★ DCゲームレビュー ★

次に繋がる新しい展開を感じさせるDCシリーズ完結編
「サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~」

【ゲームの内容】
 セガサターンから始まった「サクラ大戦」シリーズ最新作。前作「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」の発売からちょうど1年で早くも新作の登場となった。「全てのサクラファン、ドリームキャストファンに最大級の感謝を込めて捧げられるDCシリーズ完結編」ということで、帝都花組、巴里花組のオールキャストが総登場する。



帝都花組の次の演目は「あぁ、無情」だ
 セガサターン、ドリームキャストと続いた「サクラ大戦」シリーズ。今作でドリームキャストでのリリースは最後となる。次作はプレイステーション 2での展開が発表されている「サクラ大戦」。しかし、今作は「グランドフィナーレ」ということで、帝都、巴里両花組メンバー計13名が総出演することで、それぞれの枠組を越えた人と人とのつながりが描かれているあたり、ファンとしてはうれしいところだろう。だが、真の主役はやはり「大神一郎」。3作に及ぶ帝都、巴里を襲う悪から街を守り、無事帝都に返り咲いた彼が率いる「大神華撃団」。13人を相手に、大神一郎はどう立ち回るのか、そこにプレーヤーがどう絡んでいくのか、注目される作品だ。

帝都、巴里の花組が全員集合! この類いまれなる共演も、もう見ることはできない……?
やはり他の追随を許さない見事なオープニング。大神ヴァージョンの“ゲキテイ”もサマになっている?


 「3」をベースにリファインされたゲームシステム

 基本的に[4」は、前作「3」のシステムをベースに一層の充実が図られている。シリーズのシステムを知らない人は、前作のレビューや公式HPをチェックすることをオススメする。

 アドベンチャーパートは、「アナログLIPS(Live & Interactive Picture System)」も継承し、微妙な感情の伝達ができるし、DCのビジュアルメモリを使った「携帯キネマトロン」機能も健在。キャラクタの移動中に起こるイベントにのるかそるかを一定時間内で決める、「イベントキャッチ」も導入されている。前作をプレイした人なら違和感を感じることはないだろう。

基本的システムは「3」を継承。帝都花組のメンバーとの組み合わせはまた違った雰囲気が味わえる

 今作では13人ものメンバーが登場するだけあって、アドベンチャーパートの分岐にはかなり気を配って作られている。分岐することにより、プレーヤーが選択するパートによって、同じシチュエーションが別のキャラクタによって展開する、といった風味になっている。つまり、何度もプレイしてもらうことを前提とした造りになっているわけだ。キャラクタを掴んでいないシリーズ未経験者には細かいニュアンスでわからないことがあるかもしれない。が、そこはシリーズものの強み、シナリオや脚本によるキャラクタ描写がうまく作用して、予備知識がなくともプレイしている間に「サクラ大戦」の世界を理解することはできるはずだ。筆者はちなみに「1」、「2」はプレイしたが「3」は見るだけだったぐらいのヌルさではあるが、巴里花組の個性的な魅力は伝わってきたと感じた。

 逆に、DC版のシリーズをプレイしてきたユーザーには、「サクラ大戦」シリーズのセーブデータを「4」のデータに結合することによって、過去のシーンを垣間見れるというお楽しみが用意されている。「4」をプレイした後でシリーズのデータを作成した場合でも、データの結合は可能である点はうれしい配慮だ。

DC版のシリーズデータと「4」のデータを結合できる

光武F2のデータを取り入れた新型の光武二式
 また、戦闘システムも、前作にあった「ARMS(Active & Realtime Machine System)」を継承。敵の攻撃をノーダメージで回避できる「友情カウンター」などに加え、「2」から採用された味方同士の協力で大ダメージを与えられる「協力攻撃」も導入されている。帝都花組の光武二式には、巴里花組の光武F2にあった個体拡張機能が引き継がれており、「2」の時とは一味違う彼女たちの活躍が楽しめる。

 戦闘パートは、基本的に難易度は高くない。クリアするだけならメンバー選びを慎重に行なえば、サクッと進めるはずだ。前作にあった「隊長コマンド」、「かばう」などは基本的に変わっていない。

 今作でもっとも盛り上がるであろう「大神華撃団」の出撃は、全員が出撃することには変わりはないが、大神麾下として参加させられるメンバーは限られている。逆にいうと、圧倒的回復能力を持つ「エリカ」、「アイリス」をメンバーからはずすことで、戦闘に多少の手応えを感じられるはず。自分で難易度の調節をしているようなもので、今までのシリーズでの戦闘パートに物足りなさを感じている人はぜひ挑戦してもらいたい。とはいっても、作戦をきちんと回復できる「風」、「林」、「山」に変更することで、隊員たちは自己回復できるようになっているので、劇的に難しくはならない。自分のお気に入りのキャラクタを大神隊に入れるもよし、数回の戦闘中、わざと入れずにその後のゲーム展開をアドベンチャーパートで挽回してみるもよし、といったところだろうか。ただ、信頼度を大幅にアップさせたいなら、戦闘中が一番、とだけは言っておこう。

「ARMS」による戦闘システムも「3」を基本的に継承したものになっている

ミニゲームもあり。役がたくさんあるのがおもしろい


 「お約束」の嵐がこのゲームのキモ?

 さて、実際にプレイしてみて感じたのは、全編が「お約束」の嵐であること。筆者が最もピンと来る感覚でいうと、「特撮シリーズものの(別にアニメでもいいですが)歴代のヒーロー(この場合はヒロインだが)が一同に会する回をTVでワクワクしながら見ていたときの感覚」と非常に近い。それぞれの持ち味を活かす脚本、演出(ここが「お約束」)があり、敵と闘っている間にピンチあり、ほろっとする話あり、そして今までにあり得なかったコラボレーションがあり、というファンなら安心するであろう展開が怒濤のように展開する。

 怒濤のように、と書いたのは、1つの話は結構短いため、展開が結構急だったりするあたりを指しているが、これ位勢いがないと、ズバーッと最後まではこれだけのメンツで繰り広げられるドラマを見届けるなんていうのはなかなか難しい。「どんなことが起こるんだ?」という期待は、決して悪いようには裏切られていない。「このタイプのゲームでユーザーが何を求めているか?」ということを十分わかっていて、「このキャラクタはこんなことはしない、言わない」といった禁じ手をちゃんと理解しているスタッフだからこそできる展開は、シリーズものを制作するにあたってあたりまえのことなのだろうが、見事といえるものになっている。

 それぞれのお気に入りキャラを目立たせたいなら、プレーヤーが自分で戦闘を盛り上げてあげられれば十分だし、アドベンチャーパートでも最優先で意中の人に声をかけてあげればいい。誰にでも、このプレイ感覚を味わえる調整になっているあたりが、シリーズを重ねてきたノウハウだろう。それから、筆者のように恋愛アドベンチャーに興味のあまりない人間にも、「正義を守る」といったわかりやすいテーマ、そして男性陣のキャラクタの掘り下げが行なわれている本作は、プレイしていて不快感を感じさせることはなかった。

やはり、プレーヤーとして最も盛り上がるのは、「大神華撃団」のメンバー選出だろう


 DCラストを飾るには手堅い良作

 ただ、不満な点がないわけではない。一期一会としてゲームに触れる人には、何度もプレイする感覚に引き込む仕掛けに関しては多少物寂しいとも思えるし、今作では、リアルタイムムービーも併用されているが、「3」から引き続く3Dと2Dの見事な融合を見せたレンダリングムービーはもうちょっと見てみたいし、というある意味贅沢な欲求は、力の入りまくった「3」を見た後の「4」だけに、より顕著に感じてしまうポイントではある。

 ある意味、「4」は、対象とされるユーザー層に対してストーリーとゲームのバランスが非常に取れているゲームだと感じさせるだけに、「もうちょっと」と感じてしまうのは致し方のないところ。だが、次作(があるとすれば)以降、13人の共演はもうありえない(?)のだから、それまで「4」をしゃぶりつくせ、というのが正解の楽しみ方といえるだろう。

個人的に気に入ったのがこの2人(笑)。落ち着いた雰囲気はなんともいえない。後は薔薇組もね(笑)



(C)OVERWORKS/SEGA,2002
(C)RED 2002
イラスト:藤島康介

□セガのホームページ
http://www.sega.jp/
□オーバーワークスのホームページ
http://www.o-works.co.jp/
□サクラ大戦.comのページ
http://sakura-taisen.com/
□製品紹介のページ
http://www.o-works.co.jp/sakura4/
□関連情報
【3月8日】ドリームキャスト最後の「サクラ大戦」を盛り上げる
「サクラ大戦4」コマーシャルムービーをMPEGで公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020308/sega.htm

(2002年3月20日)

[Reported by 佐伯憲司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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