コンピュータエンターテインメントレーティング機構が説明会を開催
社会的倫理水準と表現の自由の適合点を探る

写真向かって右がCERO理事長の武藤春光氏。左がCESAの倫理委員を務めCEROの理事にも名を連ねる渡邊和也氏
7月29日 開催

 6月に設立されたばかりのゲームソフトに関する「年齢別レーティング区分」などをおこなう「コンピュータエンターテインメントレーティング機構 (CERO)」は、都内で記者会見を開催し、レーティング制度に関する説明を行なった。

 記者会見ではまず同機構の理事長を務める武藤春光氏が、CEROの設立に関する経緯や理念などを説明。武藤氏によれば「ゲーム業界は日本を中心に回っている。大きな業界になればなるほど社会的な注目を集めることになる。ゲームが青年の心に悪影響を与えるのではないかといった意見も出てきた」。

 そういった背景のもと社団法人コンピュータエンターテインメント協会 (CESA、7月からコンピュータエンターテインメントソフトウェア協会から改名) は4年前から倫理委員会を設立し検討を続けてきた。今回CEROの発足にあたっては「ひとつは、これまでは発売可能か、禁止かの2択しかなかった。18歳以上にはOKであっても10歳以下にプレイして貰うためには発売を見送るしかなかった。これを改善するために年齢別のレーティングを導入することが考えられた。もうひとつはこれまで自主規制だったが、自主規制では甘くなるのではといった指摘があった。このため、独立団体を作ることになった」と設立の経緯を説明。

 各メーカーはCEROの会員となり、入会金と年会費を支払うこととなる。CEROはこれらの収入と後述の審査料だけで独立運営されることとなる。審査にあたっては別途審査料が必要となる。会員企業でなくても審査は可能だが、審査料が3倍近くとなる。
 審査の流れは、ソフトウェアが完成するとプラットフォームメーカーへチェックを提出することになるが、同等品の映像を2時間程度収録したビデオテープ、資料、問診票などをCEROに提出。細かなチェックシートに従って審査が行なわれる。審査を行なうのは審査員だが、この審査員は一般から公募される。年齢や職業などが偏らないよう30人から50人程度の人員を確保し、無作為に選択、審査することになるという。審査期間は1週間程度で終了し、審査に通ればパッケージに所定のマークを印刷することとなる。

 レーティングはまず大きく2つに分けられる。ひとつは「教育・学習/データベース領域」で、もうひとつがゲームとなる。ゲームには年齢別レーティングが適応され、「全年齢対応」、「12歳以上推奨」、「15歳以上推奨」、「18歳以上推奨」、「発売禁止」となる。審査対象には現状PCゲームは含まれていない。対象プラットフォームは「プレイステーション 2」、「プレイステーション」、「ニンテンドウ64」、「ニンテンドーゲームキューブ」、「ゲームボーイ (カラー含む)」、「ゲームボーイアドバンス」、「Xbox」、「ドリームキャスト」、「ワンダースワン (カラー含む)」となっている。PCについては「コンピュータソフトウェア倫理機構」などと話し合いをしていきたいとしている。

 審査に落ちた場合、販売禁止などの強制力はない。ただし、CEROによれば「 (レーティングの意志を理解した上で) 流通などが販売しないようになればと思う」とコメントしている。購入に関しても同じで、18歳以上と書かれているソフトを10歳が買い求めようとしても禁止する強制力はない。これについても「販売店側が注意するなどするようになればいい」としている。CEROとしては「こちらからユーザーに対してより多くの情報を提示し、購入に関してはユーザーの自主性に任せる」としており、あくまでも注意を喚起するものとしてのレーティングと言うことのようだ。

 今回の記者会見で公開された「レーティング審査依頼書 (案)」によれば、出血描写、死体描写、ケンカ描写など暴力表現から、男女の抱擁、男女以外の抱擁、下着の露出、ストーカー描写、不倫、排泄、水着といった性表現、麻薬やギャンブルといった反社会的な描写まで多岐にわたっている。また、出血描写などでは“インタラクティブな出血 (自分がキャラクタを操ることによる出血) ”と“非インタラクティブな出血 (ムービーなど) ”と細かくチェック項目が分けられている。
 質疑応答ではこれまでに出た具体的な例として、格闘ゲームでのレーティングについて触れ、「キャラクタがかわいければ全年齢対象とし、写実的でリアルな殴り合いであれば年齢制限を少し上げる。さらに出血表現などがあればそれも加味される」という。ちなみに前述の「依頼書案」によれば「格闘技」に分類されるプロレス、ボクシング、K-1などは殴り合いのケンカ描写に含まれている。もちろんこれはあくまでも案件であって今後変更される可能性もある。

 CEROでは「社会的な倫理水準をチェックし判定することと“表現の自由”とは相反することだが、適合点を見つけていきたい」とコメント。運営にあたってはまだ未定の部分も多いが、10月の正式運営開始によってどのようにゲームが変わっていくかが興味深いところだ。

□CEROのホームページ
http://www.cero.gr.jp/
□レーティングの審査員募集のページ
http://www.cero.gr.jp/judge_collection.html
□関連情報
【6月7日】CESA、ゲームソフトに年齢別レーティングを設定する独立機構「CERO」を設立
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020606/cero.htm

(2002年7月29日)

[Reported by 船津稔]

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