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★PS2ゲームレビュー★
■ 3DCGアニメの世界で繰り広げられるチェイスアドベンチャー '99年にテレビ朝日系列局の深夜枠で放映されていたフル3DCGアニメ「グレゴリーホラーショー」をゲーム化したのが、この「グレゴリ―ホラーショー ソウルコレクター」である。異次元のホテル「グレゴリ―ハウス」に迷い込んだ主人公。四角くブキミで奇妙な宿泊客が持つタマシイを集め、館から脱出を図ることがゲームの目的である。
■ 原作マニアも納得。グレゴリ―ホラーショーの魅力をダイレクトに再現 筆者は原作放映当時、毎回5分間というTV放映時間に凝縮された異形の世界に、まさに魂が肉体から遊離するかのような衝撃を受けた。以後、「グレゴリーホラーショー」のDVD全6巻はもちろん、ファンブックやフィギュアなども集めるほどハマってしまった。 その原作マニアから言わせてもらうと、「グレゴリ―ホラーショー ソウルコレクター」は、憧れのグレゴリ―ハウスの内部を能動的に探索できる夢のようなゲームなのだ。もちろん、ホラーゲームとしても本作は一級品。TV版のグロテスクでありながらポップなキャラクタグラフィックやSEなどの恐怖演出を活かしつつ、ゲーム版では「追われる恐怖」がプラスされている。
ファンを唸らせる演出として、カメラ位置を主観視点に変更できるシステムを高く評価したい。原作では主人公の姿はなく、館内部を主観視点で映し出すというカメラワークが用いられていた。その原作通りの視点で館内を自由に移動できる仕組みは、ファン感涙のシステムといえるだろう。 ただ、ストーリーはTV版とほぼ同一で、ムービーや台詞もTV版からダイレクトにカットされているシーンが多く、TV版を全話観た者にとってはやや新鮮味に欠ける。キャラクタに関しても、新たに登場するのはプレーヤーキャラクタの男女ふたりのみで、TV版のブラックダック、ミラーマン、ハニワサラリーマンに至ってはカットされている。 PS2版ならではの新キャラクタがいないのは少々物足りない気もするが、見方を変えれば、グレゴリーの原作自体がゲームの題材として優れた作品であり、特に追加要素を必要としないほどの内容を備えていたともいえるだろう。
■ 洞察力が問われる謎解きパートと、ひたすら逃亡のアクションパート ゲームの目的は、グレゴリーハウスの宿泊客が持つタマシイを奪うこと。主人公の体力の役割を果たすのが、画面左上に表示されているメンタルゲージ。メンタルゲージは、時間の経過や、追跡状態の宿泊客に捕まった場合のホラーショー攻撃などで減少し、ゼロになるとゲームオーバー。メンタルゲージは、屋敷内の回復アイテム、本、睡眠で回復できる。
一癖も二癖もある宿泊客から魂を奪うには、アイテムを渡す、既定の時間にあるポイントへ誘導するなど、さまざまな条件をクリアしなければならない。謎を解くには、鍵穴から部屋内の宿泊客を覗き込み、ひとり言を聞くという行為が最大のヒントとなっている。洞察力や推理力が問われるため、ちょっとした謎解きアドベンチャーの気分が味わえる。
条件を満たしてタマシイを奪うと、宿泊客は激怒して視界に入ったプレーヤーを追跡してくる。彼らに捕まった場合、ホラーショーという攻撃が始まる。基本的に、主人公には攻撃手段が無く(バナナの皮で転ばせる程度)、何度もマップを切り替えながら、自室などの安全地帯を探して振り切るしかない。タマシイは自室のベッドで預かることが可能なので、元の所有者に奪い返されないようマメに死神に渡しておきたい。
先に進むと、宿泊客の数も増え、真綿で首を締められるようにじわじわと包囲網が狭められる。同社の作品「クロックタワー3」のような逃亡を主体にしたアクション要素が強くなり、追跡中は恐怖で大パニックに陥ること必至だ。
■ 勝利の鍵は時間。宿泊客の生活リズムを把握せよ 前述のとおり、主人公以外の登場人物は、基本的にタイムスケジュールに従って行動する。夜になれば睡眠をとり、起床したあとは規定のポイントを順に移動していく。各キャラクタのプロフィールは、館内をうろついているグレゴリーに話し掛ければ知ることができる。タイムテーブルと合わせて、自室のメモ帳で確認できる。 「グレゴリ―ホラーショー ソウルコレクター」は単なる逃亡ゲームではなく、攻略に綿密な計画性が求められるゲームである。ほかの宿泊客に見つからず、部屋を覗き見する時間を計算し、それこそ秒単位で通路と部屋を移動するといった脳細胞をフル活用するシーンが多い。 こう書くと何やら忙しそうなゲームと思われてしまうかもしれないが、実際はそれほどでもない。メンタルゲージの減少が緩やかで、回復アイテムが豊富に用意されているからだ。マップを開いている間は時間が停止するため、作戦の熟考も可能。落ち着いて遊べるゲームといった印象すらある。
■ 生きたペーパークラフトのようなキュートなキャラクタたち このゲームの魅力は、何といってもフル3DCGで描かれたキャラクタたち。天秤の化け物のような「審判小僧」、目と口を縫い付けられた「ネコゾンビ」、時間の支配者「クロックマスター」……こんなシュールなキャラクタが十数体も登場するのだ。登場人物の造形を手掛けたイワタナオミさん(原作の企画、脚本も担当)のセンスに共鳴したプレーヤーは、ゲームとあわせて「グレゴリ―ホラーショー」のDVDを鑑賞していただきたい。
筆者のクリアタイムは、6時間27分。原作を知っている(宿泊客の弱点を知っている)という強みもあるし、何度もオプションからロードしたので、実際のプレイ時間は10時間程度だろう。 ホラーと銘打たれているだけあり、視覚から聴覚から、プレーヤーの心理に恐怖のビートが押し寄せてくる。脅かしではなく、無力なプレーヤーが追跡される混乱と、逃げ切った時の安堵感は本物。この感覚は、遊園地のウォークスルー型ホラーハウスに似ている。ただし、本物のホラーハウスにありがちなチープさはない。非日常的なキャラクタたちが織り成す異次元のお化け屋敷、それが「グレゴリーホラーショー ソウルコレクター」なのだ。 願わくばTV版「グレゴリ―ホラーショー」の第26夜(話)以降もゲーム化してほしいのだが、電車内は通路が1本で逃げ道がないから難しい……かな。
(C)2001 Naomi Iwata/PROJECT GREGORY HORROR SHOW (C)CAPCOM CO.,LTD. 2003 ALL RIGHTS RESERVED.
□カプコンのホームページ (2003年8月29日) [Reported by 福田柵太郎]
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