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【特別インタビュー】
「キャッスルヴァニア」インタビュー |
TGS2003のステージに登壇したおふたり |
■ 「キャッスルヴァニア」誕生の序曲
Game Watch:まず、IGAプロデューサーと小島さんが共に仕事をされることになった経緯をお聞かせください。
IGA:小島さんにキャラクタデザインをお願いした最初の作品は'97年のプレイステーション(PS)版「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」でした。これは、僕が途中からディレクターになった作品です。
「悪魔城ドラキュラ」は、過去のシリーズに様々な主人公がいますが、みんな「シモン」と言われるんですよ。ファミリーコンピュータ「悪魔城伝説」の主人公は「ラルフ・ベルモンド」なのに「シモン」、ゲームボーイ「ドラキュラ伝説」の主人公は「クリストファー・ベルモンド」なのに「ゲームボーイのシモン」と呼ばれる。なぜかと言うと、キャラクタ性が非常に乏しかったんですね。
当時はPSが全盛で、キャラクタや世界観を重要視した作品も多い中、「悪魔城ドラキュラ」はせっかくいいゲームなのにそういう部分で損をしている、これはもったいないと。そこで、ヴァンパイアというものに「血」と「闇」のイメージがあって、耽美的であると考え、そういう世界観に思い切りイメージ転換を図ることにしたんです。そして、そういった世界観をキャラクタも含めて任せることを考え、どんなイラストレイターの方を使おうかと本屋さんで小説の挿し絵を捜したときに、見つけたのが小島さんでした。
小島:実は私、あまりゲームユーザーではなかったんですね。ただ噂で「『悪魔城ドラキュラ』という、コア層向けのハードなゲームがある」とは聞いていて、まさか自分がそのタイトルに関わるとは思いませんでした。関わって以降、インターネットなどを見ますとちらほら聞こえてくるのが、私が関わったことで「コアなゲームだったのに少女漫画チックになってしまった」なんてことを言われてみたりとか(笑)。
悪く言えばそうなんでしょうけれど、今IGAさんがおっしゃったように、イメージ転換をして間口が広がったということでは、お互いに良かったのかなと思います。
IGA:僕らはクリエイターですが、ビジネスという部分は外せません。だんだん映画に近づいていき、制作費もかかってくるゲーム業界の中で、コアファンだけに売っていく商売はもう成り立たない時代になってます。コアファンを切り捨てるわけじゃないですけど、いろんな人に遊んでもらってこそのクリエイターなので、たくさんの人の手に渡るということは一番大きいことなんです。
■ 今度の主人公は、勇者でありながら甘さを持つ男「レオン・ベルモンド」
新たな主人公・レオン・ベルモンド |
小島:キャラクタの動きによる衣装の都合や、髪型の都合などは、仕事に影響しましたね。アクションがより強調されるような細かい指示をたくさん頂きました。
IGA:2Dのときは色味のことについてしか指定しなかったんです。例えば、GBA版「Castlevania 白夜の協奏曲」であれば「赤にしてください」とか、GBA版「Castlevania 暁月の円舞曲」だったら「白い色でお願いします」と。でも今回は、ポリゴン化するにあたって「飛び出た形状の服はやめて下さい」とか、「肩口はなるべく無いようにして下さい」とか、「走ったときにはやっぱりヒラヒラが欲しいので、ヒラヒラさせて下さい」といったお願いをたくさんしたんです。
Game Watch:制限があることによって、小島さんとしてはやりにくかったですか?
小島:上半身のインパクトは、キャラクタの「人となり」といったところを表現する部分なので、上半身や髪型にも制限を受けた中で、いかに加減をしてデザインしていくか、ということは……苦しくもあり楽しくもあり、「苦楽(くるたの)しい」ような感じでしたね。
一同:(笑)。
小島:こちらはイメージを広げるという役割分担ができていたので、今まではドット絵で表現される分デザインに関しては自由にできたんですけれど、今回は素材感まで表現できてしまうので考えることがとても多くなってしまって。楽しくもあるんですが、そこまで私の発想がついていくんだろうか、とも思いました。
IGA:3Dになると細かい所まで作り込めてしまいますし、素材もそれっぽいテクスチャが張れてしまうので、今回は素材を全て書いてもらいました。設定画の中には、「ここはゴブラン織り(※)調、ここは……」と、全部書いてあります。
Game Watch:小島さんの絵がドット絵になった場合、イメージを補完するのはユーザーの想像力ですが、今回はキャラクタCGとイラストが、ダイレクトな感じですよね。
小島:確かにダイレクトではあるんですけれど、3Dになるにあたっても、結局はいろんな方の作業や意見が入って、自分のデザインしたものが、また違う形で表現されたものですので。画面上で見たときには、「ああ、こうなるのね」って、後からワクワクできてこちらも楽しかったです。今、改めてラフを見ると1つのキャラクタにつき膨大にラフがあるんで、「ああっ、何だかお疲れ」って自分でも思うんですけれど(笑)。
IGA:似ている似ていないよりも、今回は雰囲気を重要視して、3Dに起こす作業をやったんです。だから最初、できた3Dモデルをドキドキしながら小島さんに、「似てないんですけど」ってお見せしたとき、「より色っぽくなってますね」と言って頂いて、安心しました。
小島:可愛いんですよ、画面のレオン。初々しいというか。
IGA:今回のキャラクタは貴族のボンボンで、天才的な強さを持ってると。そんなに苦労してない感じを出したかったので、3Dの制作スタッフにも「こいつは甘ちゃんなので、甘ちゃんな顔でよろしく」って、作業を進めてもらったんです。
小島:「もと騎士団の勇者」と言われると、バリバリの勇者というイメージがありますが、でも「甘さ」も、と。そういう設定を頂いて、自分で描いていて「いいのかな、ヒーローがこんなに可愛くて」と思って、おそるおそるIGAさんに「ちょっと甘すぎるんじゃないでしょうか」とお見せしたら、「それでいいです」と言って頂きました。
■ 2Dから3Dへ、「ムチゲー」として進化を遂げる
3Dでのムチの表現にこだわった「キャッスルヴァニア」 |
IGA:これまでに僕がプロデュースした携帯ゲーム機が2本出ていて、今回プレイステーション 2という大きな舞台にもう一度上がる。そういった晴れ舞台に、「シモン・ベルモンド」とか、使い古された話を持ってくるのはいけないと思ったんです。華々しい舞台に出るため、華々しい衣装もちゃんと用意してあげないと、ということで、「月下の夜想曲」が終わった頃に、一番最初の話の構想はありました。そして、シリーズの原点を描く上で、ムチは必要であると。
Game Watch:ムチについて、ゲームとしてフィーチャーしている部分についてお聞かせ下さい。
IGA:3Dをやるに当たって、最初はムチをやめて「アルカードにしようかな」など、考えもしたんです。でも、この先僕が「キャッスルヴァニア」を作り続けていく以上、ムチはどこかのポイントで絶対やらなきゃいけない。だったら、ここで基本の形を作ってしまおうと。本当はもっとやりたいこともあたんですが、今回はムチで戦うアクションゲームという形で作りました。
Game Watch:ニンテンドウ64(N64)版に続く3D化にあたって、制作面でのN64版との違いを具体的に教えてください。
IGA:簡単に言うと、良くも悪くも2Dでやっていたことをそのまま3Dにあてはめたのが、N64版だったんです。
今回は、サイドビューよりもトップビューのゲームを作ったときにどうなるかということを考え、ムチは大きく振るイメージで、幅のある攻撃を出すことを考えています。「悪魔城ドラキュラ」というゲームは、ムチを打つと、ビシッと一直線に主人公の前方に放たれる。それをそのまま3DにあてはめたのがN64版でした。しかし、距離感が認識しづらい空間で、一点集中の攻撃はありえないし、それは3D空間でのムチの振り方ではないと思うんです。
そして、2Dのときは間合いで遊ぶゲームだったんですけど、3Dになって間合いが曖昧になった部分を補完するために、1発ではなく連続で攻撃をするようにしています。プレーヤーキャラに関しては、以上のような部分が具体的な違いです。
そして仕掛け的なところでは、ギリギリまで行っても落ちないシステムになっています。昔のFC版なんかは特に、ギリギリで飛び越えられる足場を飛ぶというのがありましたけど、そういうことを3Dに強要してはいけないと。
例えばN64版では、時計塔がありました。確かに2Dのときにも時計塔があって、その中の歯車を飛んで渡っていくゲーム性がありましたが、それをそのまま3Dに持ってきて、厚さ30cmくらいの歯車を出されても、乗れないですよねアナログキーでは(笑)、距離も分からないですし。そのように、2Dの遊びをそのまま3Dに持って来ると、良いようにも見えるんですが、成功論ではないと思うんです。2Dならではの良いところもあると思うので、そういう部分の雰囲気だけは残しつつ、一度リセットということで、ムチや仕掛けは全部変わりました。
Game Watch:「悪魔城ドラキュラ」シリーズでは、1対1というイメージが強かったんですが、今回は1対多のシチュエーションが出てきてますよね。
IGA:それは理由があるんです。移動の際にプレーヤーに不快な遅さを与えないよう速い動きにした場合、3D空間でそれに対して攻撃しようとすると、えげつない攻撃になるんですね。もの凄く速い飛び道具が飛んでくるだとか、もの凄く動きの速い敵が出てくるだとか。そこで、プレーヤーの速度を上げつつ戦わせることを考えると、1対1だと空間が広いため簡単にスカッと逃げられるので、プレーヤーの方が有利なんです。1対多という形は、ゲームの性質上その方法しかなかった、というのが若干あります。ボスは1対1ですが、敵の攻撃が移動するべき空間を埋めてくるという戦い方になっています。
Game Watch:最後に、シリーズのファンに一言お願いします。
小島:初々しいキャラクタを用意しました。先ほど「甘い」というお話がありましたが、まだこれからの彼なので、皆さん自身の手で強く逞しく育ててあげて下さい。ムチゲーとして、動きも大変魅力的になっていると思いますので、楽しんで頂ければと思います。
IGA:間口が広い作り方を心掛けてやっていますので、初心者の方はもちろん、昔からのファンの方には、「『キャッスルヴァニア』が2Dから3Dになって、こういう進化を遂げたんだ」と、楽しんで頂けると思います。珍しく時間的に余裕の開発でして、作る側が難しいのか簡単なのかわからなくなるほど緻密に調整を行なっていますので、最高の出来になっていると思います。安心して発売日を待って頂きたいと思います。
(※)ゴブラン織り
フランスのゴブラン織物工場で作られるつづれ織り。織りの精巧さが特徴で、種々の色糸を用いて人物や風景などの絵模様を表す。これを模したヨーロッパ産のつづれ織りも、一般的にゴブラン織りという。
□コナミのホームページ
http://www.konami.co.jp/
□「キャッスルヴァニア」シリーズのホームページ
http://www.konamityo.com/castlevania/
□関連情報
【11月27日】PS2ゲームレビュー
華麗なムチさばきを3Dで楽しめる!
「キャッスルヴァニア」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031127/cv.htm
【11月27日】PS2「キャッスルヴァニア」
ボスキャラクタ、基本アクションを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031127/cas.htm
【11月21日】コナミ、PS2「キャッスルヴァニア」関連イベントを多数開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031121/konami.htm
【9月28日】TGS2003ブースレポート~コナミ編 Part2~
「キャッスルヴァニア」CM完成披露に
イメージキャラクタのソニンさんが登場!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030928/tgs_k2.htm
【9月22日】コナミの「悪魔城ドラキュラ」シリーズが、さらなる進化を遂げる
PS2「キャッスルヴァニア」(Part1)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030922/castle.htm
(2003年12月22日)
[Reported by 河本真寿美]
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