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★PS2ゲームレビュー★
週刊少年マガジンに連載中の人気ギャグ漫画「魁!! クロマティ高校」をゲーム化。不良たちが熱く議論(?)を交わすという原作の持ち味をアドベンチャーゲームという枠に落とし込んだ意欲作だ。プレーヤーは原作の主役「神山高志」となって、不良の仲間やゴリラ(生徒?)とひたすら話し込んでゲームを進めていく。
200X年、ある朝のこと。「今日もまた平凡な一日の始まりだ……」
「要するに、『クロ高がゲーム化される』ことをネタに、いろいろ話し合いましょう……ということです。(マニュアルの神山の言葉より抜粋)」
原作ファンとしてプレイした印象は、「クロ高の不良たちとダベっている」という雰囲気がよく伝わって面白い。神山のフリに対し、前田という冷静な不良でツッコむのか、頭の悪さが売りの林田で話題をボケ倒していくのかといった“ネタフリ”というシステムで話を組み立てていく楽しみがある。ただ、原作ファンはキャラの性格を把握しているだけに、完全オリジナルストーリーであっても“ネタフリ後のオチが読めてしまう”という悲しさが同時に存在する。
原作を知らない人は「不良たちが会話するだけ」という光景が異様に見えると思われるが、話題のピントがぼやけてきて訳がわからなくなる感覚、そして何も解決しない空虚感は、充分すぎるほど堪能できるはず。ぜひ「脱力系漫画」と呼ばれる原作の魅力に巻き込まれていただきたい。
今作はアドベンチャーというジャンルにしては珍しく、テキスト表示は右から左に流れてる。特に読みにくさは感じないが、文字表示速度を「速」にした場合や×ボタンでメッセージ表示のキャンセルをかけた場合はテキストが画面から一瞬で消え去るのが難点。過去ログ表示機能が無いことが非常に悔やまれる。 ■ 不良ならではの会話システム“BTS” プレーヤーが体験するクロ高生徒との会話では“BTS(ボケツッコミシステム)”というシステムでツッコミを入れることが可能だ。ツッコミのやり方はいたって簡単で、ツッコミ画面モードの時、画面右下に表示されている人型のアイコンが明るくなった状態で方向キーまたは左スティックを入力するだけ。ツッコミの種類には、入力したキーorスティックの方向によって弱ツッコミ(上方向)、中ツッコミ(左、右方向)、強ツッコミ(下方向)に分かれる。この強弱によって、シナリオが分岐する可能性がある。
弱ツッコミでは文字の大きさが小さくなるなど、“BTS”は芸が細かい。そして、ツッコミの使いわけによってシナリオ分岐のフラグが立つのだが、どのタイミングで分岐しているのかが不明瞭。新しいシナリオを探し出すには、セーブポイントから次のセーブポイントまでの会話をすべて弱ツッコミにする(or、中、強ツッコミにする)というローラー作戦が必要で、単調な作業になってしまうのがつらい。
ひとつの話題について深く掘り下げていくシーンでは、ネタフリ画面に移行する。ネタフリ画面ではツッコミを実行できない代わりに、プレーヤーがその場にいる複数のキャラの中から発言させるひとりを選択することが可能だ。
筆者は、ツッコミよりもこの“ネタフリ”の方にクロ高らしさを感じた。ケンカの話題なら前田彰を、ゲームの話題ならメカ沢にネタをフる……たとえるなら、オーケストラの指揮者が工夫して演奏の流れを作るように、会話をクリエイトする感触が面白い。根本的にクロ高生徒たちの会話は噛み合っていないのだが、それでもどうにか話が(別のベクトルに)まとまっていくのも笑える。 ■ やり込みがいはないが、原作にマッチしたミニゲーム プレイ中にはさまざまなタイプのミニゲームが出現する。普通、ミニゲームというとシンプルなルールでお手軽に楽しめ、なおかつハマれるという物を連想するだろう。だが、本作に収録されているほとんどのミニゲームは、意図的にゲームの底が浅く設計されていて、やり込みがいは皆無に等しい。ミニゲームとしては問題は多々あるものの「魁!! クロマティ高校」という漫画のカラーとは絶妙な調和を見せている。漢(おとこ)として一度はプレイしてほしいゲームたちだ。
作品の中でも「熱血硬派前田くん」や「バントDE甲子園」は、わざと粗いドット絵で描写されたキャラクタが活躍するミニゲーム。ゲーム内で使われているサウンドも、ファミコンやMSXに使用されていたFM音源やPSG音源を連想させるキンキンとした音色で彩られている。ここでノスタルジーにひたりつつも「これ、本当にPS2の画面かよ!」とモニターに向かってツッコミを入れるというのが正しいプレイスタイルなのだろう。ちなみに、ミニゲームはすべてひとり用。
■ ゲームモードの「オプショソ」とは…… タイトル画面の構成は1カ所を除いて、ごくスタンダード。「本編」、「セーブ」、「ロード」、「ゲームライブラリ(本編で登場させたミニゲームを遊ぶモード)」、そして「オプショソ」だ。「オプショソ」について多くを語ることはできないが、とりあえず一度見ておいて損はないだろう。
このゲームのセーブは、どこでもセーブできるタイプではなく、ゲーム本編の各所に用意されたセーブポイントでのみセーブ可能。再プレイ時はルート図画面から任意のセーブポイントを選択して始めることができる。前述のように、このゲームでは選択肢によるフラグ立てではなく、プレーヤーのチョイスしたツッコミの強弱、ネタふりのターゲットの違いによってシナリオが分岐する。そのポイントを見極めるのが困難なため、任意のポイントでプレーヤーがセーブするよりも、セーブポイントから分岐を含んだシーンをやり直したほうが効率はいい。
■ 新生活の始まりにクロ高を…… コミック、アニメ、ドラマCDとあらゆるメディアに進出し、ファンにほどよい脱力感と笑いを提供している「魁!!クロマティ高校」。この度のゲーム化(2回目だが)で、新たな“クロ高伝説”を築いてしまったといえるだろう。ファンなら神山たちのやり取りだけで十分に笑えるので、素直に喜べる1本。予約特典の「メカ沢七味入れ」もコレクターズアイテムとして必携だろう。
では、原作を知らない人はどう感じるのだろうか? 恐らくは、ボケツッコミシステムがわかりづらい、ミニゲームは熱中できる類のタイプではなくむしろ1発ネタなどの難点があるかもしれん――クロ高初心者には少々リスキーなゲームであることは認めよう(クロ高四天王風口調)。だが、「スタンダードなゲームは好かん」という反骨精神に溢れた人々、じつは不良になりたかったという紳士淑女たちは、ぜひ手を出していただきたい。存在自体がすでにロックン・ロールしている「魁!! クロマティ高校 ~これはひょっとしてゲームなのか!? 編~」。この前衛的なゲームを所持し、擬似的にアナーキーなカラーに染まってしまうのもいいだろう。
なお、クロ高特設サイトではFLASHでの体験版がプレイできる。体験版はサウンドこそないものの、ゲームの雰囲気はPS2版とよく似ている。まずはこちらでゲームのイメージを掴んでいただきたい。 (C)野中英次・講談社/テレビ東京・クロ高PTA (C)2004 HUDSON SOFT
□ハドソンのホームページ (2004年3月11日) [Reported by 福田柵太郎]
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