタップを使用することで最大4人での戦い方も可能。さらに、画面分割ではなく、カメラをオートにした「見やすい」戦いもフォローされているため、ロボットの操縦に集中した戦いも可能だ。 「ロボットを操る」という、本作の最大のセールスポイントを、各モードはさまざまなアプローチで描いている。好きなロボットを極限まで強化しても良し、友人と強さを競っても良し、人それぞれの楽しみ方を見つけだせるだろう。
■リモコンを持つ者によって変わる、鉄人の動き 本作のストーリーモードをノーマルでクリアしたとき、レビュアーの視点でまず思ったのは、「鉄人はロケットを装備して、空から戦えるのがウリなのに、ゲームではあまりできなかったなあ」という感想だった。ひたすらガードで相手の攻撃を耐え、敵に近づいたら偶然のワンパンチにかける。必死になって戦い抜いた際の筆者の攻略法はそれのみだった。鉄人はパワー以外、ほとんど特徴のないロボットだったのである。 ところがである、対戦モードで、何気なく飛行をして敵に体当たりをすると、敵の体力が減ることに気がついてからは、認識が全く変わったのだ。飛べるってすごい! 敵を引き倒してから腕をつかみ、敵をつかんだまま空高く舞い上がって投げ飛ばす! 建物を持ったまま、敵に突進する。鉄人の操縦のイメージは拡がっていき、それがどんどん実現していく爽快感は非常に大きなものだった。 特に敵をつかんでからパンチボタンのゲージを溜め、サイドステップを繰り出すことで実行できるジャイアントスイングができるとわかったときの高揚感、そして振り回す敵ロボットの身体で、他の敵をなぎ倒すことができたとき、筆者にとって、本作の楽しみ方は倍以上に拡がったのである。 鉄人最大の技「急降下」は、絶大な威力をほこるが、発動条件も厳しい上に、着地地点が把握しにくいため、使いどころがないかと思っていた。しかし、敵をつかんで発動させると、確実に決めることができるのだ。それも、アニメのようにかっこよく。 正太郎のリモコンで、多彩な動きを見せる鉄人。「あんなリモコンで、そんな操作ができるのか?」こういった疑問は無粋なツッコミとして定番のものだが、本作はそこにひとつの解答を試みている、「できる!」と。プレーヤーの想像力とアプローチによって、鉄人を初めとしたロボット達は非常に自由に動き、その反応は、観客はもちろん、プレーヤーにすら驚きを与えてくれる。本作を能動的に楽しむほど、それが実感できるはずだ。 「良いも悪いもリモコン次第」筆者が発見した事実ではないが、この劇中の言葉が、これほど実感できるゲームはそう多くない。鉄人を木偶人形にしてしまうのも、原作通りの「世界一強いロボット」にするのも、「怪物」にしてしまうのも、プレーヤーのリモコン操作次第なのである。プレーヤーによって、鉄人は全く別な動きを見せてくれるだろう。 本作は、敵との距離がうまくつかめないとか、当たり判定の微妙さ、敵に吹っ飛ばされると簡単に物陰に隠れてしまう、敵の戦闘員が鬱陶しいなど、単純に「ゲーム」という視点から見てしまうと、どうしても荒削りな部分が見えてしまう。原作重視のため、正太郎が空高くジャンプし、建物の上に飛び乗って視界を確保するという、前作までの方法がとれないことも不満のひとつではあるだろう。 特に、必殺技を連発する敵のアルゴリズムと、それに翻弄され、遠くなってしまったり建物に隠れたりして見えなくなってしまうロボットは、ゲーム的に仕方がないとしても、誰でも突っ込んでしまう不具合だ。ハードルが高いと感じる初心者も少なくないかもしれない。しかし、そこは現実と同じように、操縦者がロボットを追いかければいい。そのちょっとした不具合も、「リアルな感触」をもたらしてくれる、大事なスパイスなのだから。 コンピューターの空間内で、ちょっとオーバーながらもしっかりとした物理法則のもと、ロボットの格闘を、視点まで含めたポイントで実現している作品、その最新作が本作である。その「実在感」は、他の作品の追随を許さない。プレーヤーに必ず驚きを与えてくれるはずだ。 ファンとしてのみではなく、ゲームレビュアー的視点でも、本作の斬新さは強調しておきたい。「ロボットプロレス」を思いっきり楽しんでほしい。
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(2004年8月9日) [Reported by 勝田哲也]
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