★ PCゲームファーストインプレッション★
日本ファルコムの本年度最初のタイトルとなる「VM JAPAN(ブイエムジャパン)」の発売日まであと1カ月を切った。昨年発売された「Zwei!!」が、「イース」、「ザナドゥ」といった一連の名作アクションRPGの系譜を受け継ぐ作品だとすれば、「VM JAPAN」は「Vantage Master」を初めとしたシミュレーションRPGの系譜を受け継ぐ作品といえる。本稿では発売より一足先に、最新画面をたっぷり使用してゲームの魅力を紹介しよう。 ■ 和風ファンタジー世界を舞台に召喚合戦を演じる「VM JAPAN」 「VM JAPAN」の舞台は異世界の日本「和国」。和国では長きにわたる戦乱の世がようやく終わりを告げ、「幕府」による新たな統治が始まっていた。しかし、平和が訪れてからわずか12年後、何者かが起こした「星落とし」と呼ばれる儀式によって、「和国」西方の「大和の都」が巨大な流星の直撃を受け、壊滅的な被害を受けてしまう。 犠牲者の中には初代将軍も含まれ、将軍喪失による幕威の失墜、それに伴う政治的混乱、治安の悪化など、和国は混沌の極みに達していた。国外からは「星落とし」調査のため人員が派遣され、日本各地では怪しげな動きも見られる。そんな状況下の和国で、8人の主人公たちがそれぞれの思いを胸に地方行脚の旅に乗り出していくことになる……。
■ 「VM JAPAN」の戦闘は幻魔戦に加え、術戦がアツい!
少し余談になるが、「Vantage Master」シリーズは、「V2」でネットワークプレイモードが実装されてからというもの、プレイスタイルを決める上で誰をプレーヤーキャラクタに選ぶのかが重要な問題となった。VMシリーズの醍醐味は、主人公キャラが召喚した複数のネイティアル(「VM JAPAN」では幻魔)による熱い攻防戦にあることは言うまでもないが、勝利条件はあくまで「敵召喚師を倒すこと」だ。つまり、後方で召喚するばかりが主人公キャラの役目ではない。 双方の能力差、残り体力、行動順などを換算のうえ、一見とんでもない場面で主人公自ら強力な一撃を繰り出す。将棋で王将が攻め込むことはありえないが、王将が敵陣地に攻め込むだけでなくとどめの一撃を繰り出しうるのが「VM」シリーズのおもしろさだ。「VM JAPAN」はこの要素をさらに洗練された形で盛り込み、より際どいゲームデザインに仕上がっている印象だ。 具体的には「術」が大幅にパワーアップしている。要は「Vantage Master V2」で「魔法」と呼ばれていた要素の和風版だが、「VM JAPAN」では単にネーミングが変わっただけでなく、主人公の扱える数が大幅に増え、さらに全幻魔がひとつずつ術を使用することができるようになっている。なお、幻魔が使用できる術は、その使用の際に幻術使いの術数(魔力)を消費する。このあたりの仕様変更も戦術性を高めるのに一役買っている。 術の使い方のルールは従来と同じで、移動後の使用は可能だが召喚(攻撃)との併用はできず、使用には幻魔の召喚と同様に術数(魔力)を消費する。今回は各主人公とも固有の術を習得した状態から始まり、戦士系のキャラは使える術が少なく、魔法使い系のキャラは最初からめいっぱい使えるといったふうに差別化が図られている。 術には状態回復系、天変地異系に加え、遠距離攻撃系があり、一見魔法使い系が有利に感じられるかもしれないが、神楽や法師などは基本性能が低く、加えて忍びや海の民などは基本攻撃の射程が4もあったりして、少しでも油断するとディフェンダーの隙をついて一気に踏み込まれ倒されてしまう。
その一方で、術を使うメリットは複数の敵を一気に倒せることで、特に物語の途中で「札」を手に入れることで習得できる「招来」系の術は、巨大な八百万の神が派手なエフェクトで攻撃してくれ、敵味方を問わず周囲のユニットに大ダメージを与えてくれる。一発逆転の可能性の面でも、見た目の上でもかなり楽しませてくれる新要素といえそうだ。
■ 凝りに凝ったビジュアル これぞまさにPCのためのシミュレーションRPG
このことは、PCとコンソールの双方に確かな影響力を備える一方で、PCプラットフォームのビジュアル表現の面で、ここ数年足踏みを続けているコーエーとは対照的で、日本ファルコムは「Zwei !!」とはまた違ったアプローチで、涼やかさをも感じさせる鮮やかなビジュアルを実現した。私の知る限り、2Dベースのゲーム制作に関しては、日本ファルコムは世界一のメーカーだ。 今回、イベントなどは静止画で処理され、音声はなし。静止画&テキストベースで展開し、右上の「飛ばしまする」を押せばイベントをまるごと飛ばすことができる。これは内容が簡素だからというより、2周目、3周目を最初から視野に入れたハードコア仕様といえる。こだわっているのはバトルフィールドだ。 今回、戦場は日本全土+αに60箇所以上用意され、それぞれ地方の風土に合った装飾が凝らされている。一番美しいのはスタート地点でもある関東方面の桜のステージで、周囲には吹きこぼれんばかりの桜満開の木で満たされ、空には花びらがひらひと舞っている。木と木の合間には草花が洩れなく敷き詰められ、慣れるまではどこまでが足場なのかわからないほど。戦場は朝、昼、夕、夜の4バージョンが用意され、ターンを経るに従って時間が経過し、経過した時間によって次第に空の明るさが変わっていく。
また、ゲームに登場するすべてのキャラクタたちはあらゆる場面で滑らかにアニメーションし、プレーヤーたちを飽きさせない。召喚時のリスト一覧で選択したときもちょっと凝っていて、フィールドに登場するキャラより少し大きなモデルデータがくるくるとまわっている。そして前述したように、術の使用シーンも実に凝っている。使用時にどういった神が出現して、どうアニメーションしてくれるのか楽しみにさせてくれる。「VM JAPAN」は、ゲーム性の充実はもちろん、ビジュアル表現にも冴えがうかがえるこの夏とびきりの快作に仕上がりそうだ。
(C)2002 Nihon Falcom Corporation.
□日本ファルコムのホームページ (2002年6月3日)
[Reported by 中村聖司] |
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