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★GBAゲームレビュー★
漫画家の故・手塚治虫氏の傑作「鉄腕アトム」をゲーム化。ロボットの主人公「アトム」を操作して敵を倒していく、ライフ制(残機無し)の2Dアクション。通常の横スクロールステージのほか、シューティングステージも用意されている。アトムのアクションパターンは職人芸ともいうべきドット絵技術で滑らかに表現。間幕デモやステージ中には、「火の鳥」や「ブラックジャック」といった手塚治虫作品のキャラクタ(以下・手塚キャラクタ)たちが登場する。
ゲーム内容に先んじて高く評価したいのが、携帯ゲーム機に最適なステージの尺と、オートセーブ機能。ステージ内はいくつかのブロックによって構成されており、ひとつのブロックは平均1分、長くても3分程度。ゲームの記録はエリア単位で自動的に行なわれるオートセーブで、電車での移動やちょっとした待ち時間でも気軽にワンプレイが可能。GBAというプラットフォームを意識した便利な仕様といえる。
■ 2003年版アトムを軸に、手塚治虫漫画のストーリーが融合
今作のストーリーは、フジテレビ系で放映されている「ASTRO BOY 鉄腕アトム」をベースにした完全オリジナルストーリーだが、設定や背景は複数の手塚治虫作品がクロスオーバーしている。手塚アニメの傑作「海底超特急 マリン・エクスプレス」関連のネタは登場頻度が高いため、可能であれば、ビデオやDVDをプレイ前に鑑賞しておくとゲームがさらに楽しめるはずだ。
ロボットと人間の対立に歴代の手塚キャラクタが介入していくという夢のシナリオは、手塚治虫作品のファンならずとも唸らずにはいられない本格的な筋書き。ストーリーを一周クリアした程度では核心まで辿りつけず、二周目以降のプレイで登場する手塚キャラクタの関連性を理解していく必要があるが、複雑な手順や謎解きは必要ない。純粋にアクションをこなしながら、手塚キャラクタを捜索するだけでいい。
登場する手塚治虫作品のキャラクタは、主役級と脇役合わせて46キャラクタという大所帯。アトムやボスキャラクタ以外はパターン数が少なくボイスも無いが、ドット絵で描かれた手塚キャラクタはファンにとって感涙モノの出来栄えだ。
■ アクションパートはダッシュとジェットの無敵を利用することが重要 アクションはキーレスポンスが良く、ノンストレスでアトムを自在に操作できる。そのぶん、プレーヤーのアクションゲームに対するポテンシャルが100%求められる仕様という印象を受けた。
ダッシュおよびジェットによる移動中は、完全に無敵。敵をすり抜けることもできるため、巨大な敵に潰されそうになった状況でも脱出はたやすい。この無敵状態を利用して敵の攻撃を回避するテクニックは、全ステージ通じて必須。修得しない限りクリア不可能と断言できるほど、本作では重要な役割を持つ。
ボタンの組み合わせで派生する技のふっとばしキック(↓+B)やフィンガービーム(↑+B)も活用していきたい。敵を攻撃することで、体力ゲージの下にあるEXゲージにポイントが溜まる。このEXポイントを消費して、画面全体を攻撃するマシンガン(Lボタン)、ビーム攻撃のアームキャノン(Rボタン)、ダッシュに攻撃力が付加されたEXダッシュ(A+B同時押し)を繰り出せる。
プラットフォームがGBAのため、読み込み時間が無いのはアクションゲームにとってプラスの要素といえる。難所を越えるべく、やられてはコンティニューを繰り返すのだが、コンティニュー画面からゲームに復帰するまで、余分な演出がなく非常にスムーズ。シンプルな部分ではあるが、「もう1回!」とプレーヤーのモチベーションを持続させる秘訣の一種だと筆者は考える。
■ 手塚キャラクタたちを探し「アトムハート」を完成させることがクリア条件のひとつ 手塚キャラクタたちと出会い、一定の条件を満たして相手を理解すると、アトムの電子頭脳にある「アトムハート」のマス目がキャラクタの顔で埋まっていく。話をしただけでアトムハートが埋まるキャラクタもいれば、別の手塚キャラクタからヒントを入手しないと埋まらないキャラクタも存在し、全キャラクタの補完は一筋縄ではいかない。
ひと通りクリアしてみた感触では「すべての手塚キャラクタでアトムハートを埋めないと、真のエンディングまで辿りつけない仕組みになっているのではないか?」と感じられた。つまり、アトムハートの完成はゲームの副次的な目的ではなく、ゲームクリアに直結しているのではないか、ということだ。
■ こだわりが感じられるシステム画面とオプションの仕様 ゲームデータの保存場所は3カ所まで作成が可能。初回のプレイでは、セーブデータにアルファベット3文字でネームをエントリーする(ハイスコア画面でのスコアネームと併用)。難易度は「かんたん」と「むずかしい」の2種類。
さらには、一周目をクリアすることで、とあるオプション項目が追加される。ネタバレになるため詳細については触れないが、とりあえず“かゆい所まで手の届くオプション”とだけ言っておこう。
本作の難易度は、低年齢のユーザー層を意識してか、「むずかしい」モードでも中程度のように感じられた。アクションゲームの基本に忠実というか、道中の攻撃をどのように回避して攻撃を当てるかに攻略ポイントはほぼ集約されている。そのため、「この攻撃はダッシュで抜けて、その隙に攻撃……」といったパターンを構築できるプレーヤーであれば、一周クリアは早いと思われる。 ただし、ゲームを完全にクリアするには、多くの手塚キャラクタを登場させてアトムハートを完成させて物語の流れ自体を変える必要がある。単に二周目を一周目と同じようにクリアしただけではストーリーは進まないので、とある方法で特定のステージを一定の順番で進めるなど、相当量のやり込みが必要。とはいえ、やり込み自体は決して苦痛ではない。筆者も仕事ということを忘れて、手塚キャラクタ探しに没頭してしまった。アクションパートもハイスコアという中毒性があるため、年末に仕事を抱えているアクションゲームファンは現実世界に支障が出ない程度にやり込んでいただきたい。 携帯ゲーム機の一級アクションゲームとして、手塚ファン以外にも推奨したい……ところではあるが、唐突にマグマ大使やジェッターマルスに出てこられた日には、さすがに若い方々は面食らうかもしれない(もちろん、筆者のようなおいちゃんは大満足)。
現在放映中の「ASTRO BOY 鉄腕アトム」ぐらいは観ておかないとゲーム世界になじみにくいという点は否めないが、ここはあえて「観たうえでプレイするだけの価値は十二分にある」といいたい。良質なアクションゲームを渇望していたゲーマーにとって、本作は“心のオアシス”的な1本になるかもしれないからだ。
□セガのホームページ (2003年12月18日) [Reported by 福田柵太郎]
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