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★PS2ゲームレビュー★
カプコンの人気RPGシリーズ「ブレス オブ ファイア」。シリーズ5作目に当たる本作「ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター(以下、「ドラゴンクォーター」)」ではシステムや世界観を一新、アクション性を併せ持つ3DRPGとなった。 閉塞感の強い地下世界といった世界観から、ゲームを繰り返しプレイすることで新しい発見がある「SOL(Scenario OverLay)」といったシステムまで、さまざまなところに“新しいものを作ろう”という意欲が感じられる作品となっている。 ■ 閉ざされた世界からの脱出行 物語は地下1,000メートルの地下世界から幕を開ける。この世界に住むのは、はるか昔大きな災厄を逃れ、地下に生活の場を求め、何世代も経た人々。すでに「そら」というものは伝説の存在となっている。 人は生まれついての潜在能力を表すD値(D-ratio)を測定され、その値は厳格な身分制度を産んでいる。D値の低い者はより下層の階層に押し込まれる運命にある。地下での生活による大気汚染は深刻な問題になっており、特に下層では限界が近づいている。 人々の心配事はそれだけではない。彼らは遺伝子操作による人工生命体・ディクを作業や・食料など、あらゆる面で使用しているのだが、ディクの何体かが逃亡、野生化そして世代交代を繰り返すうちに凶暴化、地下のあらゆるところに潜み人々を襲い始めたのだ。 人の生活はさらに限定され、D値による差別や社会の圧迫感から犯罪を起こす者も多くなっていった。犯罪者たちは「トリニティ」という組織を結成、政府機関「レンジャー」と激しい抗争を繰り広げていく。
こんな、非常に閉塞感のある世界がこのゲームの舞台となる。主人公は3RDレンジャーであるリュウ=1/8192。彼が、謎の少女ニーナと出会い、彼女を救い世界を開くため空を目指す。 ゲームはすべて暗い地下世界で展開し、たどり着く“街”も普通のRPGのような脳天気な明るさはなく、どこか暗いトーンで統一されている。非常に特殊な雰囲気を持った作品だ。 とても斬新な本作だが、どこかにノスタルジーを感じさせるものがある。それは「ウィザードリィ」といった、「迷宮探検ゲーム」の匂いだ。暗い迷宮を、モンスターに怯えながら少しずつ前に進め、自分の「範囲」を広げていく感覚。後述するが、ちょっときつめなゲームバランスも昔のRPGにあった、“ぎりぎりの感じ”を思い出させる作品なのである。 ユニークなゲームシステム このゲームはシステムも特殊だ。まずはSOL (シナリオ・オーバーレイ)、と呼ばれるもの。 このシステムは「プレイをするたびに新しいイベントが追加される」というもので、例えばリュウとボッシュがレンジャーとして、隊長から仕事を受理する場面で、一度目はボッシュと隊長が内密でする話の内容は聞けないのだが、二度目のプレイではボッシュの激しい上昇志向による傲慢な姿が描かれる。このようにエピソードを補完するシーンが入るほか、さらに謎が増えるシーンが挿入される場合もある。その謎の答えを求めて、さらにプレイをすることとなるだろう。 同じゲームを何度もプレイする、というのは、人によってはちょっと抵抗がある場合もあるかもしれない。しかし、このSOLはストーリーの追加というだけではなく、「プレイデータの引継」ということもできる。パーティー経験値によるプレーヤーの意志によるキャラの強化や、さらにスキルや所持金を引き継ぐこともできる。 このゲームは、はじめてプレイするとき、そのゲームバランスのきつさにちょっとびっくりするはずだ。もちろん洋ゲーや、昔のゲームのような理不尽すぎるきつさではないのだが、ストーリー主導型ともいえる最近のRPGとはちょっと違うバランスで、ファーストプレイでは、あっという間に回復アイテムは底をつき、街などの拠点へ撤退を余儀なくされる。このゲームでは1度倒した敵は再出現はしないため、撤退は容易だから、慎重に進んでいけば問題がないのだが、こういう「感触」は久し振りで、ちょっと驚かされた。
SOLは、このポイントでも効果的だ。パーティー経験値で強化され、強い装備を持ったキャラクタは、前回の難関を易々と突破していく。手こずったダンジョンをさくさく走破していく快感が味わえる。また、アリを雇って、妖精の街「共同体」を作ることで冒険を有利に進めることができるのだが、コレも引き継ぐことができる。うまくSOLを使うことでどんどんゲームを快適に進めることができるのだ。 ■ ハードなストーリー展開 「閉鎖された世界からの脱出」これがテーマとなるこの作品は、展開するストーリーもハードだ。野生化したディクに脅かされる世界、D値による厳格な身分制度、進行する大気汚染、最新鋭の工場でさえ生活ブロック以外は廃墟化していて、破綻を来している社会であることが分かる。この世界の圧迫感はあらゆるところでプレーヤーにのしかかってくる。 加えて、リュウのD値は“1/8192”……将来の出世がまず望めない、未来への希望が断たれた少年なのだ。相棒のボッシュは言う。「俺はお前とは違う、だから俺に手柄を譲り、俺を助けろ。そうすれば、俺は上に行くことができる」リュウは、沈黙することしかできない。 そんなリュウに、運命の激変がやってくる。背中に“翼のようなもの”を持った少女ニーナと、反政府組織のエージェントであるリン、このふたりと出会うことでリュウは今までと違う道を歩むことになる。この「実験体」を処分場に運ぶことが、リュウとボッシュたちの任務だった。しかし、ニーナの姿を見てしまったリュウに、そんなことはできるはずはない。ボッシュはニーナを処分しようとする自分を阻む。「リュウ、俺の道を、阻むな……」。 それが、リュウの聞く最期の言葉……と、なるはずだった。しかし、頭の中で声が響く、「お前を選んでやる」。それは、廃棄された巨大な実験体 (?) の前で耳にした声、すでに命の活動を止めた、ドラゴンの死体の前で耳にした声だった。驚くボッシュの前でリュウの瞳が深紅に変わり、そして異形のモノへと「変身」する。その力は人の範疇に収まるものではなく、ボッシュは瞬く間に倒され、敗退する。 リュウは政府から追われる身となる。その過程で追っ手から毒ガス攻撃にあい、ニーナの秘められた力を使って彼を救う。しかし、その力を使った代償に、ニーナは毒に犯され、汚れた大気では生きられない体になってしまう。ニーナを救うには「そら」……誰も見たことのない「地上」へ行くしかない。 リュウはニーナを連れて、リンと共に空を目指す。
ボッシュは、暗い情念に捕らわれ、リュウを追うこととなる。エリートとしてほんの通過点にすぎないはずであった仕事を、リュウというD値の低い、彼にとっては問題ではない人間に阻まれたその悔しさは、やがて彼自身の運命も大きく狂わせていく。
■ 「そら」への憧れ
リュウが使うことができるドラゴンの力は、ある意味ゲームバランスを崩すようなシステムだが、これを使うことでリュウの体は急激にドラゴンに浸食されてしまう。その値はD-カウンターという値で表現されており、100%になった時、ゲームオーバーとなる。この圧迫感も相当なモノだ。プレーヤーは、補給ポイントへの距離、アイテムの持ち運びと回復アイテムの残りの数、敵の厳しさ、そしてD-カウンターというものを気にしながらゲームを進めていくこととなる。これは、かなりの「綱渡り感」を感じさせるゲームシステムである。 やはり「すすんで前に戻る」という行為は、斬新なゲームシステムであるだけに、最初は勇気が必要だろう。しかし、このきついゲームバランスは、ソレをうち破ったときの爽快感に変わる。撤退を選択すれば敵に出会う心配もないし、補給ポイントへたどり着いたときの安堵感もこのゲームならではで、楽しい。 唯一不満に感じたのが、セーブにアイテムが必要なことだろうか? ゲームの途中の道しるべとなる、プレーヤーの気分的な足がかりとなるセーブをアイテムで制限してしまったために、必要以上の圧搾感を与えてしまっている気がする。 この困難な冒険は、強い達成感をもたらしてくれる。2度目以降のプレイではこういった圧迫感を感じた気持ちこそが、爽快感へと変わる。この感覚を体験してほしい。イベント中心のRPGとはちょっと違った感覚が楽しめる作品だ。 (C) CAPCOM CO.,LTD. 2002 ALL RIGHTS RESERVED.
□カプコンのホームページ (2002年11月29日) [Reported by 勝田哲也]
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