「RWC2004」レポート第2日目
トラブルに見舞われた「321Colors」。まさかの初戦敗退
7月17日~18日開催
会場:韓国COEX Pacific Hall
■試合に対する気合いを見せつけた「321Colors」
「Ragnarok World Championship 2004」(以下、「RWC2004」)。二日目は、C、Dブロックの試合が行なわれた。第一戦は、北米2位チームと、インドネシアの2位チーム。この戦いの勝者が、日本2位のチーム「321Colors」と戦うことになる。
日本のメディアの前にあらわれた「321Colors」は、その気合いをまず、外見で見せつけてくれた。びしっとスーツを着こなし、サングラスを着用。「強面」だけではなく、与えられたユニフォームにはおのおののサインを書き込んで羽織り、さらに首からは猿のぬいぐるみをかけるという、メンバーらしいちょっと崩したその衣装は、インパクトが充分だった。
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ユニークな出で立ちで戦場へと向かう「321Colors」 |
筆者は昨日と同じようにメンバーと、試合を観戦。北米2位チームと、インドネシアの2位チームの戦いに対して、メンバーの評価は手厳しいものが多かった。「戦闘区域がバラバラ」、「ハンターが罠を活用していない」などなど、もちろん、軽口を交えながらも、対策は練り続けているようで、時々まじめな議論も行なわれる。
彼らの言葉を聞きながら観戦した戦いは、筆者にも今ひとつの戦い方に見られた。各キャラクタは頻繁に動き回るが決定力にかけ、散発的な戦闘の他は、回復と逃走を交えた展開が続き、インドネシアのウィザードが倒されてから、一気に戦局が傾き、決着が付いた。
「321Colors」メンバー達は、お互いの顔を見ながら、「勝てる」と声を掛け合った。昨日破れてしまった日本1位チーム「Guardian-Chevalier」のメンバーも、筆者に、「彼らはいけると思いますよ」と語った。メンバー達が積極的に気合いを入れていたのにも、実は理由があるように思える。「321Colors」は他チームが9人のところ、8人で戦いをのぞまなくてはならない。開催期間が大学のテストと重なってしまったため、どうしてもメンバーが参加できなかったのだ。
「321Colors」は、6人のメンバーで、数を上回る敵ギルドを倒し続け、日本予選第2位になったギルド。数の不利を跳ね返すという期待もあるのだが、心許なさは拭うべくもない。「勝てる」というセリフは、自分に言い聞かせるようにも見えた。
試合の合間に、チームの結成時期を聞いてみたところによると、両チームともに「RWC2004」の開催アナウンスに合わせ、それに挑戦するために4月頃に結成されたギルドだという。自由な強者達の集まり、といった感もある「321Colors」に対しては納得できる答えだったが、ギルドマスターの指導の元、強固な結束力を見せていた
「Guardian-Chevalier」も同じというのは意外だった。
ふたつのギルドの絆は、この大会で大きく強まったようだ。敗れた「Guardian-Chevalier」は夢を託し、自分たちの作戦や、第一日目で得た経験を積極的に提供、「321Colors」を支援した。これは一日目、自分たちが見れなかった対戦ギルドの情報を提供してもらった返礼とのことだ。「日本の強さをアピールしたい」というギルドの枠を越えた情熱が、筆者にも感じられた。
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インドネシア対北米戦。どちらもスキル的には高くないと踏んでいたのだが…… |
ラグナロ娘のひとり乾曜子さんと記念撮影。プライベートの写真を撮るメンバーも |
乾さんから勝利のおまじない。 「Guardian~」からは、そっちのメンバーばかりずるいとの声も |
■韓国一位チーム「Angel」初戦で敗れる。
続いて行なわれた試合は台湾・香港2位チームと、タイ2位チーム。奇しくもAブロック第2試合と全く同じ台湾対タイという組合せになった。
戦いは試合場の外縁である通路が主戦場になった。台湾チームは通路の端に敵を押し込め、順当に各個撃破していく。これは、前日の台湾チームが相手を誘いだし、しとめた戦術と同じものである。筆者は、「これは台湾で編み出された戦いだったのか」などと、訳知り顔でうなずいていたのだが、それはまったくの勘違いだった。
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台湾2位チームも、昨日の台湾1位チームに匹敵する強さを見せつけた |
見ているうちに突然試合が中断。仕切直しになったのである。タイチームのハンターが、不具合で通路からステージに上がれなくなり、それを守るために仕方なく通路で戦っていたという。「通路で戦うのはかなり不利になる。積極的に戦う人はいないでしょう」情報を聞いた「Guardian-Chevalier」はそうコメントした。
再戦では試合場内で戦いが堂々と繰り広げられ、まさにコメントの通りになった。しかし、タイ側の「学習」の効果もあったように感じた。メンバーは決して通路には逃げず、舞台の縁を動いていたのだが、それでも台湾側が一枚上手だったようだ。通路に逃げなくても、試合場の縁に相手を追い込み撃破、強さを見せつけた。「321Colors」は、もし北米チームに勝てれば、彼らと戦うことになる。
マレーシア・シンガポール2位チーム対フィリピン1位チームの試合では、マレーシア・シンガポールのワンサイドゲームに。戦っているにもかかわらず、マレーシア・シンガポールチームはキャラクタを座らせたり、挑発ポーズを取らせたりと、自軍の強さをアピール。まさに、「余裕」の強さを見せつけたのである。
この後に行なわれたのが、今大会最大の注目といっても過言ではない韓国1位チーム「Angel」と、中国2位チームの戦いである。「RWC2004」の韓国予選は、国内で放映され、その映像はインターネットを通じて各国から見ることが出来た。「Angel」が予選の決勝で見せた強さは本物であり、今大会で最も注目されているギルドであった。
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「Angel」はまさかの初戦敗退。今後の韓国の動向に注目したい |
しかし、一日目に続き、二日目でも「まさか」の事態が起こる。試合開始早々、孤立した「Angel」のウィザードが中国チームにつかまり、あっという間に倒されてしまったのだ。この後、中国のメンバーは一人もかけることなく、韓国チームを敗退させる。観戦していた日本メンバーにも、非常に意外なことだったようだ。
「Guardian-Chevalier」のメンバーが、「Angelのギルドマスターが試合前、とても緊張をしていた」という情報を受けて、この戦いについて説明をしてくれた。「今まで試合を見てきて、キャラクタは限られているし、アイテムやステータスも、ある程度攻略法は見えてきてるんです。各チームの実力だって、それほどかけ離れては居ないと思います。そうなると、メンタルの部分が大きい。Angelの敗退は、そこが大きいと思いますよ」とのこと。
今大会では、韓国チームはともに初戦敗退となった。このことに対して、通訳として我々をサポートしてくれたチョン氏に聞いてみたところ、「確かにびっくりしましたが、プレッシャーや油断など、すこし納得する部分もあります。ですが、“韓国代表が初戦で敗北した”という事態は、国内のプレーヤー達の気持ちに火をつけるかもしれません。これがきっかけになって、韓国国内のラグナロクオンラインの対戦が、一気に活発になるかもしれないですよ」というコメントをもらった。この結果を受けた、韓国国内の今後の動向は、要注目だろう。
■「321Colors」敗退。運営側の不具合が、勝負の結果に影響!?
いよいよ「321Colors」と北米チームの試合である。ユニークないでたちで気合いを入れたメンバーの前に立ちふさがった北米チームは、「かぶりもの」を持参。かわいらしい帽子の他に、巨大な角の帽子をかぶって登場した。「インパクト」というポイントでは、両者引けを取らない。ゲームとは離れた部分でも、強烈なライバルとなった。
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北米チームは、「321Colors」にかぶり物で対抗 |
しかし、試合では大きなトラブルが「321Colors」を襲う。メンバーの中のウィザードが使用するPCに設定されていたマクロが、うまく機能しなくなってしまったのだ。試合開始直前に気がついたメンバーは審判に告知、通訳を交えた話し合いを仕様とするうちに、カウントダウンが始まり、試合が始まってしまう。
抗議をしていたため、「321Colors」のウィザードは完全に出遅れてしまう。今大会において、ウィザードは最も要になる人物。それが出遅れてしまえば、ただでさえ人数の少ないメンバーの不利は決定的なものになってしまう。
抗議のため、試合を放棄するという方法もあったかもしれないが、スタートした試合を、メンバーは捨てなかった。しかし、前衛が敵ウィザードに凍らされ、パーティーは分断。そのまま各個撃破されてしまう。
試合が終わっても、「321Colors」は席を立たず、ガンホースタッフと抗議と交渉を続けた。しかし、会場の進行は、北米チームの勝利として進んでいく……。控えの場所では、メンバーは立ったまま、交渉の行方を見守るしかなかった。
30分以上の時間が過ぎて、結果、再戦がかなうことになった。事態を見守っていた「Guardian-Chevalier」のメンバーも、「相手の手の内が分かっているし、それだけ不利な状態で、互角とも言える戦いが出来たのだから、今度は勝てますよ!」と筆者と話をしながら、試合を見守った。
結果としては、一戦目の展開と近いものになってしまった。アメリカチームのウィザードは素早く前衛を凍らせた後そこにとどまり、確実に足止めを行なう。他のメンバーはそのウィザードを全力で守りつつ、敵ウィザードを集中攻撃。メンバーが凍らされることで、一人少ない「321Colors」の劣勢は決定的なものになってしまう。そこをつけ込まれてしまったのが、敗因の大きな原因といえるだろう。
試合後、「321Colors」のギルドマスターは、「相手のチームのペースに振り回されて、自分の戦いが出来なかった」とコメントした。ウィザードのプレーヤーは、「ごめん」を繰り返していた。話を聞いてみると、「頭が真っ白になってしまっていた」とのこと。他のメンバーも、「いつもの動きじゃなかったよね」という。
「メンタル」という部分の重要性がはっきりした、とも評することもできるが、最初の試合の時に、我々報道陣も、事態を知り、義憤に駆られたこともあってか、メンバーの周りで色々なことを言っていたりと、後になれば反省する部分もあった。
また、ウィザードは、ナイトやアサシンなど、常に肉薄しようとする敵を気にしつつ、相手の足止めをねらう。例え囲まれても、脱出する方法を焦らずに模索しなくてはいけないクラスだ。大胆さと繊細さを、他のクラス以上に要求するだけに、トラブルが、特に彼に起きてしまったことは残念だったといえるだろう。
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トラブルに翻弄されてしまった戦い。選手の抗議にも関わらず、戦いが進行してしまう |
北米チームの承諾もあり、再選が実現。慎重にセッティングを行なう |
人数が少ない状態では、世界の壁は厚かったようだ。次回はぜひフルメンバーで! |
■優勝、準優勝は台湾チームが独占。3、4位は共にマレーシア・シンガポールチーム
続く、北米チームVS台湾チームでは、台湾が、マレーシア・シンガポールチームVS中国チームではマレーシア・シンガポールが勝ちを収めた。結果として、上位4位は、台湾と、マレーシア・シンガポールが独占することとなった。
C、Dブロックを勝ち抜いた、台湾と、マレーシア・シンガポール両チームに言えるのは、基本の作戦の遂行能力の高さ、である。特に台湾はすごく、ウィザードが凍らさせた敵を、前衛がむやみにたたくことで凍結状態から解放しない、という鉄則を絶妙な呼吸で守っている。さらに、各メンバーの陣形がきちんとあり、それが激しい戦いの中でも保たれているのだ。戦いは常に動き回る激しいものにも関わらず、各キャラクタが陣形を保つ。これをどんなレベルで遂行できるか? それを台湾チームは見せつけた。
決勝は、ふたつの台湾チームがその「基本を守った強さ」を比べることになった。対戦マップは、準決勝とも違う、天空に浮かぶ遺跡を思わせるものである。このマップの特徴は、四方に行き止まりの通路があり、中央は段差が激しく、さらに遮蔽効果のある石壁が立っているというきわめて移動しにくいマップである。最大5戦、3ポイント先取という長丁場も対戦を難しくさせる要素の一つだ。
前日決勝を決めた台湾1位チームと、本日勝ち抜いてきた台湾2位チーム。「基本に忠実で強い」という評価で判断していたチームが、このマップでははっきりとその性格の違いをあらわにしたのだ。
1位チームはウィザードの周りにハンターが罠を張り巡らし、完全に待ち受ける形で敵を迎撃する。2位チームはこまめに前進、後退をくり返し、じょじょに相手を切り崩そうと試みる。結果として受け身の作戦が失敗したのか、予選の結果を覆し、2位チームが3戦を連取、ストレートで優勝を果たした。
勢いというものもあるかもしれないが、なによりも、2位チームのウィザードとプリースとの連携が素晴らしかった。プリーストは影のようにウィザードに付き従って動く。その距離は非常に微妙で、ウィザードが敵の凍結呪文の範囲内に入ってしまうときには、わずかに届かないところにちゃんといるのである。
彼らの立ち位置は、張り出された行き止まりの通路。何度か追いつめられそうにもなったのだが、他のメンバーが全力で彼らをフォロー、ふたりは距離を保ったまま、するりと敵集団をやり過ごしてしまう。あきれるくらいの冷静さが、その動きからはうかがえた。
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中国、マレーシア・シンガポール戦。安定した戦い方で、マレーシア・シンガポールが勝利を得た |
準決勝では、やはり台湾チームが勝利。一日目と同じ結果になってしまった。 |
マレーシア・シンガポールの2チームが3位を争って戦う。 「Guardian-Chevalier」を破った一位チームが勝利 |
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決勝を争うのは、台湾の2チーム。一位チームが受動的な布陣だったのが災いしたのか、タイミング良く攻めながら、自軍をしっかり守りきった、2位チームが、予選の結果を覆し、優勝 |
今回、戦いの鍵を握っていたのは明らかにウィザードであった。試合後、あらためて、「321Colors」と、「Guardian-Chevalier」の両ウィザードに、各国のウィザードの動きについてコメントをもらった。
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夕食会で、森下社長を囲んで歓談。しかし、いつの間にか開発の廣瀬氏と真剣な議論へ。作品に対する熱意を強く感じさせられた |
「321Colors」メンバーは、「とにかく立ち位置ですね。台湾チームは、どちらもそれがすごかった。すごく勉強になりましたよ。的確に呪文を使う方法は、もっともっと考えていきたいです」とのこと。
「Guardian-Chevalier」は、ギルドマスターが、ウィザードである。「対戦を広めたい」という視点で語ってくれた。「ウィザードはもちろんですが、今回の戦いを見て、改めて気づかされたのは、“ナイト”の重要性です。騎乗動物ペコペコに乗っているので足が速く、敵の攻撃を食らってもとまらない。遠距離攻撃のスピアブーメランでもウィザードの呪文を止められるのは、彼だけなんです。正直、その重要性に気がついていなかった側面がある。次のチャンスのためには、もっともっと突き詰めて考えたい問題がありますね」。
世界の戦いは、彼らの経験を通じて、多くのプレーヤーが議論し、突き詰めていくだろう。試合が終わってからも語り合い、打ち上げの夕食会でも熱心にスタッフに質問をしている彼らの姿を見て、それを実感させられた。
□「ラグナロクオンライン」のページ
http://www.ragnarokonline.jp/
□「Ragnarok World Championship」のページ
http://www.rochampionship.com/
□関連情報
【7月18日】韓国にて「Ragnarok World Championship」が開催
1,800ギルドの頂点を決める「ラグナロクオンライン」世界大会
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040718/rwc_01.htm
【7月18日】「RWC2004」レポート第1日目 決勝へは台湾が進出、
日本は準々決勝で敗退
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040718/rw2.htm
(2004年7月19日)
[Reported by 勝田哲也]
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