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★ PCゲームレビュー ★
'96年に発売されたデビュー作「Baldur's Gate」の登場以来、いまやPCプラットフォームRPGの代名詞的な存在にまで成長したBio WareのAD&Dシリーズ。「Baldur's Gate II:Shadows of Amn」は、そのメインストリームにあたるシリーズ最新作である。7月6日にセガが長い月日を掛けて丁寧にローカライズした完全日本語版がついに発売されたので、さっそくその素晴らしい世界観をたっぷりご紹介しよう。 ■ 原典を忠実に再現したハイファンタジーワールドが最大の魅力
と、さらっと書いてしまうと、現行「BG II」を頂点としたAD&Dシリーズの凄さを見逃してしまう。仮にこれをテーブルトークRPGでやろうとすると、最低3冊のルールブック、Forgotten Realmsキャンペーンの内容が書かれたボックスセット、そしてBG IIのアドベンチャーブックが必要になる。そのほかにも、シナリオを読み上げるゲームマスターと気の利いたプレーヤーがパーティー人数分、そしてトータルで200時間程度のプレイ時間も必要だ。こういった社会人ならほとんどの人が絶望してしまうテーブルトークRPGの厳しい縛りをすべてデジタル化することで完全解消し、さらにネットワークプレイに対応させることで、仲間同士の距離的な制限まで取り払ったのがAD&Dシリーズなのである。
先述したように、BG IIはゲーム内のすべての要素がAD&Dに忠実に展開していく。「忠実に」ということがいかにとてつもないことなのかは、以下のキャラクター作成項目リストを見ればわかるだろう。
・性別 といった要素をひとつひとつ決めていく。このほか、たとえばウィザード系のキャラだったらさらに初期呪文を各レベルから決めていく必要があるし、シーフ系のキャラだったらオープンロック、ファインドトラップ、ピックポケット、ムーブサイレントリー、ハイドインシャドー、ディテクトイリュージョン、セットトラップから、好みのシーフスキルにポイントを割り当てていく必要がある。
悩み具合にもよるが、BG IIはキャラ1人を作成するのにだいたい30分とか掛かってしまう。が、そもそもAD&Dは、キャラ作成が大きな魅力のひとつなので、キャラ作成で悩むぶんにはいくら時間が掛かっても問題はなく、それは実に健全なゲームプレイといえる。AD&Dをまったく知らない人は、この時点で圧倒されたかもしれないが、250ページ相当の辞書のような日本語マニュアルが付属しているので、それをじわりじわり読みつつ、ゆっくりとゲームを進めていけばいいだろう。
■ シナリオもいよいよ重厚長大に 途方もなく広い世界に身を浸しきろう!
ここでインポート機能やクラスキット以外のBG IIの強化点を急ぎ足でまとめておくと、800×600ドット以上の高解像度をサポートし、経験値の上限は2,950,000となり、あらかじめ89,000の経験値を獲得した状態からスタートする。また、2刀流が可能になり、300を超える膨大な数のスペルが使えるなど、細々とした特徴は無数にあるが、もっとも大きいのはグラフィックの強化。グラフィックエンジンはInfinity Engineのままだが、フィールドやダンジョンの描き込みの緻密さが大いに増し、Open GLによる3Dエフェクトの採用により、戦闘シーンがより派手で美しくなっている。
ちなみに囚われの身の主人公の窮地を救ってくれるのは、前作で最初に仲間になる主人公の幼なじみのイモエン。前作では純粋なシーフだったが、今作ではシーフ/メイジのデュアルクラスとして登場し、シーフの能力が使える魔法使いとして無尽の活躍を見せてくれる。今回の物語の舞台は、前作の舞台ソードコーストから遙か南に位置するアムンと呼ばれる重商業地域。
アムンの支配者たちは、自らの富を守るために人々に対して魔法を使うことを禁じている。激しい戦闘を乗り越え、ようやく地上に出たパーティー一行は、いきなり新たな敵に出くわすのだが、そこでイモエンはそうとは知らず魔法を使ってしまう。BG IIでは、巧妙な策略により囚われの身となったイモエンを救うことが当面の目的になる。
■ どう物語を進めるかはプレーヤー次第、のんびりじっくり楽しもう
これらのサブクエストは無視して、まっしぐらにイモエンの行方を探し続けてもいいが、無事サブクエストをクリアすると、大量の経験値や強力なユニークアイテムなどが獲得できる。BG IIでは特にこのクエストクリアによる経験値が馬鹿にならない。地域によっては、それぞれ別のサブクエストが同時発生し、それぞれやけに込み入った内容だったりして、何がなんだかわからなくなってしまうこともしばしばだ。
BG IIではこういった情報のオーバーフローを防ぐために、「日記」というものが用意されている。日記には、受けたクエストの概要が記され、クエストが進むごとにその内容が自動的に更新されていく。完了したクエストは、別枠に入れられ、章別に分けられているので非常に閲覧しやすい。物語は、このクエストメモをたぐりつつ、未知の領域へ踏み込んでいくことで展開していく。といっても国産のRPGのように、パーティーのレベルに合った敵を用意してくれるわけではなく、敵の強さはまちまちなので、セーブはこまめにしておきたい。中にはドラゴンのように、ラストボスの2万倍ぐらい強い敵や通常武器による攻撃をいっさい受け付けない敵などもいるので、勝てないと思ったら素直に退却したほうがいい。そして簡単そうなクエストをこなして、レベルを上げ、強力なアイテムを獲得してから再度挑戦するわけである。
理由のたいていは3番目で、いい加減に全員でアタックしているだけなら勝てる敵にも永遠に勝てないが、ひとりは弓矢で敵の魔法詠唱を打ち消し、ひとりは召還魔法を詠唱し、ひとりは詠唱時間の長い攻撃魔法を唱え始め、戦士ふたりは壁になって敵の攻撃を防ぐ、という風に細かく設定していくと、あれほど苦労した敵がいとも簡単に倒せてしまったりする。この戦闘システムは、最初こそ戸惑うが、実に良くできており、戦闘に慣れてくると強力な敵に出会うのが非常に楽しみになる。
なお、ポインタを攻撃アイコンにして、対象をクリックすれば街の住人でさえも攻撃できるし、サブクエストを頼んで来る善玉のホワイトドラゴンも攻撃できる。アライメントにカオティックイービル(邪悪なモンスターの多くがこれである)が用意されていることからもわかるように、BG IIは完全悪人プレイも可能となっている。もちろん、悪人は悪人なりの厳しいペナルティがキッチリ用意されているわけだが、悪をも包含する圧倒的なポテンシャルこそがBG IIの醍醐味であり、緻密に構成された世界観にフリースタイルで身を浸しきることの心地よさは、言葉にしがたいものがある。国産のRPGしかプレイしたことがないという人は、この機会にぜひプレイしてみよう。真のRPGとはどういうものか、真のファンタジーとは何を指すのかが、ゲームから烈風のような激しさで感じられるはずである。
BALDUR'S GATE II: SHADOWS OF AMN:Developed and (c) 2000 BioWare Corp. All Rights Reserved. Baldur's Gate, Shadows of Amn, Forgotten Realms, the Forgotten Realms logo, Advanced Dungeons & Dragons, the AD&D logo, and the Wizards of the Coast logo are trademarks owned by Wizards of the Coast, Inc., a subsidiary of Hasbro, Inc. and are used by Interplay under license. All Rights Reserved. BioWare, the BioWare Infinity Engine and the BioWare logo are trademarks of BioWare Corp. All Rights Reserved. Black Isle Studios and the Black Isle Studios logo are trademarks of Interplay Entertainment Corp. All Rights Reserved. Exclusively licensed and distributed by Interplay Entertainment Corp. All other trademarks and copyrights are property of their respective owners.
□セガのホームページ http://www.sega.co.jp/ □「Baldur's Gate II:Shadows of Amn 完全日本語版」の公式ページ http://www.sega.co.jp/sega/pc/baldurs/html/bg2/bg2_set.html □関連情報 【5月24日】セガ、「Baldur's Gate 完全版」の価格改訂版を続編と同時発売 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010524/bgtsc.htm 【4月28日】セガ、「Baldur's Gate II:Shadows of Amn 完全日本語版」限定版の発売を決定 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010428/bg2.htm (2001年7月6日)
[Reported by 中村聖司] I |
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