★ PCゲームレビュー ★

歯ごたえのある本格派AD&Dの決定版
「Baldur's Gate」いよいよ完結

Baldur's Gate II完結編
Throne of Bhaal 完全日本語版

  • ジャンル:ネットワーク対応RPG
  • 発売元:セガ
  • 価格:5,800円(別途本編が必要)
  • 対応OS:Windows 95/98/Me
  • 発売日:11月29日(発売中)


 AD&D(Advanced Dungeons & Dragons)の世界観を忠実に再現したハイファンタジーRPGとしてアメリカでデビューを果たした「Baldur's Gate(以下BG1)」。物語の始まりは小さな城砦キャンドル・キープで孤児として育てられた主人公が、自分の出生の秘密を抱えながら旅に出ることだった。そして巨大都市バルダーズゲートを舞台にした大陰謀劇を主人公達が阻止することから、長大なストーリーが大きく動き始める。そしてBG1の拡張キット「Tales of The Sword Coast」で、バルダーズゲートの創始者バルダランの秘密やデューラッグの塔の冒険を経て「Baldur's Gate II Shadows of Amn(以下BG2)」へとつながる。BG2での前作で一端が明らかになった主人公の秘密をめぐる冒険の旅は、アンダーダークやドラゴンなど想像もつかないものとなり、その果てには……。
 この「BG2 完結編 Throne of Bhaal(以下完結編)」で物語はとうとう終幕を迎える。貧弱な装備で、魔法の武器を何一つ持たずに出発した主人公は、シリーズ3作の冒険を経て立派に成長。今作でついに最終の敵に挑むことになるのだ。


■ 追加された充実のエクスパンション内容

あいかわらずの精緻なグラフィックの描きこみは、舞台の緊張感を否が応にも盛り上げてくれる
 「Baldur's Gate」シリーズは、BG1から連なるメインシナリオのクリアがゲームの目標となっている。その一方で、メインクエストとは関係のない無数のサブクエストが用意されており、これを請け負うかどうかはプレーヤーの自由となっている。サブクエストをクリアすることで、大量の経験値やレアアイテムなどを獲得でき、こういった具体的な報酬への期待と、ゲーム世界に暮らす様々な人々(NPC)との交流がBGシリーズの醍醐味といえる。

 クエストで交わされる会話には、たいてい「Good」「Neutral」「Evil」のアラインメントにそった返答の選択肢が用意されている。「Evil」の主人公を作ったプレーヤーは、たとえクエストの中で困っている人がいても、あえて助けない選択をすることもできるし、最悪殺して身ぐるみ剥いでしまうことさえ可能だ(むろん悪い行ないにはそれなりペナルティーがある)。この悪をも許す包容力のあるシステムが、自分が作り出したキャラクタへの思い入れの源であり、今シリーズの楽しさの最たるものなのだ。

 戦闘は基本的にリアルタイム。が、BGシリーズのそれは、疑似リアルタイムというべきシステムで、好きな時にポーズしてキャラクタごとの行動を決めることができる。プレーヤーはポーズしている間に、ファイターはおとりで敵に突っ込ませ、その隙にクレリックが防御魔法を唱えさせるなど、パーティー1人1人について行動を指示していく。ポーズ状態を解除すれば指示が実行される仕組みだ。プレーヤーの戦略如何で泥沼のような消耗戦にもなるし、パーティーに傷一つつかないスマートな戦いにもすることができる。100種類以上に及ぶ魔法なども組み合わせ、戦い方を自ら考える要素もたまらない魅力だ。

BG2で7章に突入する前に、本編で獲得した強力なアイテムをホールディングバッグにガンガン突っ込んでおこう


■ 追加された充実のエクスパンション内容

 さて、BG1からBG2そして完結編へと作を追うごとにシステム面でパワーアップを続けてきた「バルダーズ・ゲート」シリーズだが、当然BG2のエクスパンションという位置づけの完結編でもさまざまな拡張が行なわれている。以下、順を追って説明していこう。

 まず最初にキャラクタのインポートに関して。完結編ではBG2のセーブファイルならどれでも使用が可能だ。経験値2,500,000以下のキャラター(NPC含めて)はすべて、新規作成キャラと同じ(経験値2,500,000)状態になる。一見新規キャラのほうがいいように思われるが、「完結編」ではすべてのアイテムの持ち越しが可能となっているため、BG II本編をクリアしたユーザーにも旨味はある。

 特に体力回復速度の速い「リジェネレーション・リング」や、装備するとSTRが25になる「クロム・ファエル」、ヒットごとに15%の率で4レベルドレインを喰らわす「ブラックレイザー」などの超強力アイテムは、本編でもらさずゲットしてからのほうが完結編のプレイが圧倒的に楽になること間違いなしだ。その上、持ち越しアイテムの中には完結編で新たに強化できるものもあるので要チェックである。

 システム面では、経験値の上限が8,000,000まであがった。ファイター、クレリック、シーフは40レベル、メイジ、ドルイドは31レベルまであげられるようなり、これまで敬遠されがちだったマルチクラスのメイジなどもレベル9の魔法がとなえられるようになった。マルチでない普通のクラスにもボーナスがないわけではない。18~20高レベル以上(クラスによる)のキャラクタはそれぞれのクラス特有の技能が使えるようになった。例えばファイター技能の「ワールウィンド」は1ラウンドあたりの攻撃回数を10回に増やす。ウィザードではレベル10呪文として20D10というとんでもないダメージを引き起こす「ドラゴンブレス」、天使を召還する「サモン・プラネーター」などを高レベル技能として選択できるのだ。

 完結編から育てようという人のためにお勧めなのが、「ウィザード・スレイヤー」のマジックレジスタンス能力だ。レベル20ごと2レベルごとに+5%、奇数レベルでさらに+1%というから、敵の魔法が苛烈を極める「完結編」だけにこの存在は大きい。またファイター技能では物理ダメージのレジスタンスをする「ハーディネス」、シーフでは「タイムストップ」に似た能力を持つ「タイムトラップ」。バードは「エンハンスト・バードソング」を習得すれば仲間のダメージ+4、ACが-4、恐怖、気絶、混乱に対する耐性などを与えられるのだ。ドルイドではファイアーエレメンタルにシェイプチェンジする「ファイアーエレメンタル・トランスフォーメーション」が面白い。ファイアーダメージに無敵ということもあり、あちこちで活躍できるはずだ。

 そのほかマニュアルを読むだけで身震いせずにはいられない技能が用意されており、「完結編」に登場する超強力モンスターを相手にするには必須の技能ばかり。ちょっと詰まったときにもこの高レベル技能で活路を見出すことができるはずだ。

メイジ系レベル10呪文。画像効果的には地味なものが多いが威力は満点。特に「ファイアーブレス」はダメージと同時に敵を気絶させることもできる(中央の画面)

ドルイド、クレリック系のレベル10呪文。火の玉小僧となって走り回るドルイドの無敵加減が気持ちいい(右画面)

 一方、新しい職業としては「ワイルドメイジ」が用意された。強力だが予測不能なワイルドマジックの使い手だ。ワイルドメイジが呪文を唱えると、術者のレベルが5の範囲で上下し、さらに毎回5%の確立で呪文が暴発する。この暴発はワイルドサージと呼ばれ、100種類もの中から全くランダムな魔法効果が現れる。

 ワイルドメイジにはこのワイルドサージを操作して、自分の望みどおりの効果をあげる呪文が用意されている。時にはデーモンが召還されたり、敵を金縛りにしたりするが、なかには術者の性別が変更になったり、周囲にリスが現れたりと意味不明なものまで含まれる。非常にギャンブルな職業だが、「BG2」で遊べるクラスの中では群を抜いて面白いキャラだといえるだろう。

 ほかの小さな変更点としては「ミラーイメージ」の画面効果、「アガナザーズ・スコーチャー」のダメージ当たり判定の変更、イービルのクレリックによるパラディンのターンなどが加えられた。インターフェイス部分ではエリアマップ表示の時に自動的にかかるポーズをオフにすることができるようになり、探索済み地域でマップを俯瞰しながら行動ができるのがうれしい。

キャラクタの新規作成画面。新規キャラクタは、いくつかのヒーリング・ポーションとアミュレットと武装のみでスタートすることになる ワイルドサージが発生すると全く収拾のつかない状況にもなりかねないのだ 以前は直線状に伸びていた「ミラーイメージ」は、術者の周りを取り囲むようにイメージが表現される


■ 新たな冒険の地へいざ出発!!

「完結編」の冒険地域。画面右のあるウォッチャーズ・キープの位置からすると、どうやら今回の舞台はアスカトラの南にあたるようだ
 完結編にはBG2の全7章に続く8、9、10章のストーリーが収録されている。一旦この完結編を始めるとBG2の舞台であるアスカトラ方面には戻ることができないので注意したい。またあらたな探索ダンジョンとして「ウォッチャーズ・キープ」が用意されている。ウォッチャーズ・キープには完結編からはもとよりBG2をクリアしていなくても旅立てるようになっている。

 さて第8章は、7章終了後エルフの森を出発した主人公がソードコースト全域に広がる破壊と大虐殺の真っ只中に巻き込まれるところから始まる。その混沌には各地に散らばるBhaalの子同士の殺し合いが大きく関わっていたのだ。Bhaalの子らは、より強い者が弱い者を淘汰するために破壊を続けているのだという。そしてBhaalの子の血が流されるほどにロード・オブ・マーダーBhaalの復活は近づくのだ。主人公はスタートからいきなり自ら「バールの子」と名乗る刺客に狙われるが、神の使いソラーにいざなわれてアビスの層にたどり着く。

 そこは神によって課せられた試練場でもあると同時に、完結編を通じて主人公の基地でもある。過去の仲間も呼び寄せることができるので(経験値は昔のまま)、パーティー編成に不安を持つ人はここで調整するといい。BG2ではプレーヤーの方針(アラインメント)についていけない仲間は、パーティーから離脱してしまうだけに、仲間の選択が重要なのは「BG2」をプレイした人には承知済みだろう。

 NPCの仲間が冒険の最中にお互い仲良くなったり、主人公を巡って恋の鞘当てを演じたりと、ニヤリとさせられるシチュエーションに思わず「喧嘩すんなよなー」と口を突いて出ることも少なくない。こうしたNPCの配合が面白さの肝の一つなのだが、「完結編」でもそこのところが当然受け継がれている。肝心なところでいきなり決闘を始めて、2人とも離脱ということがないよう慎重になりたいところだ。

 そして驚いたことに、「完結編」では「BG1」で登場したあのサレヴォクを仲間にできてしまうのだ。ただ職業的には普通のファイターにすぎず、装備も貧弱なので、昔のようなスーパーマンぶりは期待できない。が「BG2」ではイービルのファイターが少ない。そのままいくも、ファイター/メイジのデュアルクラスにするもよしで、イービルパーティーは重宝するだろう。

開始直後にいきなり主人公を襲うのは疾風のイラセラと名乗るBhaalの子だ インプのサスペナーがアイテムの強化をしてくれる。一見役に立ちそうにないものも、強力な武器の部品だったりするので回収を忘れずに 「BG1」のボスだったサレヴォクは18/00,17,18,17,10,15という、プレーヤーが作ったようなステイタス

ウォッチャーズ・キープの導入シーン。新しいダンジョンの中は、いつ入っても期待感でゾクゾクものだ。シーフを探索に出して慎重に進もう
 パーティー一行がソラーにより最初に送り込まれるのはサラデューシュ。小さ目の城塞都市といった感じのこの街には、ある人物の呼びかけでBhaalの子が避難のために集められていた。が、Bhaalの子の1人であるファイヤージャイアントのヤガ=シュラが、この街に大規模な攻撃をしかけているのだ。

 敵の攻撃で画面は常に地震のように揺れており、守備兵と城外のジャイアントとの戦いがやむことなく行われている。街の人の話によるとヤガ=シュラは強力なリジェネレーション能力のため倒すことが不可能なのだという。プレーヤーの目的はまずサラデューシュの問題を解決して、ヤガ=シュラを倒す方法を見つけるために各地を旅することだ。サラデューシュでは、呪文所にいるラザルスのサブクエストをクリアすると、彼が呪文を売ってくれるようになるので、新キャラクタのメイジにも安心だ。

 なお、完結編中盤以降で入れるようになるウォッチャーズ・キープは、太古の邪悪な存在を封じ込めた牢獄。BG2で行けたことでもわかるように、敵の難易度もさほど高くなく、パズル要素の強いダンジョンとなっている。とはいっても、レベル7以上の呪文が一つでも覚えられないうちに深い階へ挑むのは難しい。完結編から登場した矢筒入れやポーションバックなど、冒険がスムーズに進められる新アイテムを浅い階で見つけることができるので、まずは冷やかし程度の心持ちで足を踏み入れてみるといいだろう。

 そして次々と迫る強力な力を持つBhaalの子達をめぐる冒険を通して、主人公は自分の身と父Bhaalとの関わりをどうするのか、最終的な結論を迫られることになる。出生の秘密は? ゴライオンとの関係は? 母親は? といった気になる数々の謎が一気に明らかにされていく。

サラデューシュは最初の行動地だが、下水道もありで歯ごたえ十分。街の中には時折カタパルトの弾が振ってくる。これは周囲15フィートくらいにいるとダメージをくらってしまい、直撃を食らうと気絶してしまう


■ シナリオは終末へと急速に加速していく

完結編でもドラゴンは登場する。AIがかなり賢くなり、マジックレジスタンスを下げた後に、ブレスのレンジ外から範囲攻撃魔法でお手軽勝利、という方法はまったく使えなくなっている
 ゲームの中心となる戦闘はBG2の後半以上に非常に厳しいものとなっている。高レベルウィザードはスペルプロテクションの重ねがけ、究極魔法「タイムストップ」などもマジックミサイル程度の頻度でかけてくるし、雑魚モンスターもその数が尋常ではなくなってくる。さらに敵の武器は+3修正のかかったものはざらで、さかんにポーションでHPを回復をする。前衛のキャラクタはまさにサンドバック状態。が、この苦しさに却って燃えてくるのだ。

 ハイレベルな戦いでは、召還したモンスターを囮にしていやな敵を引きつけ時間稼ぎをしたり、スペルプロテクションを丁寧にはがしていくことが重要だ。また敵に魔法がかからないからといって諦めてはいけない。面倒くさがらずにマジックレジスタンスやセービングスローを下げたりしてやれば、あっさりとクリアできる場面が多い。

 お勧めの範囲攻撃魔法は、味方に被害のないメイジレベル8の「アビ=ダルジムのホリッドウィルティング」がいいだろう。そして隙あらば「ドミネーション」や「コンフューズ」、「カオス」といった補助スペルで前衛ファイターたちの負担を減らしてあげるべきだ。ドルイドやバードも「ストーンスキン」を使えばある程度戦闘に参加できる。相手に応じて戦略を変えていこう。

 また、中ボスが相手だと、最初の戦略を誤ると訳もわからないうちに瞬殺されてしまうこともしばしば。そのためこちらもいろいろな戦術を考え出しておこう。「チェイン・コンティンジェンシー」で「タイムストップ」を蓄えておき、呪文が発動した瞬間に強烈な攻撃魔法を連発するなど、レベル9の呪文を絡めれば戦略の幅はグッと広がってくる。

 「バルダーズ・ゲート」シリーズはAD&Dを忠実に再現し、一定の時間軸にあわせた綿密な冒険と戦闘のシステムを持っているため、難易度的には非常に高いものとなっている。しかし、プレーヤー自らの経験でモンスターへの最善の対処法を作り出していく楽しさ、シナリオに対して主人公のできる選択の広さ、本当の苦難を乗り越えて近づく終末への寂寞感も含めて、国産のコンシューマものRPGにはない楽しさを提供しているといっても過言ではない。完結編は前3作を通して昇華され続けたシステムの集大成としてふさわしい出来映えとなっている。途中で挫折してしまった人も、この物語の結末を見定めるべくもう一度始めてみてはいかがだろうか。

雑魚の多さにうんざり。反面、範囲攻撃魔法でのモンスター一掃が気持ちいいことこの上なし!! ファイヤージャイアントの殴り攻撃は滅茶苦茶に痛い。数が多い場合は物理攻撃のレジスタンスをする魔法や技能が必須だ もう滅茶苦茶の対リッチ、バンシー戦。「サンレイ」を連発して、あとはクレリックのターンアンデッドに期待

熱い戦いが連続して味わえる完結編。あらゆる戦術を駆使する必要があるため、初心者にはまったく向かない作品だが、戦闘好きなら確実に楽しめる作品に仕上がっている

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□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「Baldur's GateⅡ完結編 Throne of Bhaal 完全日本語版」のホームページ
http://sega.jp/pc/bg2tob/
□関連情報
【7月6日】PCゲームレビュー「Baldur's Gate II:Shadows of Amn 完全日本語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010706/bg2.htm

(2001年12月17日)

[Reported by 嶋村智行]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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