★ PCゲームレビュー★
2000年のGameStockで初公開され、それ以来長らくアクションRPGファンの注目を集め続けてきた「Dungeon Siege」がついに完成した。リアルタイムストラテジー「Total Annihilation」のクリエイターとして知られるクリス・テイラー長年の夢だったという、真の意味でシームレスなゲームデザインを始めとした斬新なシステムの数々は最終的にどういう形でまとめられたのか。「Diablo II」以来となる久々の大作アクションRPGの全貌をじっくりご紹介していこう。 ■ 真にインタラクティブなファンタジー世界に放り出される快感
米ゲーム界の奇才と謳われるクリス・テイラーが長い歳月をかけて開発した「Dungeon Siege」は、そうした要素をもれなく盛り込み、それを彼独自のシームレスな世界観の中に封じ込めたアクションRPGだ。グラフィックはフル3Dで描かれ、自由に回転、拡大、縮小させることができる。フィールドは地上がメインで、そこから山の麓に掘られた横穴や山の奥に突如現出した塔、モンスターの巣窟になっているダンジョンなどにアクセスしていく。 本作の最大の特徴は「シームレスである」ということ。読み込みはゲーム開始時の1回のみで、あとはフィールドから街、フィールドからダンジョン、街から家など、あらゆるケースにおいても読み込みは一切発生せず、雰囲気を損なわずにゲームプレイを続けられる。「Diablo II」でいえば、章の変わり目のイメージムービーや、ポータルでの移動の際に発生する読み込みが一切発生しないということだ。この素晴らしさは、読み込みの多さで気分を保つのに苦労した「Baldur's Gate」シリーズのプレーヤーならよくわかるのではないだろうか。 で、実際どう処理されるのかというと、たとえば家の場合は、中に入った瞬間に自動的に家の屋根が取り払われ、内部の様子が見えるようになる。この際も外は見えたままだ。このため、塔だと階を上がるごとに、その高さが視覚的に実感できるようになっている。十数階を超えると霞がかかって地上が見えなくなり、いっそう不安感をそそられるといった具合だ。ちなみに地上が見える状態で直接地上をクリックすると、パーティーはまっしぐらに階下に向かって進み続け、最終的に塔を離れてそこまでたどり着いてしまう。移動AIの優秀さもさることながら、このダイナミックなゲームデザインには本当に驚かされた。 話を戻すが、これがダンジョンや洞窟ではやや処理が異なってくる。入った瞬間に地上や山の側面が取り払われ、中の様子が見えてくるところまでは一緒だが、同時に音響効果とサウンドエフェクトががらりと変わり、視覚的、聴覚的にダンジョンに侵入したことがわかるようになっている。ダンジョン侵入におけるシームレス感は実に心地よくそしてリアルで、レベルが低いうちはそれだけで進入をためらわせるインパクトがある。
ゲーム世界に降り立ってみて最初に驚くのは、3Dオブジェクトの豊富さと多様さだ。とにかく種類が豊富で、たとえば森林であれば、多数の樹木の間に様々な草花が植えられ、ウサギやリスなどの小動物が生息していたり、林の奥には崩れた遺跡跡がこっそり残っていたりする。横の茂みがガサガサ揺れたかと思うとそこから敵が飛び出してきたり、いつのまにか狂犬の集団に囲まれていたり、はたまた慌てて敵から逃げるうちに迷ってしまったりなど、「Dungeon Siege」は実にリアルなファンタジー体験ができるゲームだ。
■ 一介の農民が300年前の復讐を成就させる魅惑的なストーリーライン
ところで、イメージデザインとしてパッケージにも使われている地獄の業火の中で剣を片手に不敵な笑みを浮かべる金髪美女のイラスト。彼女は何者なのかというと、これが実はヒーロー(この場合、正確にはヒロインだが)だ。オープニングを見るとわかるが、かつて「ゴシック」には偉大な繁栄を築いた大帝国が存在し、戦いにより敗亡する。その残党「第10部隊」が築いた国家がエッブ王国だという。
ヒーローは、この物語の中で滅びた大帝国の復讐を果たすことになるという。イラストはそれを成就した瞬間の笑みということなのか、ともかくもいかにも米国らしいスパイスの利いたバックグラウンドストーリーだ。ちなみにこれはシングルプレイ用のストーリーで、マルチプレイ用にはまた別のストーリーが用意されている。
さて、以下、インターフェイスについて簡単に触れておきたい。基本操作は、マウスのみ。左クリックでその地点まで移動、右クリックでその位置に攻撃を行なう。左右の側面にポインタを合わせると回転、上下側面だと視界深度の変更になる。武器や隊列、AIの変更など、雑多な操作はすべてショートカットで実行できる。もちろん、キーカスタマイズも自由自在だ。 アイテムの扱いは「Diablo」シリーズとほぼ同じで、壊れかけのものから、マジックアイテム、レアアイテムまで、種類/グレードとも豊富に用意されている。敵が出したアイテムは左クリックで拾うことができ、バックパックの空きスロットぶんだけストックできる。装備したい場合は、ドラッグ&ドロップで3D化されたペーパードール中の空きスロットに放り込むだけでいい。よくこなれたシステムだ。 キャラクタの能力は、強靱性、俊敏性、知性の3種類、これに近接戦闘(剣、斧など)、遠隔戦闘(弓、クロスボウなど)、自然魔法(補助/回復系)、戦闘魔法(攻撃系)の4つのスキルパラメータがある。これで全パラメータだ。キャラクタレベルの概念もなく、使った回数によって能力レベル、スキルレベルが1つずつ上がっていくシステムになっている。能力の向上にともない、自動的にHPとMPの最大値も上がっていき、スキルの割り振りに悩むこともない。個性的な性能を備えたキャラクタを作りたい人にはちょっと寂しい仕様だ。
育て方はとにかくどれかひとつないしふたつのスキルを集中的に使うこと。とかくヒーローはスーパーキャラに育てたいと願いがちだが、本作では最大8人によるパーティプレイが可能なので、そつないキャラより、一芸に秀でたキャラの方が遙かに役に立つ。特にシングルプレイではヒーローも8人のうちのひとりに過ぎないので、よく考えて戦っていくといいだろう。
■ 群がり来る敵の大軍は地形を利用して料理せよ
また敵は種族によって行動AIが異なり、一度見つけたらどこまでも追ってくるものや一定の距離を置くと定位置に戻るもの、パーティーがある位置に侵入すると、突然壁の穴やツタを渡って出現するものなどがいる。「Diablo II」とは異なり、ポーション使用にも1アクション取られるので、「やばい」と思ったらもう手遅れの場合が多い。このあたりのデンジャラス具合が、アドベンチャー魂を存分に満足させてくれるのだ。 キャラクターはHPが0になると行動不能になる。本作は行動不能にも気絶と死亡の2段階があり、雑魚モンスターに殴られてHPがゼロになると気絶状態になる。気絶の場合は、一定期間をおいてHP1の状態で復活する。回復魔法で無理矢理復活させることも可能だが、乱戦状態の場合は再び狙われる場合が多いので、戦闘が終わるまで放っておくのもひとつの手だ。 そしてHPが低い状態でボス敵を始めとした強力モンスターの一撃を浴びると死亡となる。死亡するとキャラクタが所持していた全アイテムが床に散らばり、蘇生魔法「リザレクション」をかけない限り生き返らなくなる。このリザレクションは自然魔法レベル4から使えるようになるため、敵が強くなってきたと感じたら、街に引き返して自然魔法を得意としている魔法使いを雇うことをお勧めしておきたい。
ちなみに何度か同じクエストをプレイしてみたが、敵が出すアイテムはまったくランダムだった。強力なマジックアイテムひとつで、あとの展開はラクになったり、ツラくなったりするのは他のアクションRPGと変わらないので、クエスト目標地点の手前でセーブしておいて望みのアイテムが出るまで何度か試すのも手だ。序盤~中盤で有用なのは速射が可能な小型の弓だろうか。
■ 充実のマルチプレイモード Zoneを利用して仲間と毎晩潜ろう
ゲームマップは、シングルプレイ用のキャンペーンを8人でプレイする「エッブ王国」と、マルチプレイ専用に作られた「ウトラエアン半島」の2種類が用意されている。エッブ王国では、シングルプレイ同様のクエストを複数のプレーヤーと共同で楽しむことができ、ウトラエアン半島では、世界の各地に隠されている8個の古代ウトラエのタウンストーンを探し求めるという、大きなクエストに挑戦できる。 キャラクタは、シングルプレイで鍛えたキャラをそのままインポートできるほか、マルチプレイ専用の新規キャラクタも作成できる。新規キャラクタは人間のほか、ドワーフ、スケルトンといったモンスターも作成できるので、個性派は試してみるといいだろう(ただし、街の人の扱いは人間と同じ)。 ところで、本作のマルチプレイはデータをローカルに保存するシステムを採用している。オプション設定によって、通常のパーティープレイのほか、チームバトルやデスマッチといった対人戦を行なうことも可能だが、システム上チートは避けられないため見知らぬ人とむやみやたらに対人戦を行なうのは危険だ。また、オプションで自キャラ死亡時に放り出すアイテムの設定も行なえるようになっているので、ゲームに参加する前によく確認しておこう。 なお、ウトラエアン半島では、これまで何度か記事で紹介してきたように、一瞬で街から街へワープできるハブシステムが利用できる。ただし、レベルが低いと利用できるハブが限られてしまうため、まずは一度シングルプレイをクリアしておくといいだろう。ちなみに本作にもワールドレベルが設定されており、最初は「レギュラー」で、一度クリアすると「ベテラン」(レベル54以上)、「エリート」(レベル83以上)と順番にプレイしていくことができる。シングルプレイをクリアしてもまだまだ先は長い。 最後になるが、「Dungeon Siege」は発売後にSiege Editorの無償公開を予定している。Siege Editorは要はマップエディターだが、「Dungeon Siege」に収録されているマップそのものにも修正が加えられる強力なツールだ。米Microsoftのゲーム部門Microsoft Game Studiosは、将来のPCゲーム像の一端として、「ユーザーがクリエイティビティを存分に発揮できるような環境作りをしていきたい」という旨の発言を行なったが、Siege Editorはまさにそういうツールといえる。 残念なのは英語版のみで、サポート対象外というところ。おそらくアクションRPGファンは、9,800円という価格設定に不満を感じた人も多いだろうが、これに関してはテキストの日本語化、音声の吹き替え、そして英語版から1カ月足らずでのスピード発売といった英語版から加味された要素を考えれば十分に安い。これで高いと言われればマイクロソフトは立つ瀬がないだろう。 それより個人的に不満に思うのは、Siege Editorを英語版のみとした最後のツメの甘さだ。ヘルプを含むテキスト全文というのはさすがに無理としても、メニュー周りだけでも日本語化して、日本のユーザーに対して間口を広げることはできたはず。マップを読み込み、ワイヤーフレームが表示されたフル3Dマップをぐりぐり動かすだけで、クリエイティビティを刺激されるユーザーも多いのではないかと思うのだがどうだろうか。
そういったことはともかくとして、ゲーム内容そのものは実に素晴らしい。アクションRPGファンならずともぜひ試してほしい1本だ。
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□マイクロソフトのホームページ (2002年3月29日)
[Reported by 中村聖司] |
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