Electronic Entertainment Expo 2002現地レポート

Microsoft、「Combat Flight Simulator 3」プレビュー
P-80 シューティングスターが出撃し、Me 262 シュワルベが迎え撃つ
西欧全域を網羅したグローバルキャンペーンが最大の魅力

会期:5月22日~24日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 いまや数多くの傘下子会社を抱えるMicrosoft Game Studiosが、一貫して社内で開発を行なっているのが「Flight Simulator」と「Combat Flight Simulator」の両フライトシムシリーズだ。フライトシミュレータ全盛期の'90年代と比較して、現在はユーザー数もめっきり少なくなり、それにともない新作も激減の一途をたどっている。特にレシプロ機を飛ばして空中戦を楽しめるヒストリカルタイプのコンバットシムは、実質的に絶滅に近い状況にまで追い込まれている。そういった状況下で、ひさびさの超新星といえるのがMicrosoftの「Combat Flight Simulator 3」だ。本稿ではCFS3の魅力にぐぐっと迫ってみる。


■ 最大32人でヨーロッパ戦線を戦い抜ける魅惑のゲームモード

太陽光を浴びてギラギラとしたボディを露出させるP-47D。「Aces High!」と書かれたトランプのワンポイントがさらにリアル感を生み出している
 「Combat Flight Simulator 3」は、第二次世界大戦を題材にしたコンバットフライトシミュレータ。前作は太平洋を舞台に日米戦が繰り広げられたが、3は再びヨーロッパに戦場を戻し、'43年から'45年までの期間を英米独のいずれかの陣営で戦い抜いていく。戦場は北はノルウェー、南はイタリア北部までをカバーした西欧全域。第1作目と異なり、米軍が本格参戦した'43年からスタートするところがミソである。

 ゲームモードはキャンペーンとミッションの2種類と非常にシンプル。この訳は、シングルプレイとマルチプレイの垣根を完全に取り払ったことによる。つまり、すべてのゲームモードで、友人を僚機あるいは敵機にして、史実に即したミッションを楽しむことができる。ミッション内容は爆撃機を軸にしており、ゲームには大戦中期以降に登場する最良、最速、あるいは優れたコンセプトの戦闘機のほか、大戦中数百万機がヨーロッパを飛び交った中型の爆撃機が多数登場する。これにより、プレーヤーはパイロットのみならず、ガンポットに常駐するガンナーや、ボンバーサイトをにらみつつ爆弾投下のタイミングを計る爆撃手にもなることができる。もちろん、マルチプレイでこれらの役割を友人に担当させることも可能で、爆撃機特有の恐怖体験を仲間内で共有することが可能だ。

 CFS3で登場できる航空機は以下のとおり。

米軍:B-26C、B-26F、P-38J、P-38L、P-47D、P47D-25、P-51B、P-51D、P-55A、P-80

英軍:B-25C、B25H、Mosquito IV、Mosquito VI、Mosquito XVIII、Spitfire IXc、Spitfire IXe、Tempest MkV、Typhoon MklB、Vampire F Mkl

独軍:Bf109G-10、Bf109G-6、Do335A-1、Do335B-2、Fw190A-5、Fw190A-8、Go229A、Ju88A-4、Ju88C-6、Ju88P-4、Me262A-1a、Me262A-1a/U4、Me262-2a

 途中参戦の米軍を除き、英独軍とも爆撃機が中心のラインナップになっている。各機とも博物館に展示してある実機や市販の写真集などで綿密にデータを取り、搭乗できる機には実際に乗り込み、操縦桿の動きやコクピットの動きを確かめ、それらをすべて丁寧に再現したという。各機体の空戦能力も公式データを参考に可能な限り実機に近づけたという。ちなみに開発スタッフに「一番優れた機体はどれか?」と質問したところ、「ゲームに搭乗する機体はすべて優秀。速度だけでいえばジェット機が優れていることになるが、わずかな操作でバランスを崩すなど扱いが難しく、そういった機体ごとの得手不得手はすべての機体に適用してあるので、どれが一番とは決められない。個人的に好きなのは米軍初のジェット戦闘機“P-55A”だ。操縦桿を握ったときは思わず手が震えたよ」とコメント。好みの機体が最優秀ということらしい。

 さて、同作で革命的なのは、キャンペーンにミッションジェネレータ要素を取り入れているところ。このため、キャンペーンを始めるたびにミッション内容が異なってくるのだ。通常コンバットシムのミッション内容は、インターセプトや護衛、簡単な爆撃ミッションがせいぜいだったが、CFS3では西欧全域をまたにかけたグローバルなミッションが目白押しだ。具体的には工場、軍事施設など建物の完全破壊、橋、艦船、陸軍部隊への攻撃などが挙げられる。戦闘機に搭乗した場合は、敵戦闘機の撃破よりむしろ爆撃機の護衛が絶対条件となる。ちなみに工場の爆撃に成功したり、敵戦闘機を撃墜するなどの戦果を立てた場合は、新型機がもらえるなどの特典があるというから楽しみだ。なお、キャンペーンでは、任務の達成具合、具体的には建物の倒壊具合によって、展開が変わってくる。完全破壊した場合はそのまま破壊されたままで、一部損傷のみの場合は、次回の出撃時には修復されているという。

 ちなみにキャンペーンのラストは史実と同じになるという。プレーヤーがいくらがんばりを見せても史実をねじ曲げることはできない。確かに'43年の状況から西部戦線で独軍が勝つのは不可能だったから、それはそれで自然といえる。独軍プレーヤーにとっての究極の目標は、戦功を重ねて史上初めて正式採用されたジェット戦闘機Me262、あるいは幻の全翼型ジェット爆撃機Go229Aに搭乗することだろう。もちろん、連合軍側にも同じことがいえるわけで、史実は曲げられないにせよ、実にやりがいのあるキャンペーンといえるだろう。

独軍が'44年から実戦投入したジェット戦闘機Me262A-1a。ジェット推進で飛ぶため、当然のことながらバラバラ回る翼がない。至って静かに鑑賞(?)することができる

どういう理由からだか被弾炎上シーンの多い独軍の双発爆撃機Ju88A-4。空と陸の自然な表現に注目。高度を下げると、ぐんぐんテクスチャが細かくなっていく、その変化の過程は至って自然でシームレスだ

英軍のTyphoon MklB。夜間の星空の表現に要注目だ


■ 最新のグラフィックエンジンによる迫真のエアコンバットワールド

ついに公開された全翼型ジェット爆撃機Go229。このクオリティがリアルタイム処理される。ハットスイッチをぐりぐり回すと大きな翼がキラキラと輝く
 IGFで初公開された当時、CFS3のグラフィックエンジンは「Flight Simulator 2002」をベースにしたものということだった。しかし、現在はほぼ新開発といっても過言ではないほど大幅に強化されたグラフィックエンジンになっているという。たとえば地表のスケールは1kmから120m単位に変わり、サテライトのデータをベースに'40年代の西欧全域をまるごと再現。機体のテクスチャはさらに細かくなったうえ、環境マッピングとスペキュラーマッピングが施され、爆発炎上時のパーティクル処理も別次元のクオリティ。1,024×768ドット以上の解像度で見るとまるで写真のようなリアリティを実現している。確かにFS2002ともCFS2とも異なる別のゲームだ。

 建物や橋など地上のオブジェクトに関しては完全再現とまではいかないが、山脈や森林、海岸線といったランドマークの再現性は高度、密度にいたるまでほぼ完璧だという。また、ミッションの目標となるロンドンやベルリン、パリといった大都市に関しては、当時の写真を参考に'40年代の西欧を丸ごと再現する意気込みで、可能な限り再現していくというから楽しみだ(現時点ではまだ開発途上)。

 また、艦船や陸上部隊の位置に関しては、史実のデータを参考にそっくりそのまま配置していくという。たとえば、'44年6月6日にノルマンディ地方に行けば、海上は艦船で埋め尽くされているということだ。もっとも、これほど大規模な作戦の場合、作戦そのものがプレーヤーミッションに組み入れられているため、大作戦を参加し逃すということはないようだ。

 今回、新しいデモプレイを見ていて一番驚いたのは、すべての高度で高いリアリティが保たれていることだ。10,000m以上の高々度における雲海の表現や空戦に適した高度数千mでの雲と地表のバランスの取れた表現、そして高度数百mでの地表のリアルさおよび、体感的なスピード感の表現まで、すべてが自然かつリアルに処理されている。対地ミッションで爆弾を投下すると、地表から爆炎が吹き上がり、場所によっては火災も発生し、道をゆく車が渋滞を起こしたり、救急車が出動してきたりなど、コンマ数秒で過ぎ去ってしまう地表の表現も実に力が入れられている。

 少ないフライトシムファンをすべて取り込むような勢いで精力的に開発が進められているCFS3。発売時期は今秋を予定し、日本語版の発売もすでに決定している。一刻も早くキャンペーンをプレイしてみたいところだが、最後に、自機のビジュアルのあまりの美しさに外部ビューでハットスイッチをぐりぐり回しているだけでも十分に楽しめたことをお伝えしておきたい。

開発者自ら「お気に入り」だという米軍のエンテ式戦闘機P-55A。SF映画に出てきそうなエッジの効いた未来的デザインが格好いい。「お気に入り」のためか、機体デザインに複数のバリエーションが確認できる

一番最初にモデリングされおそらくもっとも完成型に近いと思われるP-47D。機体が被弾炎上している画面は、後ろに吹く黒煙のもくもく感もさることながら、機体を包む炎の処理が実に細かい

□E3のホームページ
http://www.e3expo.com/
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/games/home/default.asp
□「Combat Flight Simulator 3」の公式ページ
http://www.microsoft.com/games/PC/combatfs3.asp
□関連情報
【2002年3月1日】米英戦略爆撃部隊 vs 独防空部隊の死闘を描いた大作CFS 「Microsoft Combat Flight Simulator 3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020228/igfcfs3.htm

(2002年5月23日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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