ECTS 2002現地レポート

ECTS会場で気になった最新ゲームをピックアップ
近未来サバイバルFPS「Devastation」、三国志MMORPG「d.o.」

会期:8月29日~31日(現地時間)

会場:Earls Court Conference Centre

 ECTSはヨーロッパのホリデーシーズンに発売する新作を集めた商談イベントだ。比較的ゆったりとしたブース構成で大々的に新作を展示するE3に比べてずっとトレード寄りで、ブースにはデモ機ひとつなく、すべて壁でふさがれ、扉一つだけがポツンとあるという商談のみのメーカーも多い。今回だとElectronic Arts、Codemasters、Eidos、3DO、Midwayなどがそうだった。

 その一方で、そうした慣例はおかまいなしに、E3のようにデモ機と説明員をキチンと置くメーカーも増えてきている。これは最近めきめきと力を付けつつある東ヨーロッパ系のメーカーや、イスラエルを中心とした中東系のメーカー、そしてヨーロッパへの本格進出を狙う韓国を中心としたアジア系メーカーに多い。

 いずれもブースの大きさは大手に比べて数分の1程度ながら、狭いブースの中で「おおっ」と思わせるタイトルに出くわすことがある。我々プレスにとっては、ECTSはそうした掘り出し物を見つけるのが大きな楽しみのひとつだ。大半はすでにこれまでのレポートで紹介してしまっているが、本稿では残るタイトルを紹介していこう。


■ 近未来を舞台にした壮大なサバイバルゲーム
Unrealエンジン採用のバイオレンスアクション「Devastation」

Rat Dronesの視点になって、敵本拠を偵察。サイバー感あふれる演出だ
 「Devastation」は、「DukeNuken Manhattan Project」を手がけたことで知られるゲームデベロッパーArush Entertainmentが開発しているアクションシューティング。Arushは米アリゾナに本拠を置くメーカーだが、パブリッシャーはオランダのHD Interactiveで、ヨーロッパ市場をターゲットにしたアメリカンテイスト全開の作品だ。

 ゲームの舞台は、荒廃しつくした近未来の地球。プレーヤーは、ストリートファイターやギャングのリーダー、傭兵、元軍人として、圧倒的な軍事力を備えたハイテク企業の絶対支配に対してレジスタンス活動を行なっていく。要は殺すか殺されるか、孤立無援の壮絶なサバイバル戦争が近未来の都市部を舞台に繰り広げられるわけである。

 個性的なキャラクタたちの魅力を最大限引き出せるように、ゲームにはマシンガンやハンドガン、スナイパーライフル、剣、刀など全部で40種類以上の武器が登場する。なかにはRat Dronesなるネズミ模型の視点になって、基地の内部を偵察できたりもするようだ。

 グラフィックエンジンは、最新のUnrealエンジンを採用。荒廃した近未来の街並みをフォトリアリスティックに表現している。デモでは、凶器化した割れたビンを手に巨大な倉庫群の間を歩くシーンを見ることができたが、景色の奥はもやがかかり、実にリアルだった。

 爆発や射撃によるバイオレンスな演出もウリのひとつで、人間(といってもサイボーグ)の肉体の破損はもちろん、腕や首が丸ごと吹き飛ぶなど、なかなか荒っぽい演出に挑戦している。デモで見た印象では、同作のバイオレンス表現は「Grand Theft Auto III」や「Soldier of Fortune II」を上回るものになりそうだ。

 Unrealベースの作品は数多く発表されているが近未来の都市部を真っ向から描いた作品は意外と珍しい。欧米では11月の発売を予定しているということで、ストーリーといい、ビジュアルといい発売が非常に楽しみな作品だ。

【Devastation】
開発中の画面。日本刀を持ったストリートファイターがインパクト十分。日本を舞台にしたステージも用意されているようだ


■ 世界初!? MMORPGのゲームエンジンをライセンス提供
三国志を舞台にしたファンタジーMMORPG「d.o.」

キャラクタが重なっているのでわかりにくいがコンボ技が発動した瞬間。派手なエフェクトとともに大ダメージを食らった白虎が地面に倒れ伏している
 韓国は、今年も国が出資している振興団体であるGame Infinityが大きなブースを構えていたが、「Warcraft III」の類似品や「Lineage」のそっくりさんなど、いまひとつパッとしない内容だった。昨年も「おおっ」と思わせたのは、「ラグナロクオンライン」を出展していたGravityや「Shining Lore」を出展していたPhantagramなど、単独してブースを設けていたメーカーで、今年も単独出展していたCR-Spaceの「d.o.」が一番来場者の反応が良かったようだ。

 CR-Spaceの「d.o.」は、以前、International Game Content Expoレポートで紹介した古代中国をモチーフにしたファンタジーMMORPG。今回出展していたのはクローズドβテストバージョンだった。韓国のゲームサーバーに接続したデモ機を2台設置し、来場者に自由にプレイさせていた。6月末時点よりだいぶ開発も進んでおり、インターフェイスもがらりと変わり、不特定多数のユーザーと一緒にプレイすることができた。

 ゲームの骨格もしっかり決まったようで、時代設定は三国志時代、PvP(Player vs Player)をメインとした内容になるということだ。漢字で「刀」を意味するという「d.o」には、そのタイトルどおり長刀や太刀、手槍、忍者刀など全部で100種類以上のアジア圏の武器が登場する。武器にはそれぞれ固有の特殊攻撃が用意されており、それは街で教科書を購入して覚え、敵と戦闘をこなすことでスキルが上がり、次第に効果が高まっていくという。

 実際にプレイした感じでは、この多彩な剣技を使ったアクション性の高い戦闘シーンがいい味を出していた。パーティープレイでは複数のプレーヤーによるコンボ技が出せると言うことで、このあたりは「ファイナルファンタジーXI」の技連携と似たようなシステムだといえるだろう。

 フィールドにはブタや牛、虎といった動物が生息しており、これらを倒しつつキャラクタのレベルとスキルを上げていく。危険地帯では竹藪やしだれ柳の影から白虎が群れるようにして襲いかかってきて、古代中国らしい危険度たっぷりの演出が好感触だ。

 同タイトルは韓国市場以上に、中国市場(主に上海、香港)を強く意識した作品だが、敵として役人や警察なども入れようとしたところ中国政府から横やりが入り、人型のゾンビということになったという。動物やゾンビに加え、ダンジョンには阿修羅を初めとしたアジア地域の邪神がボスとして登場するということだ。

 キャラクタメイキングも試してみた。男女とも40種類ずつの容姿のバリエーションが用意され、名前と基本ステータスを好みの具合にしてから世界に降り立つ。最初は街からスタートし、街の外れに生息しているブタや牛に対して素手で殴りかかっていく、最初のうちは最弱のブタを倒しても大きな経験値が入り、テンポ良くレベルが上がっていく。動物たちが落とす毛皮などを街で売り、お好みの武器を購入といった具合で進めていく。

 なお、担当者にECTSの出展理由を尋ねてみたところ、「欧米ユーザーの反応を見るのが目的です」とか「将来に向けての市場調査です」といった答えが返ってくると思ったら、「実は、d.oエンジンのライセンス先を探すのが目的です」とびっくりするような答えが返ってきた。

 「d.o.」のゲームエンジンそのものからサーバー運営方法まで、そっくり丸ごと「d.o.」エンジンとして各国のデベロッパーにライセンス供与していくということだ。現時点では「d.o.」のゲームエンジンの開発自体が終了していないため、契約には至っていないというが、すでに中国や中東のデベロッパーと交渉を行なっていて、ヨーロッパのデベロッパーの反応も上々だったという。MMORPG先進国である韓国のメーカーならではのユニークな試みといえるだろう。

 ちなみに韓国に続き、近々、中国語版のβテストも開始するという。韓国語版は年内にも正式サービス開始予定で、日本や欧米への展開は中国語版のβテストが軌道に乗ってからになるということだ。

【d.o.】
インターフェイスは「ラグナロクオンライン」のような感じで、右ドラッグで視界をぐりぐり回すことができる。「ラグナロクオンライン」との違いは美しい空が見えるところで、これは「Anarchy Online」を参考にしたということだ。ホイールを回せば画面の拡大縮小が行なえるなど、自由な視点変更が好印象だ

□ECTSのホームページ
http://www.ects.com/
□Arush Entertainmentのホームページ
http://www.arushgames.com/
□「Devastation」のホームページ
http://www.arushgames.com/games/devastation/
□Cr-Spaceのホームページ
http://www.crspace.com/
□「d.o.」のホームページ
http://www.doonline.co.kr/
□関連項目
【6月30日】International Game Contents Expo 2002レポート
「Ragnarok Online」、「d.o」など韓国産オンラインゲームの出展が中心
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020630/igce.htm

(2002年9月1日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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