★ PCゲームファーストインプレッション★
「機動戦士ガンダム」は初放映から20年経った今も人気が衰えることのない、もはや伝説的な存在となっているロボットテレビアニメだ。いわゆる「ガンダムもの」のゲームは数多く存在するが、4月発売予定のガンダム・ネットワーク・オペレーションズ(以下GNO)は、初の試みとなる本格的なネットワークゲームとなる。現在βテストユーザーによる最終的なテストプレイが行なわれており、ゲームの本質的な部分が明らかになってきたので、その模様をお伝えしよう。 ■ ガンダム・ネットワーク・オペレーションズの世界へ
GNOは、この1年戦争に地球連邦軍かジオン公国軍かのどちらかの一般兵となって参戦し、最終的に自軍を勝利に導くことを最終目的としたネットワークゲームだ。 プレーヤーはゲームセットアップ後、初めてログインしたときに、まず、どのサーバーに接続するかの選択を迫られる。βテストが行なわれている現段階では、選択できるサーバーは1つしかないが、本格運営が開始されて、ユーザーが増加したときには、複数のサーバーが稼働する予定だ。 なお、サーバーは1つの独立した宇宙、SF用語的にいえばパラレルワールドというイメージとなる。それぞれのサーバーごとに、別々の1年戦争が行なわれており、例えばサーバー1の宇宙では連邦軍が優勢、サーバー2ではジオン側が優勢といった場合もあるわけだ。1アカウントで、複数のサーバーの1年戦争に参戦できるかどうかは今のところ不明だ。 サーバーを選択後、プレーヤーは重大な決断を迫られる。そう、「地球連邦軍側につくか、ジオン公国軍側につくか」という問題だ。これは、一度選択すると敵対勢力に寝返ることはできないので慎重に行なわなければならない。ただ、GNOの1年戦争はゲーム内時間の1年で終結するので(実時間で3カ月程度と告知されている)、一度終結した後は再び別勢力で初期状態からプレイすることも可能だ。
GNOでは、プレーヤーはモビルスーツのパイロットではなく、部隊指揮官を兼ねる艦長となる。所属軍勢を選択後は、この艦長の名前の入力を行なう。自分の部隊の所属パイロットは最初4名で、それぞれの名前は自動的に付けられるが、自分で変更することも可能となっている。 ■ GNOの基本ゲームシステム キャラクター・メイキングが完了すると、いきなりゲームが開始する。とはいっても自分の部隊の初期位置は、それぞれの軍勢の本拠地なので、突然戦闘が始まることはない。ゲーム開始直後のプレーヤーは、全くの新米で、パイロットも未熟だ。ガンダム世界での主力兵器である人型機動兵器「モビルスーツ」も、ごく基礎的な装備のものしか与えてもらえない。たくさんの戦闘をこなして、経験値を稼いでレベルアップし、稼いだ補給ポイント(詳しくは後述)を使って新しいパイロットや新型モビルスーツを獲得することが、当面の目的となる。 なお、それぞれのプレーヤーがゲームを開始したときには、既に戦争が勃発してから時間が経過している場合もあるため、各プレーヤーの初期レベルは、そのゲーム世界の実情に即した適当なものが与えられるようだ。筆者がテストに参加したときには初期レベルで11が与えられていた。それより1週間前にゲームを開始した新規プレーヤーは初期レベル9で、筆者よりも数日後にプレイを開始した新規プレーヤーがレベル12だったということなので、遅く始めれば始めるほど初期レベルは高くなるようだ。その代わり、その先プレイできる時間(戦争終結までの時間)は短くなることを覚悟する必要がある。 さて、最初に出てくるマップ画面は、自分の現在位置を示しているのと同時に、各地の戦況を表している。各地点に連邦、もしくはジオンのアイコンが付いていて、どの地点がどの軍勢の勢力下にあるかを示しているのだ。よく見るとマップ上でアイコンが点滅している箇所が何点かあることに気づくだろう。これは、その地点がどちらの勢力下にもなっていない、すなわち、最前線地点であることを意味している。 地図上の各地点アイコンをクリックすると、その地点の拡大地図が表示される。これを見ると各地点は、さらに6個の戦域に区分されていることがわかる。各戦域にはゲージが示されており、赤と青で色分けされている。赤がジオン、青が連邦を意味しており、各ゲージの各色の度合いでその戦域における両軍の優劣を表している。
戦闘は、この戦域単位で行なわれ、その勝敗の結果により、この優劣ゲージが動くことになる。そして6個全てのゲージが一色になると、それはすなわち、その戦域がどちらかの軍勢によって制圧されたことになるという仕組みだ。最終的に、敵の本拠地を制圧すれば、戦争が決着するわけだが、なかなかそう簡単にはいかないのである。
■ 任務を遂行するか、ゲリラ戦をこなすか
そしてもうひとつは、任務を取得して、自ら戦地へ赴いて戦闘を行なうタイプのものだ。 「任務を取得する」というと感覚的には「本部から指令が来る」というイメージがあるが、GNOでは、実質的には「どんな設定の戦闘がプレイしたいか」ということをプレーヤーがあらかじめ設定し、サーバー側にその条件の合う戦闘イベントを発生してもらう…という感じのシステムになっている。 ネットワークゲームの対戦というと、実力差があり過ぎた場合には理不尽に一方的に負けてしまうことが多いわけだが、このシステムの導入により、初心者は「自分が楽しめそうな」難易度の戦闘を優先的に体験できるというわけだ。とはいっても、野良戦はランダムに勃発し、非常に強力な敵と遭遇することもあるため、難易度の低い戦闘ばかりをこなして勝ち続けられるわけでもない。 なお、任務メニューで、設定できる戦闘条件は以下の通り。
・難易度(5段階の難易度条件) さて、このGNO、ネットワークゲームであるにもかかわらず、意外なことに、その戦闘の相手はほとんどの場合コンピュータプレーヤー(CPU)なのだ。任務地として双方の軍勢が同じ地域に集結し、さらにプレーヤー同士のレベル格差等の条件が一定の条件を満たした場合には、敵プレーヤーとの戦闘イベントが起こる場合もあるがその確率は高くない。
現在、βテストで参加プレーヤーがそれほど多くないという事も関係しているのかも知れないが、この辺りはネットワークゲームらしさをより効果的に演出するためにも、改善の余地があるだろう。
■ GNOの戦闘システムは一長一短
GNOの戦闘システムは、このように一見するとターン制ストラテジーゲームの様相を呈しているが、実際にはずいぶん異なっている。戦闘が開始されると、基本的にプレーヤーは黙ってその成り行きを見ているしかないのである。「どのユニットを」「どこに移動させて」「どんな攻撃を仕掛けるか」といったことはプレーヤーは戦闘中には指示が出来ず、自動的に進行していくのだ。 完全なターン制のストラテジーゲームにしなかったのは、いくつか理由が考えられる。 たとえば、自分が不利になったときに、対戦をやめて回線を切断してしまう不正プレーヤーに対する対策だ。GNOが採用しているシステムだと、対戦開始時に各ユニットの行動パラメータさえあれば、実際の戦闘処理はサーバー側だけで処理でき、たとえ戦闘開始直後にプレーヤーの回線がダウンしたとしても、残るプレーヤーにその処理結果を送信するだけで済む。極端なことをいえば、戦闘開始直後に全プレーヤーが回線を切断しても、戦闘処理がサーバー側で処理できるので、その戦果をサーバー側で管理しているグローバルな戦況に反映することができるわけである こうしたシステムであるため、あらかじめ、各ユニットには「編成」メニューにて、戦闘時の基本陣形、基本的な行動パターンを設定しておかなければならない。ひとたび戦闘が開始されると各ユニットはこの設定に従って行動をするのだ。同レベルのプレーヤー同士の戦闘における有利不利はこの設定如何にかかっているといっていい。なお、繰り返しいうが、こうした設定は一端戦闘が始まってしまうと変更できないので注意が必要だ。 設定可能な行動パターン条件は以下の通り。
・戦闘指示(攻撃重視、防御重視等、基本的な行動パターン設定) 実際に戦闘を見ていると「なぜそっちへ移動するかな」、「なぜそっちを攻撃するかな」のような行動が目立ち、やきもきする局面が多い。いくら「あらかじめユニットの行動パターンを設定しておける」とはいえ、対峙する敵がどういう行動をとる傾向にあるのかという情報がプレーヤーには与えられないため、対峙する敵に対応した行動パターンを考案することは事実上できない。 戦闘は最大で3部隊同士の対戦で行なうことができるが、このような戦闘システムであるため、役割分担を決めての連携プレイや、戦況に応じて作戦変更を行なったりといったことができないのである。ストラテジーゲームの様相を呈してはいるが、GNOの戦闘時の戦略ゲーム性は低いといわざるをえない。かなりランダム性に頼った、いわば「じゃんけん」的な展開要素が強いゲームデザインになっていると言える。
キャラクタを高レベルにまで成長させている、もしくは強力なモビルスーツを獲得していれば幾分、戦闘は有利に行なえるが、そうした要素を獲得するためには、より多くの時間をかけてプレイする必要があるわけで、良い意味でも悪い意味でも各プレーヤー自身が持つプレイ技能はゲーム展開に反映されにくくなっているのだ。
■ チャットで育むコミュニケーション
戦闘に勝ったとしても、機体の損傷が大きければ、やはりしばらくの間お休みとなる。その時間、実時間にして長いときで5分間くらい。この間に、プレーヤーは、各ユニットの行動パターンの再設定を行ったり、あるいはGNO内コミュニケーション・サービスを利用して時間を潰せばいい。 GNOには「投票システム」というユニークなものがあり、ゲームシステム側が提示するグローバルな作戦方針に対して「賛成」「反対」の投票が行なえる。たとえば、「数少ない強力な新型モビルスーツを開発すべきか(一部のプレーヤーだけが取得できる)」「それとも多少性能が落ちるが量産タイプとして開発すべきか(多くのプレーヤーが取得できる)」といった今後の方針に対して投票することができるのだ。これはオンラインゲームならではのユニークな試みだと言える。 そして、任務クリア時に、ある特定の条件を満たすと、新型モビルスーツを獲得できたりする。丁度、このあたりはオンラインRPGにおけるレアアイテム獲得に似た悦びがあり、これをゲーム内通貨で高く売ったりすることができる。 また、ゲーム中に知り合った特定のプレーヤーを「フレンド(お友達)登録」することで、ゲーム内メール機能でメールのやりとりをすることもできる。気に入った仲間で「チーム」を結成することもでき、そのチームに所属しているメンバー限定の任務等を作成することもできるようになっている。 獲得レアモビルスーツの交換/販売の告知、チームへの参加の呼びかけ、特定の戦域での任務への参加要請などには、当然、チャットを利用することになる。2月22日に開催されたGNO発表記者会見で、本作の監修を務めたバンダイ・ビデオゲーム事業部牛村範彦氏は「GNOはチャットを楽しむゲームである」、「コミュニケーションを育むオンラインゲーム」という事を強調していたが、こうしたシステムはまさにそのコンセプトを象徴したものだといえよう。 しかし、せっかくゲーム開始時にプレーヤーの顔を選択しているのにもかかわらず、チャット時は、 <プレーヤー名> メッセージ という文字だけの味気ない画面で、しかもそのメッセージ領域が非常に狭いのが残念だ。せめて、最初に選択した顔画像を使ったコミックチャット的なものにして欲しかったと思う。また「どの地点に」「何人くらいの」「どんなプレーヤーがいるのか」といった情報が、現在のシステムでは掴みにくく、βテスト中も大勢のプレーヤーがいる地域でもあまり会話が弾んでいなかった。
「ガンダムファンがこぞって集合するサイバースペース」という、ガンダム史上、非常に貴重な時空間をユーザーに提供しているのにもかかわらず、参加者(各プレーヤー)はその状況をうまく利用できず、GNOシステム側はそのコミュニケーションを支援する手段が見極められていない印象がある。 ■ 本当の「オンラインゲーム」となることを目指して
ただ永遠に混沌とした戦いの時間が過ぎていくのではなく、ゲーム内時間で1年が過ぎると勝負の決着が付くというアイディアもプレイアビリティを掻きたててくれる要素だと言える。 そしてなにより、ゲーム中に登場する戦闘ユニット達が全てガンダム世界に登場してきたモビルスーツ達というのがファン魂をメラメラと燃え上がらせてくれる。ただし、GNOというゲームを「ガンダム」という要素を取り除き、「オンライン」の「ゲーム」として評価すると、その賛否は分かれるだろう。 まず、「オンライン」の要素についてだが、「敵側プレーヤーの姿がほとんど登場しない」というのが、「オンラインでプレイしている」という感覚を包み隠す格好になってしまっている。戦局は確かに両軍勢の行動により動いているのだが、戦闘時の敵が、ほとんどの場合、コンピュータ側(CPU)になってしまうため、オンラインゲームの醍醐味である「敵の生身さ」「ライブ感」が感じられないのだ。 また、「敵軍勢側プレーヤーには基本的にメッセージが送れない」というチャットシステムも「敵の生身さ」が感じられない原因の一端になっていると思う。戦闘前の生の挑発メッセージや、決着後のあざけりなどが送ることが出来れば、かなり「ライブ感」も演出できたのではないだろうか。 「ゲーム」という要素においては、「各拠点をみんなで奪い合う」という楽しさはあるが、もっとも各プレーヤーが時間を費やすことになる戦闘モードにおいて「ランダム性がやや強すぎる」という点と、「長時間プレイしてきたプレーヤーが有利」というオンラインゲームが持つ根本的な問題を抱え込んでしまっている点が気になる。 本来ストラテジーゲームというのは、決着が付いたときに双方のプレーヤーに「こう戦ったから負けた」、「こう戦えば勝てた」というような「勝ち筋」、「負け筋」が見えてくるものなのだが、GNOの戦闘モードではこれが非常に感じ取りにくい。逆に、プレイ後にそうした反省点を呼び起こさせることができなければ、各プレーヤーに「挑戦し甲斐い」を見出させることができないだろう。 発売は、4月となる模様で、あと1ヶ月の間に、以上のような問題が改善されることを期待したい。
(C)創通エージェンシー・サンライズ (C)BANDAI 2002
□バンダイのホームページ (2002年3月12日)
[Reported by トライゼット 西川善司] |
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