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★PS2ゲームレビュー★
■ これまでの消防士モノとは異なる“消防隊”を題材としたゲーム 人命救助、火災鎮火。消防士の任務はとても明確で、ゲームの題材として向いているのだろう。これまでのコンシューマタイトルを振り返ってみても、「ザ・ファイヤーメン」(ヒューマン/SFC)や「バーニングレンジャー」(セガ/SS)など良作が揃っている。これらのタイトルは、先の消防士の任務をゲームの目的としてアクション性の高い作品に仕上げているが、「桜坂消防隊」はこれまでの消防士モノとは一線を画している。それは1人の“消防士”として火災に立ち向かうこれまでの作品に対し、“消防隊”としてのチームワークをゲームに落とし込んでいるという点においてだ。 「桜坂消防隊」は、桜坂消防署の消防士・本条大地を操作し、仲間の消防士たちとともに架空の街・桜坂に頻発する火災に立ち向かうアクションアドベンチャー。消防士本来の任務のほかに、ゲーム序盤に起こる大地の兄・雄一郎の事故死に隠された謎を追うミステリを含んだつくりになっている。 基本となるストーリーモードは、7つの火災に挑むステージクリア型。主人公は火災発生の通報を受け、現場に向かい、消火活動、要救助者の捜索と救出、現場に残された遺留品の回収などを行なう。任務が達成されると桜坂消防署に戻り、ストーリーにそってキャラクタ同士のリアルタイムムービーを観ることになる。また、遺留品の鑑定を依頼したり、要救助者からのお礼の手紙、Eメールに目を通すこともできる。この鑑定に提出する遺留品の選択や要救出者からの情報の収集具合で、シナリオは分岐しエンディングが異なってくるようだ。
それでは本作の白眉である、消防隊のチームプレイをゲーム化したシステムから詳しく見ていこう。
■ センスが光る、消防隊のチームワークプレイのゲーム化 繰り返しになるが、本作は「桜坂消防隊」というタイトルどおり、主人公をはじめとする消防隊のチームワークプレイによって要救助者の捜索・救助と火災鎮火を目指すゲーム。主人公を助ける仲間の消防隊員は最大3人。仲間の消防隊員以外にも、場所は限定されるが発見した要救助者を引き渡す救助隊員、火災でダメージを受け減少した体力を回復してくれる医療隊員、消火活動を助けるポンプ車、消防ヘリなどにも応援要請を出すこともできる。 彼らに指示をするときには指示画面を呼び出す。各部屋の延焼率に注意して、隊員たちをどのエリアに向かわせるかを決定する。プレイ中は、画面右上に表示されるフロアマップと、仲間隊員の状況を映し出す画面左上のサブウィンドウとライフゲージを常にチェックして、誰か遊んでいたりすることがないように注意しなければならない。 できればひと部屋づつ確実に消火して行きたいのだが、これがそう簡単にはいかない。ひとつの部屋を消火している間にも、炎は待ってくれず他の部屋を次々と延焼していく。時には一方の消火活動を中断して、延焼率の高い部屋に隊員を回さなければいけないときもある。消火中に要救助者を発見したときは救助を優先させる判断が必要になることもあるだろう。また、1人では動かせない障害物があるときは2人で向かわせねばならないし、天井が崩れ落ちて隊員が生き埋めになれば助けに向かわねばならない。場面場面でのすばやい判断力がクリアのカギとなるわけだ。 もし、こうした消火活動が間に合わず延焼率が100%となると、部屋が炎上し消防隊員では消火できない「ロスト」という状態になる。ポンプ車や消防ヘリによる消火が可能な部屋であれば、また足を踏み入れることもできるようになるが、要救助者がいた場合は救出不可能となり、遺留品があった場合は消失してしまう。仮にロストしてもステージをクリアすることはできるものの、シナリオ的には真実に到達することは難しくなるし、なにより消防士としてプレイするからには絶対に避けたいところだ。
では、消防士たちにどんどん指示を出して炎の中に飛び込んでいってもらえればよいか、といえばこれも考え物だ。消防士と言えど人間、炎に接触すれば炎上しダメージを受けるし、炎のそばに長く居続けていても熱でダメージを受ける。体力ゲージがなくなればダウンとなり主人公の場合はゲームオーバー、仲間がダウンした場合は救出に向かわなければいけない(放っておいてはステージクリアできない)。一刻を争う火災現場で隊員の救出に時間をとられるのはかなりマイナスだ。
もちろん消火活動ばかりもしていられない。燃え上がる炎の中で要救助者が消防士の助けを待っている。要救助者の捜索にはまず「呼びかけ」によって行なう。各部屋で声をかけ、返事があれば近くに要救助者がいるというわけだ。要救助者の中には事件についての重要な情報を持っている人物もおり、情報はクリア後にお礼の手紙という形で入手できる。しかし、見つけるのに時間がかかりすぎれば、要救助者たちは重体となって手紙をもらうことが難しくなる。消火活動と同時に迅速な捜索、救助が必要になるというわけだ。 さらには各フロアごとに制限時間が設定されており、時間内に任務を完了させる必要がある。要救助者を救助したりイベントをクリアしたときに制限時間は延長される。緊張感に一役買っているうえ、時間の設定が良い塩梅で攻略しがいのあるゲームに仕上がっている。
ゲームのステージとなる火災現場は、工場、高層ビル、駐車場、マンション、病院のほか、全部で7つ。2~4つのフロアで1つのステージを構成している。中には先へ進むのに、電子ロックを解除するといった少々面倒くさいフラグ立てが必要の場合もあるが、よく練りこまれたマップばかりだ。ただ、ステージによっては消防隊のチームワークプレイではなく、はしご車の上からホースで放水したり、消防ロボによる障害物の移動や放水など、毛色の違ったプレイをさせることがある。実際の消防士の任務をゲームで再現したからか、ゲームの幅を広げるために用意されたのかは図りかねるが、指示されたとおりにすればOKといったお使いゲームになってしまっていてプレイの緊張感が途切れるように思った。
本作のもうひとつのゲーム性、ミステリ部分に絡む遺留品の回収についても記しておこう。火災現場にはステージごとに5つの遺留品が残されている。これらを回収してステージをクリアすれば、署内で3つまで遺留品の鑑定を依頼できる。ここで、頻発する放火と主人公の兄の死にまつわる謎に絡んだ遺留品を、鑑定に提出できるかが真相究明に大きく関わってくる。ベストなエンディングを見たければ、おろそかにはできない重要なステップだ。ただ、シナリオについては後述するが、消防士になりきってプレイしていると、“遺留品の回収はニの次、人命救助が先だ!”という気持ちになってしまう。とは言え、火災鎮火と要救助者の捜索・救助というゲーム性にプラスアルファされ、繰り返し遊ばせる要素になっていると思う。
現場の火の回りのスピード、制限時間、良く練りこまれたマップ。このゲームにおけるシステムに関して総じて言えるのは、たとえゲームオーバーになっても、これは無理だと感じない、手順をよく考えればクリアできると思えるしっかりと調整された難易度であることだ。実際プレイするごとに上達していることをきちんと認識できるつくりになっている。本作は、チームワーク・レスキューアクションと称しているが、リアルタイムで変化する火災現場にて消防隊員たちにフレキシブルに指示を与え消火活動と人命救助をするあたり、消防リアルタイムストラテジーといった趣だ。 ■ 使いどころを悩ませる、能力の異なる仲間隊員たち 主人公を助ける仲間の消防士たちは移動速度、消火能力、体力の3要素で性格づけされ、能力が異なる。ゲーム中でも「このエリアはコイツでは無理だが彼ならば……」などというように頭を悩ませること請け合いだ。
例えば、新人隊員の土井は、消火能力は低いが足が速く、人命探索や遠隔地でのとりあえずの消火に役立つ。シナリオ中盤で登場する東北弁の緒方消防士は、逆に足は遅いものの体力は隊員中ナンバー1。障害物もどんどん撤去してくれる。筆者のお気に入りは、こわもての嶋消防士。延焼率の高い部屋でここぞというときにもしっかり消火してくれる頼もしい奴だ。逆にいつもハラハラさせられるのが紅一点の朝倉消防士。平均的な能力の持ち主のはずだが、筆者の指示が悪いのかなかなか言うことを聞いてくれない。すぐに違う部屋へ向かって欲しいときにも途中で延々消火活動をしていたりする。劇中、彼女はカラミティ沙耶と呼ばれているのだが、私にとってもカラミティ(疫病神)な行動ばかりするキャラクタだった(笑)。
■ 放水アクションにはもうひとひねり欲しかったところ まずは、消防隊のチームワークプレイについて言及したが、もちろん消防士としてのアクションもゲームの大きな柱だ。基本的な行動として放水による消火、斧による障害物の破壊、ダッシュボタンによるダッシュなどがある。 特筆しておきたいのは消火について。消火には一般的に良く知られるホースとインパルスがある。ホースは、直線的に水を飛ばし消化力の高いストレート放水と、広範囲に消火できる反面、消化力の低い噴霧放水に切り替えができる。炎に近ければ近いほど消火力が高まるという仕組み。噴霧放水は飛んでくる火を打ち落としたり、仲間の隊員に浴びせることで隊員の温度を下げることもできる。炎の近づく仲間には後ろから噴霧放水するといったプレイは効果的だ。インパルスは少量の水を空気圧で吹き飛ばし消火する装置。消化力が最も高いが充填に時間がかかるという欠点がある。 ストーリーモードではホースかインパルスの選択はステージによって変わるため、自分で選ぶことはできないが、ステージを自由に選べるフリーモードでは選択可能。ここで少し気になったのは、ホースのストレート放水とインパルスの差別化があまりうまくできていないと感じられるところ。
現実の火災においては、長さに限りがあるため動ける範囲が決まってしまうホースと、自由に移動できるインパルスでは、使いどころに大きな差があるが、本作においてはホースも現場を自由に移動できるため、インパルスとの差異が薄まっている印象がある。操作性や爽快感を考えれば、現実の仕様をそのままゲームに持ち込むことがゲーム性の面から見て正しいとは言いがたい。しかし、本作のような消防隊のチームワークプレイがゲーム性に関わっていることを考えれば、そうした装備の特徴づけをはっきりすることで、ユーザーに攻略の要素となるような仕掛けを仕込んでも面白かったかもしれない。
■ システムの陰に隠れてしまった演出とシナリオが残念 本稿のスクリーンショットを見てもらえばおわかりかと思うが、他社の3Dモデルを利用した作品と比べ、本作のグラフィックは目だつほどのデキの良さは感じられない。パッケージなどのキャラクタデザインは引きのある絵柄ではあるものの、特にリアルタイムムービー中のキャラクタモデルの演技はかなり辛いものがある。が、これが気になるのは個人差があるところだろう。筆者はゲーム部分については、正直に言って特に気になるところはなかった。 本作の狙いは、グラフィックに関しては火災現場の本質をきっちりと表現することに置かれている。実際にプレイしてもらわなければわからないところだが、延焼が進んだ現場はまさに修羅場のようだ。炎がうねり、生き物のように襲ってくることもあれば、引火したドラム缶が空を飛ぶこともある。火災の現場ではなにが起きるかわからない、といった雰囲気が本作はとてもよく描けていると思う。
ただ、シナリオについては正直厳しいものがある。ユーザーをゲームに引っ張り込む大事な要素であるのに、映画やコミックで見たようなストーリー展開が続き、主人公の1人語りも少々失笑してしまうようなセリフが目立つ。主人公の兄が死んだことに対するキャラクタたちの様子もちょっとわざとらしさを感じてしまう。特に後半のステージで続く爆弾解体はいただけないのではないか? 消防隊という優れた題材をもってセンスのあるゲームシステムに仕上げているのに、爆弾解体というステップになると急にそのピントがぼやけてしまう印象がある。ミステリ要素が本当に必要だったのかどうかには、多少疑問が残る作りになってしまっている。
筆者はストーリーモードを3周して、やっと真相にたどり着いたところであるが、正直まだまだ遊びたりない。ストーリーモード以外にも、自由にステージを選んで遊べるフリーモード、2人で協力して消火・救助を行なうコンビモード、対戦を行なうサバイバルモードなど、いくつかの遊びが提供されている。ただ、結局ステージが7種類というところに物足りなさを感じている。次は、フラグ立てや遺留品集めなどではなく、純粋に火災鎮火と要救助者の捜索・救出に専念する部分にさらなる作りこみが行なわれたステージを多数遊ばせてもらいたいのだが、いかがだろう?
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□アイレムソフトウェアエンジニアリングのホームページ (2004年6月23日) [Reported by 山内智和] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved. |
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