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★PS2/GC ゲームレビュー★
オックスフォード大学で極秘に研究が進められていた“ナノロボット・プロジェクト”の試作品が何者かに奪われ、プロジェクトの責任者「カトヤ・ナダノバ博士」が行方不明となった。ナノロボット・プロジェクトの目的はロボットを遠隔操作して有害な原子力施設を修復することだが、これが悪用されたら世界に深刻な事態をもたらすことは明白である。そこで今回、英国諜報部「MI6」からエージェント「007」に与えられた新しい任務は、盗まれたハードウェアを取り戻し、施設を破壊することにある。
英国エージェント、「ジェームズ・ボンド(コードネーム“007”)」を主人公としたスパイ映画シリーズ「007」。何度かゲーム化されているが、オリジナルストーリーを題材とした前作「007 ナイトファイア」に続く作品がこの「007 エブリシング オア ナッシング」だ。今作もオリジナルストーリーとは思えない、映画のような壮大なストーリーが展開され、プレーヤーは世界最高のエージェント、007となって4大陸を股に掛け、任務をこなしていく。
ゲーム内容に触れる前に、本作の話題の1つであるキャスティングについても触れておきたい。今作には、前作「007 ナイトファイア」同様、映画俳優をモデリングしたCGキャラクタが多数出演し、ゲームへの没入度に貢献している。映画シリーズ17作目「007 ゴールデンアイ」からボンド役を演じるピアース・ブロスナンが主役として登場するほか、敵役としてリチャード・キール演じる鋼鉄の歯を持つ「殺し屋・ジョーズ」も登場。また英国諜報部MI6の、「Q」役ジョン・クリース、「M」役ジュディ・デンチも映画と同じ役柄で登場する。そして今作のボス敵「ニコライ・ディアボロ」はウィレム・デフォーがキャスティングされ、クレバーな悪役がハマっている。
またボンドガールは、ハリウッド女優の「シャノン・エリザベス」演じるセリーナ・サンジェルマンをはじめ見目麗しいキャストが4名も登場して華を添える。ボンドガールについては、日本人ボンドガールの伊東美咲さんを招いて行なわれた発表会の記事もご覧頂ければと思う。
■ 「まさに007!」という体験を通して達成感を提供してくれる 「007」映画さながらのゴージャスなアクションシーンを、「ジェームズ・ボンド」となって手軽に疑似体験できるところが本作の何よりの楽しみ。スパイの特殊装備「ガジェット」を使いこなしたり、豊富な武器やボンドカーで派手に街や建物を盛大に壊すなど、「007」ならではの“魅せる”アクションでミッションクリアタイプの任務をこなし、1本の映画作品を少しずつ見ているような感覚で遊べる。 ゲーム序章は、タジキスタン南部で取り引きされているスーツケース型核爆弾を奪う任務で始まる。取り引きに失敗した両陣営が混乱の様相で銃撃戦を行なう中、プレーヤーはスーツケース回収の任務を帯びたエージェント、007=「ジェームズ・ボンド」として突如放り込まれる。 やるべきことは次々に音声と文字による「M」の指示によって下され、スーツケースを回収すると、次なる目的はロケットランチャーを見つけることへと切り替わる。何とか入り込んだ建物の2階でロケットランチャーを拾って安心していると、窓の外にはVTOL機、ハリアーが出現。容赦ない攻撃をボンドに浴びせてくる。周囲の敵の砲火もより一層激しさを増してくるので、ロケットランチャーで応戦すると、バランスを失ったハリアーがミサイルを乱射して広場には大穴が空き、続いて戦車は登場するわ、高射砲が出てくるわで大変な状況になってしまう。 最後の任務となる“脱出”を言い渡され、筆者は2階から下を銃撃しようと壊れた壁の端へとボンドを移動させた。するとその瞬間、グルッと視点が切り替わって「踏み外した!」と思いきや、華麗に空中を舞ったボンドは何事もなかったかのように壁を地面のように歩いているのだ。一瞬何が起こったのかと思ったが、「ガジェット」の1つでひも状の「ラペル」が腰から伸び、見事助かったようだ。恐るべし、エージェントの特殊道具! 後は広場を駆け抜け、ハリアーのミサイルが穿った大穴から無事に脱出成功となった。 とまぁ、こんな具合にテンポよく簡単に華麗なアクションが決まって、のっけから気分はすっかり超一流「エージェント・ボンド」。ところでこの序章、ゲームディスクをハードウェアにセットして電源を入れると、セーブデータのない状態でのプレイでは、ボタンを押さなくてもデモに続けて本編が始まるようになっている。最初はただのデモだと眺めていたら、そのままゲームが始まっていてびっくりさせられた。多少チュートリアルの要素も持っているが、何の覚悟も持たずに「007」ワールドの扉を開けさせる粋な仕掛けになっている。
そんな序章は楽勝でクリアさせてくれるが、先ではステージごとに異なる状況に知恵を絞り、与えられた物を使って立ち向かうこととなる。任務の内容は素早さが求められるものや、敵の兵器を奪うなど機転を効かせる必要のあるもの、敵が大勢いる中への潜入、ボンドカーでのカーアクションなど、いろんなタイプがあって飽きさせない。舞台となるのはペルーの荒れ果てた砦や、エジプトのナノテクノロジー施設、ニューオリンズの共同墓地など、とにかくさまざまな場所を動き回り、あっと驚く仕掛けが随所に散りばめられている。次はどこへ行くのか、どんな指令が言い渡されるのか、というワクワク感が毎回味わえる。早く先が知りたくてたまらないのだが、任務の数は30近くにのぼり、そう簡単にはエンディングを拝ませてくれない。
■ スパイテイスト溢れるボンドの基本アクション ゲームは、ボンド自身を操作して銃器を使ったり素手で挌闘する「3Dアクションモード」と、ボンドカーなどの乗り物を操作する「ドライビングモード」に分かれる。今作の「3Dアクションモード」は画面が3人称視点となり、前作の1人称視点の画面以上にボンドを操作しているという感覚が強まっている。画面の右下のウィンドウに使用中の武器か「ガジェット」が表示され、左下にはライフメーターと、ガジェット使用に必要なバッテリーのメーターが表示されるだけで、情報表示は簡素になっている。 左スティックでボンドを、右スティックでカメラを操作し、視界に敵がいるときにL1ボタンでロックオン、その状態で武器使用のR1ボタンを押せば対象に射撃できて、簡単に複数の敵を撃ち分けられる。また、潜入任務や銃撃戦など、どんな場合にも使えるのが壁に張り付くアクション。建物の石壁でもコンピュータルームのコンピュータでも、隠れられそうな障害物があれば試すといい。壁に背中を張り付けたまま障害物の向こうの敵をロックオンして射撃できるので、銃撃戦でダメージを軽減しながら敵を攻撃するために重宝する。障害物に隠れたまま向こうの敵を射撃すると、ちょっと身を乗り出して射撃して、またすぐ隠れるという動作になる。 武器を持たない状態、あるいは敵との距離が至近距離の場合は挌闘戦となる。格闘戦では右パンチ、左パンチを組み合わせて押すと、パンチキックなどの攻撃が出るほか両ボタン同時押しで投げ技も可能。また、うまくカウンター技を決めれば敵を瞬時に倒すこともできる。しゃがみ歩きは敵に気付かれにくく、その状態で敵の背後に忍び寄って静かに息の根を止めることもできる。これは人を殺してはいけない潜入任務で必要となるアクションだ。武器の代用品として室内に置かれた酒瓶や工場に転がっているレンチなどを拾って投げたり殴りかかったりできる。利用できるものは何でも利用する、これも超一流エージェントらしく振舞う上でぜひ覚えておきたいポイントだ。
そしてボンドを補佐するスパイ道具「ガジェット」によって、ボンドの取れるアクションはより広がりを持つ。初期段階から所持している「ラペル」(ミッションによっては持っていない)のほかにも、暗がりでも熱を感知して敵の姿を表示する「サーモビジョン」、ボンドが進めない狭い場所に侵入して偵察やアイテム回収ができる「Qスパイダー」など、任務に応じて使用できる「ガジェット」を使いこなして作戦を進めていく。
■ 攻撃に、回避にフル活用できる「ボンド・センス」 任務をスムーズに進めるにも、身の安全を確保するにも「ボンド・センス」という前作になかったモードが役に立つ。方向キーの左右どちらかを入れると「ボンド・センス」が発動し、発動中は画面が青みがかって時間の進みがスローになり、ボンドの精神が研ぎ澄まされて隠された“何か”を感じ取ることができる。何かを感じ取るとそこが赤いマーカーが表示され、R1ボタンを押すと拡大されると共に「破壊可能」、「投げ可能」といった情報が表示される。カメラを動かすこともできるので、ターゲットがいくつかある場合は、カメラの向きを調節すると捉えるターゲットが変わっていく。マーカー表示は「ラペル」を引っかけられる場所や、任務遂行の目的となる場所、武器として投げ飛ばせる背景物などを教えてくれ、困ったときはこのモードにしてカメラをぐるぐる回せば、何らかのヒントを得られることが多い。 また、敵を爆発に巻き込んで倒せる破壊可能なドラム缶などの背景物は、通常の画面ではロックできないが「ボンド・センス」中にならマーカーが表示され、ロックできる。さらには通常の状態でロックできる敵にもマーカーを合わせてR1ボタンを押せば状態を知ることができ、遠方の敵の生死など、判別しづらい敵の状況も知ることができて便利だ。 武器や「ガジェット」の選択は通常画面でもクイック選択ができるが、「ボンド・センス」中の画面下に並ぶので、ここでならある程度落ち着いて選択できる。 そして何より「ボンド・センス」は、危機回避に絶大な威力を発揮する。例えば画面外のどこかから撃たれて、瞬時に敵のいる方向が特定できない場合に「ボンド・センス」を発動させれば、スローになった敵弾の軌道を見てカメラを動かして敵を探し、射程距離内なら確実にロックオンできる。索敵している間に被弾する時間を短縮して反撃に転じられるので、3Dアクション初心者救済策としても大きな意味を持っている。いつでも(ボス戦中でも)何度でも使えるので、急いで通路の辻に侵入する際などとにかくこれを使う癖をつけておけば危機を回避しやすくなる。
ただし、「ボンド・センス」に物をいわせて安易に敵の潜んでいそうな地形に突入すると、危険な目に遭うことになる。いくら時間をスローにして危機的瞬間を乗り切れると言っても、さすがに複数の敵に囲まれて斉射されたら「ボンド・センス」を解除したとたんみるみるライフが減って太刀打ちできないので過信は禁物だ。ボンドのアクションの基本は、壁張り付きからの攻撃や静かな潜入など、エージェントらしい動きに重点を置くべきだろう。
多彩な武器をつかいこなしてこそのボンドだが、ステージの開幕に手持ちの武器が心許ない場合もある、そんなときは倒した敵が落とした武器の上を通過するだけでカシャカシャと気持ちいい音を立てて拾うことができ、使える武器のラインナップが増えていく。ゲームオーバーにならなければ、次の任務に持ち越していける。武器はそれぞれ特徴があって、マシンガンや威力大のマグナム、散弾のショットガン、周囲の敵も爆風に巻き込むロケットランチャーなどが用意されている。狙撃銃を使うときは、スナイパーモードとなってスコープを覗き込み、遠方の敵を狙撃できる。 また、物々しい装備を施したスーパースペックカー・ボンドカーを乗り回してこそボンドである。今作では「アストン マーチンV12ヴァンキッシュ」や「ポルシェ カイエン」が登場し、最新映画「007 ダイ・アナザーデイ」と同じく車体を透明化するQクローク機能が与えられ、その能力は主任務を達成する際にも必要になる。
乗り物を扱うステージもタイプはいろいろで、1つの街を舞台に車で目的地をあちこち移動する任務や、目標に追いつく任務、機転を効かせて敵の兵器を乗っ取って進める任務もある。最初のカーチェイスは、連れ去られる「カトヤ博士」を乗せた列車を追ってバイクで爆走する。無謀とも思えるレースを挑んで、勝つことが任務になるステージもある。映画なら勝負の行く末を気楽に観ているだけでいいが、ゲームではボンドが言いだした勝負はプレーヤーが始末を付けなくてはならない。ここでドライブゲームが苦手な筆者は怯みかけたが、操作が簡単なこととボンドカーの性能に助けてもらって、どツボにはまるようなことはなかった。
■ 豊富なやり込み要素でエージェントの道を極める こんなにたっぷり映画的な魅せ方で楽しませてくれる上に、さらなるチャレンジ要素が用意されているのには驚くばかり。ストーリーをがむしゃらに進めていくだけなら、指示された任務だけ気を付けてこなしていけばいいが、本作にはあちこちに隠れた要素が埋め込まれていて、それを探し出すとよりボンドらしさが増すのも楽しい。 手近なところでは、ドカンと華麗なアクションが決まると、「007」のタイトルロゴがバンとカットインで入るのも気持ちいい「ボンド・アクション」がその1つだ。これはステージ内に何カ所散りばめられているか、クリア時に数だけ確認できる。簡単に見付けられるものもあれば、なかなか見付からないもの、意図せず偶然できたはいいが再現しにくいものもあった。 しかしプレイしているうちに、実はヒントがもらえるということに気付いて、“非常に親切だな”と感じた。スタートボタンを押して開くポーズメニューで、画面下に1項目だけゲームを進める上でのヒントが表示されるが、この情報に紛れて「ボンド・アクション」を達成するための具体的なヒントも確認できる。ポーズメニューを開き直すと別の情報に入れ替わるので、ヒントが欲しければポーズ画面を開いたり閉じたりを繰り返してみると道が開けることもある。
「ミッション選択」の画面から「アンロック」を選べば、獲得した「ガジェット」や、条件を満たして得たボーナス画像や武器のアップグレードを確認できるほか、チートが確認できる。任務は最初から3つの難易度が選択でき、標準の「エージェント」のほか、主要な任務のみで手強い敵が少ない「オペレイティブ」、手強い敵が増加する「00エージェント」があり、高い成績でクリアしてゴールドの評価を得ると、「00エージェント」にダメージや時間制限などの副任務が課せられた「プラチナチャレンジ」が解禁される。プラチナ任務をクリアした数に応じてチートと呼ばれるさまざまな特殊装備のロックが解除され、ゲーム内で使用が可能となっていくのだ。チートの「アンロック」は、「ボンド・アクション」以上にアクションの腕前を試されるので、長期間に渡って遊ぶことができそうだ。
無理矢理ゲームのあらを探すとするなら、物語が各章で細切れになるため、ストーリー全体の繋がりを若干追いにくいように感じたところだろうか。だが、1度クリアした章も後で何度でもプレイするに耐える要素がたくさんあるので、一旦クリアまで集中して進めてから、後で「アンロック」の要素をそろえながらストーリーの細部を知ることに集中して繰り返しプレイしてみるといいんのではないだろうか?
「ボンド・アクション」や「ボンド・センス」など、モードの名前にキャラ名を使っているところは、正義の味方の必殺技を連想させ、それもひとえに「ジェームズ・ボンド」というキャラがいかに確立されているかを物語っているのだな、と1人納得してしまった。そうなりたいと願う願わないに関わらず、ゲームを遊ぶときは「007」になりきってプレイすることで、より面白さが増す。「そんなバカな!?」というような、やり過ぎとも思える過剰なアクションの演出が「007」には欠かせない。そういった味付けも見事になされているうえ、3Dアクションゲームとしてしっかり遊べるというとても贅沢な内容なので、ファンならもちろんのこと、そうでなくても安心して購入できると太鼓判を押したい1作だ。
(C) 2004 Electronic Arts Inc.
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2004年2月10日) [Reported by 河本真寿美]
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