【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

「RoN」クリエイターBrian Reynoldsインタビュー
「Rise of Nations~民族の興亡~」の魅力を聞く

2月10日収録

 10日に都内で開かれた「Rise of Nations~民族の興亡~ (以下RoN) 」の発表会後、クリエイターのBrian Reynoldsに個別インタビューに応じていただいた。同氏は、これまで同僚のシド・マイヤーの影に隠れた存在で、あまり表だった活動をしてこなかったため、特に日本での知名度はほとんどゼロに近いクリエイターだが、北米ではFiraxis Gamesの名プログラマー、あるいはターンベースストラテジー「Alpha Centauri」のクリエイターとして非常に高い評価を得ている。

 弊誌のインタビューに応じていただいたのはもちろんこれが初めてだが、実にエネルギッシュで、ひと言聞くと10も20も返し、質問を最後まで聞かずにしゃべり続けるというような、他に類を見ないタイプのクリエイターだった(あとでスタッフに聞いたところ、時差ぼけで少々ハイになっていたということだが)。


■ 北米の発売は4月22日 準備は万全!?

インタビューに応じて頂いたBrian Reynolds氏
編集部(以下、編) 今年に入って北米での発売日が4月22日と発表されました。本日のデモを見てもかなり完成度が高まっているという印象を受けましたが、現在開発はどのような状況になっているのでしょうか?

Brian Reynolds(以下、B) もう少しで終わる。現在、ゲームプレイに関する最終的なバランス調整を行なっているところだ。ゲームに登場する18カ国の文明の個性を際だたせる方向で取り組んでいる。マスターアップまであと1カ月といったところだ。

編 全体の開発期間はどれぐらいになりましたか?

B 2年と半年ぐらいだろうか。

 当然のことですがE3で公開された時に比べて、だいぶ磨きがかかった印象を受けました。あれからどのあたりの開発に一番力を入れてきたのでしょうか?

B まず繰り返しになるが、18カ国の個性化を進めた。建物のグラフィックやユニークユニットの選択、その能力の設定など、国家としてのカラーを鮮明化させる方向だ。もちろん、ギリシャはKnowledge(知識)が早く集まるとか、国家固有の特性もそれぞれ用意している。

 それからグラフィックも大幅に美しくした。一番こだわったのは建物だが、それ以外に核ミサイルやロケット、大砲などの3Dエフェクトにも力を入れた。Wonder(民族の象徴)と呼ばれるゲーム後半で建てられる建物もあるが、これのグラフィックと特性にも力を注いだ。たとえば、クレムリン(宮殿)は、スパイを大量に生産できるんだ。

 それから、地球全体を舞台にしたシングルプレイ専用の「Conquer The World Campaign」の開発も進めていった。文明圏ごとに建物様式を変えてので、征服を進めるごとにどんどん敵の建物がかわってくるんだ。これらはすべてE3以降に開発が進められた要素だよ。

 グラフィックについてお伺いしたいのですが、これは2Dと3Dのコンパチエンジンなのでしょうか?

B いや、エンジンそのものは3Dエンジンだ。山や起伏、木、畑などは3Dで描かれている。もちろん、ユニットも3Dモデルを使っている。ただ、建物に関しては見た目を良くするために2Dを使っている。このため、いくらズームインズームアウトしても建物のディテールが崩れることはない。RoNにはデモやカットシーンが入ることがほとんどないので、建物を2Dで描画しても特に問題なかった。

 先ほど開発期間はトータルで2年半ということでしたが、昨年の2月の時点ですでにエンジンは完成して、プレイアブルで出展されていました。つまり1年半という短期間でこのエンジンを完成させているわけですが、このからくりを教えていただけませんか

B ライセンスではなくオリジナルだ。実際、我々は3Dリアルタイムストラテジーの開発は初めてだったが、スタッフ全員がプログラミングに熟練していたということもあるだろう。といってもまったくゼロの状態から作りあげたわけではない。このエンジンの基礎となっているのは「Alpha Centauri」のエンジンだ。この2Dエンジンをベースに新しい3Dエンジンを作りあげた。タイミング的には「Civilization III」の開発に入る直前からかな。この開発にはIntelからエンジニアを呼んだりもしたよ。


■ 命令を受けなくても自動的に行動を起こす優秀なAI

 今回のデモでようやくゲームの全体像が明らかにされたわけですが、リソースの数といい、国家の数といい、そのほかにも国境の要素、交易などもあって、昨年リリースされた「Warcraft III」や「Age of Mythology」などの間口の取っつきやすさに重点を置いたRTSに比べると、だいぶ敷居が高いように思います。この点についてはどのように考えていますか?

B いい質問だ。客観的に見てRoNは確かに、「Civilization」シリーズや「Alpha Centauri」をプレイしたユーザーにとってはわかりやすいゲームになっている反面、「Warcraft」シリーズや「Age of Empires」シリーズなどをプレイしてきたユーザーにとってはゲーム内容が掴みにくい作品になっている。しかし、我々はメインテーマとして歴史を持ってきた。歴史は人類共通のテーマであり、わかりやすい内容だと自負している。ハイエンドゲーマーだけでなく、子供や大人も楽しめるようになっていると思うよ。

 それにチュートリアルモードも用意している。このチュートリアルモードで少しずつ操作方法が理解でき、順序よくゲーム内容が学べるようになっている。たとえば最初のうちは食料、木、金属という3つの資源しか使わない。ステージをクリアしていくごとにだんだん複雑になっていく。コンピュータがヒントも出してくれるため、難しくてクリアできないということはないはずだ。

 また賢いAIもRTSに不慣れなプレーヤーの助けになるはずだ。たとえば建物で村人を生産したとする。従来のRTSはその場でプレーヤーの命令を待ってただ立ちつくしているだけだが、RoNでは一定時間プレーヤーから命令が来ないと、AIは自分で考え、自動的に適切な行動を取ってくれる。たとえば国庫に木が足りなければ、村人たちは木を刈り行く行動を開始するし、そばに無人の畑があったら、その畑を耕しにいく。つまり、プレーヤーがその命令を忘れていたり、仮にそのやり方を知らなくてもAIがそれを助けてくれるわけだ。我々はこれをマイクロマネジメントシステムと呼んでいる。

 RoNは古代から近未来までを舞台にしています。ここで気になるのは、時代が進むに連れて火力が強くなりすぎてゲームバランスが大味になってしまわないかということです。この点についてどのような工夫を行なっているのでしょうか?

B このゲームでもやはり時代が進んでくると火力は飛躍的に高まってくる。最終的には敵の首都に向けて核ミサイルまで撃てるようになる。だが、火力が高まればゲームバランスが大味になるというのは違うと思う。我々としては時代が進化するごとにプレイスタイルが変わっていくというふうに捉えている。

 たとえば核ミサイルは一発で敵の首都を破壊する能力を持っているが、その使用には大きな制限があり、第3者と交易が不可能になるというペナルティも課せられる。また、その結果、核ミサイルの応酬が始まるようなことになればハルマゲドンになって、全員が負けとなってしまう。つまり、火力と引換えになるものがあるから大味になることはないと思う。

 いま核ミサイルの話が出てきましたが、ゲームに置ける核ミサイルの存在は私は否定的です。というのは、現実世界の核は抑止力としてのみ存在理由があるわけですが、ゲームに置ける核は、それそのものが大戦争の引き金になっている。RTSとは戦争ゲームですから戦争の動機を増やすこと自体は間違っていないと思いますが、だったら核でなくてもいい。容易な核の導入はゲーム全体のリアリティの低下にしかならないと思います。こうした点についてどうお考えですか?

B 私はそれほど難しく考えていない。要はプレーヤーの戦術の選択肢を増やすということだ。現実世界のように抑止力として使うこともあれば、実際に攻撃に使うこともできる。その存在そのものがゲームプレイに大きく影響を与える。

 また、先述したようにRoNの核ミサイルは、建物を建てさえすればバンバン撃ちまくれるというものではなく、導入にも莫大な時間とコストがかかり、仮に核ミサイルを撃ってしまうと、強制的に全プレーヤーから断交状態になってしまう。交易できなければ財産が集まらず、それ以降の研究開発はストップしてしまう。しかも、フューチャーテクノロジーのミサイルシールドで、核ミサイルを無効化することもできる。RoNの核ミサイルはそれほど深刻な存在ではないよ。


■ フューチャーテクノロジー、ワンダーなどゲームの細部を聞く

 フューチャーテクノロジーについてもう少し詳しく教えてください。

B プレーヤーが国家の全テクノロジーを極めると4つのうち1つだけ、未来のテクノロジーを研究することができる。先ほどのミサイルシールドもそのひとつだし、経済的な一切の制約がなくなるGlobal Prosperity、完成した瞬間に勝利となるWorld Gorvermentなどがある。いずれも膨大な知識と財産を必要とするため、そう簡単にはアクセスできない代物だ。

 ワンダー(部族の象徴)に特別な効果があるということですが、どういう効果があるのでしょうか?

D たとえば、中国の兵馬俑。これは建てることで、一定時間の間、無料でさまざまなユニットが生産できる。ロシアのクレムリンは、スパイを安価で生産できるようになる。ワンダーは国家ごとに異なる有益な特性が用意されている。また、ワンダーを建てることでワンダーポイントが追加され、この一定ポイントの獲得を勝利条件にすることもできる。いずれにしてもワンダーは建設コストが高く、建物によって効果が異なるため、複数建てるということはそう簡単ではないだろう。

 「Conquer The World Campaign」の魅力についてもう少し詳しく教えてください。

D 「Civilization」ではきっちり仮想ストーリーを描いて、その上で世界征服を繰り広げるというゲーム内容だったが、RoNの「Conquer The World Campaign」は、世界地図を舞台に陣取り合戦を繰り広げるという、自由でオープンな仕様のキャンペーンモードだ。

編 これは18カ国が割拠した状態からスタートして、プレーヤーは好きな国を選んでプレイできるわけですね?

D そのとおり。地域によって得られるレアリソースなどが異なる。もちろん、マップもエリアごとに異なる。

 これは時代を固定してプレイしたりすることはできるのですか、たとえば中世固定とか

D それはできない。古代から現代までターンを経るごとに少しずつ時代が進化していく仕様になっている。ただし、実際の戦闘は一時代固定で、時代を進化させることはできない。

 世界征服するのにどれぐらい時間がかかるものなのですか?

D 一般的なプレーヤーでだいたい20時間から30時間を想定している。1回の戦い自体は通常の対戦より短い30分ぐらいだが、広い地球を制覇するのは数多くの戦闘と外交を経なければならないだろう。

 今回の発表会ではマルチプレイの話が出てきませんでしたが、やはりRTSの本筋はマルチプレイだと思います。RoNのマルチプレイはどういう内容になっているのでしょうか?

B 最大8人で、TCP/IP、LANなどに対応している。マッチメイキングはGame Spyのシステムを採用していて、タイトル画面からシームレスにロビーへ行くことができる。ホストは、対戦人数のほかに、ゲームモードやルール、マップ、勝利条件などを細かく設定することができる。

 ルールでは、Gunpower Ageまでは攻撃不可といったピースタイムを設定したりすることもできるし、FFA(Free for All)では、普通にデスマッチで戦う以外に、一定時間ごとにポイントの低いプレーヤーが脱落していくモードなども用意している。

 「Conquer The World Campaign」をマルチプレイモードでプレイするといった構想はないんですか?

B よくもらう質問だが、それはできない。続編などがあればひょっとすると対応するかもしれない。もともと「Conquer The World Campaign」はシングルプレイ向けに開発したシステムなので、これを普通にマルチプレイに対応させると、各プレーヤーは長い待ち時間が発生せざるをえない。仮に対応するにしても仕様の変更が必要だろう。

 最後の質問です。RoNを見たRTSファンの大多数が「Empire Earth」、「Age of Empires II」に似ていると感じるのではないかと思うんですが、この相似についてRoNを開発した側としてはどのように考えていますか?

B 壮大な歴史をベースにしたRTSということで、似てしまうのはしょうがないと考えた。過去に「Civilization」や「Starcraft」、「Warcraft」といった優秀なストラテジーゲームが数多く発売されてきたが、RoNはその系譜を受け継ぐものとして捉えている。

 実際にRoNをプレイして貰えればわかるが、ゲームシステムやルールなど細かいところが「Empire Earth」、「Age of Empires II」とは異なっており、プレイ後はまったく違うゲームであることが理解できるはずだ。RTSファンはぜひプレイしてみて欲しい。

 ありがとうございました。

(C) 2003 Microsoft Corporation. All rights reserved. Terms of Use.

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Rise of Nations~民族の興亡~」の公式ページ
http://www.microsoft.com/japan/games/ron/default.asp
□関連情報
【2003年2月10日】マイクロソフト、「Rise of Nations~民族の興亡~」を正式発表
人類の歴史を世界規模で扱った3Dリアルタイムストラテジー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030210/ron.htm
【2002年5月23日】Electronic Entertainment Expo 2002現地レポート
Microsoft「Age of Mythology」をはじめバラエティに富んだ大作が目白押し
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020523/e3ms.htm
【2002年2月27日】RISE OF NATIONS~ポストAGE OF EMPIRES!
18文明が繰り広げる軍事、経済、技術戦争
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020228/migf02.htm

(2003年2月12日)

[Reported by 中村聖司]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.