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★PS2ゲームレビュー★
「エスプガルーダ」は、株式会社ケイブが2003年11月にアーケードでリリースした縦スクロールタイプのシューティングゲームだ。コンシューマへの移植は、2003年4月に発売されたプレイステーション 2版「怒首領蜂 大往生」に引き続き、株式会社アリカが担当している。ゲームセンターでの稼動開始から約半年という微妙なタイムラグに「ちょっと短いんじゃない? きちんと移植できてるの?」と仕上りに不安を禁じえない人もいそうだが、まずは本記事で初めて「エスプガルーダ」の存在を知ったという人のために、基本的な事柄から説明していこう。
■ 充実のオプション。初心者からマニアまできっちりフォロー
ゲームモードは、アーケード版を忠実に移植した「アーケードモード」、残機、パワーアップレベルなどを事細かに設定して好きなステージだけをプレイできる「アーケードシミュレーション」、PS2版だけのオリジナルモード「アレンジモード」、キャラクタの設定イラストなどが閲覧できる「ギャラリーモード」などが用意されている。 特筆すべきは、充実したオプションメニューの存在。画面の位置調整はもとより、モニターの設置方向、ゲーム画面の表示方向がそれぞれ設定可能なのだ。コンシューマしかプレイしない人はあまりピンとこないかもしれないが、アーケード版は“縦画面(モニターを左右どちらかに90度コロンと傾ける配置)”になっている。シューター(シューティングゲームを特に好んでプレイする人たちの総称)には「横画面のTVで無理やり縦画面にしても、ドットの大きさとか比率が違ってきちゃうし。雰囲気が壊れるし、全然やる気がしないね!」という頑固な人も少なくないだけに、こうした設定が細かく変更できるのはファンにとって嬉しい限り。 念のため付け加えておくと、一般的なブラウン管を使用したTVを横に傾けると故障の原因になるので注意が必要。コアなシューターは、縦置きが可能な専用モニターを所有しているのが通例。気になる人は、AV専門店や家電量販店に相談してみるといいだろう。 アーケードシミュレーションモード、アレンジモードには、記録したプレーヤーの操作データを再現する「リプレイモード」が搭載されている。これは、メモリーカードにセーブしたデータをもとに、自分のプレイ内容を検証するための機能。再生途中からプレイを再開できる「トレース機能」も搭載されており、ミスする直前の状況を再現したり、特定のパートを反復練習したいときに役立つ。また、「いい感じにプレイできたから、友だちに見せてあげたい」といった時にも使える。 アーケードシミュレーションモードで閲覧できる「スーパーリプレイ」には、トップランクのシューターによる模範プレイが収録されている。あまりにも手際よく敵を倒しているため、ボーッと眺めていると簡単そうに見えるが、実際に自分でやるとなれば話は別。何度かプレイした後に改めて「スーパーリプレイ」を閲覧すると「……凄いなぁ」と唸ること間違いなし。筆者のようなヘタレや初心者がいきなりトレースするのは無理がありすぎるため、最初はポイントとなる敵の倒し方から部分的に取り入れていくといいだろう。
もしジックリと腰を据えて研究したいなら、同梱されている「特典スペシャルDVD」をチェックするといい。収録内容はアーケード版の映像だが、トッププレーヤーが実践するその内容は確実に参考になるはずだ。
■ “覚聖”と“ガードバリア”で弾幕の海を乗り切れ!
さて、ここで気になるのが“覚聖ボタン”の存在。これは、ボタンを押すと、キャラクタが「覚聖状態」になり“覚聖死界”が展開されるというもの。覚聖中は「画面全体の動きがスローになる」ので、敵弾が回避しやすくなるほか、破壊した敵が発射していた弾が“金塊”に変わるため、スコアを稼ぎたいときの必須テクでもある。 画面左上にある「覚聖カウンタ」がゼロになると、覚聖終了。カウンタがゼロになるとスロー効果がなくなるばかりか、敵弾が赤くなり高速化してプレーヤーめがけて一気に襲い掛かる。覚聖カウンタは、覚聖していない状態で敵を破壊すると出現するアイテム「聖霊石」を取ると少しずつ増えていく。アイテムといっても敵を倒した瞬間に自動的に回収されるため、特に気にする必要はない。 ガードバリアは、ボタンを押した直後にバリアが展開され、キャラクタが無敵になるという大変ありがたい機能。ボタンを押している間は完全無敵だが、発動している最中は画面左下にある「ガードバリアゲージ」が少しずつ消費されていき、なくなると使えなくなる。バリア展開中にガードバリアボタンを離すと「ガードバリアアタック」が使える。「ガードバリアアタック」の威力は、バリアを展開していた時間に比例。中型の敵キャラクタを一気になぎ倒す攻撃力を持つが、ゲージを回復するための「E」アイテムの出現頻度が少なく、多用は禁物といったところ。 ガードバリアは、前述の“覚聖”にも関係してくる。覚聖している最中に敵弾に当たると、自動でガードバリアが展開される。このとき消費されるガードバリアゲージは、ガードバリアボタンで展開するよりも消費量が多く、大雑把な感覚としては2倍弱といったところ。高効率を目指すなら、ガードバリアボタンで計画的に使っていくのがベストだが、シューティングゲームに不慣れな人はそうもいっていられないだろう。 ゲームセンターで稼動した当初は、「覚聖とガードバリアが、イマイチわかりにくい」といった声をよく耳にした。「ボムみたいなモンでしょ? シューティングだから、とりあえず撃ってりゃいいや」という感覚でプレイすると、突然使えなくなり「アレ?」ということになる。
初心者向けにわかりやすく整理するなら……
【ガードバリア】 … 避けるの無理=完全無敵で回避=さらに反撃
なお、一部のシューターから「(覚聖とガードバリアがあるから)ヌルい」と評された「エスプガルーダ」だが、個人的には非常に上手くできたシステムだと思う。上級者はスコアを稼ぐために「覚聖カウンタ」を効率よく使っていくパターン作りが求められるし、初心者でも緊急回避として使っているうちに、敵を効率よく倒したりスコアを稼ぐといったスキルの向上をほどよく感じられるはずだ。
■ ファン必見のアレンジモード
選べる自機は「千裕(ちひろ)」と「Black(ブラック)」の2種類。移動速度は「ブラック」のほうが早い。ノーマルショットは「千裕」が前方集中型で、「ブラック」が広域カバー型。パワーショットはどちらもほぼ同じだが、「千裕」のみ方向ボタンを押した方向に弾道が曲がるといった特徴がある。 敵を倒した際に出現する「聖霊石」がアーケードモードより多い、BGMがアレンジされている、覚聖中のオートガードバリアが全ゲージを消費するなどの細かい違いはあるが、「アレンジモード」をプレイして真っ先に気づかされるのは「難易度の高さ」だろう。序盤から微妙に弾のスピードが速く、中型の敵が大量の弾を吐き出すにいたっては「……うわぁ(撃墜)」といった感じになる。初っ端から殺る気マンマンといったていで、初心者は1ステージボスにたどり着けない可能性大。
コンティニュー不可というシビアな内容だが、逆に中~上級者にとっては非常にやりがいのあるモードに仕上がっている。アーケード版をとことんやりこんだ人でも「このモードだけで十分お釣りが来るって。まぁだまされたと思って買え!」とさえいいたくなるデキのよさ。気になる人は公式サイトにムービーが公開されているので、まずはその目で確認していただきたい。ステージ3の無慈悲な弾幕に声を詰まらせるかもしれないが、一見の価値はあると断言する。
■ 現役世代はマストバイ。かつてシューティングに情熱を燃やしていた人たちにも…… 今から、約20年ほど前になるだろうか。全国各地のゲームセンターで「シューティングゲーム」が花形だった時代がある。なにがしかのコピー的な代物もなかったわけではないが、大半はそれぞれ独自の味わいを持つ個性的な作品が多かった。やがて格闘ゲームが大ブレイクするとともに、オペレーターの店舗運営やインカムに対する捉え方や考え方が大きく変化。プレーヤーの世代交代や入れ替わりなどもあり、シューティングゲームはアーケードゲームを構成するいちジャンルになり、今では「絶滅危惧種」とさえ言われてしまう有様だ。 そんな流れのなかでも、シューティングゲームを愛する人々は、さまざまな作品を世に送り出してきた。現在の主流といえば、シューティングゲームの一大潮流となった“弾幕シューティング”ものや、「式神の城」シリーズのようにキャラクタや世界観をフックにして、今までシューティングに興味がなかった層を引き込むことに成功した作品といったところになるだろうか。ただし、いずれにも“平均的な難易度の高さ”が共通しているのが、少々気になる。オペレーターにしてみれば1コインで延々とプレイされても困るという考え方があるようだし、市場を支えるユーザーも、シューティングに関しては先鋭化した内容を求める傾向が強いように感じられる。 本作も、いわゆる「弾幕シューティング」と呼ばれるカテゴリに属する作品だが、デモプレイを見た初心者が引くほどの威圧感はない。“覚聖”を上手く使えば、画面を覆い尽くす敵弾が金塊に変わる=画面から弾幕が消えるため、ただ単に敵を倒すだけでは得られない爽快感もある。移植レベルは、筆者個人としてはまったく違いが感じられないクオリティ。細かく調べれば違いはあるのだろうが、ボスキャラの弾幕による処理落ちもアーケード版と同じ感覚だっただけに、よほどコアなシューターでもない限り身体で違いを感じられる人はいないのではないだろうか。移植レベルが非常に高く、コンシューマオリジナルの「アレンジモード」も、ファンのツボを刺激する内容。これだけ見ても、アーケードでプレイしている現役世代が買って損をするとは考えられない。気になる人は、迷わず購入するべきだろう。 さて。ここからまとめの本題(?)。さらに付け加えるならば、現役世代だけではなく、かつてシューティングゲームを遊んでいたものの、近年のインフレ化した難易度についていけなくなった筆者と同年代……30歳前後のオールドゲーマー諸氏にも、本作をプレイしてみることをオススメしたい。「弾幕系? あー、無理無理。俺『雷電』が限界だもん」という人でも、“覚聖”や“ガードバリア”の使い方を覚えれば、確実にラスボスまでいけるはずだ。フェイバリッドシューティングが「XX MISSION(UPL)」という筆者がいうのだから、まず間違いないと思っていただきたい。 弾幕系のシューティングは、いちどクリアを諦めてしまうと負け癖というか「もう無理。身体がついていかない。ダメっすわ」といった感覚が生じてしまいがちだが、「エスプガルーダ」をクリアすることで「まだイケる!」という自信を、かつてゲーセンでモリモリとシューティングを遊んでいたオールドゲーマーたちに取り戻して欲しいのだ。こんなことを書くと、現役世代から「“覚聖”使ってクリアした気になってんじゃねーよ!」という嘲笑を受けそうだが、シューティングは先鋭化したマニアのためにだけ存在するジャンルではない。市場が先細りしないため、さらには良質の作品が恒常的に生み出されていく環境を作るためにも、ここは新旧シューティングゲームファンが一致して頑張らねば……などと考えるのは、ちと大げさだろうか。
ここから先は、やや余談になるが……PS2版の発売当日、筆者はゲームショップの新作コーナーで「エスプガルーダ」のパッケージを発見するのに、少々時間を要してしまった。事前にデザインを確認しなかった筆者も悪いのだが、PS2版のパッケージは、ファンタジーADVやRPGと見間違えるような淡い色調のイラストが全面に押し出されていて、存在感をアピールするには“少々大人しい”という印象を受けた。イラストレーターのファンには、こちらのほうがいいのだろうが……一見さんにパッケージを手にとらせるには“ちょっと訴求力が足りない”ような気がする。色々な意味でバランスのよい作品だけに“なるべく多くの人が接してくれたらいいなぁ”と思う今日この頃である。
(C)2003 CAVE CO.,LTD.
□アリカのホームページ (2004年6月30日) [Reported by 豊臣和孝]
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