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【特別インタビュー】「塊魂」サウンドトラック「塊フォルテッシモ魂」インタビュー
■ サウンドのテーマは「笑い」、「お祭り要素」、「差別化」 --「塊魂」でのサウンドの成り立ちからお伺いしたいのですが。通常だと企画の方が発注して曲ができあがる、というイメージなんですが? 三宅 今回は全面的に任されたので、すごく自由にできましたね。 --「塊魂」のサウンドプランはいつ固まったんでしょうか。 三宅 開発期間が2年あったのですが、1年半前に試作という形で社内発表を行なっていたんですよ。良く僕は思いついたメロディを忘れないうちに携帯やPCに鼻歌で録音するんですけど、それを載せてみたんですよ。雑音がいっぱい入ったやつを。それが思いのほか評判良くて。「ナナ~♪」っていうのをそのまま歌ものにして、クリスタルキングの田中雅之さんに歌ってもらったらおもしろいんじゃないかと。 それが始まりで。でも、最近はタイアップとか流行っていて、1人使ってもぜんぜん印象に残らない恐れがあるということで、数で勝負じゃないですが、10人いってみようと(笑)。しかも10人いたら……このゲームのターゲットがしぼられていなかったので、いろんな年齢層に訴求できるんじゃないかと。みなさんの年代に思い入れのある人たちにフューチャリングっていうんですか(笑)していったら……という大人の計算もありつつ(笑)、コロムビアさんの協力を得まして。 --ジャンルがばらけているのもその「大人の計算」(笑)ですか? 三宅 そうですね。「鉄拳」とか「リッジ」ではがっちりジャンルが決まっているので、好きか嫌いかがはっきり分かれると思うんですよ。そこで、「塊魂」ではなるべく幅を広げて……みなさんの趣味に対応すべく。「俺はこの曲が好き」、「俺はこの曲が好き」となってくれれば……うっすら区切りはあるんですけど。 --その区切りとはどのへんでしょう?(笑) 三宅 お笑いっていうか(笑)。 --テーマがお笑いになったのは試作の段階からなんですか? 三宅 グラフィックがアレだったので、ちっちゃいモノをくっつけて大きくしていくというのが、企画書では富士山に塊が載っていたりして、結構……。 --狙っていたと。 三宅 そうですね(笑)。 --お笑いのネタを20曲以上も用意するのはかなり大変だったのではないでしょうか? 三宅 大変だったのは、結構期間が短かったので……前のプロジェクトが押しちゃいまして。「さあやるぞ!」となったら「時間ない!」っていう状態でして。ボーカリストさんのスケジュールと、デモをお聞かせしてキーが合わなかったらさらにやり直していたりして時間がなくなってしまって……。アイデアはまだいっぱいあったんですけど。チャーリーさんの場合だと、「こうやっていきましょう」と決まった1週間後に録音、とか(笑)。いつ練習するんだって(笑)。ゆっくりできた方もいますけど……新沼さんは練習されたみたいですね。 --新沼さん! めちゃめちゃかっこいいですよね。最初聞いたとき「えっ!」って思いました。 三宅 ありがとうございます(笑)。奇をてらった人選だけで楽曲作っちゃうと、最近のゲームユーザーさんは耳が肥えてますので、そこを手を抜くと色モノで終わってしまうので。ちゃんと作らなきゃいけないな、と。 --どの曲もタイトルと曲、アーティストさんのつながりがストレートに想像しにくいラインナップですよね。「こう来たかー!」って感じで。 三宅 ちゃんとボーカリストの持ち味を引き出すようにジャンル選定したんですけどね。松崎さんとかバラードだし。でも新沼さんに演歌を歌ってもらっても、塊魂で面白いのか、というとちょっと……「もっとそれより1段階面白いものを提供するには、HIPHOPじゃないですか?」と(笑)。 --みなさん出演を快諾されたんですか? 三宅 年末年始にレコーディングだったんで、スケジュールの問題で1度断られたりしたこともありましたね。コンサートとか舞台とか通って、最終的にOKもらったり。 --出来上がった楽曲に対するアーティストさんたちの反応はどうだったんでしょうか? 三宅 新規タイトルなんで、予算もあまりかけられないネックはあったんですが、アーティストさんにはこの企画自体に興味を持ってもらって、クリエイティブな作業の一環として、「みんなで作っていきませんか」とお話をさせて頂きました。幸いみなさん最初から興味を持ってらっしゃったんで、デキにも満足していただけました。クリスタルキングの田中さんは最後のミックスダウンにも立ち会ってくれて「いいよね! 歌えないけどね(笑)」と。 --(笑)。ゲームはプレイされてるんでしょうかね? 三宅 PS2を持っていらっしゃる方は遊んでいただけたようです。水森亜土さんはライブで演奏してくれたようですよ(笑)。新沼さんはニュースで楽曲が取り上げられて、まんざらでもなかったようですし(笑)。 --歌モノのBGMがこれだけそろっているというのは珍しいと思うのですが? 三宅 そうですね。要は曲が世界観とマッチしていて、なおかつ「曲が良くないといけない!」と思ったので……「曲が邪魔だよ」って言われないか内心ドキドキでした。おおむね好評いただいてホッとしております(笑)。 --「曲が邪魔だ!」といわれないようにするコツってどのへんなんでしょうか?
歌モノで全部サウンドを固めるというのは、手法として確立されているので。意識の違いというか、このゲームに関しては最初からOKがでていたということはありますね。企画書を見ると、当時の自分は「笑い」、「お祭り要素」、「差別化」というキーワードを設定していたようです(笑)。 --お笑いを曲だけでやるというのは相当難しいのではないかと。歌詞があるから笑える、とか。「お祭り要素」も声があるとやりやすいですよね。でも、企画の方から反対されたりしなかったんですか? 三宅 最初、ギャグっぽく「ボーカリスト10人呼んで歌ってもらう」というと、まず反対しないですよね(笑)。「マジで?」、「いいじゃん」という反応ですよ。「できたらの話だけど(笑)」ということで。 --で、本当にやっちゃったと(笑)。 三宅 でも、予算の面とか、きつかったですよ。 --僕個人の感覚ですが、曲がこのゲームのイメージにかなり貢献している気がするんですが? 三宅 今まで手がけたゲームだと、「好き」という人がいる反面、「ぜんぜんダメ」という人もいて、作り手としてはけっこうヘコむわけですよ。その意味で「塊魂」ではなるべく最大公約数を狙っていたんで、ホッとしています。 個人的にはジャンルの流行り廃りが多い中で、「歌モノ」はみなさん普遍的に大好きなんですよ。歌には歌詞もある、それだけなんですけど、なんだか聞いちゃいますよね。歌詞があって情報量も増えるし……。ユーザーのみなさんにダイレクトに訴求できるマテリアルとして、やはり歌モノはいい道具だと思います。 --歌モノに限らず、最近のナムコの楽曲は、親しみやすくて覚えやすいキャッチーなものが増えてますよね。 三宅 インストものに関しては、最近ソフトウェアで曲を作るのが流行っていて、その土壌でできた「エレクトロニカ」というジャンルを取り入れつつも、「ふざけているばっかりじゃないよ」といういいわけをこめて(笑)。自画自賛ではないですが、ナムコのサウンドチームは業界内でもトップレベルなのかな、と思います。 --それと、「ナナナン塊」の生まれたエピソードについて、ぜひお伺いしたいんですが。 三宅 歩きながら、「考えなきゃ考えなきゃ」……と。それでできました。本当に曲のメモとして録音したものをそのまま載せたという感じです。 --今までにない画期的な曲ですよね。個人的にアレがなかったら、ここまで入れ込むことはなかったと思います。 三宅 ヘボい感じがいいですよね。イタズラですよ。あそこから今回の歌モノが始まってます。「歌っていいな」と思いましたし。ありえないですよね。オープニングムービーもカクカクしてますし(笑)。 --ああいったノリって大事ですよね。 三宅 スタッフ全員、こういったゲームの内容自体をすごく気に入って、大好きで。それが力を発揮したと。楽しんで作ってましたよ。 --効果音もすさまじい数が入っていますが、これもぜんぶこのゲームのために? 三宅 そうですね。録音していくうちに、いろんなバリエーションを作っていけたので。巻き込みボイスだけでも400種類ぐらいあるはずです。録音している間にどんどん増えていって……。 --メモリにはやさしくないですね(笑)。 三宅 大変でした(笑)。有限なメモリに入れないといけないので、普通あまり多くしないんですが、でも笑いを優先ということで、無理やり載せました。質より笑いということで(笑)。声は社内スタッフです。 --セリフは誰がお考えに? 三宅 録音しながら引き出していく、というか。お願いしづらいヤンキーとか、私がやりました(笑)。子供とか、みんな恥ずかしがってやってくれないので、私が……(笑)。ムービーシーンの星野一家も社内で……棒読みですからね(笑)。 --棒読みがいいんですよ(笑)。 三宅 4歳の子供を連れてきて、「フェニックスって言って」って(一同爆笑)。某「太鼓の達人」のプロデューサーの子供さんたちなんですが。意味もわからず「コスモを感じるわ」なんて……言ったことないでしょうね(笑)。 --王様の声も面白いですよね。 三宅 王様にもしゃべらせたかったんですが、マスターギリギリまで王様のセリフが変わっていたんで「じゃあスクラッチでいこう」と。スクラッチでHIPHOPな感じを出してみました(笑)。 ■ サントラは直球勝負で!
三宅 全部は入らないので……。最初から最後まで流しても、飽きさせずに聞いてもらえる、というコンセプトで。通常のシングルサイズに編集した歌モノとインストをはさんでいる感じです。そして最後に松崎さん、みたいな(笑)。ちょっとイラク問題を匂わせるような歌詞……(笑)。 --あれにはヤラれましたよ。「こっちにいくかーっ!」って感じで。 三宅 「そんなメッセージが込められていたのー?」と。 --それから、サントラのタイトルなんですが。普通なら「塊魂サウンドトラック」でおしまいって感じなんですけど、「フォルテッシモ」って……(笑)。誰が名付け親なんですか? 三宅 あれは社内でいろいろ候補を出してもらって(笑)。「みんな大好き!」とか(笑)。 --ベタベタだ(笑)。 三宅 でも、「みんな大好き!」はちょっとウソっぽいよね、とか。 --エンディングにはジーンとしちゃったんで、ゲームをラストまでプレイされた方にとってはそんなことはないと思いますけど(笑)。しかも「フォルテッシモ」って文字が崩れてるし……このジャケットもすごいですよね。 三宅 「フォルテッシモ」って強く弾く、という意味なんですけど、ぜんぜん強くないですよね(笑)。スタッフに手書きで書いてもらいました(笑)。CDも売れてくれるといいんですけど、音楽業界、厳しいですからね。今回CDを作るにあたって、それぞれのアーティストさんにコメントもらってインナーに収録したりしてます。 --ほかにはなにか収録されてたりします? 三宅 歌詞が……(笑)。ほかにもいろいろやりたかったんですけど、どのくらいか未知数なものがあって……。ゲームの没ステージをつけてみるとか(笑)。 --それはすごいですね。 三宅 いろいろやりたかったんですけど、今回は直球勝負で。 --三宅さんのお気に入りの曲はありますか? 三宅 個人的にひっそりと新沼さんのもいいな、と思うんですが、自分で書いた曲が気に入ってないってのも困っちゃうので(笑)、あえていうと自分の曲ですかね。「さくらいろの季節」とか思い入れがありますね。少年少女合唱団に、失恋の歌を歌ってもらうという(笑)。 --あれもビックリしました。最後に読者の方にメッセージなどいただければ。 CDはぜひ皆さんに「チェキだ、ファンキだ~♪」って歌いながら聞いてもらいたいですね(笑)。ゲーム中のBGMは制作している側としてはやはり……TV用にイコライジングを施しているんで、音を相当潰して音量を稼いでますし、ゲームの編集だと1曲20分とかありますので。ぜひ、CDレベルの音質で聞いてほしいという思いがあります。通勤、通学、ドライブのおともに! それから、未使用曲も収録してありますし。ぜひよろしくお願いします。
--本日はどうもありがとうございました。
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□ナムコのホームページ (2004年5月19日) [Reported by 佐伯憲司]
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