WorldCyberGames「UnrealTournament」日本予選特別レポート
■ 「みんなの目の色が違う……」
大会の方式は、まず参加者26名を4ブロックに分けてDeathMatch(バトルロイヤル)形式のゲームを行い、各ゲームのフラグポイント上位4人が決勝トーナメントに進む。決勝トーナメントは、ダブルイルミネーション方式で行われたのは既報のとおりだ。 この、ダブルイルミネーションという方式は、オリンピックでも採用されているトーナメント形式で、トーナメントが勝者リーグと敗者リーグの2方向に分かれるのが特徴。通常のトーナメント形式の試合では、よく「Aブロックには強豪が集まって潰しあいになったな」という状況があるが、これでは選手の優劣をつけるのに技の優劣だけでなく、運の要素も絡んできてしまう。真に強者を決めるのなら、潰し合いになっても復活できるようにすべき。ということで取られた方式。1度負けた選手は敗者リーグに移り、試合を続行できるのだ。最終的には、無敗で勝者リーグを勝ち進んだ選手と、1敗のまま敗者リーグを勝ち進んできた選手が対戦して優勝者を決めることになる。
■ 波乱含みのトーナメント、そして……
予選の順位を元にした(予選A組1位は予選D組4位と対戦する。強い人がトーナメント上位に来れるように、という配慮だ。)決勝トーナメントが発表される。実力ある選手がほぼ均等に散らばった感じだが、やはり片方のブロックに有力プレイヤーが固まってしまった。周囲から「やたー、おれ楽ジャン!」とか「えぇぇ、ココの連戦キチィ……」などの声があがる中、トーナメントの各試合が続々とスタートし、勝者と敗者が非情に決まっていく。結局勝者リーグを制したのはBAZY-R、そして敗者リーグを制したのはCrize[KOS]だった。ここで両選手の傾向とプロフィールを上げておこう。
BAZY-R
Crize[KOS] 常日頃から1on1を繰り返して、互いの癖も動きの読み方も分かっているもの同士。BAZY-R曰く「一番あたりたくない相手」、Crize曰く「油断すると一気にたたみこまれる」と言い合うほど実力は拮抗している。どっちが勝つかなんて分かりはしない対戦だ。日ごろの対戦で両者の実力が嫌というほど分かっている他のUTプレイヤーたちが声を上げる中、決勝戦は始まった。
■ あっという間に決まった試合の流れ
互いに席につき、いざゲーム開始! だが、連続してCrize[KOS]がサーバから落ちてしまうというトラブルが発生。2度の再起動とサーバーマシンの変更を経てやっと決勝は始まった。 通常こういった1on1形式の試合では、ある程度パワーアップアイテムを集め、用意が整った時点でマップを巡回し、相手を探し始めることが多いのだが、今回は違った。スタート直後にいきなり両者が遭遇してしまったのだ。準備が整っていない状態で敵と遭遇した場合、逃げるのが通常の対応だ。しかし、両者の持っている武器に差があったことがこの試合の行方を決めた。 中距離から近距離をカバーした高性能武器“ShockeRifle”を開始直後に手に入れていたCrizeは、ここを攻め際と判断。定石どおり、逃げに転じたBAZYを一気に倒した。さらにBAZYにとっての不運は続き、フル装備状態のCrizeのほぼ目の前にRespawn(復活)してしまった。当然CrizeはBAZY-Rを瞬殺、そのまま勢いに乗ったのだ。その後、得意マップというだけあって、BAZY-Rに流れを渡すことなく、終始Crize有利で試合は進行。蓋を開けてみると16-4という大差をつけてのタイムアップとなった。 試合後BAZY-Rは 「2回の再起動で集中力が途切れてしまった。普段だったらあんな不用意な動きはしなかった。流れが取り戻せなかった・・・・・・」 とコメント。対するCrizeは 「ほとんどの場面で自分がアドバンテージを取れた点が勝因です。読み勝った回数が多かったもの大きいですね。」 とコメントした。いかにDM-Deck16][の試合がCrizeのペースに終始したかがよく分かるコメントだ。FPSにおける1on1マッチの場合相手に勝利するためのポイントはいくつかある。
・「パワーアップアイテムを相手に取らせない」 というポイントを、Crizeは見事に実践したからこそ、この試合に勝ったといえる。
■ 最後の最後まで決まらなかった順位決定戦
先ほどの「DM-Deck16][」戦とはうって変わって、両者ともに慎重にマップを移動する。広いマップなので、お互いの姿が点に見える距離からパラパラと弾をばら撒いてけん制したり、明後日の方向にロケットランチャーを撃って音を立てて自分の位置を偽装したり、巡回ルートを突如変えて予想外の位置から相手を襲撃したりと、日ごろ培った技術をフルに使って相手の裏をかこうとする。しかし、お互いに相手のことを知り尽くしているせいか、詰めきれずに逃げられてしまう。せいぜいマップ内に一箇所しかないArmor(ダメージを軽減してくれる)を取るときに、遭遇するくらい。 Crizeが得意のminigunを使ってマップ上部から下にいるBAZY-Rに襲い掛かり、1フラグを先取した。すると、BAZY-Rは得意の先読み射撃を駆使して、ワープポイントから出た直後のCrizeにロケットランチャーを当ててフラグを取り返す。そんなシーソーゲームが15分のゲーム時間のほとんどだった。たとえようの無い緊張感が会場を包み、息をするのもはばかられる時間が永遠のように続いた。そして、互いに5-5というフラグポイントで、ラスト30秒を迎えたとき、試合は動いた。両者がマップ上部の小部屋で遭遇、Crizeがお得意のminigunを使ってBAZY-Rを追い詰める! BAZY-Rはminigunの雨から逃れようと、センターホール上部から下へジャンプ! しかし、逃げ切れず、Crizeが1フラグをゲットし、そのままタイムアップ。その瞬間、Crize[KOS]の優勝が決定した。
■ 熾烈なトーナメントが終わったら……
試合終了後Crize[KOS]は、BAZY-Rのことをこう評した。 「やはり経験を積まれてるプレイヤーなので、直感的な部分は凄く優れていると思います。攻め際、引き際の判断とか、こちらの攻撃を上手く凌いで、徹底的に弱みにつけ込む点とかはスゴイです」 BAZY-Rは試合を振り返って 「1戦目のDM-Deck16][でぼろ負けしてしまったので、用心しすぎました。普段だったら突っ込んでるところで体力回復アイテムをとりに行ったりと弱気なプレイになってしまいました。やっぱりメキメキとここ1年で実力をつけてきたCrizeには、感心しますね」 とコメントをくれた。世の中では、暴力的ゲームとして蔑まれる傾向にあるFPSゲームであるが、プレイヤーたちは決して暴力面のみを楽しんでいるわけではないのだ。互いに切磋琢磨し、技術を高め、そして勝利へと向かって進む。そんなスポーツとしての一面が大きいことが改めて実感できた両者のコメントだった。 大会後、韓国へ向かう代表選手3人に意気込みを聞いてみた。
Crize[KOS]
BAZY-R
metal-G[KOS] と、力強いコメントをいただいた。なお、11月18日には渋谷Neccaで代表選手たちの壮行会が行われる。興味の有る方は選手たちの気勢を上げるために顔を出してみるのもいいのではないだろうか。
□WCG日本予選実行委員会のホームページ (2001年11月14日)
[Reported by Tyokuta@トツカ] |
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