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★PS2ゲームレビュー★
'95年に放映され大ヒットを記録したTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」をゲーム化。本作品は“ワールドシミュレーター”と銘打たれた一風変わったジャンル名が与えられている。登場人物のひとりとして3Dフィールド上で生活をするフリーターンと、エヴァに搭乗して敵使徒を殲滅する戦闘ターンの繰り返しでゲームが進行する。ゲーム内にまったく新しい世界を創造し、その世界の中で自由に生活するのが目的となっている。 PS2「新世紀エヴァンゲリオン2」の世界は、「新世紀エヴァンゲリオン」総監督の庵野秀明氏の思考をコピーしたゲームマスターAI(人工知能)により演出が施されている。簡単にいうと、プレーヤーの起こしたアクションに対し「庵野AI」が適正であると判断したイベント(使徒出現やキャラクタの登場)を発生させる。
プレイした印象としては、「アニメ版を各パーツに分割し、庵野AIが流れを読みつつパーツを組み替える」といった感じだ。この庵野AIと、登場人物AIの搭載により、本作品は既存のエヴァ作品である、アニメ、漫画、小説とは一線を画した仕上がりとなっている。
■ シンジやアスカとなり、エヴァ世界の日常をシミュレート~フリーターン~ フリーターンは、エヴァの世界に没入しているという感覚がもっとも感じ取れるパートだ。ここでは、プレーヤーは碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレーとなり、自由に行動し、他者との会話や食事などの人間が行なう様々な営みをシミュレートする。なお、レイやアスカのシナリオはゲームが進行すると登場する仕組みになっている。
フリーターンでの基本的な目的は、プレーヤーキャラのA.T.を上げること。A.T.はテンションのようなもの、普通の状態で50程度、最大100まで増加する。目的とはいえ絶対的な達成条件ではないため、フリーターンはプレーヤーの裁量に任された自由時間といえる。
プレーヤーキャラクタ以外の登場人物は、AI(人工知能)により各々の思考パターンに基づいて行動する。これは行動スケジュールが設定されているだけではなく、他のAIプレーヤーと接した際の記憶などもアクションの判断材料になっているようだ。 PS「高機動幻想ガンパレード・マーチ」を制作したアルファ・システムが開発元だけあって、フリーターンの自由度やAIの特徴は「ガンパレード・マーチ」の流れを汲んでいる。だからといって、本作が「ガンパレード・マーチ」にエヴァのスキンを被せた物かといえば、そんなことはない。緻密な設定に裏付けられたエヴァの世界観の再現性が高いこともあるが、その根底に「戦闘時に必要なA.T.を上げて使徒を殲滅する(=戦闘は強制参加)」という、ゲーム進行上で明確な目的があることが大きい。
「ガンパレード・マーチ」では、あまりに自由すぎて自分なりの楽しみ方を見つけるのが難しいといったプレーヤーがいたそうだが、本作品では当面の目的が与えられているため、間口が広く、より遊びやすくなっているという見方ができる。
フリーターンにおけるキャラクタ操作は、コントローラの左半分(片手)だけで行なえる。アナログスティックで移動、方向キーのワンプッシュで対象に話しかけられたり、会話のコマンド選択が可能。移動速度もキーレスポンスもスムーズで、ストレスもなく良好な操作性に感じられた。
プレーヤーキャラのA.T.は、空腹、水分、WC(トイレ)、睡眠、風呂といった体調や状態が影響する。人間が、空きっ腹、尿意を我慢、不潔といった状態が続くとダウナーな気分になるのと同様に、本作でも体調が低下するとプレーヤーのA.T.が下がる。体調低下アイコンが表示された場合は、プレーヤーキャラに食事や睡眠を取らせて回復させること。ただし、体調低下は頻発するわけではないことから、常に回復を意識している必要はない。
AIプレーヤーとの会話は、A.T.を上げるうえで有効な手段のひとつ。ポジティブな発言や行動を取れば大半は会話が成功するが、AIプレーヤーの機嫌を損ねると、プレーヤーキャラクタがヘコンでしまいA.T.が落ち込む。至近距離にも関わらず、なぜか会話選択肢が展開せずストレスを感じることもあるが、ゲームに支障をきたすほどではない。
会話もしくは大胆な手段を繰り返して住人たちとコミュニケーションを取るわけだが、そのリアクションが不自然で、会話のキャッチボールになっていない場面もしばしば現出する。さらには、ゲームが進むと衆人環視のなか堂々と抱きつく輩が出現したり、唐突にプレゼントを渡すなど突飛な行動を取るAIキャラクタが続出する。
こうした現象から、本作の世界は整然としておらず、やたらカオティックといった印象が強い。だが、その不可思議さの中に単調なシーンは1日として無く、プレーヤーを飽きさせない。筆者などは、笑いのツボをグイグイと押されてしまったほどだ。
■ リアルタイムで進行するタクティカルな戦闘ターン
使徒が来襲すると、フリーターンから戦闘ターンに切り替わる。ロードマップのように上から見下ろした第3新東京市のマップ上でエヴァを操作し、使徒と接触し殲滅することが目的となる。戦闘はリアルタイムで進行。ミサトのナビゲーションで使徒の移動ルートを予想しつつ攻撃を加えていくという、戦略的なバトルが楽しめる。
戦闘ターンで必要とされるのは、フリーターンのコミュニケーションでアップ(もしくはダウン)させたA.T.の貯蓄量。プレーヤーキャラのA.T.値に比例して、シンクロ率(攻撃力)とA.T.フィールドの強度が変動。A.T.値が高いほど、戦闘が有利になるというわけだ。
A.T.値を上げた状態でフリーターンから戦闘ターンに移行したいが、使徒出現のタイミングはゲームを管理する「庵野AI」が決定するため、予測は困難。たとえば、フリーターンで第壱中学校に移動すると、授業中は食事もできない状態になるためA.T.値が落ち込む。そして、放課後にトイレへ駆け込もうとした瞬間に使徒襲来のアラートが鳴るといった状況もある。A.T.値が高い状態でデータセーブは必須といえるだろう。
プレーヤーが戦闘ターン開始時に搭乗するエヴァは、プレーヤーキャラによって異なるため、原則として乗り換えはできない。性能自体に大差はないのでゲーム攻略には影響しないが、状況によってはアスカやレイの僚機とともに出撃するシーンもある。フリーターンでパイロットとなる人物のA.T.を上げておけば、相当の戦果が期待できる。
エヴァは、原作同様にアンビリカルケーブルで電力が供給されて活動する仕組み。電源ビルから離れたぶんだけアンビリカルケーブルが伸びてゆき、ケーブルが届く範囲を超えるとケーブルを切断するか否かのダイアログメッセージが表示される。切断しても予備電源で5分間は活動できるので、使途接触から決着までなら十分間に合う。使徒をレンジに捉えている場合は、切断しても特に問題はないだろう。
戦闘時は、エヴァと使徒の双方が周囲にA.T.フィールドを展開している。お互いの耐久ゲージには、耐久力のほかにA.T.フィールド分のゲージがあり、これを貫通しないと本体の耐久力を減少させることができない仕組みとなっている。 使徒とエヴァが接近し、A.T.フィールドを干渉させることでフィールドを中和でき、中和後に攻撃したほうが高いダメージを与えられる。各攻撃にはチャージ時間が設定されており、攻撃後はチャージ時間のぶんだけ待たなければ、次の攻撃が行なえない。チャージ時間の長い大技や使徒の攻撃レンジ外からの射撃を使わない限り、エヴァ → 使徒 → エヴァのように交互の攻防が展開される。チャージ時間は1~2秒程度で、戦闘は非常にテンポがよい。
エヴァ世界の武器系統は、原作を忠実に再現(一部オリジナルもあり)。チョップやキックなどの格闘戦、内蔵武器のプログレッシブ・ナイフ、粒子兵器のポジトロン・ライフルを筆頭にした射撃兵器など多岐にわたる。こうした武装の充実ぶりは、エヴァのマニア心を大いにくすぐる要素のひとつといっていいだろう。
戦闘は、使徒にどの位置でアタックをかけるかが鍵であり、プレーヤーが考える“作戦”こそが重要となる。とはいえ、ミサトのナビゲーションに従えば特に難しいことはなく、使徒との近接戦闘がスタートしてからは指先のテクニックも必要ない。その意味で、戦闘の難易度は中程度といえるだろう。フリーターンで蓄積したA.T.値でほぼ勝敗が決まるので、A.T.値のキープは必須とさえいえる。
■ 原作ファンは迷わず買いだが“コタエ”は用意されているのだろうか? 筆者は、当時アニメを見てネルフジャケットを買って騒ぐ程度のにわかファンだった。それでもあえて「エヴァファンなら手を出すべき一作」と、声を大にしていいたい。さらには、フリーターンにおけるカオスな状況は原作とは別次元で必見であり、ある意味「エヴァ」ファンならずともスルーできない、フレッシュなタイトルともいえる。 情報量、ビジュアルシーンの再現度ともにレベルが高く、随所に開発陣の熱意が見て取れる。原作の人気に便乗しただけのゲームではないことは、プレイすることで実感できると思う。不満というかすっきりしない所があるとすれば、マニュアルの前書きにある“コタエ”の件。少々前書きを引用してみよう。
かつて世の中はエヴァ一色だった。 しかし、この物語は多くの謎を残したまま終焉を迎えた。 人々はその謎の“コタエ”を求めてさまよった。 ~中略~ プレイを重ねることにより、様々なキャラクタとなり、 様々なシチュエーションが体験でき、 そこできっと誰もが“コタエ”を見つけることが出来るだろう。
その“コタエ”を見つけたくて何度もプレイを繰り返してしまうのだが……これを読んでプレイする、あるいはプレイした人は、果たして“コタエ”を見つけられただろうか? 筆者は、もうしばらく探してみるつもりだ。 (C)GAINAX/Project Eva.・テレビ東京 (C)1997 GAINAX/EVA製作委員会 (C)BANDAI 2003
□バンダイビデオゲームのホームページ (2003年12月1日) [Reported by 福田柵太郎]
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