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★GBAゲームレビュー★
■ あの傑作法廷バトルがボリュームアップして帰ってきた! 法廷バトルという聞きなれないジャンルのゲームボーイアドバンス用ソフト「逆転裁判」。2001年に発売されたこのゲームは、口コミでその面白さが伝えられ、瞬く間にヒット作品となった。推理小説のように練りこまれたストーリー、個性的でひと目見ただけで鮮烈な印象を残すキャラクタたち、そして、斬新な法廷バトルがプレーヤーの心を掴んだ。
1年後、その続編「逆転裁判 2」が発売された。前作と変わってTVCMや様々な告知もなされ、前作のファンだけでなく多くの人が関心を持っているこのゲーム。発売日にはレジの前に列ができ、完売したショップもあった。では、気になるゲームはどのように変わったのだろう。
■ 成歩堂龍一を悩ませる新たな事件の数々 その知性とハッタリと勢いで被告人の無罪を勝ち取ってきた主人公「成歩堂 龍一(なるほどう りゅういち)」。もちろん今回も彼が主人公だ。前作にも登場した彼の周囲の人物「綾里 真宵(あやさと まよい)」や、「糸鋸 圭介(いとのこぎり けいすけ)刑事」なども健在で、今作でも様々な事件に絡んでくる。しかし事件は独立して1話完結になっているので、前作をプレイしたことがなくても楽しむことが可能だ。 今回も前作と同じく4つの事件が用意されている。前作はひとつめの事件が基本を覚える練習ステージのようになっており、ややボリュームに欠ける部分があった。しかし「逆転裁判 2」では、1話目からボリュームのある話が楽しめる。2話目以降も前作に比べて内容が濃く、現在2話目が終了したがこれまでに2回ゲームオーバーとなり、プレイ時間は8時間を超えている。クリアした友人の話によれば、3話目、4話目とさらに難しく長くなるらしい。ちなみに、前作は一度もゲームオーバーにならずにクリアしているのだが、今は四苦八苦しながらストーリーを進めている。
前作はクリアしてみて「簡単だし、もう少しボリュームがあっても良かったかな」とか思ったのだが、今回はより遊び応えのある難易度になり、ボリュームもかなり増えている。しかし、絶望的に難しいのではなく、すべての話しを聞いていれば「ああ、そういうことだったのか!?」と納得できる難しさになった。
■ 新キャラクタも曲者揃い 新キャラクタは、前作で「成歩堂 龍一」と激闘を演じた「狩魔 豪(かるま ごう)」の娘「狩魔 冥(かるま めい)」や、「綾里 真宵」の従妹(いとこ)で同じく霊媒能力を持つ「綾里 春美(あやさと はるみ)」などが登場。他にも、各事件毎に様々なキャラクタが証人や脇役として現われる。
服装や髪型が個性的なだけでなく、動きやしゃべりかた、性格まで一筋縄ではいかないキャラクタばかり。しかし、そのどれもがキャラクタにマッチしていて、ストーリーに微妙なアクセントを加えている。ほとんどのキャラクタが事件に深く絡んでくるため深く語ることはできないが、ほんのチョイ役のキャラクタでもスゴイ存在感がある。ストーリーだけでなく、キャラクタも楽しめばさらに「逆転裁判 2」が面白くなるだろう。
■ 「異議あり!」が飛び交う法廷バトル ゲームの肝となるのが法廷でのバトル。プレーヤーは弁護士として誰もが有罪と思うであろう被告人の無罪を勝ち取る。事件開始時は「コレはちょっとどうにもならないかも……」という状態が多いが、証人の言葉の隙を突くツッコミと自信がなくても絶対できると言い切るハッタリで争うことになる。 今作では、証拠として人物ファイルも突きつけられるようになり、大雑把に考えても突きつけられるモノが2倍になった。そのため、前作は真実がわからない人でも適当に突きつけていればどうにかなる場面があったが、今回はそうもいかない。証人の証言を一言も漏らすことなく聞き、矛盾がないか、嘘をついていないかを徹底的に調べ、グゥの音も出なくなるような確固たる証拠を突きつけねばならない。 そのぶん、「今の証言の矛盾はこの証拠品が証明できる!!」と思って突きつけ、それが当たった時の感動も増している。法廷も終盤に差し掛かり、テンポアップしたBGMが流れるなか、次々と嘘の証言で逃げようとする証人に完璧な証拠品を突きつけた時などは、まさに鳥肌が立つような快感が味わえる。
システム的にも面白く、感動も味わえる法廷バトルだが、たったひとつだけ問題があると思う。それは、「逆転裁判」をプレイした後、理屈っぽくなったり、厳しいツッコミを入れるようになったり、会話をしていて矛盾があると「異議あり!!」と叫びたくなる(本当に叫んだ場合、かなりの逆転裁判マニアだと言えよう)ということだ。
■ ゲームというより良質なミステリー小説 前作と同様に、ストーリーはいくつも伏線が張られていてかなり面白い。次々とどんでん返しが起こり、少しも飽きることなくグイグイと物語に引っ張り込まれていく。犯人がわかっていてもその方法に驚いたり、その人物の秘密に唖然としたり、よくこれだけのストーリーを考えついたと感心させられる。しかも、すべての事件ごとに違う人物、違うトリックが用意されているため、ミステリー小説ならばシリーズを数作分読んだような気持ちになる。 アドベンチャーパートは、コマンドを選択してストーリーを進めていくオーソドックスなタイプ。前作と同様に様々な場所を調べ、すべての人から話を聞き、集められるだけの証拠を集めることに変わりはない。しかし、話の展開やその内容がそれを補って余りあるほど魅力的なため、ちょっと古めのシステムでもそうと感じることなく楽しめてしまう。 新しい要素として追加された「心理錠(サイコ・ロック)」は、特殊な力によって相手が隠し事をしていると錠として見えるというもの。証拠を突きつけることで相手が心の錠を開き、新たな真実が見えてくる。このシステムにより、前作ではゲームオーバーになる心配のなかったアドベンチャーパートにも緊張感が出た。さらに、相手がどんなことを隠しているのか、どの証拠を見せれば錠が開くのかを考える楽しみもあり、深くストーリーに入り込めるようになった。
操作が手軽な分、ゲーム初心者でも手軽に楽しめるが、ヘビーゲーマーでも頭をひねる場合もある。個人的には、ゲーマーはもちろんのこと、「ミステリー小説は読むけどゲームはやらない」という人にもプレイしてもらいたい。小説はただ読むだけだが、「逆転裁判」は考えて自分で答えを出さなければならない。小説以上のストーリーに加え、自分がそのなかに入れるという感覚を味わってほしい。
■ 「逆転裁判」というゲームについて 以前、風の噂で「逆転裁判の続編はニンテンドーゲームキューブだ!」という話を友人から聞いた。結局はデマだったのだが、ゲームボーイアドバンスというハードだからこその面白さがあると思う。 確かに、フルボイス版の「逆転裁判」というのもやってみたいし、高画質のグラフィックでアニメのように動く姿も見てみたい。しかし、それによってゲームの魅力が増すことはあまりなく、キャラクタの魅力が増えるだけだろう。さらに、持ち歩いて空いた時間にプレイするスタイルも重要で、これによってカバンに入った小説を読むようにゲームが遊べるのだ。 それに、現時点でシステム的に完成されており、ストーリーのボリュームもほとんどの人が満腹になるほどある。「逆転裁判3」がもし作られるならば、目新しいだけの新システムを盛り込むのではなく、今のままで新しいストーリーで遊べるようにしてほしい。
通勤時間に遊ぶなら間違いなく今年いっぱい楽しめるタイトルなので、前作をプレイした人はもちろん、未プレイの人にもオススメする。未プレイの場合、前作も合わせて購入すれば、より深く物語を楽しむことができるだろう。
□カプコンのホームページ (2002年10月30日) [Reported by 田名網陽平]
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