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★PS2ゲームレビュー★
「バイオハザード」がついにオンライン対応ソフトとして登場した。この日を待ち望んでいたPS2ユーザーも多いのではないだろうか。いやがおうにも期待は高まるばかりだ。本稿では、「バイオハザード」最新作がシリーズの中でどのような位置づけの作品になるのかを徹底的に検証していきたい。
■ オンラインとオフライン。メインは…… 対応ソフト数も増え、環境も整備されてきたとは言え、プレイステーション 2をネットで遊ぶ人は、まだ決して多いとは言えないのが現状である。その中で、カプコンが「バイオハザード」というキラータイトルを持ってきたというのは、このソフトによってネット人口を増加させ、次なる対応タイトルに繋げられるという自信の表われに違いない。実際、発売週に約20万本を売り上げ、ネット対応ソフトとしてはかなりの良い成績を残したと言えるだろう。 しかし、購入者の何割がネットで遊ぶことを目的でソフトを手に入れたのかは疑問だ。筆者がプレイした範囲では、そこそこ人が集まってきているとは言え、ソフトの売り上げに比べ、ネットで遊んでいる人口が少ないのではないかという印象を受けた。
ということは、「~アウトブレイク」を購入したユーザーの多くは「オンライン対応だから」ではなく、「あの『バイオハザード』シリーズの最新作だから」という動機で買ったと考えられる。メーカーもそのことは十分、予測し得たはずである。だからこそ、オンラインモードとオフラインモードのバランスに気を配り、その結果、ネットで遊ばなくても十分、魅力的なソフトとしてパッケージングされた本作が誕生したと言えるだろう。
■ 最初にネットありきのシナリオ構成 グラフィック面だけでなく、システム面においても常に新しい挑戦を繰り返してきた「バイオハザード」シリーズだが、本作は初のオンライン対応ソフトということで、多くの新要素が追加されている。 中でも、同じ場所、同じ時間に複数の登場人物が居合わせる「グランド・ホテル」形式で展開されるシナリオ構成は最も大きな変化と言えるだろう。 シナリオは複数用意され、それぞれ1時間程度でクリアすることができる。順番にクリアしていかなくてはならないが、一度クリアしたシナリオはいつでもプレイ可能。これはネットワークプレイを可能にするため、1プレイを短時間に抑え、なおかつ複数のプレーヤーが参加できるシステムとして採用されたものと思われる。結果的に、この方式が見事に「バイオハザード」の世界観にマッチした。今までやらなかったのが不思議なくらいである。 しかも、定番の警察官はもちろん、医者やウエイトレスといった人々をプレーヤーキャラクタとして選べることにより、今まで以上にパニック映画のテイストが強まった。従来の「ヒーローっぽいヒーロー」に感情移入できなかったユーザーも、本作では「普通の人」としてリアルな恐怖を味わうことができるのだ。
しかも、戦闘系以外のキャラクタにも、回復系や運搬系などきちんと役割が与えられているため、メイド・イン・ハリウッドの群像劇ではおなじみの「誰もが主人公になれる」感がある。その特色づけが、「パーソナルアイテム」と「スペシャルアクション」だ。
■ 自分だけの「映画」を演出できる秀逸なシステム 「~アウトブレイク」では、「SINGLE PLAY」、「NETWORK PLAY」を問わず、ほかの登場人物にアイテムを渡すことができる。しかし、中には絶対に渡すことのできない、キャラクタ固有のアイテムがあり、それが「パーソナルアイテム」である。 たとえば、警察官のキャラクタであるケビンと警備員のマークは、それぞれ専用の拳銃を保持している。このパーソナルアイテムは、医師のジョージはメディカルセット、配管工のデビッドは工具入れ……というように、それぞれの職業に応じて変化するのだ。 メディカルセットは、ハーブと組み合わせることにより、特殊な薬を調合することができる。工具入れを使えば、壊れた武器を修理したり、道具を組み合わせることにより、武器を作ることが可能。 これがRPGにおける戦士や僧侶といったキャラクタクラスのようなものになっていて、状況によってその登場人物の見せ場を作ることができるシステムになっている。
また、アクションにも、キャラクタごとの特性がある(「スペシャルアクション」)。地下鉄職員のジムが持っている「死んだふり」や大学生・ヨーコの「エスケープ」など、一風変わったアクションも盛り込まれており、これも映画的シーンの再現に一役かっている。「スペシャルアクション」を共通操作にすることによって、プレーヤーの負担を最小限に抑えている点にも好感が持てた。
■ オフラインモードは連作小説を読む楽しさ さて、ここからはどのようにシナリオが進められるのか、実際にプレイして感じた点などを交えながら紹介していきたい。まず、ネットに繋がなくても遊べる「SINGLE PLAY」の方から。 オープニングムービーが終わり、実際にキャラクタを動かすことができるようになると、ここからはいつもの「バイオハザード」。あの操作感、あのメニュー画面、あの空気感。これだけは初代「バイオハザード」から守り続けられてきた、言わば「板前のこだわり」である。だからこそ、ユーザーは安心して「バイオハザード」を買い続けることができるのだろう。 しかし、今までとクリティカルに違う点がある。それがプレーヤーキャラクタ(PC)と行動を共にするコンピュータが操作するキャラクタたち(AIPC)の存在。従来のお荷物的NPCにはなかった生っぽさがいい。とは言え、そこはやはりコンピュータ。時には理不尽な行動をすることもある。その時、ふと「実際の人間だったら、もっとちゃんと動いてくれるのに」という思いが頭をよぎる。すると、人間相手に遊ぶことができる「NETWORK PLAY」がしっかり用意されているという心憎さ。実に見事な誘導である。
難易度設定はやや高めで、シナリオも多いとは言えないが、キャラクタのバリエーションで「次は彼(彼女)でクリアしてやろう」という意欲をかきたててくれる。惜しむらくは、キャラクタによって、展開に大差がないことで、せめて「SINGLE PLAY」だけでもそういった変化を持たせてくれれば……というのは過分な期待だろうか。
■ 間口の広いテーマパーク的なオンラインモード 次はオンラインで遊ぶ「NETWORK PLAY」についてだ。 画面や操作感などは「SINGLE PLAY」とまったく変わらない。選べるキャラクタやシナリオも同様で、そのあたりに物足りなさを覚えるユーザーがいるかもしれないが、個人的にはフェアに感じた。「スタンドアローンでも遊べる」と銘打っている以上、対人プレイとしての面白さ以外でバリュー感を出すのは賛成できないからだ。そういう意味で、「~アウトブレイク」のオフラインモードとオンラインモードはあくまで対等な立場にある。では、オンラインモードならではの楽しさはどこにあるのか。 もちろん、ほかのネットゲーム同様、「人間が相手である」という一言に尽きると思うのだが、その「人間」が「仲間」や「対戦相手」ではなく、「たまたまそこに居合わせた人」というのは「バイオハザード」のオンラインゲームでしか味わえない感覚だろう。 オンラインになることで、生まれも素性もバラバラな登場人物たちが、最初は戸惑いながらも力を合わせて問題を解決していくうちに絆を深めていく……というハリウッド映画的シチュエーションにもリアルさが加わるのだ。また、待機ルームで人数が揃うのを待っている時のワクワクする気持ちや、適度に距離感のある連帯意識は、テーマパークのアトラクションに似ている。
そのようなライトな雰囲気によって、ネットゲーム初心者でも気軽に楽しむことができるだろう。
■ 初のハイブリット版「バイオハザード」が切り拓いた道 正直、「バイオハザード」がネットワークで遊べると聞いた時、それほど期待感を持てなかった。それは「『バイオハザード』=ホラーゲーム」という認識が強かったためだろう。ホラーゲームは1人で遊ぶものという固定観念に囚われていたからだ。 しかし、実際プレイしてみると想像以上に楽しめた。特定の状況で見知らぬ人間同士が協力し、生き残る緊張感。プレイ中のチャットを省略することで生じる意思疎通の難しさと心が通じた時の喜び。もしかしたら、それは従来の「バイオハザード」が持っていた魅力とは別物なのかもしれない。だが、これを単なる「実験作」に終わらせるのはもったいない。 今後、ハードディスクユーザーとROMユーザーの垣根をどう取り払うか、これからオンラインに繋ごうというユーザーに対し、今以上に敷居を低くしていけるか等、課題は多い。
それでも、このソフトがオンラインゲームに新たな道を切り拓いたのは間違いない。いや、オンラインゲームだけでなく、「バイオハザード」の可能性をも広げたはずだ。
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□カプコンのホームページ (2004年1月26日) [Reported by 中川裕介(冒険企画局)]
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