★ゲームボーイアドバンスゲームレビュー★
言葉と証拠を武器に戦いが繰り広げられる「法廷」。普通に生活していればほとんど縁のない場所だが、自分の権利と正義を守ってくれる大切な場所である。その「法廷」を舞台としたゲームがゲームボーイアドバンスに登場した。 ■ プレーヤーは弁護士であり探偵でもある 「逆転裁判」は、「探偵パート」と「法廷パート」にわかれている。基本的に、「探偵パート」では事件現場を調査し、聞き込みや新たな証拠品を探す。「法廷パート」では、「探偵パート」で手に入れた情報や証拠品を元に、検事と証人の矛盾点を指摘し、被告人の無罪を証明しなければならない。
「探偵パート」は、オーソドックスなコマンド選択式のアドベンチャーゲーム。行き先を決め、誰もいない時はその場所で気になるポイントをチェックし、誰かがいる時は話を聞いたり証拠品を見せて反応をうかがったりすることができる。
「法廷パート」は、これまでのアドベンチャーとは少し違った感触だった。事件を目撃した証人が証言をし、その証言の気になる点やおかしいところを見つけたら、「Lボタン」を押してゆさぶりをかける。もし、証人がウソをついていた場合、言い訳をしたり証言を変えてくるので、さらにゆさぶって追い詰めていく。そして、あきらかに証拠と矛盾した証言をした時をねらって、証人に「探偵パート」で見つけた証拠品をつきつけ、そのウソを見破る。この繰り返しで検事の用意した証拠や証人を論破し、被告人が無罪であると証明してく。
■ 携帯ゲームとは思えないボリュームのあるシナリオ シナリオは全部で4章用意されている。はじめは1章しか選べないが、クリアするごとに新しいストーリーが追加される。各章ごとにひとつの事件が起こり、その事件を解決すれば章のクリアとなる。 章を選ぶと、犯人が被害者を殺害した直後から始まる。その後、主人公のもとに罪を着せられた被告人から弁護の依頼が来て、ゲームは始まる。刑事コロンボのように、初めから真犯人がわかっている章もあり、「探偵パート」では真犯人のアリバイ崩しや残された証拠品を探すことになる。 ストーリーはかなり作りこまれており、プレイしていると推理小説を読んでいるかのような気持ちになる。犯人のトリックもかなり手が込んでいて、すぐに事件の真相を見破ることは難しい。また、証拠品の数々も「コレのどこが証拠になるのか?」というものが、実はとても大事なものだったりする。
1章は1時間もかからずにクリアできてしまうのだが、2章、3章と進むうちにどんどんボリュームが増えていく。4章では筆者はクリアするまでに5時間以上かかり、かなり長い時間楽しむことができた。また、普通にクリアするだけではなく、登場人物たちの会話を楽しむことでより長く遊べる。クリアに必要のない会話でも、キャラクタ同士のかけあいを聞いているだけでかなりおもしろい。時には、まったく事件と関係のない場所を調べたり意味のない証拠品を突きつけることで、キャラクタの過去の話や、普段とは違う一面が見られる。
■ 携帯ゲーム機として非常に高い完成度 「逆転裁判」は、携帯して遊ぶために、細部まで非常に良く考えられている。まず、好きなときにセーブできるのがありがたい。「セレクトボタン」を押すことで、ほとんどの場合セーブして中断することができる。仕事の合い間に遊んでいる時や急に呼ばれたときでも、プレイ途中のデータを記録しておけるのは嬉しいかぎりだ。 さらに、パート毎にセーブ地点が用意されているのもかなり便利。各パートは10分から30分くらいでクリアできると思われるので、「今日は探偵パートを攻略しよう」という感じで区切りよくゲームを楽しめる。 個人的な印象だが、プレイしていて懐かしさを覚えた。キャラクタがしゃべるときの口の動かし方や体のアニメーション、「探偵パート」のゲームシステムなど、古き良き時代のアドベンチャーゲームを髣髴させる。もしプレイステーション 2用のゲームだったらイマイチな印象をうけるかもしれないが、ゲームボーイアドバンスだととても新鮮に味わえた。逆に、「携帯ゲームでここまでできるようになったとは……」と関心させられた。
また、ゲームのテンポが非常に良く、プレイしていてサクサクとゲームが進んでいく。キャラクタ同士の会話もおもしろく、なかでも主人公と助手の真宵ちゃんとのやりとりはまるで漫才のようだ。他の登場人物も一癖も二癖もあるキャラクタばかりで、名前、外見、しゃべり方など、すべてに個性が際立っている。1回プレイしただけで、ほとんどのキャラクタが脳裏に焼きついてしまうだろう。
久しぶりにアドベンチャーゲームをプレイしたが、「逆転裁判」をプレイすることでアドベンチャーゲームの良さを再認識できた。最近のアドベンチャーゲームでは、グラフィックや声優、シナリオに頼ったものが多く、いまいちゲームシステムとしてのおもしろさを感じられなかった。だが「逆転裁判」では、これまでにないゲームシステム、手の込んだシナリオ、魅力的なキャラクタなど、ハードのポテンシャルに頼らないゲームの本質的な部分に力が入っており、画質や音質、シナリオの本数など若干気になる点もあったが、携帯ゲームということを考えると、かなり完成度の高いゲームだ。
□カプコンのホームページ (2001年10月26日)
[Reported by 田名網陽平] |
I |
|
GAME Watchホームページ |