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★PS2ゲームレビュー★
コナミの歴史に残る名作シューティング「グラディウス」シリーズのナンバリングタイトル第5作目がついに発売された。首を長くして待っていた人たちはもう手にとって満喫しているかと思うが、まだ購入できていない、購入を迷っている、という方に、プレイ感を中心に述べていこうと思う。
■ 横スクロールシューティング、「グラディウス」の持つ質感 「グラディウス」らしい感じというと、“遮蔽板を剥がしていく感じ”、“レーザーでザコキャラをけちらす瞬間”、“顔なじみのボスキャラと対峙するときの緊張感”、“結晶”、“モアイ”、“細胞ステージ”……といったステージの雰囲気など、人それぞれいろいろあると思う。深く遊び込んだ人にとっては、周回を重ねて激しくなる“撃ち返し弾”のイメージかもしれない。 筆者の場合は、宇宙に浮かぶ星の1部分を真横から切って見せた、平面に展開する箱庭を進んでいく感覚に「グラディウス」らしさを感じる。本シリーズには、ファンタジックな世界を構築する多彩なステージが存在し、その多くに複雑な地形や、浮遊する物体が存在し、行く手を邪魔する。ただ美しい背景が流れてくる、ということとは異なり、例えば、要塞の中では機械がみっしりな壁の凹凸や、せり出す床、通路などがあり、それをくぐり抜ける体験をすることで、より直接的に要塞に侵入している感覚に引き込まれていく。そしてそれが、次の面の仕組みを知りたい、先を見たいから進みたい、という欲求に繋がる。 また、それと合わせてオプションの自由さ、不自由さといった感覚も、「グラディウス」っぽいものだと捉えている。自機をトレースするオプションは、地形や敵キャラに重ね合わせることでより効果的に強さを発揮する。これは今となっては見慣れたシステムだが、当初は“オプションが壁を抜ける”というゲームならではの虚構に驚いた。自機では行けない空間も、オプションなら地形に埋まって死ぬわけじゃなし、前もってうまく展開さえしておけば壁の向こうを攻撃できる。これがわかったときのゲームの面白さの飛躍感は、個人的に“凄い”ものがあった。 そして今作で、レーザーやミサイルなど個々の武装が強くなる方向とは違い、オプション操作ボタンによってオプション自体を動かせるようになった(Type2は異なる)ことに、そのとき感じた楽しみの飛躍感に似た感覚を味わった。敵は、まぁ相変わらず強いのだが、これまで以上に自由になったオプションを操作して何とか足掻くことで、切り抜けていけそうな希望、先へ進めそうな期待感を持たせてくれる。
今回の「グラディウスV」で最も特徴的なのが、このオプションコントロールのシステムであることは間違いない。過去のシリーズでは、主に自機をトレースするだけだったオプションが、本作では4種類のタイプから選択して、オプション操作ボタンで動かしたり固定したり、攻撃方向を回転させることができる。これをどう捉えるかによって、ゲームの捉え方も変わるのではないかと思う。個人的には、あの連なって付いてくるだけだったオプションを、振り回したり固定させられるというのはそれだけでとても嬉しいことで、最初はこれを操作しているだけでもかなり熱中できた。
■ 縦横無尽なオプションを使って さて、4つあるオプション操作の中で、個人的にオススメなのは、自機をトレースするオプションをボタンを押した時点の形状で固めることができる「Type1」の「FREEZE」。これが柔軟性に富んでいて使いやすいように思う。「Type1」は今までのシリーズでできなかった“固めたオプションを自ら地形に突き刺すように”して、壁の向こうを攻撃できる。 これぞ夢のオプション! STAGE2に登場する「DEATH」のような激しく動くボスに攻撃する場合は、斜めに伸ばしたオプションをボスにめり込ませて、ボスについて移動するということができる。また、要塞の狭い通路にいるときも、オプションボタンを押したり離したりする動きと連動してその場で細かい動きを繰り返すことで、一方向にオプションを伸ばし、地形のくぼみの敵を破壊できたりする。つまり筆者のようなオプションを“張る(あらかじめオプションを次の地形や攻撃に合わせて展開しておく)”ことが苦手な人でも、最初にうまくオプションを張れなかったせいで大ピンチ、という場面が少なくて済む。 ずらずら連なるオプションを引き連れて、逃げ回るのに必死な場面でも、固定することでこちらから積極的に反撃することも楽になる。「ビッグコアMk-III」と正面対決するときなどは、軸を微妙にずらした位置にオプションを固め、レーザーを避けられる位置から常に攻撃できるのでかなり気持ちいい。 最初は「Type4」の「ROTATE」オプションを気に入って使っていた。だが、これだと後方への攻撃が心許なく、後ろ方向にスクロールする場面でとても恐い思いをするのではないかと考えた。これは上下にはリーチがあるが背後にオプションを張れない「サンダークロス」タイプの「Type3」にも同じことを感じた。実際は「Type4」に関してはミサイルのおかげでそれほど後方に対して不安を感じなかったし、「Type3」に関しても絶妙なオプション配置のおかげでそれほど怖い思いをすることはなかったのだが。
また、見た目がダントツで格好いい「Type2」の「DIRECTION」は、一番癖が強く、最初、操作には慣れが必要だった。攻撃方向を転換する間、自機の動きが止まるため、敵の配置やボスの攻撃などをあらかじめ覚えた上でならいいが、行き当たりばったりで使うのはかなり恐い。ただ、背後方向に撃てるのは魅力で、かつ広範囲に攻撃を振り回せるという点では使いこなしがいがある。いずれ「Type2」を華麗に使って、水をまくようにザコを蹴散らし、真後ろの敵にレーザーを当ててやりたい。そのために“さっさと先に進むには”と考えて使い始めた「Type1」が、比較的オールラウンドで使いやすくて、今となっては離れがたいといったところだ。
■ 自機の武装を強化してなお、敵の強さに圧倒されるが…… オプションのみにスポットを当てると、自機がとても強いように思えるが、自機の装備全体で見ると、わりと地味で、ちょっと弱々しい印象すら受ける。というのは、こちらが装備を揃えていくことに対応して敵のほうも弾が増えたり、耐久力が上がるため、結局装備を取っても取らなくても苦しい、という感覚があるからだ。とは言えランクの上昇は以前のシリーズからの伝統で、ランク調整やオプションハンター対策として、装備を途中の段階で止めておくという攻略法が取られてきたりもした。だがそれにしても、「V」は自機を強めていった末の感覚として「フー、強くなったぜ」と、一息つけるゆとりはあまり感じられなかった。 また、スピードアップの1段階の幅が非常に狭いため、上げても上げてもなかなか速くならないという印象もある。これはステージの構造などからくる、“非常に緻密な操作を要求されている”という気はするが、ミスした後、復活のときにはもの足りない。全体的に、どんどん強化して強くなっていく爽快感といったものが、少し足りない印象だ。 単純な見た目でいうと、今の時代、他のシューティングゲームを見慣れた目に、最強装備が多少地味に映るのは仕方がない。これには、メインの武装からリップルレーザーという放射状の武装が消えたということもあるかもしれない。 だがその反面、もうひとつ、「V」になってからの大きな変更点がゲーム性に大きな影響を与えている。それは、体験版などでプレイした方々にはおわかりだと思うのだが、「V」の主人公機・ビックバイバーは“シリーズ中最小の自機である”という点だ。 以前のシリーズなら、斜めに飛んでくる敵のレーザーや、大量の拡散弾を避けようとする際、ちょっと神経を使う必要があったことはシリーズプレーヤーなら体験したことがあるだろう。今回の「V」は、自機の当たり判定が非常に小さく、今までのシリーズなら爆死していたシチュエーションでも、軽々とそれを突破することができる。 このことは、自機のパワーアップが見た目ほどはインフレ状態にはない分、敵の行動を察知し、避けていくという行動を喚起させてくれる。例えば、STAGE5の隕石地帯。今までの経験でいえば、小型の岩と岩がぶつかり合うような状態でこちらの攻撃が撃ち負け、どんどん押されていくようなとき、自機の周囲に多少なりとも開いた空間がないと爆死を覚悟したものだ。だが今作では、ちょっとでも隙間が……具体的に言えば通常ショットが通るぐらいの隙間があれば、なんとか“すり抜ける”ことが可能だ。縦スクロールシューティングの自機が、ここ数年、非常に小さい当たり判定に調整されていることは読者の方々は知っていると思うが、それに近い感覚。さらにいえば、まさに“すり抜ける”体験が随所で味わえることこそ、「V」になって、「グラディウス」のゲーム性が多少変化したと感じられる大きな要素といえる。 ただし、前述の通りこちらの攻撃は縦スクロールシューティングほどは強化されていない。きちんと出現タイミングを覚え、地形を覚え、オプションをうまく使いこなすことによって、その威力は確実なものとなる。いわばギリギリのラインだ。そしてこの攻撃と“すり抜ける”回避とのバランス配分は明らかに今までのシリーズとは性格が異なる。この変更が、自分の感覚にしっくりくるようになると、「V」はさらに楽しくなってくるだろう。 デフォルト設定で、死んだ際にそれまで付けていたオプションが画面内に残る仕様にはなっているが、本シリーズを昔から好きだったお父さんが子供と楽しく遊ぶツールとして使うには、難度を下げて遊ぶのが懸命だろう。単純にパワーアップし、力押しするだけでは先に進めない、それは「グラディウスII」以降の伝統でもある。
とまぁ、ここまで「単純に先に進むのは難しい」ということを述べてきたが、しかし、実際のところ「V」というナンバリングタイトルに皆が“簡単な「グラディウス」を望んでいるか?”というと、答えは「ノー」だと思うのだ。筆者的には、越えにくい壁を越えていく体験をさせてくれるゲームであってほしいという思いがある。そして「V」は、そのギリギリのラインを(あくまで一般的レベルを想定して)守っているのではないかと思える。
■ ステージの美しさに加えて、織り込まれた演出に震える さて、発売前からあちこちで言われ続けていることだが、グラフィックの美しさには目を見張るものがある。何だかさっきまで難癖をつけてきたようだが、個人的に「V」はこのグラフィックの美しさを体験できるだけで、購入する価値が充分あると思っている。 今回は、撃って避けての無機質な流れの中に、ストーリー性を強めるデモが要所に挿入さたことで、パイロットの人間味をちょっと匂わせる演出が見られる。これまでも、戦いの背景となるストーリーについて説明書に書かれてきたが、「V」では、ゲーム内で少し語られるストーリーの断片のほうが、説得力があると感じた。2面序盤のデモを見た後、先のほうに進めば“なぜ2面で要塞に突入するのか”がわかる仕掛けになっていて、わかったときには、「そうだったのか!」と、ちょっとした感動を味わうことができる。ネタばれして楽しみをそいでも仕方ないので、詳しくはあえて触れない。これが格好良くて筆者は鳥肌が立ったので、これは是非ご自身でプレイして体験して頂きたいと思う。
ステージの演出では、お約束がある中でも毎度驚かせてくれるのが本シリーズ。今回も細胞ステージや要塞などがあるが、基地のような雰囲気のバリエーションが豊かとでも言おうか、地形が複雑な中を進むステージがいくつかある。中でも、緑色のガスとも液体ともつかないホワホワした物体が押し寄せてくるステージは、独特の音楽と共に印象的。重力がかかって下に溜まった液体を、画面全体がゆるやかに回転して“かき混ざる”中を進んでいくのだ。ここは、最初に述べた大好きな箱庭のような感じが強く、最初は“とても先には進めない”と思わず閉口するシチュエーションなのだが、お気に入りのステージだ。
液体は撃てば破壊できるが、大きな1粒ずつが液体のような動きをし、入れ物である通路の回転によって、波打ちながら自機に襲いかかってくる。下方向へスクロールするときなどは、上からたぽたぽ降ってくる液体を避けて進まねばならない。いつ粒が落ちてくるかわからない緊張感はかなりのものだ。 また、「V」ではボスキャラ級の敵キャラが多数出てくるので、個人的には嬉しいのだが、ミスしてオプション回収を失敗したりすると、装備が貧弱すぎて戦いが長引き、大変な思いをする。「ビッグコア」を始めとし、これまで登場した多数のボスが進化した攻撃で邪魔してくるほか、オリジナルのボスも多数登場する。過去の面々の中で凄まじく進化を遂げたのが、要塞の最後に立ちはだかって長い足で踏んでくる破壊不可能の「クラブ=エレファントギア」だ。本作では多関節を有する9本足(正確には18本)で歩行する。関節が複雑な動きをする中をかいくぐって、各関節にあるコアに撃ち込めば破壊できるが、破壊しても歩行をやめない点が怖い。 この場面で特に言えることなのだが、若干画面に付くパースが、昔の2D横シューティングをプレイしている感覚の体にはなかなか馴染めないでいる。奥に向かって進んでいくようにパースが付くと、どこから壁の判定となっているのかつかみづらく、地上を歩く「ヴァンダー(今までのシリーズでいうところの“ダッカー”)」を撃ちに行ったものの、攻撃が届かなくて返り討ちにあったり、壁に寄り過ぎて激突、ということがしばしばあった。見ている分には、このように角度がついている方が断然、ボスの迫力が伝わってきてカッコイイのだが……プレイする分にはそわそわと落ち着かない。
また、エフェクトが派手になっている分、それが重なり合うような状態になると、敵弾とエフェクトの波に飲まれて自機を見失いがちになってしまうのは痛し痒しといったところだろうか。気がつくと「あっ!」とミスをしていることに気づく、というやられ方が多少多い気がしてならない。また、「V」は1ステージの構成が長いので、集中力が途切れそうになることもある。そういったときは休憩してからプレイする、という方法もアリかもしれない。
アイテムを取る行為が即座にパワーアップに繋がるゲームと違い、カプセルを貯めてゲージに合わせて欲しい武装を選択し強化していく、ということは自由でありながら、時には弾よけと同時に装備を選ぶという、器用さを求める一種の足かせともいえる諸刃の剣ともいえる。 そんなシステムを持つ本シリーズが始まったのは、今を20年以上も遡る。近年、シリーズが回を重ねるごとに内容が改変され、もはや原型の面影が薄らいでいくゲームが多い中で、カプセルを取ってゲージに合わせパワーアップするシステムが5作目になってなお、これほど原型を留めていること自体、「V」を遊んで感心するばかりだ。それだけ「グラディウス」の基本システムは完成度が高く、面白いのだと改めて思い知らされた。
本作が気になる方にはぜひ、大量の弾幕を避ける器用さとはちょっと異質な、繊細な職人っぽさを求められる、そんなプレイ感覚を味わって欲しい。そして今回、新機軸として進化したオプションの操作感をぜひ試してもらいたい。それを持って目の前に広がる広大な宇宙の試練に挑戦した人だけが、試練を越えた先で感動と遭遇できるのではないかと思う。 (C) 1985 2004 KONAMI & Konami Computer Entertainment Tokyo
□コナミのホームページ (2004年8月2日) [Reported by 河本茉澄]
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