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★GBAゲームレビュー★

“手塚治虫オールスターズ”の様相を呈した快作
「ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密」

  • ジャンル:アクション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:4,980円(税別)
  • プラットフォーム:ゲームボーイアドバンス
  • 発売日:発売中(12月18日)



 漫画家の故・手塚治虫氏の傑作「鉄腕アトム」をゲーム化。ロボットの主人公「アトム」を操作して敵を倒していく、ライフ制(残機無し)の2Dアクション。通常の横スクロールステージのほか、シューティングステージも用意されている。アトムのアクションパターンは職人芸ともいうべきドット絵技術で滑らかに表現。間幕デモやステージ中には、「火の鳥」や「ブラックジャック」といった手塚治虫作品のキャラクタ(以下・手塚キャラクタ)たちが登場する。

ブラックジャックを説得するアトム。メジャー作品からマイナー作品まで手塚キャラクタのオンパレード。気分はすっかり高田馬場駅(鉄腕アトムの出生地)である


 ゲーム内容に先んじて高く評価したいのが、携帯ゲーム機に最適なステージの尺と、オートセーブ機能。ステージ内はいくつかのブロックによって構成されており、ひとつのブロックは平均1分、長くても3分程度。ゲームの記録はエリア単位で自動的に行なわれるオートセーブで、電車での移動やちょっとした待ち時間でも気軽にワンプレイが可能。GBAというプラットフォームを意識した便利な仕様といえる。


■ 2003年版アトムを軸に、手塚治虫漫画のストーリーが融合

 今作のストーリーは、フジテレビ系で放映されている「ASTRO BOY 鉄腕アトム」をベースにした完全オリジナルストーリーだが、設定や背景は複数の手塚治虫作品がクロスオーバーしている。手塚アニメの傑作「海底超特急 マリン・エクスプレス」関連のネタは登場頻度が高いため、可能であれば、ビデオやDVDをプレイ前に鑑賞しておくとゲームがさらに楽しめるはずだ。

ヒゲオヤジといったメジャーどころや悪役のスカンク草井など、手塚作品を彩る個性的なキャラクタが大集結。複数の作品に登場するキャラクタが、どの作品の役どころで出演するのかもファンならチェックしたいところだ


 ロボットと人間の対立に歴代の手塚キャラクタが介入していくという夢のシナリオは、手塚治虫作品のファンならずとも唸らずにはいられない本格的な筋書き。ストーリーを一周クリアした程度では核心まで辿りつけず、二周目以降のプレイで登場する手塚キャラクタの関連性を理解していく必要があるが、複雑な手順や謎解きは必要ない。純粋にアクションをこなしながら、手塚キャラクタを捜索するだけでいい。

 登場する手塚治虫作品のキャラクタは、主役級と脇役合わせて46キャラクタという大所帯。アトムやボスキャラクタ以外はパターン数が少なくボイスも無いが、ドット絵で描かれた手塚キャラクタはファンにとって感涙モノの出来栄えだ。

ステージ間には会話デモが挿入される。手塚キャラクタを出現させる方法や、真のエンディングに向かうためのヒントが隠されている。メッセージは一字一句読み飛ばさないように注意したい



■ アクションパートはダッシュとジェットの無敵を利用することが重要

   アクションはキーレスポンスが良く、ノンストレスでアトムを自在に操作できる。そのぶん、プレーヤーのアクションゲームに対するポテンシャルが100%求められる仕様という印象を受けた。

ダッシュとジェットは8方向に移動が可能。シューティングステージでは敵弾に追い込まれた時の脱出手段としても活用できる
 操作は、十字、A、B、R、Lボタンを使用。地上ステージでの基本操作は、十字ボタンがアトムの移動、Aボタンがジャンプ、Bボタンがパンチにそれぞれ対応。方向キーを同じ方向に2度入力すると、一定距離を素早く移動するダッシュとなる。ジャンプ中にAボタンを押すことで、空中版ダッシュのジェットが使える。

 ダッシュおよびジェットによる移動中は、完全に無敵。敵をすり抜けることもできるため、巨大な敵に潰されそうになった状況でも脱出はたやすい。この無敵状態を利用して敵の攻撃を回避するテクニックは、全ステージ通じて必須。修得しない限りクリア不可能と断言できるほど、本作では重要な役割を持つ。

 ボタンの組み合わせで派生する技のふっとばしキック(↓+B)やフィンガービーム(↑+B)も活用していきたい。敵を攻撃することで、体力ゲージの下にあるEXゲージにポイントが溜まる。このEXポイントを消費して、画面全体を攻撃するマシンガン(Lボタン)、ビーム攻撃のアームキャノン(Rボタン)、ダッシュに攻撃力が付加されたEXダッシュ(A+B同時押し)を繰り出せる。

パンチ攻撃は最大4発まで連続攻撃が可能。パンチ攻撃はリーチこそ短いが、当たり判定が意外に大きい。序盤から終盤までお世話になる爽快な攻撃手段だ 真一文字に放たれるフィンガービームは、遠距離から敵を攻撃できるが、攻撃力が低く硬直時間も長い。空中で停止しながら射出することも可能
マシンガンは、画面上に弾丸をばらまき一定時間敵を静止させる。発動した瞬間から終わり際までアトムが無敵になるので、攻撃よりは緊急回避手段として使うべき技だ 派手なビーム攻撃のアームキャノン。強大な威力のEX攻撃だが、マシンガンと異なりアトム本体は無敵ではない。終了時の硬直時間が長く、敵の近くで使うと反撃を受けやすい


シューティングステージでの移動速度はやや遅めだが、ジェットによる高速移動でカバーできる
 アトムが飛行形態を取るシューティングステージでの操作は、Aボタンがジェットに、Bボタンがフィンガービームにそれぞれ変わる。当たり判定が大きいアトムに対して、画面には無情の敵弾が大量に散布される。この空中戦でも、ジェットによる無敵テクニックは必須。これを使わなければクリアは困難だろう。

 プラットフォームがGBAのため、読み込み時間が無いのはアクションゲームにとってプラスの要素といえる。難所を越えるべく、やられてはコンティニューを繰り返すのだが、コンティニュー画面からゲームに復帰するまで、余分な演出がなく非常にスムーズ。シンプルな部分ではあるが、「もう1回!」とプレーヤーのモチベーションを持続させる秘訣の一種だと筆者は考える。


■ 手塚キャラクタたちを探し「アトムハート」を完成させることがクリア条件のひとつ

 手塚キャラクタたちと出会い、一定の条件を満たして相手を理解すると、アトムの電子頭脳にある「アトムハート」のマス目がキャラクタの顔で埋まっていく。話をしただけでアトムハートが埋まるキャラクタもいれば、別の手塚キャラクタからヒントを入手しないと埋まらないキャラクタも存在し、全キャラクタの補完は一筋縄ではいかない。

 ひと通りクリアしてみた感触では「すべての手塚キャラクタでアトムハートを埋めないと、真のエンディングまで辿りつけない仕組みになっているのではないか?」と感じられた。つまり、アトムハートの完成はゲームの副次的な目的ではなく、ゲームクリアに直結しているのではないか、ということだ。

キャラクタと出会うことからアトムハートの成長が始まる。背景の一部に隠れているキャラクタもいるので、当たり判定が存在する場所がわかったら何回も攻撃してみるといい


セレクトボタンを押すと確認できる「アトムハート」画面。発見するごとにマス目が埋まっていく
 登場する手塚キャラクタの性格は、アトムハートの表の中で「TENDERNESS(やさしさ)」、「BRAVENESS(勇敢さ)」、「JUSTICE(正義)」、「EVIL(悪)」の4つに分類されている。例をあげると、EVIL寄りの手塚キャラクタは「写楽保介」、「ロック」、「ドンドラ」などで、JUSTICEよりは「レッド公」、「ワンダー3」、「ヒゲオヤジ」などが当てはまる。登場人物たちのさまざまな性格を理解しアトムハートを満たしていくことで、アトムの心が人間に近づくという演出は、原作ライクで非常に興味深い。

悪人が増えると性格が偏りそうだが、アトムの性格に影響はない
 また、手塚キャラクタでアトムハートのマス目が埋まるたびに、アトムの能力をパワーアップさせられる。ライフの増加やパンチ攻撃力の増加などの6項目があるのだが、筆者のオススメパワーアップは、隠れている手塚キャラクタを探し出す「センサー」。本作は、プレーヤーが何度もステージを練習してテクニックを学べば、パワーアップを攻撃につぎ込まなくてもクリアできるよう調整されている。まずはセンサーの能力向上を優先し、隠された手塚キャラクタを見つけていったほうがいいだろう。

センサーの次は、ライフ、パンチ、レーザーなどを上げていくとステージ攻略が容易になる。ショットはあくまで緊急回避の手段なので、パワーアップは後回しでも構わない センサーをパワーアップさせると、同じブロック内に隠れている手塚キャラクタを察知できる
左の写真がスタート直後のアームキャノン、最大までパワーアップさせると右の写真のように見た目も威力もアップする



■ こだわりが感じられるシステム画面とオプションの仕様

 ゲームデータの保存場所は3カ所まで作成が可能。初回のプレイでは、セーブデータにアルファベット3文字でネームをエントリーする(ハイスコア画面でのスコアネームと併用)。難易度は「かんたん」と「むずかしい」の2種類。

1,000万点までカウントされるスコアの桁数はアクションゲームファンを思わずニヤリとさせるだろう
 タイトル画面のオプションからは「増補キャラクタ名鑑」、「ハイスコア」が選択できる。「増補キャラクタ名鑑」は、ゲーム中でアトムハートを埋めたキャラクタに関する情報が閲覧できる。キャラクタの特徴のほかに「お茶の水博士は、海外ではドクター・エレファントの名前で親しまれている」などのトリビア的な情報も得られる。出展詳細の記載有無がキャラクタによってまちまちなのは気になるが、これは複数の漫画に登場する「サファイヤ」や「ヒゲオヤジ」などのキャラクタが多いため、やむなく割愛したというところだろう。

 さらには、一周目をクリアすることで、とあるオプション項目が追加される。ネタバレになるため詳細については触れないが、とりあえず“かゆい所まで手の届くオプション”とだけ言っておこう。


 本作の難易度は、低年齢のユーザー層を意識してか、「むずかしい」モードでも中程度のように感じられた。アクションゲームの基本に忠実というか、道中の攻撃をどのように回避して攻撃を当てるかに攻略ポイントはほぼ集約されている。そのため、「この攻撃はダッシュで抜けて、その隙に攻撃……」といったパターンを構築できるプレーヤーであれば、一周クリアは早いと思われる。

 ただし、ゲームを完全にクリアするには、多くの手塚キャラクタを登場させてアトムハートを完成させて物語の流れ自体を変える必要がある。単に二周目を一周目と同じようにクリアしただけではストーリーは進まないので、とある方法で特定のステージを一定の順番で進めるなど、相当量のやり込みが必要。とはいえ、やり込み自体は決して苦痛ではない。筆者も仕事ということを忘れて、手塚キャラクタ探しに没頭してしまった。アクションパートもハイスコアという中毒性があるため、年末に仕事を抱えているアクションゲームファンは現実世界に支障が出ない程度にやり込んでいただきたい。

 携帯ゲーム機の一級アクションゲームとして、手塚ファン以外にも推奨したい……ところではあるが、唐突にマグマ大使やジェッターマルスに出てこられた日には、さすがに若い方々は面食らうかもしれない(もちろん、筆者のようなおいちゃんは大満足)。

 現在放映中の「ASTRO BOY 鉄腕アトム」ぐらいは観ておかないとゲーム世界になじみにくいという点は否めないが、ここはあえて「観たうえでプレイするだけの価値は十二分にある」といいたい。良質なアクションゲームを渇望していたゲーマーにとって、本作は“心のオアシス”的な1本になるかもしれないからだ。

(C)Hitmaker/sega
(C)Tezuka Productions (C)Tezuka Productions・SPEJ

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□ヒットメーカーのホームページ
http://www.hitmaker.co.jp/
□製品情報
http://www.hitmaker.co.jp/game/astroboy_ver01/
□関連情報
【2003年10月21日】ヒットメーカー、トレジャー節が炸裂! GBA「鉄腕アトム」ゲームに登場する手塚キャラクタを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031021/atom.htm
【2003年9月22日】セガ、GBA「鉄腕アトム」TVCMの撮影風景を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030922/atom.htm
【2003年9月3日】セガ「ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密」の発売日が12月18日に決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030903/atom.htm
【2003年8月11日】戦いと出会いを通じて心を成長させる2D ACT。セガ、GBA「ASTRO BOY 鉄腕アトム(仮)」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030811/atom.htm

(2003年12月18日)

[Reported by 福田柵太郎]


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