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スクウェア・エニックス、戦略説明会を開催 |
株式会社エニックスと株式会社スクウェアは都内で中間決算に関する発表会を行なうと共に、2003年4月に発足予定の株式会社スクウェア・エニックス (仮称) に関する戦略説明会を開催した。基本的には26日に発表された内容と大きな違いはないが、「世界最高品質のデジタルコンテンツ・メーカーを目指す!!」という意気込みが溢れる発表会となった。
戦略説明会では、まず新会社の会長になることが決定している福嶋康博会長が登壇し、挨拶を行なった。福嶋氏は「世界規模でNo.1になるための収益基盤の強化を行なう」と挨拶。今後の方針として「ゲームソフトの開発など最初の1年間は両社ともそのままの体制で続け、そのあいだに効率的にやっていくことを見極め、ユーザーに受け入れられる作品とはなにかを考えていく」と語った。さらに今後は「エンターテイメントにこだわらないブロードバンド事業なども行なう」という。このブロードバンド事業については福嶋氏自らが事業の立ち上げを行なうとあって、かなり力が入っているようだ。最後に「エニックスは発売ゲームタイトルを増やしてきたが、同時に人気のないソフトも増えた。今後は精鋭主義にして14億円のコストダウンを計る」と、エニックスのタイトルについて厳しい言葉で挨拶を締めくくった。
このあと戦略説明のプレゼンテーションを行なった和田洋一取締役社長は「合併は危なくなってからするところが多いため、我々が合併するというとみんなリストラでコストダウンなどネガティブな意見が出る。我々の合併は攻めの合併なのでまったく違う」と今回の合併が前向きな合併であることを強調。
和田氏はゲーム業界の現状について分析した上で、スクウェア・エニックスの合併の意味合いを説明。「ゲームはずっと進化し続けてきたが、このところ決定的なイノベーション (技術革新) はなかった。いまユーザーが欲しているのはこの技術革新だ。しかしゲームの技術革新はハードウェアの進化やインフラの整備と切っても切れない関係にある。次の技術革新は他業種なども含めて世界のトップメーカーなど色々なところから出てくるだろう。そういったトップメーカーと対等に密接にお話をさせていただくには我々が発信源となって声を掛けてもらえるような企業とならなければならない。今回の合併はそういった背景で起こったことだ」と語った。
このほか合併のシナジー効果について、他社の補完が行なえる点、例えば海外展開などでもアジアに強いエニックスと欧米に強いスクウェアが組むことで、海外展開も今後どんどん行なっていくという。また、ネットワーク事業についても両社共に「両社とも方法がまったく違うが、両社ともにビジネスモデルとして効果が出はじめた。これは、平たくいうと、儲かり始めたということ」ということで、それぞれの方式をお互いに分析することで、収益性をあげていくつもりだという。
流通についてはエニックスの自社流通となるわけだが、「同社とも同じ商材を同じ商圏に展開するのだからなにも問題はない」としている。デジキューブなどについては「大きく変更することは考えていない」という。
会社の大きな体制の違いについても語られた。エニックスは外部で制作しパブリッシャーに徹しているが、スクウェアは内部で制作している。この点については「手法として内部制作か外部制作かはそれほど大きな問題ではない。違いはクリエイティビティに現われる」とし、和田氏はこのままの体制でいくつもりでいるようだ。ただ、ゲームのリリースタイミングについては「調整する」としている。
■ エニックス、スクウェアの中間決算報告会で
各ソフトの気になる数字が公開される
エニックスの中間決算短信を説明したエニックスの本多氏 |
まずスクウェアは「映画による失敗の影響はすでに皆無だ」といい、「V字回復していて、回復を前倒しで実行している」と説明。今期の話題はなんと言っても「ファイナルファンタジーXI」だが、11月27日現在で184,000人で、最近スタートしたWindows版に関しては10万本から11万本を販売し、会員数は5万人くらいだという。毎日、12万から13万人のユーザーがゲームを楽しんでいるといい、有料会員も「毎日着々と増えている」とか。
ブレイクイーブンは20万人だが、和田氏によれば「これはひとりが基本料金だけをいただいたときのもので、実際は色々なサービスを利用していただいていて、ひとりあたりの金額も多い。つまり、事業単独で見てもトントンか少し上まわっている」と好調であるようだ。ただし初期投資の回収や、会社経営に大きく寄与しているかといった点では「それは来期になると思う」としている。
このほか次回作についての質問で和田氏は「『ファイナルファンタジーX-3』はやりすぎだと思う。12作目についてはトップクリエイタがいま、一生懸命制作している。13作目は実働部隊も動いていない状況だし、タイトルが『13』になるかどうかもわからない」という。また、国内外で大ヒットを記録した「キングダムハーツ」だが、「全世界で300万本を越えるヒットとなっているし、企画としてはやっていきたい。でもこれは相手の会社 (ディズニー) があることなのでわからない。 (我々としては) ユーザーの声に応えて作っていきたい」と前向きな発言となった。
エニックスの中間決算短信の発表では、上期の販売本数について「ドラゴンクエストモンスターズ1・2」が30万本で、総計で55万本となったという。下期は「スターオーシャン Till the End of Time」やすでに発売されている「トルネコの大冒険3」が控えているため205万本を予想しているという。ちなみに「トルネコの大冒険3」はすでに51万5千本と大ヒットを記録している。販売目標については「『スターオーシャン』については81万本を予想している。昨日発売された他社の有力RPGが好調なようなので、 (同じジャンルとして) 期待している」とコメントした。ちなみに現在の開発ラインは25ラインでその8割がプレイステーション 2、1割がゲームボーイ関連、もう1割がネットワークゲームだという。
最後に「スターオーシャン Till the End of Time」の発売延期に関して、投資家の利益とゲームのクオリティのどちらを優先するかとの質問に本多氏は「株主の利益をないがしろにしているわけではない。しかしゲームは必需品ではないから、そのクオリティが会社の信用度に直結している。クオリティを高めることで最終的に会社の信用度があがり、それは株主の利益にも通じると思っている」と発言。もちろん対策はすでに講じられており、「ラインの管理や開発システムの改善も行なっている」とコメントした。
スクウェアの決算報告会で発表されたスライド。他のゲームメーカーとスクウェアのポジション比較などをグラフなどで表わした | 3月期の決算業績予想で明らかにした発売本数の予測。下期、それも日本だけで425万本の販売を予定している | 各セグメントの比率など。オンラインについては今後も展開していくという |
(2002年11月29日)
[Reported by 船津稔]
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