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「テイルズウィーバー」運営チームインタビュー
ストーリーと緻密なビジュアルで魅せる2DMMORPG

ネクソンジャパン代表取締役社長David K. Lee氏(左)、NEXON CFO James Kim氏(右)
2月収録

会場:ネクソンジャパン本社ビル

 韓国NEXONが長年温めてきたストーリー重視型のMMORPG「テイルズウィーバー」のオープンβテストが2月25日にスタートした。これに前後してメディア各社に送付された案内状には、オープンβテストを開始する名目として「開発、運営システムの抜本的な改善に成功し、ハイクオリティかつハイスピードな展開が行なえる見通しがついたため」とある。本来、クローズドβテストからオープンテストに移行するにあたり、理由付けは不要のはずだが、わざわざ盛り込んだところに、運営元としての強い意志を感じさせてくれた。

 実は韓国のNEXON本社では、昨年末を境に日本法人も含めて「テイルズウィーバー」まわりの体制が一新された。同作の開発元は韓国大手デベロッパーのSoftmaxだが、運営元であるNEXON内部の体制をどうするかで一悶着があったという。この結果、NEXONのCFO James Kim氏が「テイルズウィーバー」運営チームのトップに就任。無数のMMOタイトルを運営する同社において、わざわざ財務部門の最高責任者を現場に持ってきたことは、同作のプライオリティの高さを否応なく実感させる。

 今回はJames Kim氏を始め、新しくネクソンジャパン代表取締役社長に就任したDavid K. Lee氏、そしてゲーム運用部の楢 和隆氏の3名に「テイルズウィーバー」の日本展開について話を伺った。


■ クローズドβテストで体制作りを調える

今年1年のアップデートプランを記入した表を見せるJames Kim氏。スケジュールはびっしり埋まっていた
編集部 まず最初に2月18日をもって終了したクローズドβテストについて聞かせてください。

David K. Lee氏 具体的な数字は出せませんが、同時接続は数千人。テスターの数は1万人。募集時には7万近くの応募がありました。もっともこれは若干応募者が被っているので実数はもうすこし少なくなりますが、我々としてはクローズドテストの応募者数に関してはそれほど重視していませんでした。それより、結果的に若干長引いてしまいましたが、しっかりテストが行なえたことを評価しています。

 韓国でのβテストと比較して、プレーヤーの行動や思考において違いは感じられましたか?

James Kim氏 韓国では常に多くのβテストが実施されており、またユーザーのほうも慣れてますから特にケアは必要としないし、ユーザーもそれを強く望まないといった傾向があります。対して日本は、ゲームのイントロダクションやチュートリアル、ユーザーインターフェイスを望む声が強かったという報告を受けています。

 そうした報告に対してクローズドβテスト期間中に対応はなされたんですか?

James 直接の回答にはなりませんが、日本独自のアイテムやモンスターそしてマップもほしいという声があがっています。我々はこれらを全部含めて現在韓国で開発を進めているところです。これはクローズドβテストを実施して、フィードバックを受けた上で開発着手されたものです。

 なるほど、それらはオープンβテスト期間中に実施されるのでしょうか?

David ネクソンジャパンとしてはなるべく早い段階での導入を検討しています。日本のクローズドβテストは予定より1カ月程度長くなってしまいましたが、「テイルズウィーバー」に日本オリジナルの要素を盛り込みたいというプランを韓国の開発元と交渉していたことがひとつあります。常に日本サービスに対応してくれるスタッフを韓国に置き、フィードバックに対して即座に対応できる体制を整えました。

James 私の意見もほぼ同じ内容になりますが、私はこれまで韓国中心で開発が進められていた体制を、日本は日本中心で進められるように体制変更しました。実際のゲームの開発元は外部(Softmax)ですが、日本のフィードバックにすぐ反応できる体制を本社内部に調えたということです。

 今回私が日本に来た理由は、日本のメディアに対するインタビューもありますが、私が作成した「テイルズウィーバー」のロードマップを日本のスタッフに提示して議論を行ない、日本に何が必要なのか、何が足らないかと見極めておこうと考えたためです。

 オンラインゲームの主役はあくまでユーザーです。運営側としてはユーザーの満足度を一定以上に維持することですから、ユーザーニーズを素早く掴んで、それを韓国にフィードバックし、1日でも早く開発に着手する。この流れをスムーズにすることが重要だと考えています。

 ユーザーから寄せられた意見で多かったものは何でしょうか?

David 不具合の報告や、モンスターやアイテム追加などの要望はたくさん頂きました。クローズドβテストでは、チャプターは1つしか導入されなかったので、ストーリーテリングの部分がまだ見えていないと思います。オープンβテストは、開始時点では1チャプターのみでスタートしますが、4月にはチャプター2が導入され、その後も2カ月間隔で新しいチャプターを導入していきます。

 チャプターに対する意見というのはなかったのですか? たとえば新鮮で楽しいとか、違和感があるといった、内容に対する意見です

 あまり無かったような印象があります。ひとつは比べるものがないためではないかと思います。コンソールゲームにはありますが、MMORPGでストーリーが楽しめるのは「テイルズウィーバー」が初ではないかと思います。他に比べられるようなタイトルが日本にないためか、好評のようです。


■ プレーヤーとゲーム世界を繋ぐ8人のキャラクタが魅力

 ようやく本題に入りますが、2月25日からオープンβテストが実施されます。どのような心づもりで運営を行なっていくつもりでしょうか?

David 本格的に変わるのは、オープンβテストが始まってしばらく経ってからになります。4月のチャプター追加がひとつの大きな節目になると見ています。

 なるほど、韓国のMMORPGのオープンβテストは、比較的見栄えのするアップデートと共に始まるのが通例ですが、ちょっとスタイルが異なるようですね。

 オープンβテストのスタートそのものはさほど重要視していないというのが本音です。我々はもう少し長いスパンでこのテストを実施していく方針です。

David 他社さんの場合は、オープンβテストでユーザーを集めるだけ集めて、正式サービスへの客寄せにするという100%プロモーションに利用しているケースが見られますが、弊社の場合は、あくまでβテストという認識でおります。その証拠に、正直言いまして、現時点ではオープンβテストをいつまでやるという見込みすら立てていません。

 ユーザーが満足しなければいつまでもやると?

David そういうことです。日本のユーザーの大半が納得して、これなら課金されても続けたいと思って頂けるまではオープンβテストを続けたいと考えています。日本法人の社長として正直な意見を言えば、現時点の内容では到底課金はできないと考えています。もっともっと中身を充実させる必要があります。だからこそβテストをやるわけです。

 オープンβテストが始まってからも、不具合が発生したり、細かいエラーがあったりするでしょうが、ユーザーの皆さんには弊社の考えにぜひとも納得して頂いた上でテストに参加頂きたいと考えています。

 現在のプランでは2カ月おきにチャプターを追加していきます。その間にも細かいバージョンアップや不具合の修正はありますが、次々と新しいものを追加していくことでユーザーを飽きさせないという運営体制全体を評価して頂ければと思います。

 4月にチャプター2が導入されて、その2カ月後の6月にもまた導入されるということですが、βテスト期間中にストーリーを楽しめるということでしょうか。

David そうです。我々はチャプターごとにユーザーの意見を聞いて、細かい微調整を加え、最終的に課金していいクオリティまでもっていくつもりです。長い作業になると考えています。

 サーバーの設備はどの程度になるのでしょうか?

 クローズドβテストは1サーバーでしたが、オープンβテストでは5サーバーで運営していきます。1サーバーあたりのキャパシティは6,000人程度までなら耐えられますので、各サーバーがそれを常時超えるようなら新しいサーバーを導入していく計画です。

 キャパシティ6,000人で5サーバーということは3万人ですか、多いですね

David そうですね。いきなり3万人がアクセスしてくれるかどうかはわかりませんが、最初にサーバーがダウンして多くのユーザーが遊べなくなったり、遅延が発生して満足にプレイできないようなことはしたくなかったので、多めに用意しました。

 韓国産MMORPGというと最近では「リネージュ II」や「Seal Online」などが有名ですが、韓国でもフル3Dが当たり前になってきています。対して「テイルズウィーバー」は2Dですが、どのような戦術あるいは覚悟で展開していくつもりなのでしょうか?

James 2Dのマーケットはまだまだ残されていると考えています。3Dだけがゲームだという訳ではないし、これは個人的な経験になりますがXboxの「Halo」をプレイするとどうしても酔ってしまう。2Dのほうが好きというユーザーもいると思っています。また、2Dにはアート的な魅力があると考えています。

 弊社の「メイプルストーリー」は2Dですが、韓国で好評を得ていますし、ゲームの根本というのは、おもしろいかおもしろくないかであって、2Dか3Dかというのはさほど問題ではないと考えております。

 たとえば、私のベストゲームは「ファイナルファンタジー IV」で、2番目は「ファイナルファンタジー VII」です。「IV」は2Dのゲームですが、私の知る限り2Dのゲームだからおもしろくないという評価は聞いたことがありません。

 おもしろいゲームが1番だということには賛同しますが、たとえば、スクウェア・エニックスが今後「ファイナルファンタジー XIII」を開発したとして、2Dのグラフィックスエンジンを採用することはありえないと思います。

 なぜなら、RPGの構築に必要不可欠であるインタラクティブ性の高い仮想世界を表現するためには、手段として2Dよりも3Dのほうが格段に優れているからです。3Dのない時代の2Dゲームと、現在の2Dゲームを同列に並べることはできないと思います。ただ、先ほどの「アート的な魅力」ということに関してはおもしろい考え方だと思いました。

James 「テイルズウィーバー」の魅力はキャラクタの魅力と言ってもいいぐらいですが、このキャラクタのキュートさを大事にしています。これらは現在のテクノロジーでは2Dのほうがキュートさや格好良さを的確に表現できると考えています。これは韓国において、「Seal Online」と比べて「テイルズウィーバー」のほうが好調であるということがそれを証明していると見ています。

 もうひとつは3DMMORPGに比べてクライアントのファイルサイズがコンパクトです。「リネージュ II」などは1GBを超えていますが、「テイルズウィーバー」は1枚のCD-ROMに収まります。アジア各地からの要望として、クライアントはCD-ROM1枚に収まるファイルサイズにしてほしいというものがあります。CD-ROM1枚に収めることで、スピーディーに展開できるというメリットがあります。

 日本のクローズドβテストでの話をさせてもらうと、まず可愛らしい、そしてフィールドが緻密に描き込まれているという反応が多く、グラフィックスに関しては総じて好評です。

 台北で開催されたゲームショウでは、「テイルズウィーバー」は来場者に大変好評だったのですが、日本はゲームに対する要求が非常に高い。日本展開にあたっての戦略があればお聞かせ下さい。

James ネクソンジャパンと話し合いながら、日本市場に最適なコンテンツを提供していくというのがひとつ、「テイルズウィーバー」はドラマチックMMORPGなので、日本にはないタイプのMMORPGとして興味を持って迎え入れられると確信しています。

 もうひとつは、日本のユーザーの意見を反映させて、日本専用のアイテムやクエスト、マップを追加していき、他の地域との差別化を図っていくということです。コンシューマゲームは発売の時点で内容が固定されてしまい、ユーザーに内容を強制する形になってしまいますが、MMORPGの場合はユーザーとの対話により、あとから新しい内容をいくらでも追加することができる。このMMORPGならではのメリットを活かしていきたいと考えています。

 「テイルズウィーバー」の魅力は、ストーリー、そして緻密な2Dビジュアルということですが、そのほかにもココはこだわっているという要素はありますか?

James 「リネージュ II」や「ラグナロク」など、すでに日本で成功している韓国産MMORPGはいくつかあります。それらはストーリーやクエストなどは実装されていますが、最終的にはレアアイテムをゲットするゲームです。

 本来RPGとはキャラクタの成長を見守るゲームであるはずです。「テイルズウィーバー」では8人の名のあるキャラクタを用意することにより、プレーヤーとキャラクタ、キャラクタとゲーム世界との親密性を獲得することに成功しています。しばらくプレイすることで誰しもゲーム世界に親しみを持つことでしょう。

 韓国で「テイルズウィーバー」が発表されてから、すでに正式サービスを開始しているMMORPGにストーリーを導入しようという試みがいくつかありましたがいずれも成功しませんでした。「テイルズウィーバー」は企画段階から、ゲームの中心にストーリーを据えることにすることになっていましたから、自然な形で実装されていると思います。どうぞご期待下さい。

 ありがとうございました。

□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.co.jp/
□「テイルズウィーバー」の公式ページ
http://www.nexon.co.jp/talesweaver/
□関連情報
【2月20日】ネクソン、「テイルズウィーバー」のオープンβテストを2月25日より開始
同時接続30,000人をサポートした大規模なオープンテスト
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040220/tales.htm
【11月14日】ネクソン、「テイルズウィーバー」のβテスターを追加募集
新たに4,000人を募集し、総計10,000人規模に
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031114/tales.htm
【10月22日】ネクソン、「テイルズウィーバー」クローズドβテスターを募集
応募初日で25,000人を突破
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031022/nexon.htm
【10月6日】「テイルズウィーバー」開発者インタビュー
8通りの長大なストーリーを堪能できるMMORPG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031006/nexon_01.htm

(2004年2月27日)

[Reported by 中村聖司]


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