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★PS2ゲームレビュー★
星々を破壊してしまった王様のために、王子が塊にモノをくっつけ、大きくし、銀河の星々を再生する、というストーリーの異色のアクションゲーム「塊魂(カタマリダマシイ)」。本誌でも昨年の「PlayStation Meeting」以降、この作品を追いかけてきたわけだが、ついに発売となる。 操作はアナログスティック2本を使用したラジコン操作。両スティックを↑↑で王子が塊を押して前進、↓↓で後退、↑↓で右、↓↑で左へと回転。→→で右、←←で左へ平行移動するといったもの。さらに、L、R3ボタンを同時に押す(両スティックを押し込む)ことで、その場で180度方向転換できる「王子ターン」が使え、両スティックを交互にガチャガチャすることでダッシュが可能となっている。 初めてプレイするときに、上記の操作を一通り行なうチュートリアルが用意されているので、マニュアルを見ずとも十分プレイに関する操作は確認できるのはうれしい。 とまあ基本的なところは記事で何度か取り上げているので、過去の記事を参考にしていただき、今まで紹介しきれなかったこの作品の魅力を個人的視点からこのレビューでお届けしていこう。あらかじめ申し上げておきたいのは、このゲームは隅から隅までよく作りこまれている、ということ。そして、とても味わいのあるゲームということ、そして個人的に最低1本購入決定ということだ。
「どうせ提灯記事でしょ?」と思われる方もいらっしゃるかと思うが、個人的になにはともあれ、エンディングにいたるまで楽しい思いをさせていただいたゲームである。興味をもたれた方も多いと思う。そんな方々に本稿を読んでいただければ、との思いでこの原稿を書いている次第である。
■ まずはデータロード画面から魅力を語っていこうか ゲームをプレイすると作成できるセーブデータ。2回目以降のプレイでは、ゲームが起動されると、「NAMCO(R)」のロゴが出現した後、まずこのセーブデータをロードする画面が表示される。このロゴが実はポリゴンで描画されており、基本操作どおりに塊を王子が転がし、対応する文字を巻き込むことでロードデータを選択する形式になっている。ちなみに新規データプレイは(R)の文字をくっつければOK。 そしてバックグラウンドに流れるサウンドは、昨年から配布されていた体験版にてタイトル画面用のバックに流れていた「ナナナン塊」。鼻歌である。このロードシーケンスこそ、このゲームの魅力の一端を端的に紹介している好例といえる。シンプルなのにどこか可笑しい。ちょっとヒネッたユーモアがこのゲームの中には“詰め込みすぎ!”というぐらい詰め込んであるのだ。 さらに、星を作る段になっても、ロード画面には特徴がある。「星を作る」選択をした後、王様が登場。この王様のアイサツがスカしている。世界の国々の言葉で行なわれるこのアイサツ、知らない国もいっぱいだった。カタカナと漢字の入り混じるテキスト、そして独特の曲線を持つ文字フォント。最初はちょっと視認性に困る部分があったが、慣れるとこれがゆるーくかわいく思えてくる。 そして、いざ星へと向かうわけだが、そこで入るロード画面は王様が「イロイロト地球ヘオクッテマス・・・・モノ・・マップ・・夢・・希望・・愛・・ヨロコビ・・コンワク・・トマドイ・・」(内容はステージによって異なる)と言葉を投げかけてくる。単なる「NOW LOADING」と違って、なんて味のあるロード画面なんだろう? 別にこれが「すごい」と声を大にしていいたいことではないのだが、ただ「ロードしています」ということを伝えるだけでない、開発陣のやさしさあふれるセンスには心動かされるものがある。
タイトルと交互に流されるアドバタイズデモもいい。わざわざプレーヤーのプレイデータを一定量見せてくれるようになっている。初めてプレイする際はデモプレイを参考にしてみると、意外なことがわかって楽しいかもしれない。
■ 「塊を転がしてモノを巻き込む」ことを繰り返すだけでなぜ楽しいか 塊を転がしてモノを巻き込む。これがこのゲームの最大の魅力であることは何度も繰り返しているが、この感覚だけなら、古くはアタリの「マーブルマッドネス」や、最近ではSCEJの「XI」にも通ずる、転がす感覚とも似た要素がある。過去の偉大な作品と、この「塊魂」の違いは、「塊」にモノが巻き込まれること、「塊」は球形で、ごろごろと転がることことぐらいだろうか。しかし、「塊」に長いモノや大きなモノを巻き込むと、「XI」さながらのガタゴト移動も楽しめてしまう(これはこれで困ることもある)。 しかも、この「塊魂」では、「そのステージに転がっているほとんどすべてのモノが巻き込める」ことが大きな魅力に直結している。ガビョウやお寿司やビスケットから、果ては島や雨雲といったありとあらゆるモノが巻き込まれ、そのたびにリアクションが起こる。電柱やフェンスなど、地面にしっかり植えられているものは、ベリベリッという感じで巻き込まれていくし、あまり高く積んであるものは一度で巻き込めずにストンと落ちてくる。面白いのはやはり、巻き込まれる際のリアクション。鳥の卵をくっつけるといきなり「コケコッコー!」と叫びながら孵化してみたり、お姉さんを巻き込むと「イヤーン~」だったり、と細かくSEが設定されており、さらにジタバタしてみたりと芸が細かい。リアクションがあるのは別に動くものだけではない。カサを巻き込むとパッと開いてみたり、リアクション探しをしているだけで夢中になれてしまう。 それから、塊の大きさ以下のモノは全て巻き込むことができるので、畑に植えられているダイコンやニンジンといった作物は、その上を通過するだけでポンポン抜けていく。そして塊がハリネズミのような形になっていくのがなんともたまらない。さらに、フェンスやベンチ、街灯など、ちょっと普通ならありえないモノを巻き込めるようになってからが俄然楽しくなってくる。フェンスをベキベキとはがし、自動販売機を押し倒し(つぶしてはいないのがミソ)、挙句には家やビルまでポロポロと巻き込んでいく様は、怪獣映画のまさにそれ。怪獣といえば、なぜか存在する巨大ヒーローや怪獣も巻き込むことが可能だ。
ただし、「巻き込み」にはルールがある。先ほども述べたように、塊の大きさ以上のものは巻き込めない。巻き込めないものにぶつかると、「ガキッ」といったショックが起こり、その場で塊は停止するが、高速でぶつかると、軽くはじかれるように停止するうえ、くっつけていたモノがはがれてしまう。さらに、ネズミ捕りなどに乗っているモノを巻き込む際には、バチンとはじかれて大きく飛ばされることもある。 もっとも注意すべきは、人や自転車、クルマなどの移動するモノ。塊がまったく相手にならない大きさのときは吹き飛ばされてしまう。巻き込めるかどうかは、このぶつかったときのリアクションが参考になる。相手にされないときはピクリともしないが、もう少しで巻き込めるというときは、ぶつかると揺れるようになる。ここまでくれば、もう少し塊を大きくするだけで巻き込める。モノを巻き込めるかどうかは細かく設定されており(物体の容積で計算されているようだ)、長いものでも細ければ早めに巻き込めるし、フェンスなどの薄いものも、見てくれよりは早く巻き込めるようになる、ということを覚えておくといいだろう。
塊が大きくなると、カメラがより上方からのアングルへと変化し、どんどん視界が広がっていく。最初はいじめられていたネズミやフンコロガシなどに復讐するチャンスが回ってきたとき、猫や犬を巻き込めるようになったとき、人を巻き込めるようになったとき、クルマを巻き込めるようになったとき……と、最初は小さかった王子がまさに地球のありとあらゆるモノに対して逆襲していく、それがなんともいえない高揚感を呼び起こしてくれるわけだ。
さらに、巻き込んだものの種別(むしろ塊の成分とでもいおうか)から、星の名前が命名される。このネーミングがまたユニークなので、いろんなものを巻き込んでみたくなるのだ(今までに集めたものは王子星の『素敵コレクション』で分類された状態で閲覧できる)。規定到達時間と、最終的な塊の大きさが記録されるので、できるだけ早く、できるだけ大きく、というチャレンジャブルな要素があることも、ゲームとしてうれしい。以前作った塊がある場合は、星として浮かべるか、「星クズ」にするかを選べる。星クズを選択すると、王様の巨大な頭が、できあがった塊をあっという間に壊してしまう……コレがちょっぴりセンチメンタルを誘う。できあがった星は、王子星の「星空を見る」で鑑賞することができる。
■ 大別すると2つのステージが
ゲームモードは、「星をつくる」と、「星座を作る」に大別できる。「星を作る」は、先ほども述べたとおり、一定時間内に規定以上の塊を作り上げるモード。「星座を作る」は、ちょっと条件が異なり、王様の課題を満たすものを巻き込む。どんどん塊を大きくする「星を作る」は、とにかくガンガン先に進めるが、「星座を作る」は、ちょっと頭をひねらないと好記録が残せないルールが用意されている。 総ステージ数はそれほど多くない。マップは家、町、世界の3タイプで、行動範囲が設定されている(規定以上の大きさになれば通過できるゲートのようなものが設定されている)。各ステージはちょっと慣れればノーミスでクリアできるボリュームと難易度になっている(3時間ぐらいですべて遊べてしまうだろう)。だが、その先には、規定の大きさをクリアするための所要時間を詰めたり、塊をできるだけ大きくするというやりこみ要素がある。サクッと始めてスッとやめられる気軽さは確保しつつ、レースゲームのようなタイムアタックを繰り返すというストイックだがなかなか侮れない楽しみが待っている。規定の大きさに到達する際にかかる時間によっては「流星」を見ることができるようになる。流星は「星空を見る」で自分が操作して流すことができる。 「星を作る」ステージは、いわゆるストーリー仕立てになっている。「ウゴウゴルーガ」や、「ブラックワイドショー」といったテレビ番組が好きな人には、多分センスのチャンネルが合わせやすい、どこかシュールな展開が待ち受けているので、幕間のデモもしっかり見てもらいたい。個人的にはこのセンスは非常に好み。母、兄、妹の3人が、父親に会いに行く旅を描いた一大巨編(誇張ありすぎ)となっている。 「星座を作る」は、一部の星座は好記録を狙おうとするといきなり大変なことになる。特にびっくりしたのは「おおくま座」、「おうし座」。ステージ中に点在する「熊(おうし座は牛)」に関係するモノを巻き込んだ時点で終了となるのだが、塊を大きくして大きな熊を捕まえようとすると、塊が大きくなってしまっているのでカメラが上空へ行ってしまい、小さなものが見えにくい。おまけに……これ以上はネタバレになってしまうのでやめておこう。このステージと、塊の大きさがわからなくなる「北極星をつくる」ステージはかなりドキドキできる。 ひとつ気になったのは、「リトライ」がゲーム中断時のメニューにないこと。ゲームプレイ中にスタートボタンで中断すると、△ボタンで「王子星に帰る」という選択は可能だが、その際も王様による「星クズにするかどうか」の判定シーケンスへ行ってしまうので、すぐにリトライができないのはタイムアタック派としてはつらいところだ。 それから、キノコでいとこたちと行なえる対戦モードにも多少触れておきたい。いくつかの専用マップの中で、結果的に規定時間内により大きな塊を作り上げたほうが勝ち。基本的には先手必勝なのだが、ダッシュすることで相手の塊にタックルし、相手のモノを弾き飛ばすことができる。これで相手を動けなくしておき、その間に残ったモノを巻き込んでいく、という駆け引きの要素がある。塊を大きくしたら、対戦相手を巻き込んで動けなくし(巻き込まれたらレバガチャで回復)、さらに塊を大きくするのだ。
■ 大物大起用のサウンドも必聴
さらに、そのほかの楽曲にも魂を揺さぶられるものが多く、'90年代サウンドと歌謡曲が好きな人にはぜひとも聞いてもらいたいサウンドがあふれている。昨年1月に発売された「ことばのパズル もじぴったん」が好きな方にはさらにオススメしたい(スタッフも共通しているし)。前述の大物アーティストが参加していないものにこそ、このゲームのベストBGMが隠されているかもしれない。
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□ナムコのホームページ (2004年3月17日) [Reported by 佐伯憲司] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved. |
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