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【特別インタビュー】
氏自身、ファミコンやアーケード、そしてシャープのX68000などで「グラディウス」シリーズに触れてきたこともあり、コンシューマゲーム機もほとんど所有しているという。そんな天神氏に、今回のイラストにまつわるお話を伺うことができた。(文中敬称略) --始めに、「グラディウスV」のパッケージアートをご担当されることになった経緯をお聞かせ下さい。 天神 いきなりお話がありまして、描かせて頂けるということで、2つ返事で「ハイ」とお返事しました(笑)。 --依頼が来たときに考えられたことはありますか? 天神 最初「グラディウス」と聞いて、耳を疑いました。「昔、似たような名前のゲームがありましたよね~」っていう感じで、まさかそのものだとは思わなくて。昔は、「この世界観いいなぁ、モアイいいなぁ」と、初代「グラディウス」のファミコンカセットを眺めていた頃があったんです。ゲームの中は横画面ですけど、パッケージアートは3Dで描かれているから世界観を膨らませてくれる。パッケージアートっていいものだなと。 --天神さんご自身の「グラディウス」に対する認識はどのようなものでしたか? 天神 “横スクロールシューティングゲームの代表”ですよね。もう、子供の頃から遊んでいましたから。あの音楽を聞くと燃えますね。 --シリーズでいうと、どの辺りですか? 天神 「パロディウス」です! --一同(笑) 天神 冗談です、初代「グラディウス」です。最初はファミコン版をやっていて、それからゲームセンターでアーケード版「グラディウス」を見た時は、レーザーの線の細さ、繊細さに驚きました。ファミコン版より難しいので苦労しましたけどね。 --イラストの制作期間はどれくらいでしたか? 天神 お話を頂いて、3カ月です。実作業自体がスタートしてからは、1カ月近くは常にコナミさんとやり取りがありました。 --ゲームタイトルのパッケージということで、普段と違う意識を持たれた点は?
天神 プラモデルの場合は「PL法(※1)」の関係上、パッケージの中の商品と違う物を描いてはいけないんです。でもゲームの場合は、見る人のイマジネーションを喚起するものならどんなものでも描ける。世界観を描けるところが、とてもやりがいのあるところです。だから楽しかったですね。
※1 PL法……製造物責任法。
--作画の手法としては、3Dで作られているのですか? 天神 いえ、違います。3Dのモデルを下絵に「Photoshop」でそのまま描いています。 --打ち合わせでは、構図の指定もあったのでしょうか。 天神 構図はこちらに任せてもらいました。3Dモデルがあったので、それに仮にレンダリングしてから構図を決めていきました。 --今回はビックバイバーの機体が全面に押し出された形になっていますね。この構図にされた意図は? 天神 今回は、凄いムービーも用意されていると聞いていましたし、「ビックバイパー」 は有名で、キャラクタ性が充分あるので、姿を「バン!」と見せるのがいいと思いました。それで、向かってくるイメージがいいんじゃないかと。 --オプションなど、ユーザーが既に様々なイメージを持っているアイテムを絵に起こすのは難しいと思うのですが? 天神 そうですね。オプションを火の玉のようなものと捉えて普通に描くと、爆発のように見えてしまうし、ある種不気味なものにも見えるし(笑)。打ち合わせで、設定画は見せて頂きました。中に何かを入れてしまうと強そうに見えないので、私がゲーム画面からイメージしたそのままで描きました。 --最近のゲームはCGが緻密になってきて、そこからパッケージのイラストを描く方にとっては、想像力を使って制作するという面で、窮屈なのかなと思うのですが。 天神 そういう面はあるかもしれませんね、ファミコンの頃はドット絵でしたしね。今回、制作前に「V」のプレイビデオを見せてもらったんですが、初代「グラディウス」を、「こんなのよけられるか!」って言いながら遊んでいた感覚が甦りました。「グラディウスV」では、矢継ぎ早に敵がいろんな攻撃を仕掛けてくるところが凄いですよね。岩がゴロゴロあるステージとか、「不可能です!」って思いますよ(笑)。 --細かい弾がバラバラ飛んでくるのを避けたり、大変ですよね。
天神 これ弾なの? って思いました(笑)。新システムを使わなきゃクリアーできないのがわかるし、「これだけのことを考えられるってスゴイな」と感心したんです。そして、「あのレーザーの綺麗さを引き継いでるな」、と思いました。X68000「グラディウス」などに継承されてきた、「グラディウス」ならではの美しさですよね。 --天神さんが思う「グラディウスらしさ」って何でしょう?
天神 やっぱりレーザーの表現ですね。この色(ブルー)のレーザーは「グラディウス」だ、っていうイメージがありますよ。これさえあれば「グラディウス」という感じ。一番レーザーっぽいじゃないですか。シリーズは2作目以降、クリアまでは遊んでいなかったんですが、今回の「グラディウスV」を映像で見たときに、レーザーが曲がっていてすごく驚いたんです。「これを表現しない手はないだろう!」と。それで、「Type4(※2)」をイメージして、イラストも今のような形にしました。
※2 Type4(ROTATE)……OPTIONボタンを押すことで、オプションが自機の周囲を回転する武装。詳しくは5月26日の記事を参照
--機体のパネルや、コックピット周りなど、ビックバイバーのディテールは天神さんのアイデアですか? 天神 私の作風が機体を汚してリアリティを出すという方向性なので、最初は今の状態より、もっと往年の飛行機、歴戦のレシプロ機というイメージで描いていたんです。そうしたら、「新しい機体にして下さい」という指示を受けまして(笑)。それである程度、綺麗で鋭角的な、スマートな感じにまとめ直しました。 --そういった指示を受けてサッと直せるものなんですか? 作家さんによってはパーツごとに少しずつ作業を進められたり、色々ですが。 天神 一気にやっちゃう方ですね。その方がその日の色になるし、次の日描いたら全然違う色になってしまうので。 --「ビックパイパー」は、ジェット機で言うとにこれに似てるとか、レシプロ機で言うとこれっぽい雰囲気があるとか、天神さん的イメージは何かありましたか? 天神 昔から確立したキャラクタだと思っていたので、そういうのは無いですね。「ビックバイパー」は「ビックバイパー」だと思ってます。 --では、「ビックバイパー」だから、と意識した部分は? 天神 これはイラストを起こすときに私が考えたことなんですが、機体の前に付き出した部分の、両サイドの黒いところはバンパーのような役目をしていて、あれで飛んでくる弾や障害物を掻き分けている。それで今回判定が小さいんじゃないかと。だから、あそこをボロボロのダメージ表現にしてみたんです。 --なるほど、クワガタの角のように、戦う際に使われてボロボロになると(笑)。では、2つの突き出た部分の間で、何かが放電しているような表現がありますが、これは? 天神 これは、ここからバリアが発生するんじゃないか、というイメージです。あと細部に関して、「コックピットに何を描こうか?」ということも最初考えましたね。ストーリーはあまり知らないので、人間が乗るのか何が乗るのかわからず……でも、「ビックバイパー」自体が1つのキャラクタですよね。うまく言えないですけど、みんな「戦いを共にした愛機」みたいな感覚をどこかに持ってると思うんですよ。 --では最後に、店頭などでポスターやパッケージをご覧になられるユーザーさんに一言お願いします。 天神 「V」ではType4がお勧めです。イラストはゲーム内のレーザーを見てもらえるとより一層イメージが伝わってくると思います。ぜひゲームと一緒に見てみてください。
--本日はどうもありがとうございました。
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□コナミのホームページ (2004年6月25日) [Reported by 河本茉澄 Photo by 佐伯憲司] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved. |
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