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★PCゲームレビュー★

暑い夏にオススメ!! 雪と氷に彩られた不思議な旅
「シベリアII 日本語版」
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 開発元:Microids
  • 発売元:メディアクエスト
  • 価格:7,980円            
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2004年8月12日



 主人公ケイト・ウォーカーは、オモチャ工場の相続人ハンス・ボラルバーグと工場の買収契約を成立させるために、フランスの片田舎を訪れる。しかし、ハンスは数年前から行方不明。彼の足跡を追ううちに、ケイトは夢とも現実ともつかない不思議な世界へと足を踏み入れる……。

 からくり人形と、ゼンマイ仕掛けが彩る、美しく幻想的な世界。前作「シベリア」は、美しいグラフィックと、独特の世界観で人気を博したアドベンチャーゲームである。物語の中で、ケイトはその不思議な旅を続けるうちに、ハンスがはるか北西にある幻の島シベリアと、そこに住むマンモスに会うために旅を始めたことを知る。ゲームは、ケイトがハンスの夢を叶えるために、シベリアへ向かうカラクリ列車に共に乗り込むところで幕を閉じる。

 今作「シベリアII」では、ケイトがハンスの夢を叶えるために力を貸すことになる。しかし、シベリアへの旅は雪と氷に阻まれており、ハンスの身体はその過酷な旅に耐えきれないかもしれないほどに、老いている。ケイトは彼の夢を叶えられるだろうか? それ以前に、幻の島シベリアは、本当に存在しているのだろうか?

■雪と氷に包まれた世界での、奇妙な冒険

独特のセンスに彩られた、美しい世界を冒険できるアドベンチャーである
 本作は前作同様、マウスのみでゲームを進められるシンプルな操作性を持ったアドベンチャーゲームとなっている。アクション要素もなく、腰を落ち着けてじっくりとプレイを楽しめる作品である。プレーヤーは主人公ケイトをさまざまな場所に移動させ、調べたい場所にマウスのカーソルを置くことでゲームを進めていく。イベントが起きる場所は、カーソルが変化してプレーヤーに教えてくれるので、移動できる画面中をくまなく探索すれば必ず解法は隠されている。ハマリ要素もなく、ひとつひとつ謎を解き明かしていけばゲームは進行していくだろう。

 なんと言ってもこの作品の魅力は、美しい3Dグラフィックスと、謎めいた登場人物、そして独特の世界観によって演出される、“幻想的な空間”である。特に今作では、ケイトの前に現れる世界はすべてが雪と氷に覆われており、その寒々とした美しさは、プレーヤーを引き込まずにはいないだろう。

 猛暑の夏に本作がリリースされる、という状況もユニークだ。現実世界はうだるような暑さの中なのに、モニターの中はすべてが凍る極寒の世界。清冽な美しさを持つが、命そのものを消しかねない冷気がこちらまで伝わるような感触は、暑さを一瞬忘れさせてくれる。

【スクリーンショット】
主人公ケイト・ウォーカー。友人となったハンスのために、彼の冒険をサポートする。どんな困難な状況でも、ユーモアを忘れない女性 カラクリ人形のオスカー。ゲーム中、びっくりするほど役に立たないキャラクタだが、どこか憎めない。ケイトにとって彼もまた大事な友人 ハンス・ボラルバーグ。天才的なカラクリ職人で、旅を続ける汽車も彼の手によって作られた。生涯最期の夢として、幻の島シベリアを目指す
ロマンスバーグ駅を管理し、雑貨屋の主人でもあるエミリオフ。ケイトの旅の熱意を理解し、協力してくれる マルカ。利発な少女で、いつかロマンスバーグから出ていくことを夢見ている。母はジプシーで、この街で死別している ユーキ。犬とも熊ともつかない動物で、ケイトの旅の同行者となる。仕草のパターンが多く、大変かわいい



■幻の島シベリアを目指して

 主人公ケイト・ウォーカーを乗せた汽車が止まる。たどり着いたところは、駅のまわりにわずかしか建物のないような寂れた街ロマンスバーグである。

 駅におりたケイトは、先頭車両で汽車の運転をしているオスカーに声をかける。「何故すぐに出発しないの?」。ハンスの作ったカラクリ人形のオスカーは、見かけこそブリキの人形のようだが、几帳面で小心者で、びっくりするほど人間くさい。

 「石炭が必要なのです、ケイト・ウォーカー。汽車はゼンマイで動いているから大丈夫ですが、我々にとってここから先の寒さは危険です」

 オスカーはよく気のつく優秀なカラクリ人形だが、機関車の管理以外、実際的な作業はまったくしない。いつも、「私は汽車を守らなくてはいけません、ケイト・ウォーカー」といって首を振るばかりだ。かといって、老齢のハンスが汽車の外に出るのはさらに危険だ。

 ケイトは、駅にある自動給炭機のスイッチを入れる。低いうなり声を上げて、クレーンが動くがベルトコンベアーから石炭が送られてこない。どうやら、駅の下にある機械が動いていないようだ。

 駅の唯一の職員である退役軍人のエミリオフに給炭機のことを告げると、エミリオフは「修理人の到着を待つしかないな。1、2週間もすれば、来るだろう」と答える。とてもそんなには待てない。ケイトは駅の下に降りようとするが、鍵がかかって降りられない。エミリオフは「鍵をなくしてしまった。まあ、修理人が……」

 ゲームはこのように、ほとんどの登場人物は積極的な協力をしてくれない。ケイトが謎を解き、自力で進めないと何も進展しないのだ。特に街の鼻つまみ者である、サーコフ兄弟は露骨にケイトの邪魔をしようとする。しかし、フィールドをくまなくまわり、カーソルが変化する場所をじっくり探してアイテムを得ていけば、ストーリーは進んでいくだろう。手に入るアイテムは必ずどこかで役に立つ。根気さえあれば、誰でもクリアできる。

 残念ながら筆者は前作をクリアしていないのだが、十分な予備知識なしにすんなりとこのゲームを楽しむことができた。もっとも、プレイをつづけるうちに、再度しっかり前作をプレイしたくなってしまったのだが……。ハンスが、その生涯最期の夢としているシベリア行きの旅。ケイトはシベリアの存在に疑いを抱きながらも、協力を惜しまない。本作だけでもハンスの熱意とケイトの決心は充分伝わるが、ケイトが慣れ親しんだニューヨークから、いかに異世界に旅立つことになったのか? 何故ここまでハンスに協力をするようになったのか? そこに激しく興味を引かれた。このあたりの事情は前作をクリアした人だけのご褒美ということなのだろう。前作とあわせてプレイすることでキャラクタに対する思い入れはさらに深くなっていきそうだ。

ゲーム中に挿入されるムービーシーン。行方不明になったケイトを追って、ニューヨークの会社は探偵を派遣するのだが……
 「夢か現実かわからない世界」というのが、本作に独特の魅力を与えている大きな要素である。大げさな機械の動きは、本作の「カラクリ」に関する、制作者の特別な思い入れを感じさせる。また、街の住人はどこか謎めいた雰囲気があって、異国を訪れた心細さを、プレーヤーはゲームをプレイすることで、確かに感じることができるだろう。

 異世界の雰囲気は、次に訪れる「修道院」で一層強くなる。何とか給炭を成功させたケイトの前で、ハンスが旅の疲れか、病に倒れてしまう。ロマンスバーグには医者がいない。病を治せる可能性があるのは、丘の上にある修道院だけだ。

 しかし、修道院は独自の戒律によって厳しく他者を拒んでいる。ケイトは、女であるという理由から、修道院に入れてももらえないのである。それでも、なんとか修道院に入り込み、ハンスを診察してくれる手配をすることができたのだが、司祭は残酷に告げる。「彼はもう手遅れだ。魂が旅立つまで、ここにいた方がいいだろう」途方に暮れるケイトに、意識を取り戻したハンスは言う。「修道僧のアレクセイを探すんだ。彼ならきっと僕を助けてくれる」。ケイトは必死で修道院を探し回るのだが……。

 黒いローブに身を包み、フードをかぶったまま一言も発しない修道僧は不気味の一言でとても病を治してくれ人達に見えない。しかも、救いを求めて訪れても、最初は修道院に入れてくれさえしない。中の建物もまた冷たい。雪が降りしきる陰鬱な空をバックにそびえ立つ尖塔はひたすら威圧的で、異教徒を拒む厳しさだけが強調されている。さらに、司祭の狂気を感じさせる信仰ぶりと、暖かみのない言葉は、この修道院のイメージをさらに悪くさせている。

 そんな修道院なのに、やはりここにも「カラクリ」が隠されているのが面白い。ハンスと、そしてシベリアに関係ある者達は、ことごとくカラクリに対して親和力を持つのだろうか? この仕掛けを見つけることが、ハンスを救う鍵となる。謎を解き明かすうちに、修道院に隠されたもうひとつの顔が現れる展開は、秀逸なアドベンチャーゲームならではの爽快感と驚きがある。

 ゲームの合間に挿入されるムービーシーンが、世界の異様さを一層際立たせている。ムービーの内容の多くは、ケイトの元の職場、ニューヨークのオフィス。ムービーの中で、ケイトの上司達は、異国に旅立ち消息を絶ってしまったケイトを必死に呼び戻そうとするのである。彼らの交わす言葉には、裁判や契約といった、いかにもアメリカ的なビジネス会話で、その会話が幻の島へと向かうケイトの旅の幻想性を強調する。ケイトが現在立っている場所が、本当にこの世界と地続きの「現実の場所」なのか、アメリカのシーンを挿入することで、さらに確信が持てなくなってしまうのだ。

 何とか健康を取り戻し、列車に戻ったハンスは、ケイトに、ロマンスバーグにいる友人へ届け物を頼む。その届け物とは、かってこの街にハンスが訪れたときに送った、機械馬の修理部品であった。ハンスの代わりに機械のパズルを解き、再び動き出す機械馬。しかし、店を出たケイトは信じられない光景を目撃する。列車が走り出してるのだ! ケイトを置き去りにしたまま……。

 果たしてケイトとハンスは、無事にシベリアにたどり着けるのだろうか?

【スクリーンショット】
汽車の内部。前作のストーリーを彷彿とさせるカラクリ人形がある ロマンスバーグの街。雪雲に押しつぶされそうな、陰鬱な色彩の小さな街だ 酒場の主人コーサス。ハンスの古い友人である。心優しい人物で、孤児となったマルカを育てている
給炭機を動かすためのエンジン。作動させるためにはガソリンが必要となるのだが…… サーコフ兄弟。手前の背の低い人物が兄である。兄の意地悪さは、街でも有名だ 出発寸前、ハンスが倒れてしまう。旅は彼には過酷すぎるのだろうか?
唯一の医療機関である修道院に急ぐケイト。厳しい戒律で孤高を保っている場所だ 独自の戒律で、ケイトを入れてくれさえしない修道院。門番をだまさなくては入れない 何とか司祭と出会い、ハンスの治療を頼むことができたのだが……
修道院のある場所に仕掛けられたカラクリ。司祭達ができない、ハンスの治療を可能にする秘密が隠されている 酒場にあるカラクリ。かってハンスが酒場の主人に送ったものである。動きを止めていたのだが、ケイトの手で蘇る ケイトを置いて走ってしまう汽車。ハンスが望んだことなのか? ケイトは列車に追いつくことができるだろうか?
雪と氷に閉ざされた、幻想的な世界がケイトとハンスを待っている。ふたりは幻の島、シベリアへたどり着けるのだろうか?



■じっくりと謎を解いていく感触

 アイテムは効果のあるものしか手に入らず、イベントは決まったところでしか起こらない、しかもそれらはすべてカーソルが教えてくれる。と、このゲームの特徴を書き出すと、自由度が少なく、難易度の低いゲームのように思えるが、決してそうではない。

 日本のアドベンチャーゲームに比べると、圧倒的にゲーム内の情報量が少ないのだ。手に入れたアイテムをどこで使えばいいのか? なによりも目の前に見えているものがなんなのか? それさえもわからないものがある。

 たとえば、修道院にあるろうそくを作る機械は、ヨーロッパの人ならばわかるかもしれないが、日本人ですぐにわかる人はいないだろう。中盤に出てくる通信機や、レーダーなど、ちょっとしたヒントがあれば、ずいぶん謎は軽くなるはずだ。とはいっても、日本のゲームのように、主人公が独白をして、くどいほど状況説明をしてプレーヤーを導く。というのはあまりにも「ゲーム」的でいやだ、という意見もわかる。「さじ加減」を考えさせるゲームである。プレーヤーをちょっと突き放した感触は、海外ゲームならではであり、その雰囲気も楽しさのひとつかもしれない。

 登場人物達も、親切とは言い難い。ロマンスバーグでは利発な少女マルカが助けてくれたからまだなんとかなったが、そこから先はほぼノーヒント。登場するキャラクタがヒントになるような有益な情報を話してくれることはほとんどなく、とにかくカーソルを合わせていくしかない。

 ほとんどの場合は、カーソルの変化する「怪しい部分」というのがわかるので、プレイに支障がないが、グラフィックが緻密で美しく、画面に情報を詰め込んであるのが、プレーヤーを惑わせる。特にケイトがどこに移動でき、どこに移動できないかが場合によってはかなり曖昧な印象を受けた。移動可能な場所は、カーソルが光って教えてくれるのだが、光る範囲がかなり広いため、後ろにしか動けないかと思えば、左後ろに別の場所があったりと、「ちょっとわかりにくいな」と、感じた部分もあった。

 とはいえ、これは筆者が、急いでプレイしたために感じた不満かもしれない。グラフィックや雰囲気を楽しみ、じっくりと腰を落ち着けて取り組めば、自ずと道は開ける。試行錯誤や、フィールドを何度も歩き回ることも、解いたときの達成感を盛り上げる、すばらしいスパイスになってくれるだろう。

 協力してくれないキャラクタ達も、画一的な反応ではなく、謎めいた言葉ではぐらかしたり、とりつくしまもなかったりと、さまざまだ。彼らとのユニークなコミュニケーションも、世界観を楽しむ大事な要素である。

 なにより、ケイトの明るいキャラクタ性が、この氷の国の冒険を楽しくしてくれる。極寒の地に挑むケイトは、自身の為ではなく、友人ハンスのために尽力しているのだ。この「暖かな」テーマが、身も凍るような世界に独特の暖かさを与えている。言い訳ばかりして、ほんとにまったく何の役にも立たないオスカーの存在も大きい。難解な謎解きだけがウリのゲームではなく、世界観と冒険を楽しむ作品なのだ。

 最後に、筆者が特にわからなかったシーンをスクリーンショットの最終段に3つ掲載しておいた。プレイで詰まった場合は、活用していただきたい。もし、“ネタバレ”をしたくないと思われる方は、拡大しないでいただきたい。また、どうしても詰まってしまった、というプレーヤーは、海外の情報サイトを検索するという方法もある。

 最終的な解法は用意されている。誰でも気軽に、楽しめる作品である。本作の世界観に惹かれた人には、是非ともオススメしたいゲームである。
 

【スクリーンショット(ネタバレあり)】
いきなり駅から出ることもできないケイト。彼女を助けてくれるのが利発なマルカである 入手したアイテムは必ず必要な場面がある。手当たり次第に試すのも有効な手段だ 詰まってしまったと感じたら、とにかく歩き回ってカーソルの変化を見逃さないようにする
へらへら笑ってばかりの修道僧。彼の機嫌を取らなくては、修道院には入れない 壁をこすると出てくる模様。何のヒントもなかったのが、ちょっと大変だった パズル風の謎もある。試行錯誤してうまく解けたときの爽快感は格別だ
ろうそくを作る機械。ヨーロッパでなら見慣れたものかもしれないが、筆者には謎が解けるまでわからなかった ルアーを使うシーン。緑色のルアーを使うというヒントはあるのだが、有効なのは、鮮やかな緑のものではなく、右上のくすんだ色のものである 機械に浮かび上がる謎の数字。浮かび上がらせるためには、かなりの数のスイッチを操作しなくてはならない。しかもその2種類の数字は他の場所で使うことになる



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【シベリアII 日本語版】
  • CPU:Pentium II 350MHz以上
  • メモリ:Windows98/Me:128MB以上
          Windows2000/XP:256MB以上
  • HDD:インストール時:400MB以上の空き容量
  • ビデオカード:VRAM 16MB以上(32MB以上推奨)


□メディアクエストのホームページ
http://www.kids-station.com/game/
□関連情報
【7月2日】メディアクエスト、「シベリアII 日本語版」を8月12日に発売
ピュアアドベンチャー「シベリア」シリーズ完結編
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040702/syberia2.htm
【3月2日】本日到着! DEMO & PATCH 「Syberia II」Playable Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040302/demo0302.htm

(2004年8月9日)

[Reported by 勝田哲也]


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