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“アトム”が生まれた年のロボット博覧会“ROBODEX2003” |
開催場所:パシフィコ横浜
価格:大人 1,200円、小・中校生 600円
年に1回春に開催され、早くも第3回目を迎える「ROBODEX2003」がパシフィコ横浜で4月3日から開催される。会期は4月6日までで入場料は大人1,200円、小中校生が600円となっている。
今年はなんと言っても4月7日が「アトム」の誕生日であることが大きく、ポスターから会場内までまさにアトム一色と言ったイメージがある。会場隅にはアトムのキャラクタショップがあり、会場中央部には三菱重工の「ATOM DREAM FACTORY」が設置されている。
この「ATOM DREAM FACTORY」はアトムの制作現場をイメージした作りになっていて、アトムが今にも起きあがってきそうな雰囲気で横たわっている。残念ながら目覚めることはないが、これについてアトムの生みの親である手塚治虫氏の長男である手塚眞氏は「誕生日である4月7日以前に目覚めては歴史が変わることになる」と説明。4月6日にはアトムの誕生前夜祭が開催される。
会見でも「アトムと比べ現状のロボット技術はどこまで進歩しているのか?」といった質問が飛び出した。これについてAIBOの開発者であるソニーの土井利忠氏は「マンガと現実は違い、現在のロボットはノイマン型コンピュータで動いているため、人間とのギャップは未来永劫埋められない」とし、アトムは作ることができないと明言。「感情があるように見えてもそれはプログラマがそのように見せかけているだけ。ロボットは動物とは違った知識の進化をたどるだろう」と答えた。
「ROBODEX」は毎年多くの来場者が訪れることもあってか、徐々に会場規模が大きくなっていて、昨年に比べ今年は会場が1.5倍に大きくなっている。会場では海外からの関係者、取材陣も多く見受けられた。GAME Watchでは直接関係ないため大きくは取り扱わないが、ソニーの2足歩行ロボット「SDR」シリーズの新作「SDR-4X II (試作機)」やホンダのASIMO、テムザックの「番竜」、NEDO (新エネルギー・産業技術総合開発機構) のパワーシャベルのを操縦するロボットなど、どちらを向いても最先端のロボットを見ることができて、ワクワクと楽しめることだろう。今年は7万人の来場者を見込んでいる。
今日のアトムは“誕生日 (4月7日) 前”ということで、片手を挙げただけで目覚めなかった | オフィシャルサポーターの上戸彩さんも来場してアトムの前で写真撮影。AIBO、お留守番ロボットなどが気に入ったとか | 手塚眞氏などによる記者会見。土井氏は「ロボットが心を持つことは未来永劫ない。ロボットは動物とは違った進化の過程をたどる」と説明 |
■ バンダイ、「ドラえもん」の進捗状況を公開
パソコンを載せて動くロボットキット (ER-1) もモニター販売
看護用ロボットや、家庭用の高価なコミュニケーションロボットなどの出展が多い中、バンダイのブースでは、“ドラえもん・プロジェクト”の進捗状況の展示と、ホビー用のロボットを出展している。
まずブースの約半分を割いている「RDDP」こと「REAL DREAM DORAEMON PROJECT」では6台の小さな「ドラえもん」が主題歌に合わせて踊っていた。「REAL DREAM DORAEMON PROJECT」とは2002年の東京おもちゃショーでバンダイが公開した壮大な計画で、2010年をめどに本当のドラえもんを作ってしまおうというプロジェクト。かなり大変なことだとは思うが、今回この進捗状況が公開されている。
開発していかなければならない分野をいくつかに分け、開発がどれだけ進んでいるかを5段階で表示。これによれば、“電子頭脳”が2/5、“画像情報処理”が3/5、“人工皮膚”が2/5、“音声コミュニケーション”が3/5、“エネルギー”が3/5、“サーボメカニズム”が3/5、“音声情報処理”が2/5、移動装置2/5と表示されている。
見ているとかなりの進捗率に思えてくるが、出展されているのはこれらの暫定技術を使った「ドラえもん」……ではなく、比較的おもちゃに近いものなのが残念なところ。今後の展開に期待したいところだ。ちなみに「ドラえもん」開発にあたって最大の難関と思われる“四次元ポケット”の開発進捗状況は「?」となっていた。
「ドラえもん」と並んで大きくブースを割いているのが、簡単に作り上げられるホビーロボットのコーナーだ。同社ではこれまでコロコロ動くネコ型ロボット「BN-1」や、昆虫型ロボット「ワンダーボーグ」などを販売してきた。
これに続くものとなるのかわからないが、ホビー用のロボット「ER-1」が展示されている。これはわりと無骨なデザインで、アルミフレームなどを組み立てたものの上にパソコンをガシッと乗せて固定する (ノートパソコンは別売)。開発はバンダイではなく米国のThe Evolution Roboticsの開発したものを、バンダイが日本でもモニター販売する。価格は「ER-1評価セット」が100,000円。同社のWEB専売で40セット限定。
形は無骨だが、ロボットの最新技術は充分楽しめる。グリップアームや赤外線センサー、マイクなどが搭載されていて、画像認識してどのように対応するかをプログラミングできる。たとえば、紅茶の缶を判別して取り、手元に持ってくると言ったことも可能。デモでは、ふたつの缶が並べて置いてあったが、きちんと指定した缶を画像認識で判別し、クリップアームでつかみ取り手元に持ってきた。このほかにもかなりのマシンパワーを要するが音声認識 (Windows XPの音声認識・合成エンジンを使用) や、赤外線センサーによる距離の測定によるプログラムも可能のようだ。プログラムはロボットに載せているパソコンで行ない、USBでロボットと接続。なお、プログラム用のソフトは米国製のため英語だが、日本語解説書が同梱される。
実はこのER-1、米国製のためか、乗せるノートパソコンが比較的大きなものまで大丈夫なようになっているのだが、日本には、ソニーのVAIO Uのような小さなノートパソコンもある。ということで、キットの販売と同時にロボットのフレームの改造や拡張を行なうことができる「ER-1拡張キット」も20,000円で販売される。こちらは限定20台。会場ではこちらのキットを使いVAIO Uを乗せた小型ロボットが展示されていた。残念ながら現在販売中のVAIO Uシリーズではマシンの処理スピードが遅く、動きが遅かったのだが、4月下旬発売予定のVAIO U101では、「処理速度が上がっているので大丈夫だと思う (バンダイ)」と言うことだ。
対応OSはWindows 98/ME/2000/XPで、CPUはPentium III 500MHz以上 (1GHzクラスは欲しいとか)。1時間の充電で1時間から2時間程度動くという。
販売については、5月1日から同社ロボット研究所のWEBサイトで応募を受け付ける予定。ちなみに、ワンダーボーグの販売が一時期中断されていたが、このほど教材用ワンダーボーグが数量限定で販売される。5月1日からWEB上でのみ台数限定で行なわれるということで、同社のWEB「ロボット研究所」を注目しておくといいだろう。
■ ゼットエムピーのブースでは「PINO ver.2」、「morph3」を出展
昨年はツクダオリジナルのブースで展開していた「PINO」だが、ツクダオリジナルがバンダイ参加になってしまったため、「ROBODEX2003」ではゼットエムピーのブースで新しい展開が発表されている。PINOはすでに開発が終了しており、WEBでも全情報が公開されている。この情報をベースにゼットエムピーが技術移転を受けて独自改良したものが「PINO ver.2」として公開されている。
ver.2では歩行安定性と運動性能を改良し、大幅アップさせている。これは日本電産コパルと共同開発した専用モーターを内蔵し、メインCPU、サブCPUにより分散処理を行なっているためだという。会場ではPINOの内部も公開されているので、じっくり見ることもできる (もちろん少し離れてだが)。「PINO ver.2」はレンタルや販売されるが、販売予定価格は1体290万円と、ホビーで購入することはできない金額だ。ゼットエムピーではロボット工学や人工知能の研究用プラットフォームとしての販売を見込んでおり、年間50体を販売するつもりでいる。
そしてもうひとつ展示されているのが小型ヒューマノイド「morph3」。全長38cm、重量2.4kg、全自由度は30で、搭載されているセンサー数は138。科学技術振興事業団ERATO北野共生システムプロジェクトとリーディング・エッジ・デザインの共同開発成果として発表されたものをゼットエムピーが技術移転を受け、開発を行なったもの。主構造体がジェラルミンでデザインもカッコイイ。今後は科学イベントやレンタル事業などの展開を予定しているという。
今後、「PINO」や「morph3」が商品化される予定は限りなく薄そうだが (おそらくあったとしても、ライセンシーを受けて他社が開発することになるだろう)、子供や一般の人に近い位置で楽しむことのできるロボットとして登場して欲しい気もする。
「PINO ver.2」。昨年はツクダオリジナルから出展されていたが、今年はゼットエムピーのブースで出展されている | 「PINO ver.2」の内部も見ることができる | 今回全くの新作として展示された小型ヒューマノイド「morph3」。全長38cm。主構造体はジェラルミン。デザインはさすがにカッコイイ。これは膝をついているところ |
■ セイコーエプソンは超小型ロボット「ムッシュII-P」を展示
この小ささで、bluetoothモジュールを搭載
セイコーエプソンのブースでは、ギネスブックにも記載されている超小型ロボットが出展されている。「ROBODEX2003」では新機種となる「ムッシュII-P」が出展されている。「ムッシュII-P」は小さなボディの中に超薄型超音波モーターが搭載されていて、クルクルとよく動く。また、親指の先程度しかないボディにはさらにBluetoothモジュールまで搭載されている。
セイコーエプソンでは今回の展示について「『ムッシュII-P』を販売するつもりはない。我々はBluetoothモジュールなどの開発を行なっているので、それらの技術をどうやって楽しくアピールするかと考え、ロボットを制作した」とコメントしている。
しかし、トミーの「ビットチャーG」の開発経緯が“携帯電話が普及し、バイブレータ用の小型モーターがコストダウンしたから”といったことを考えると、セイコーエプソンのこういった技術が、コストダウンされたとき、新しいおもちゃが登場してくるのかもしれない。そしてそれは、そう遠いことではないはずだ。
セイコーエプソンブースではTHE MICRO THEATERを10分おきに開催している。小さなロボットがチョロチョロ動いている様は可愛らしい | ロボットが小さいためカバンくらいのミニチュア工場でも大丈夫というディスプレイ | ムッシュII-Pの全部品も分解して展示されている。これを見るのに虫眼鏡が用意されているのが面白い |
(2003年4月2日)
[Reported by 船津稔]
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