「RWC2004」レポート第1日目
決勝へは台湾が進出、日本は準々決勝で敗退
7月17日~18日開催
会場:韓国COEX Pacific Hall
世界各国の「ラグナロクオンライン」プレーヤーが一堂に会し、その腕比べをする「Ragnarok
World Championship 2004」(以下、「RWC2004」)。今大会では、MMORPGの大会でありながら、参加者はその場でキャラクタを作り、与えられた所持金でキャラクタをカスタマイズして戦う。どちらかというと、チーム制のFPS等の大会を思わせるルールだ。参加者は純粋に「プレーヤースキル」を試されることとなる。
選べるキャラクタのクラスは、ナイト、プリースト、ウィザード、ハンター、ブラックスミスの6クラスで、1チーム9人。各クラス一人ずつと、残り3人は、ウィザード、プリーストを除いたクラスから選択する。各クラスは二人までになっているので、組み合わせの自由度も高いとは言えない。
キャラクタレベルも固定で、決められた時間内で、ステータスを割り振り、武器防具をそろえなくてはいけない。商品の購入メニューが、ローカライズされたものではなく、「英語」に統一されているのが、各国のプレーヤーを悩ますところ。資金的には強い装備を得るのに充分な額だが、焦ってしまったりして、欲しい商品が見つからなかった場合、大きなハンデとなってしまう。
今回のルールで“キモ”となるのはウィザード。体力は少ないが、火力の大きいこのキャラクタをいかに生存させ、出来るだけ長い時間に敵に攻撃をくわえさせるかが、最重要課題となる。
ウィザードは、周辺に吹雪を起こす呪文で、敵を「凍結」させることができる。凍結してしまったキャラクタは氷が溶けるまで自分では何も出来ず、プリーストしか状態を回復できない。凍ったキャラクタをそのまま足止めさせられるかは、戦術として大きなところだろう。もちろん、他のキャラクタはその能力を限界まで引き出して、敵ウィザードを阻止したり、自軍を守ることになる。
試合時間は10分。日本予選が5分だったのに対し、倍の時間だ。筆者は「ラグナロクオンライン」は、他のMMORPGの対人戦以上に、プレーヤーの努力次第でかなり「生存率」を高められる作品だと感じた。相手側がうまく攻撃を集中させても、それが短い時間ならば、白ポーションを飲みまくったりすることで、耐え抜いてしまうのだ。
10分間、意識を集中させ自らの生存も確保しつつ、気を抜くと生き残ってしまいかねないターゲットを狙い続けるというのは、けっこう厳しい条件である。チームが一丸となって動く冷静さと、それを維持する「胆力」が必要となってくるだろう。
日本の参加チームは、Freyaサーバーの「Guardian-Chevalier」とBijouサーバーの「321Colors」。「Guardian-Chevalier」は、9人の息のあった連携と、安定した生存策によって日本一になったギルドである。惜しくも2位となった「321Colors」は、規程人数ギリギリの6人パーティーで、数に勝るほかギルドを倒し続けたチーム。世界戦では8人のメンバーでのぞむという。
日本で現在行なわれている攻城戦では、セージやクルセイダー、モンクなど、より対人戦に特化した新しい職業が導入されており、世界戦のルールとは戦術は全く異なってしまっている。また、攻城戦では攻撃側と防御側ははっきり分かれるが、大会では両者が同時にぶつかり合う。普段と違うルールや状況を飲み込み、運も味方にして勝ち残ってきたこのふたつのギルドが、世界のプレーヤーを相手にどこまで戦い抜いていけるだろうか?
■対照的なふたつのギルドの意気込み
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トーナメント表。日本チームは、両方とも幸運な場所に |
大会前日、7月16日に「COEX インターコンチネンタルホテル」のレセプションホールで行なわれたトーナメント抽選会では、各国のギルド、プレスを交えた大きな夕食会も催され、非常に華やかな雰囲気となった。コース料理や、ワインといった料理ももちろん、各国が思い思いの気合いを込めたパフォーマンスを繰り広げ、気分を盛り上げた。特に中国チームの他を圧するような大きな声、マレーシアチームの南国を思わせる甲高い歓声が、「世界大会」ならではの演出となった。
筆者は、この式の合間に、「Guardian-Chevalier」と「321Colors」の各ギルドマスターに、試合に対する意気込みを聞かせてもらった。
「Guardian-Chevalier」は、以前からの綿密な作戦と、各メンバーの連携に気を配っていて、「日本語でチャットが出来ないため、各メンバーに関する方向の指示は、テンキーの数字で行なう」、「買い物に関しても、リストなどはあらかじめ学習してある」などなど、具体的な作戦を語ってくれた。説明の仕方も、理路整然としており、システム的にも突き詰めた上で戦いに望んでいるという印象を受けた。
「321Colors」の場合は、まず、「僕たちは心が通じ合っているから大丈夫です」という、発言。さらにコメントの中には、「気合い」、「勝利を確信」など、景気のいい言葉が並ぶ。特に「秘策はちゃんとあります」といって、ニヤリと笑うところなど、も「Guardian-Chevalier」とはひと味違う感じだ。しかし、もちろん、具体的な作戦などは雑談の間にも頻繁に議論されているのは、こちらも同様で、作戦の練り混みには余念がない。「ノリ」が対照的なのである。
抽選で日本のふたつのチームは、非常にユニークな、かつ、有利な立場を引き当てた。両チームは、Bリーグと、Cリーグの非常に似たような場所を占めたのであるが、このチームと戦うチームは、他のチームより戦う回数が一回多いという場所。つまり、日本チームは、対戦相手の手の内を見て第一予選を戦えるという、非常に有利な立場からのスタートになるのである。この有利な場所を占めることが出来るのは、18チーム中、2チームのみ。そのふたつを日本チームが独占してしまったのである。
有利な立場を確保した日本チーム。噂では、中国チーム、韓国チーム、台湾・香港チームが強豪だとのことだが、実際の動き、そして何よりも手合わせしなくては他国の実力は分からない。いやがおうにも期待の高まる前夜祭であった。
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日本予選を1位で通過した「Guardian-Chevalier」 |
こちらは日本2位の「321Colors」 |
レセプションにて |
■「RWC2004」第1日目は「Guardian-Chevalier」が出場
7月17日、Gravity会長の金正津氏の挨拶、そして派手なステージイベントを経て、いよいよ予選が開催された。
一回戦は、他のチームよりひとつ戦うことが多くなってしまう、フィリピン予選2位チームと、インドネシア予選1位チーム。この戦いの勝者が、「Guardian-Chevalier」と戦うことになっている。
筆者はこの戦いを、「321Colors」メンバーの近くで観戦したのだが、メンバー達の得る画面からの情報に驚かされた。「ウィザードのDEXが低い」「スネアトラップを使ってうまく分散させている」「プリーストがウィザードを見ていない」等々、さまざまな指摘をして、メンバーと情報を共有する。動き方の癖や敵の作戦だけでなく、与えるダメージ量、攻撃の早さ、クリティカルの確立など、画面に現れるポイントを分析し、戦っているギルド各キャラクタの装備やステータスを分析、対応策を考えていくのだ。
第一戦で真っ先に倒れたのは、フィリピンチームのウィザード。「321Colors」メンバーの指摘通り、プリーストのフォローが足りなかったようだ。最大火力を失ったフィリピンチームは、次第にに敗色を濃くしていき、時間切れとなった。
続いて行なわれたのが、台湾・香港の予選1位チームと、タイの予選1位チームの試合。この戦いは、「321Colors」メンバーに大きな衝撃を与えたようだった。特に、ウィザードと、プリースト、ハンターの動きがすごかったという。ハンターは距離を保ちつつ、的確に敵を攻撃するだけではなく、効果的な場所に足止めの罠を張って敵を足止めする。各呪文の持続時間などを計ったように駆使するタイミングの良さを持っている。など、各キャラクタの役割を最大限に活かすその戦法は、「基本を守れば負けることはない」という戦法の、体現者のようだった。
この戦いの後に行なわれた、韓国予選2位チームと、中国予選1位チームは、台湾・香港チームと共に優勝候補として目されているチームとしては、少し肩すかしの結果となった。韓国チームのウィザードのステータスが、体力を低く設定していたようで、開始早々にいなくなってしまい、あっさりと中国チームが勝ったのだ。
「321Colors」のメンバーにとっては、中国チームのうまさよりも、どちらかというと、韓国チームの「ウィザードの弱さ」の印象が強かったとのこと。図らずも、韓国国内で、「運で勝ち上がってきたチーム」という評価の証明になってしまったようだ。
しかし、その勝った中国チームも、手堅い強力さをもつ台湾・香港チームには適わなかった。試合開始の準備の時、スタート地点である通路に台湾チームは罠をかけていた。それに対し、「321Colors」のメンバーは、「それは意味ないだろう」と突っ込んでいたが、驚かされることになってしまう。台湾チームはその通路に中国チームを誘い込み、罠にかかったキャラクタを集中攻撃したのだ。ここまで敵を見事に誘導する手腕を見せたチームは、第1日目で、台湾だけであった。
「Guardian-Chevalier」の試合では、舞台に出る前まで作戦を綿密に打ち合わせを続けており、ぴりぴりした雰囲気を放っていた。彼らの策は、相手をおびき寄せ、的確にしとめる、ということだった。
この時点で、メンバーは対戦相手であるインドネシア予選1位チームの、特にウィザードの性格を分析、対戦方法を打ち合わせしていたという。
戦いの序盤、事態は意外な局面を迎えた。リーダーである「Guardian-Chevalier」のウィザードが、インドネシアチームに囲まれ、集中攻撃を受けてしまったのだ。しかし、プリーストを初めとした各メンバーの団結で、辛くも危機を脱し、ウィザードを初めとした敵メンバーを各個撃破していった。中盤からはワンサイドゲームとも言える展開になり、見事勝利を得たのである。
「321Colors」も「ちょっと冷や冷やした」と評したように、「Guardian-Chevalier」メンバーにも、序盤の危機はきつかったようだ。しかし、日本の予選でもメンバーを死なせずに戦っていた戦法そのままに、守りきった。メンバーの団結と、生存をきちんと視野に入れた、ウィザードのキャラクターセッティングが効果を発揮したのである。
「Guardian-Chevalier」の次の対戦相手は、北米の予選1位チームを破った、マレーシア・シンガポール予選1位チーム。試合前のコメントでは、「基本はもちろん、アサシンへの対策に心を配っていきたい」ということだった。
「Guardian-Chevalier」の試合は、再び序盤から驚かされることになった。マレーシアチームの集中攻撃により、高い防御力を持つはずの味方のナイトが倒されてしまったのだ。これは、今まで他のチームが見せていた「倒すのはウィザードから」というセオリーとは完全に異なるものだった。
この後、「Guardian-Chevalier」は、アサシン、ウィザードを倒されてしまう。それでも残ったメンバーは、ステージを動き回り、劣勢を挽回しようとしていったが、それを果たせず準々決勝敗退に終わった。ウィザードの巧みな動きに翻弄され、各個撃破されてしまったという。結果的には、マレーシアチームの作戦に、「Guardian-Chevalier」ははまってしまい、後手に回ってしまったという形になった。
試合後、ギルドマスターは、「敵のウィザードにおびき寄せられ、撃破されてしまった。相手を分断し、火力を集中させるという基本を思い知った。世界の対人戦レベルの高さを感じました」とコメントした。
さらに、「日本のラグナロクオンラインは、どちらかというと“まったり”した雰囲気で、僕たちがいるサーバーでも、対人戦のレベルが高いとはいえません。例えば、対人戦専用サーバーの登場など、より対戦の腕を高める環境の実現も望みたいですね。来年もRWCが開催されるならば、是非目指したいです。明日試合をする「321Colors」には、同じ日本のチームとして、がんばってもらいたいですね」と語ってくれた。
準決勝戦では、3回勝負となる。「Guardian-Chevalier」を破ったマレーシアチームは、この戦いで、台湾・香港チームに2セットを連取されて敗北してしまう。つねに陣形を保ち、決められた敵を攻撃する。ウィザード、プリースト、ハンターは敵と一定の距離を保ちながら、状況に的確に対応する。対戦の教科書のような、圧倒的な強さを見せつけたのだ。
彼らの「基本に忠実な強さ」は、特に「321Colors」メンバーに衝撃を与えたようだ。観戦中、ちょっとあきれたような「すげぇなあ」というセリフが印象的だった。明日への意気込みを聞いてみたところ、「今日の戦いは本当に勉強になったし、得るものがたくさんあった。明日、対応策も含めて実行できるように、今晩はメンバーで綿密な打ち合わせをしますよ」とのこと。
2日目、彼らの前に立ちふさがることが予想されるのは台湾・香港予選第2位チーム。彼らは、第一位と同じ、台湾のメンバーで構成されているチームで、両チームとも同じくらいのプレイ人口、意欲を持った香港出身のチームを押さえて勝ち残った猛者である。
さらに、準決勝まで勝ち進めば、相手はおそらく韓国予選一位チームとなるだろう。Gravityやガンホーが一目を置くような実力を持つこのチームに、相まみえることは出来るのだろうか? そして、例え勝ったとしても、その前に立ちふさがるのは台湾・香港予選一位チームである。「321Colors」の健闘に期待したい。
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キャラクタメイクをする「Guardian-Chevalier」 |
試合開始直前。緊張感が伝わってくる |
試合が終わった後も綿密な打ち合わせを |
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「RWC2004」第一戦、フィリピン対インドネシア。多くの観客がモニタに釘付けになった。 |
台湾チーム対、タイ。台湾チームは、密集形態で戦うことが多かった |
中国対韓国。中国側の応援が非常に盛大だった。 |
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「Guardian-Chevalier」の対インドネシア戦。序盤は少しピンチになるも、盛り返して勝利 |
中国対台湾戦。韓国を破った中国も、手堅い台湾の前に敗退 |
マレーシアのペースのまま試合が進み「Guardian-Chevalier」は破れてしまう |
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準決勝はこれまでとは違うマップで行なわれる。台湾はマレーシアに連勝、ストレートで決勝に駒を進めた |
決勝に出場する台湾チーム |
□ガンホー・オンライン・エンターテインメントのホームページ
http://www.gungho.jp/
□「ラグナロクオンライン」のページ
http://www.ragnarokonline.jp/
□関連情報
【6月29日】「Ragnarok World Championship 2004」日本代表決定戦レポート
Freyaサーバーの「Guardian-Chevalier」が見事に優勝を手に
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040629/ragrwc.htm
【6月28日】「ラグナロクオンライン ドリームスタジアム」開催
ROコンテンツを一堂に集めたファン感謝イベント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040628/ragsta.htm
【6月1日】ガンホー、「ラグスタ」を6月27日に東京ビッグサイトにて開催
過去最大級の「ラグナロクオンライン」オフイベント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040601/ragsta.htm
(2004年7月18日)
[Reported by 勝田哲也]
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